【解説】「組織体組織」の関係へ
(解説 2025-02-26付)

 人口減少や産業構造の変化を背景に、地域創生や地域産業の担い手となる人材確保に資する産学連携の重要性がより高まっている。3年度から始まった文部科学省のマイスター・ハイスクール事業では、道内では静内農業高校が3年度、厚岸翔洋高校が4年度から指定を受け、各産業分野における地域の人材育成に取り組んでいる。

 企業と多くの接点を持つことで体験や実践の質が高まり、生徒に変化が表れていることを示すデータもある。文科省が5年度にまとめた報告書によると、事業の実施校の9割の生徒が「進路への意識」「キャリア観」「地域貢献の意識」などの資質・能力の伸長に肯定的に回答。発表会への参加やメディアに取り上げられる経験によって、学習効果の向上や将来の選択肢の明確化に効果があると分析する。教員においても企業の視点を獲得することで教育観の変容や主体性の向上などの変化が見られている。

 過去の産学連携の取組の多くは属人化する傾向にあり、担当教員の人事異動で終了する事例も多かった。しかし、指定校では産業分野に知見を有するコーディネーターが橋渡し役を担うことで教員の負担を軽減。「個人対個人」から「組織対組織」の関係へと持続的な体制の構築を図っている。

 一方、産学連携には企業の理解や校内の協力を得る第1段階、企業との協力体制を構築していく第2段階、持続的な体制となる第3段階とそれぞれで課題が異なる。補助金から離れて資金源の確保に至る事例は少ないが、生徒が企画した商品の売上金のロイヤリティー収入やふるさと納税の採用で学校予算に組み入れる例もあるようだ。

 連携体制の基盤づくりに向け、産業界・学校現場・行政の各分野の視点と各段階の課題に応じた支援の在り方が重要となっている。

(解説 2025-02-26付)

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