自らの可能性信じ挑戦 慶應高野球部監督が講演
(関係団体 2024-12-24付)

 道高校体育連盟(道高体連、駒井博和会長)と道高校野球連盟(道高野連、坂本浩哉会長)は13日、札幌エルプラザで初の合同研修会を開催した。慶應義塾高校野球部監督の森林貴彦氏が「“勝ち”と“価値”の両立」をテーマに講演した。考える生徒たちを支える指導者として「人間教育」の大切さを強調。目標や目的を生徒たちと共有することや、生徒たちの失敗を経験と捉える思考へと転換することの大切さを説き、指導者が自らの可能性を信じて挑戦し続けることを求めた。

 道内の運動部活動指導者の資質向上を図るため、それぞれの分野の指導者による講演や意見交換を行い、本道の運動部活動の一層の活躍・充実に役立てるもの。これまでは、それぞれの連盟で別個開催していたが、運動部活動を巡る様々な課題が依然として残る中、指導者のさらなる意識改革を促すため、初めて合同で開催した。

 森林氏は、小学校に当たる慶應義塾幼稚舎教諭として勤務する傍ら、慶應高野球部監督を務める。5年夏の全国高校野球選手権大会で同校を107年ぶりの全国優勝に導いた。

 森林氏は講演で「どのような組織でも存在理由や理念がある」として「時間をかけて全員で目標を考えることが、意欲的な活動へのエネルギーになる」と説いた。

 慶應高野球部では「野球」と「人間力」の二つを車の両輪に設定。恩返しと(高校野球の)常識を覆すことを目的に据えていることを示し「結果的に生徒たちの幅を広げ、多様性を広げることにつながる」と呼びかけた。

 話題になった「Enjoy Baseball」について解説。地道な練習の積み重ねや試行錯誤、切磋琢磨、けがや故障などのプロセスを含めて「より高いレベルの野球を楽しもう!」という意味であることを強調。依然として残る勝利至上主義の考え方や、同調圧力、上意下達、絶対服従などの古い体質・価値観に基づく“勝ち”を追求する部活動を改め、スポーツを通して自ら考える習慣やレジリエンス、誠実さ、多様性など「人間を育てる“価値”も追求していくべきだ」と述べた。

 指導においては、個人やチームの成長を第一に考える大切さを示し「それが最終的にチームの勝利につながる」とした。野球やフォームは生徒たちのものであるからこそ「自分で考え、追求してほしい。それを手伝うことが指導者の役割だ」と強調。現代社会がウェルビーイングの時代であることを指摘し「自分らしい人生を歩むために、自分で考え、選び、実行できる人になってほしい」と願った。

 ティーチングとコーチングのバランスに言及。指導者に対し、選手の成長を阻害したり、教えるリスクを自覚したり、黙って見守る勇気を持っているかと問いかけ「技術屋よりも経営者の視点を持つべきだ」と説いた。その上で「生徒たちに任せることがやる気を生み出す」と述べつつも、実際にはうまくいかなかったり失敗したりすることが多いことを示し「今の子どもたちは失敗したがらない。失敗を経験と捉える(指導者の)意識が必要だ」と訴えた。

 野球では、1球ごとにサインを出すセットプレーの連続であることを挙げ「サインどおりにプレーを遂行できる選手がいい選手なのか。そうであるならば、野球は自分で考えない選手を大量生産していないか」と疑問を呈した。選手たちに、1球ごとに状況を確認・思考する力を育成することの大切さを説き「サインを出した時に“そうだよな”と納得する選手を育成するよう努めてほしい」と述べた。

 また「日々の練習や準備は試験であり、試合は答え合わせだ」と述べた。長いミーティングは指導者の自己満足であると断じた上で「大切なことは、発する量ではなく、伝わった量だ」と強調。練習の価値が「質×量」であるとしつつ「量で太刀打ちできないのであれば、集中力や目的意識を明確にして質を高めていくことが大切」と呼びかけた。

 最後に、指導者も選手も「日々成長することが大切だ」と指摘。現状維持は衰退と同義であり「成長する努力をしない指導者は失格だ」と訴え、指導者が自らの可能性を信じて挑戦し続けることを求めた。

 このあと「チームの育成」をテーマに旭川志峯高校教諭で陸上競技部顧問の榎本慎吾氏、元プロ野球コーチで札幌国際大学スポーツ人間学部スポーツ指導学科教授の阿井英二郎氏が講話した。

(関係団体 2024-12-24付)

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