道議会質疑一般質問(6月21日)(道議会 2024-09-03付)
Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand
【質問者】
▼渡邊靖司議員(自民党・道民会議)
▼畠山みのり議員(民主・道民連合)
【答弁者】
▼鈴木直道知事
▼北村英則総合政策部長兼地域振興監
▼中島俊明教育長
▼伊藤泰充警察本部長
◆創生総合戦略
Q渡邊議員 約10年にわたる地方創生政策や道の取組が、本道における人口動態にどのような効果や影響を及ぼしたと認識しており、今後どのように対応していく考えなのか伺う。
A鈴木知事 地方創生の取組について。国においては、平成26年にまち・ひと・しごと創生法を制定し、地方創生の指針として累次にわたって策定したまち・ひと・しごと創生総合戦略に基づき、交付金等によって地域の様々な取組を後押ししてきたところ。道においても、人口減少対策の指針として北海道創生総合戦略を策定し、国の交付金等も活用しながら、本戦略の推進と併せて市町村戦略への支援を行い、本道の地域創生に取り組んできたところである。
これまで、全国各地で地方創生に向けた様々な取組が進められてきたものと承知をしているが、先般、国が公表した地方創生10年の取組と今後の推進方向においては、地域によっては人口増加等をしているところもあり、地方創生の取組の成果と言えるものが一定数あると評価する一方、人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っていないと総括しているところである。
道においても、地方創生に向けた道、市町村の連携した取組によって、人口の増加や減少の緩和が見られる市町村が見受けられるものの、全国を上回るスピードで人口減少が続いており、女性や若年層の道外への転出超過、札幌圏への過度な集中といった課題を抱え、依然として大変厳しい状況にあると認識している。
道としては、人口減少問題はわが国最大の戦略課題であり、道政にとっても最重要課題であるとの認識のもと、一層の危機感を持って、東京一極集中の是正や少子化対策の抜本的な強化などについて、同じ課題を共有する北海道東北知事会等とも連携し、国に強く働きかけるとともに、市町村や道民の皆さん、民間の方々とあらためて人口減少がもたらす様々な課題を共有しながら、北海道の創生に向けて、より実効性のある人口減少対策に取り組んでいく。
Q渡邊議員 新たな総合計画案を具体化していくことになる創生総合戦略の見直しに当たっては、人口減少時代にふさわしい戦略を検討していく必要がある。知事の見解を伺う。
A鈴木知事 次期創生総合戦略について。道では、有識者等による現行戦略の検証ワーキンググループを設置し、人口動態の要因分析や若者の意識調査の結果などを踏まえ、これまでの取組の検証を行うとともに、次期戦略の策定に向け、自然減、社会減の両面から取り組む人口減少のスピードの緩和と、デジタル技術の活用などによって、現在より少ない人口においても活力ある社会を構築する人口減少社会への適応の二つの観点から、重点的に取り組むべき事項の方向性などについて、このたび、検証報告として取りまとめたところである。
私としては、次期戦略の策定に当たって、こうした検証結果や国の動向等を踏まえるとともに、新たな総合計画との整合性を図り、北海道創生協議会や子ども世代を含めた多様な意見を反映させながら、関係部局や各振興局との緊密な連携のもと、地域の特性を生かした実効性のある戦略となるよう検討を進め、女性や若者が働きやすく活躍できる環境づくりや、結婚や妊娠、出産、子育てに至る切れ目のない対策の推進、ドローンやAIなどの新技術を活用した生産性の向上や日常生活に必要なインフラ、サービスの強化など、人口が減少する中においても、誰もが安心して住み続けられる地域社会の実現に向けた施策を展開していく。
P渡邊議員 対策による一定の成果はあったものの、人口減少問題が依然厳しい状況にあるとの認識が示されたが、これまで特に成果が見られなかったのは首都圏など都市部への人口集中対策についてであり、残念ながら、こうした面での成果は乏しかったと言わざるを得ない。
首都圏をはじめとする都市部への人口集中問題を解決するためには、市町村による住民の奪い合いに陥りかねない従来の政策的対応では解決が到底困難であり、このまま推移すれば、地域はもとより、わが国自体が、将来、消滅可能性国家になってしまいかねない、国家存亡の危機であるとの認識をまず国に持っていただくことが必要だ。
その上で、国には、あらゆる政策をフル動員し、この問題に正面から取り組んでいただく覚悟が求められる。
危機感を共有する道外の府県等と幅広く連携し、国に対し、地方創生が国家的な最優先の政策課題と位置付け、取組を最大限強化するよう、強く求めるべきであると指摘する。
◆子ども施策
Q渡邊議員 道は、どのような考え方で新たに子ども基本条例を制定することとしたのか、また、この条例にはどのような内容を盛り込む考えなのか伺う。
さらに、子ども計画の策定に向けては、少子化対策をはじめとするこれまでの道の取組の検証が不可欠であるが、今後どのように進めていくのか、併せて知事の見解を伺う。
A鈴木知事 子ども施策の推進について。子どもが将来にわたって身体的、精神的、社会的に幸せな生活を送ることができる社会の実現に向けては、子どもたちの権利を尊重しながら、国や他の自治体との連携を図りつつ、子どもの状況に応じた施策を実施することによって、子どもたち一人ひとりを大切な存在として社会全体で応援するという機運を高めていくことが重要である。
このため、道では、こども基本法の趣旨を踏まえ、道民の理解促進や子どもの意見を表明できる機会の確保などによって、置かれた環境にかかわらず、子どもが子どもらしく成長できる社会を実現するため、新たな条例制定に向けて検討を開始したところである。
また、つぎの「北の大地☆子ども未来づくり北海道計画」は、国のこども大綱を勘案し、本道の子ども施策を一体的に進めるため、青少年の健全育成や子どもの貧困に関する計画を統合し、こども基本法に基づく子ども計画として本年度策定することとしており、策定に当たっては、各計画におけるこれまでの取組等について点検評価を行うとともに、道こども施策審議会から意見をいただくなどして検証し、子ども計画に反映させることとしている。
さらに、5月に開催した道総合教育会議においても、道総合教育大綱の改正と併せて議論をいただいたところであり、引き続き、こうした場を活用し、関係部局間の連携を図りながら検討を進めていく。
道としては、全ての子どもたちが健やかに成長でき、社会から守られ、さらには誰もが安心して子育てができるよう、条例や計画の検討を早急に進めるとともに、子ども施策を展開しながら、こどもまんなか社会の実現に向けて取り組んでいく。
◆本道教育の課題
Q渡邊議員 道教委では、5年に新たな道教育推進計画を策定し、次代を担う子どもたちが自らの可能性を発揮し、未来を切り開いていく力を身に付けることができるよう様々な施策を進めている。
一方で、道内においては、依然として後を絶たないいじめ重大事態への対応や不登校児童生徒対策の推進、全国調査の平均を下回っている学力や体力・運動能力の向上、小規模化が進む高校の特色化、魅力化、増加する特別な支援を要する児童生徒への対応の充実、さらには、暑さ対策など安全・安心な学びの環境の確保など、教育を巡る課題が山積しており、いずれも早急な取組が求められている。
6月1日に中島教育長が就任されたが、教育長は、本道教育の課題についてどのように認識しており、今後どのように取組を進める考えなのか、所見を伺う。
A中島教育長 教育課題への対応について。人口減少、少子・高齢化が急速に進行する本道にあって、全ての児童生徒が家庭の経済力や地域の状況にかかわらず、質の高い教育を受けられる環境を整備することが道教委として力を入れるべき課題と考えており、また、いじめへの対応や不登校児童生徒に対する多様な学びの場の提供、災害、事故などから子どもを守る安全・安心な環境づくりや、近年の大きな問題である教員の確保などが早急に取り組むべき課題と認識している。
さらに、これまでの自身の様々な経験を通じて、本道の産業人材の育成や産学官の連携、未来技術の活用などの必要性を痛感するとともに、道民の教育に対する高い関心や期待を強く感じてきた。
私としては、課題が山積している中で、子どもたちが様々な困難を乗り越え、多様な人々と協働しながら自らの夢を実現することができるよう、道民のニーズや社会経済活動の状況などを十分踏まえ、各学校や保護者、市町村はもとより、地元企業を含む地域の方々と緊密に連携協力し、一丸となって、教育環境の充実や様々な課題の解決に向け、力を尽くしていく。
◆教員確保
Q渡邊議員 近年、教員志願者が減少しており、全国的に教員不足が大きな問題となっている。
道内でも、教員選考受検者が減少する傾向にあり、さらに病休や育休などに対応する期限付教員も不足しており、ことし4月当初、80人であった欠員もいまだ解消に至っていない。また、新規採用1年以内の退職者も毎年数十人見られる。
国では、教員の確保に向けた環境整備の方策について中教審の特別部会で審議が進められ、先般、学校における働き方改革のさらなる加速化や、教職調整額の引上げをはじめとする教員の処遇の改善などを柱とする審議のまとめが示された。
こうした国の動きなども踏まえた上で、働き方改革の推進をはじめ、教員選考検査の一層の改善や新規採用者の定着に向けた支援の充実等、質の高い教員の確保に向けて今後どのように取り組んでいくのか伺う。
A中島教育長 教員の確保について。全ての子どもたちへのより良い学びの場の実現に向けて、その直接の担い手となる優秀な教員の確保は最優先で取り組むべき課題と考えている。
道教委としては、このたびの中教審の審議のまとめも踏まえ、現場との対話を通じ、その目的や意義に照らした、前例や慣習にとらわれない業務の精選や外部人材の効果的な活用による教員の負担軽減など、学校における働き方改革をさらに加速化するほか、新採用教員への支援の充実を図るため、教員加配の活用による採用年度における授業時数の軽減や、若手教職員向けガイドブックの作成などによるメンタルヘルス対策の強化に取り組むとともに、教員の働き方が着実に変わってきている姿をリーフレットにまとめ、教職を志す学生などに広く発信していく。
また、より多様な人材確保のため、民間企業経験者等を対象とした社会人特別選考の拡大など、選考検査のさらなる改善に加え、教員養成大学のほか、民間企業関係者などとの協議の場を設け、教職の魅力発信や新たな人材確保の方策などについての検討を進めるなど、学校が、教員を目指す方々にとって魅力のある、また、生き生きとやりがいを感じて働き続けることのできる職場となるよう、様々な取組を総合的に推進し、教員の確保に全力で取り組んでいく。
◆北海道総合計画
Q畠山議員 本年度から概ね10年間の政策の基本方針を示す新たな北海道総合計画の最終案が公表された。
パブリックコメントでは、小学生から「世界の発展につなげるのは難しいかもしれないから、もうちょっとスケールの小さいところから目指せばいいと思います」との意見があり、この将来世代の濁りのない素直な声に対して、まず、知事の所見を伺う。
札幌市の高校生からは「若者に意見を聞くだけではなく、若者が参加して、実際に大人の皆さんと行動を共にできるなどの取組もあったら、がぜん、みんなのやる気が高まると思いました」との意見もあった。
新たな総合計画の実効性を高めるための周知や、目指す姿の実現に向けた道民全体での取組をどう進めるつもりなのか、併せて所見を伺う。
A鈴木知事 新たな総合計画について。道では、それぞれの地域において、道民の皆さんが将来にわたって安心して住み続けられる地域社会をつくっていくことが重要との認識のもと、このたびの策定に当たっては、初めての取組として、素案の取りまとめの段階で職員が各地域の学校を訪問し、高校生や大学生の方々から直接意見を伺ったほか、パブリックコメントの際にも、新たに小中学生、高校生を対象とした意見募集を行ったところ。
私としては、こうした取組を通じ、本道の将来を担う若い世代が自身の暮らす地域や北海道の未来について考え、道の政策に関心を持っていただいたことは大変意義深いことと考えており、寄せられた意見を目指す姿やその実現に向けた政策展開の基本方向に反映させて計画を取りまとめたところである。
道としては、この計画が、次の時代に向けた北海道づくりのメッセージとして、道民の皆さんに広く届くよう、様々な媒体を活用し、効果的な情報発信に努めるとともに、この計画の普及に向けて、高校生などの若い世代も含め、各地の方々と直接対話を重ね、理解と共感をいただきながら、道民の皆さんや市町村はもとより、企業、団体など、多様な主体との連携によって、目指す姿の実現に向けた取組を着実に進めていく。
Q畠山議員 現在の人口減少の局面に鑑みれば、いずれどこかで限界を迎え、崩壊をする、現在、地域コミュニティーはそのような危機的状況にある。実際、道内の数多くの地域で、医療、福祉、介護、買物、教育、子育てなどへのアクセスが困難だとか、地域の伝統文化を守ることやお祭りなども実施できなくなったとか、災害時の避難も共助の力が弱まるなど、多方面で影響が出ており、対策は急務である。
地域コミュニティーの維持に関し、所見を伺う。
A北村総合政策部長兼地域振興監 地域コミュニティーについて。道内各地域においては、人口減少や高齢化によって、地域活動の深刻な担い手不足や、商業施設や交通機関といった生活に必要なサービスの確保など、様々な課題が顕在化してきている。
このため、道では、地域コミュニティーの維持に向けて、生活交通の確保や移住、定住の対策といった取組に対して地域づくり総合交付金による支援を行っているほか、先進事例の共有や、地域づくりの担い手の方々の交流を目的とした研修会を開催するなど、地域の実情に応じた取組を支援してきたところである。
道としては、こうした取組に加え、国や市町村とも連携しながら、地域おこし協力隊や集落支援員等の活用によって、地域を担う人材の確保育成に努め、それぞれの地域コミュニティーが防災や高齢者の見守り、地域活動といった機能を維持し、住民の方々が地元に愛着を持って住み続けたいと思える地域づくりに粘り強く取り組んでいく。
Q畠山議員 厚生労働省が発表した5年の人口動態統計によると、全国の合計特殊出生率は、過去最低だった前年の1・26よりも低い1・20、北海道は全国平均からさらに0・14ポイント低い1・06で、前年度の全国ワースト3位から、今回、ワースト2位になった。
道の要因分析を伺うとともに、長い期間をかけて施策を続けてきたにもかかわらず、状況が全く好転しないことについて、これまでの国の施策を根本から見直す必要があると考えるが、知事の考える実効ある少子化対策と併せて所見を伺う。
A鈴木知事 少子化の要因と対策について。本道における少子化の要因としては、経済的な不安定さや、仕事と子育ての両立の難しさなど、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っており、とりわけ、本道は全国に比べて30代の有配偶率が低いことなどが関係しているものと考えている。
こうした中、昨年、国は、こども未来戦略を取りまとめ、若年層の所得向上や社会全体の意識改革、全ての子ども・子育て世帯への切れ目ない支援といった基本理念を示したところであり、今般、子ども・子育て支援法を改正し、児童手当の所得制限の撤廃や対象年齢の拡充のほか、就労要件を問わず柔軟に保育所等を利用できる、こども誰でも通園制度の導入など、経済的支援や子育て支援策が強化されたところ。
道としては、改正法に盛り込まれた施策を着実に実施するとともに、引き続き、多子世帯の保育料無償化や乳幼児医療費助成などの各般の施策を、市町村や関係団体等と連携しながら進めるほか、非正規雇用労働者の正社員化に係る処遇改善や賃上げしやすい環境の整備などによって、希望する若い世代の誰もが結婚や子どもを産み育てることができる北海道づくりに取り組んでいく。
Q畠山議員 政府が発表した地方創生の10年間の成果や課題を検証した報告書の内容について、道としての受け止めを伺うとともに、道内における地方創生がどうであったのか、地域の目線で検証すべきだと考えるが、併せて知事の所見を伺う。
A鈴木知事 地方創生の取組について。先般、国が公表した地方創生10年の取組と今後の推進方向においては、地域によっては人口増加等をしているところもあり、地方創生の取組の成果と言えるものが一定数あると評価する一方、人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っていないと総括しており、本道においても、人口の増加等が見られる市町村が見受けられるものの、全国を上回るスピードで人口減少が続いており、依然として大変厳しい状況にあると認識している。
道としては、現行の北海道創生総合戦略について、有識者等による検証ワーキンググループを設置し、人口動態の要因分析や、若者や地域住民からの意見聴取の結果などを踏まえ、これまでの取組の検証を行ったところであり、こうした検証結果や国の動向等を踏まえながら、次期戦略の検討を進めていく。
◆教育行政推進
Q畠山議員 教育長は、6月3日の就任記者会見の際、今後予想される急激な社会的変化の荒波を乗り越えていける力を子どもたちが身に付けることができるよう全力を尽くすとしたが、荒波とは何を示し、それを乗り越えていくために必要な力とは何なのか、どのように取り組んでいくのか、決意も含め、所見を伺う。
A中島教育長 教育行政の推進について。地球規模で進む気候変動や少子化、人口減少、都市と地方の格差など、課題が山積するとともに、社会が加速度的に変化し、従来の知識や経験のみでは将来を見通すことが難しい時代を迎えている中、次代を担う子どもたちが、社会の変化に主体的に向き合いながら、自らの可能性を発揮し、未来を切り開いていく力を身に付けることができるよう、一人ひとりの能力を最大限に引き出す教育を推進することが重要である。
私としては、本道の全ての児童生徒が、変化の激しい時代にあっても様々な困難を乗り越え、多様な人々と協働しながら持続可能な社会のつくり手として成長していくことができるよう、各学校や保護者、市町村はもとより、道民の皆さんのニーズや社会経済活動の状況なども十分踏まえながら、本道教育の充実発展に向け、力を尽くしていく。
Q畠山議員 教育の目的をどう捉え、その上で、本道の子どもたちのために何が必要で、何を行おうとしているのか、教育長自身の言葉でお答えいただきたい。
A中島教育長 教育は一人ひとりの人生を幸せで豊かにしていくために極めて重要な役割を果たしていることから、私としては、いじめへの対応や不登校児童生徒への多様な学びの場の提供、災害、事故などから子どもたちを守る安全・安心な環境づくりなどの課題にしっかりと向き合い、全ての子どもたちが、自分らしさを大切にしながら、自己肯定感を持って、分かる喜び、学ぶ楽しさを実感できる環境を実現することができるよう、全力で取り組んでいく。
Q畠山議員 課題に向き合うために、まずは子どもたちの声を直接聞いていただきたい。
また、安心・安全な環境づくりというのであれば、何より必要なのは、教職員の負担軽減と配置を増やすことである。これまで行われてきた取組の中で不十分であったこと、達成できなかったことを直視し、実態と整合した施策を進めようとする教育長の姿勢が必要だ。再度、所見を伺う。
A中島教育長 私としては、課題が山積している中で、子どもたちが、様々な困難を乗り越え、多様な人々と協働しながら自らの夢を実現することができるよう、社会経済情勢の変化の状況などを踏まえ、様々な機会を通じて児童生徒の声を聞くことはもとより、各学校や保護者、市町村など、地域の方々と緊密に連携協力し、一丸となって、教育環境の充実や教育を取り巻く様々な課題の解決に向け、力を尽くしていく。
◆いじめ・不登校対応
Q畠山議員 教育長は、就任に当たって、道内の学校現場が抱える大きな課題の一つとして、真っ先にいじめや不登校への対応を挙げている。いじめや不登校への対策として、現状、何が不足していると考え、解決に向け、新たにどう取り組むのか伺う。
A中島教育長 いじめや不登校への対策について。いじめについては、本道におけるいじめの認知率や解消率は全国平均を上回っており、一定程度対策が進んでいると考えているが、いじめの早期解決を図ることができないケースもあり、各学校において、ささいな兆候であってもいじめとの関連を考慮し、積極的認知と早期の組織的な対応の徹底などといったいじめ対策をさらに推進していく必要があると考えている。
一方、不登校については、中学校における1000人当たりの不登校生徒数が全国平均を上回るとともに、過去5年間の増加率も全国より高いことから、ことし策定した不登校対策プランに基づき、相談体制の整備や学びの場の確保といった対策を一層強化する必要がある。
道教委としては、児童生徒が充実した学びを通して自己実現を図っていくことが大切と考えており、引き続き、いじめ防止対策や不登校児童生徒への支援を一層充実させ、全ての児童生徒が安心して学校生活を送ることや、オンライン学習の充実や民間団体との連携強化など、多様な学びにつながる環境づくりに取り組んでいく。
Q畠山議員 いじめ・不登校対策に資する環境整備に何が必要と考えるのか、あらためて伺う。
A中島教育長 いじめについては、認知率や解消率は対策の効果が出ているものの、早期解決を図ることができないケースがあることから、積極的認知や組織的対応の徹底に向けた体制整備など、いじめ対策をさらに推進していく必要がある。
また、不登校については、過去5年間の増加率が全国より高いことなどから、相談体制の整備や学びの場の確保といった対策をこれまで以上に強化する必要がある。
このため、いじめ防止対策や不登校児童生徒への支援について実効性を高めるとともに、全ての児童生徒が安心して学校生活を送ることや多様な学びへとつながることができるよう、相談しやすい環境づくりを含め、それぞれの対策の充実強化に向けて取り組んでいく。
◆教育大綱見直し
Q畠山議員 昨年4月のこども基本法施行、12月のこども大綱の閣議決定を踏まえ、大人中心の社会から子ども中心のこどもまんなか社会へと変えていくために、このタイミングで大綱見直しを行うことは評価できるものの、その見直しは、当然、現行の北海道総合教育大綱の確かな検証の上で行わなければならないと考える。
現大綱で足りない点や、新たにどういった観点での見直しが必要なのか、知事の所見を伺う。
A鈴木知事 総合教育大綱の改定について。現在の大綱は、本道の子どもたちに、生まれ育った地域や家庭環境に左右されずに、将来の夢に向かってチャレンジしてほしいとの思いを込めて策定したものである。
道では、大綱に掲げる基本方針を踏まえ、子どもたちに対する防災教育の推進やICTを活用した遠隔教育の充実などに取り組んできているが、4年前の現大綱を策定して以降、この間、成年年齢の引き下げやDXの進展など、社会情勢や教育を取り巻く環境の変化があったこと、また、国の教育振興基本計画の改定やこども大綱の策定を踏まえ、このたび、総合教育大綱を改定することとしたところである。
私としては、子どもたちの権利を尊重し、子どもたち一人ひとりを大切な存在として社会全体で応援するという機運を高めていくことが重要と考えている。大綱の改定に当たっては、学びと育ちの両方の政策の緊密な連携を図るため、「北の大地☆子ども未来づくり北海道計画」の策定と相互に連携するとともに、関連する各種計画との整合性や大綱に基づく施策の毎年度の取組状況も踏まえるほか、パブリックコメントを子ども向けにも実施するなど、広く意見を聴取し、総合教育会議において協議検討を進めていく。
Q畠山議員 貧困や経済格差によって、子どもたちの遊び、学び、体験などの活動や進路選択に制約が生じない対策が何より必要である。総合教育大綱の見直しを契機として、現在の道内教育の課題をどのように認識し、今後どのように取組を進めようとするのか、所見を伺う。
A鈴木知事 総合教育大綱の改定について。現在の大綱は、本道の子どもたちに、生まれ育った地域や家庭環境に左右されずに、将来の夢に向かってチャレンジしてほしいとの思いを込めて策定したものであるが、一方で、子どもの貧困対策やいじめ・不登校対策など、さらなる対応が必要な課題もあると認識している。
大綱の改定に当たり、関連する各種計画や施策との整合性を図るほか、パブリックコメントを子ども向けにも実施するなど広く意見を聴取し、こうした課題への対応も含め、総合教育会議で協議検討を進める。
◆SNSによる犯罪
Q畠山議員 警察庁の調査によると、全国で昨年1年間にSNSの利用がきっかけで犯罪被害に遭った18歳未満の子どもは1665人、中でも、小学生の数は、統計を取り始めて以降最も多い139人。10年前と比べて3倍以上に増えているとのこと。
直近では旭川市での痛ましい事件もあり、子どもたちがSNSによる被害に遭わず、また、加害者とならないための対策が急務だが、知事部局、教育庁、道警がどのように実効性を伴う取組を進めていくのか、それぞれ所見を伺う。
A鈴木知事 SNS利用による犯罪被害への対応等について。SNSの利用に起因して青少年が巻き込まれる犯罪やトラブルが道内においても発生しており、こうした被害から青少年を守り、犯罪に加担させないよう、実効性ある対策を講じていくことが重要である。
道ではこれまで、犯罪のない安全で安心な地域づくり条例のもと、インターネット犯罪の防止などを重点項目とし、関係機関と連携しながら、街頭啓発やパネル展を実施しているほか、有害情報から子どもたちを守るための有識者による講演会を開催するなど、あらゆる機会を通じた広報啓発活動を実施している。
道としては、私をトップとする犯罪のない安全で安心な地域づくり推進会議において、道、道警、道教委が中心となり、今般の事案も含め、SNSを利用した犯罪の撲滅に向けた取組を進めるとともに、実務者レベルでも連携を密にし、引き続き、多様な手法による情報発信や啓発活動を進め、青少年はもとより、道民の皆さんが安心して暮らすことのできる地域社会の実現に向けて力を尽くす。
A中島教育長 SNSの利用について。子どもたちをSNS等のトラブルから守るためには、情報発信による他人や社会への影響や様々なリスク、ネットワーク上のルールやマナーを守ることの意味を考えさせる学習活動などを通じて、情報モラルやリテラシーを確実に身に付けさせることが重要である。
このため、道教委では、全道の担当教員を対象としたネットパトロール講習会の実施や、子どもたちをネットトラブルから守るための保護者向け学習会の実施、道警や民間事業者と連携した子どもや保護者を対象とするトラブル事例と予防方法の啓発資料の配布などに取り組んでいる。
今後は、道教委の「STOP SNS Troubleポータルサイト」を活用した相談体制の充実に努めるとともに、引き続き、道や道警、民間事業者と連携して、SNSに潜む危険性の注意喚起や専門事業者によるネットパトロールなどを継続し、子どもたちを被害者や加害者にしないための取組を進めていく。
A伊藤警察本部長 SNS起因の犯罪被害への対策について。道内においては、昨年1年間にSNSの利用がきっかけで性犯罪等の犯罪被害に遭った18歳未満の子どもが76人いる一方で、闇バイトと称される犯罪実行者募集情報に接し、その投稿者に連絡して犯罪に加担してしまう少年や、同級生の裸の画像を興味本位で拡散し、検挙される少年がいるなど、SNS利用に起因して子どもが犯罪に巻き込まれる憂慮すべき状況にある。
現状を踏まえ道警は、事件検挙のほか、サイバーパトロールで少年の性被害等につながるおそれのある書き込みを発見した場合は、その投稿者に警告文を返信する取組を行うとともに、学校やボランティアの方々と連携した街頭補導活動や非行防止教室等を通じ、SNSの利用や闇バイトの危険性について、子どもたちに注意喚起している。
道警としては、関係機関・団体と連携を図りながら、犯罪被害防止や規範意識の向上に向け、直接、子どもたちや保護者に訴えかけるとともに、SNSを活用した注意喚起を行うなど、子どもたちが被害者にも加害者にもならないための取組をより一層進める。
(道議会 2024-09-03付)
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