2定道議会一般質問(7月1日)の質問・答弁概要
(道議会 2015-09-03付)

 二定道議会本会議(七月一日開催)における内田尊之議員(自民党・道民会議)、中野渡志穂議員(公明党)、平出陽子議員(民主党・道民連合)、藤沢澄雄議員(自民党・道民会議)の一般質問、および柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。

【日本遺産について】

内田議員 国においては、歴史的な魅力にあふれた地域の文化財を活用し、国内外に戦略的に発信して地域の活性化を図る、日本遺産の認定を始めた。第一回の認定は、ことし四月に行われ、全国四十都府県、二百三十八市町村に関連する八十三件の申請があった。そのうち、十八件が認定を受けたが、残念ながら、本道からの申請案件はなかったという。

 このような中、私の地元である桧山管内では、かつて北前船の往来やニシン漁のにぎわいで蝦夷地きっての景気に沸いた江差町が、四百年ほど前から今に伝わる十三台の山車巡行が呼び物の「姥神大神宮渡御祭」を中心として、基本構想を策定している。

 道教委として、具体的な取組が進んでいる江差町に対して、助言、協力など支援に努めるべきと考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 日本遺産に関し、江差町における取組について。江差町では、国指定の重要文化財である「旧中村家住宅」をはじめ、道指定の無形民俗文化財である「江差追分」などを、「日本遺産」の認定に不可欠な文化や伝統を語る文化財群として、現在、歴史・文化を生かした地域づくりのための「歴史文化基本構想」の策定が進められており、早ければ二十八年度中にも、本構想の策定も含め、認定申請の条件が整う予定であると承知している。

 道教委としては、認定の実現に向け、江差町の意欲的な取組に対し、構想策定の議論の場に職員を派遣するなどして、積極的に助言や協力を行っていきたいと考えている。

内田議員 文化庁では、「日本遺産」が地域の活性化に資すると考え、今後も年一回のペースで募集・認定を行う予定としているが、ほかの市町村に対しても地域振興に寄与する観点から、積極的に働きかけるべきと考えるが、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 日本遺産の認定に向けた取組について。道教委では、現在、「日本遺産」の認定に向けて、道内全市町村に対し調査を実施しており、認定を希望するストーリーや地域振興に活用している文化財の内容など、市町村の意向を把握し、七月中をめどに取りまとめることとしている。

 今後、この調査結果を踏まえ、地域に点在する様々な有形・無形の文化財を日本遺産としてパッケージ化し、一体的に活用・発信することによって、文化振興はもとより、観光振興にもつなげ地域の活性化が図られるよう、知事部局と連携しながら、市町村の主体的な取組を支援していく考えである。

【スクールカウンセラー】

中野渡議員 今日、いじめの問題や不登校、暴力行為など、児童生徒の問題は、依然として憂慮すべき状況にあると考える。さらに、発達障がい、虐待等、多様な相談に対応する必要性も生じている。このような教育的課題に対応するため、現在、国や道教委では、心理の専門家として臨床心理士等のスクールカウンセラーを学校に配置し、児童生徒へのカウンセリングを行うとともに、教職員や保護者への専門的な助言などを行っているものと承知している。そこで、以下、スクールカウンセラーについて伺う。

 道教委においては、十三年度から国の「スクールカウンセラー活用事業」によって、スクールカウンセラーを配置している。現在の配置状況や相談を受けている内容を含め、スクールカウンセラーの活用状況はどのようになっているのか伺う。

柴田教育長 スクールカウンセラーの活用状況について。道教委では、二十六年度、百五十八人のスクールカウンセラーを任用し、小学校十二校、中学校二百五十二校、高校七十一校、特別支援学校五校に派遣して、小・中学校には、週一回程度、高校・特別支援学校には、月一回程度、年間を通して計画的に相談活動ができるようにしている。また、事故や災害などの際には、スクールカウンセラーを緊急派遣して、前年度は、小学校五校、中学校八校、高校二十一校、特別支援学校一校に対し派遣を行った。

 スクールカウンセラーへの相談内容としては、教職員からは、不登校の児童生徒への対応や保護者への支援の仕方などについて、また、児童生徒からは、友人関係における悩みなどについての相談が多くなっており、また、緊急派遣した学校では、事故や災害などに伴う児童生徒の不安などへの対応といった、心のケアについての相談が多くみられる。

中野渡議員 教職員は、発達障がいなど個別ケースへの具体的な配慮や対応の仕方を求めており、スクールカウンセラーを児童生徒に身近で相談しやすい存在に感じてもらうためにも、相談室で待機しているばかりではなく、教室巡回等、機動的に対応することが、ますます必要になると考える。学校における教育相談活動を充実させるために、今後、スクールカウンセラーの活用に向けて、どのように取り組むのか伺う。

柴田教育長 学校における教育相談活動について。スクールカウンセラーは、相談室での対応はもとより、その後の校内での観察等を通じて得た児童生徒の様子などをもとに、校内支援委員会やケース会議に積極的に関与するなどして、関係者の共通理解を深めることが重要であると考えている。

 さらに、こうしたスクールカウンセラーには、個別カウンセリングへの対応に加え、子どもたちの社会性を育てる予防的・開発的カウンセリングが求められていることから、道教委では、スクールカウンセラーが中心となって予防的・開発的な視点に基づく生徒の人間関係を形成する力やコミュニケーション能力の育成に取り組む学校を指定し、実践研究等を行っており、今後は、こうした実践の成果を全道に普及することなどによって、スクールカウンセラーを効果的に活用した学校における教育相談活動の一層の充実に努めていく考えである。

中野渡議員 これまで、スクールカウンセラーの資質向上に向けた研修の充実が図られているものと承知しているが、今日、スクールカウンセラーは、一般的な知識や事例では対応しきれないような、複雑かつ多様な問題に直面しており、現状に即応した対応や援助スキルが求められている。

 スキルの向上とともに、スクールカウンセラーが一人で抱え込むことがないよう、指導や助言を行う、専門性が高く、経験豊かなスーパーバイザーの定期的な配置についても検討を進めるべきと考える。教育長の所見を伺う。

柴田教育長 スクールカウンセラーに対する研修などについて。道教委では、これまで、スクールカウンセラー等を対象とする「スクールカウンセラー連絡協議会」や「教育相談員セミナー」の事例研究などにおいて、臨床心理士や大学教授等が、専門的な助言を行う場を設けるなどして、スクールカウンセラーの資質向上に向けた取組を進めてきた。

 児童生徒を取り巻く社会や家庭の環境等の変化に伴い、生徒指導上の問題が一層、多様化、複雑化していることから、スクールカウンセラーに対し、豊かな知識や経験のある臨床心理士等が、より専門的な指導助言を行うことは重要であると考えており、道教委としては、国におけるスクールカウンセラーの配置拡充についての検討状況も注視しつつ、日常的にスクールカウンセラーが相談したり、連携することができるような配置の工夫について検討していく考えである。

【ふるさと教育について】

中野渡議員 人口減少問題が深刻化する中、道内の自治体においては、移住・定住の取組などが重要な課題となっている。

 道では、こうした問題を克服するため、将来への夢や希望をもち続けることのできる活力ある地域社会の実現に向けて、五つのプログラムを作成し、実行しようとしている。

 このような中、教育の分野においては、本道の未来を支えていく子どもたちに、自分たちが生まれ育った地域、すなわち「ふるさと」を愛し、理解し、住み続けたいと思えるような気持ちや態度を育むことが大切であり、私は「ふるさと教育」を一層充実させる必要があると考える。

 教育長は、このたびの教育行政執行方針において、「郷土を愛し、発展させていこうとする気持ちを育むことができるよう、本道の自然や文化、観光などの教育資源を活用した学習を充実させる」ことを掲げているが、道教委は、「ふるさと教育」について、どのような認識をもっているのか伺う。

 また、道教委では、これまで「ふるさと教育」の推進に向け、どのような取組を進めてきたのか、併せて伺う。

柴田教育長 ふるさと教育のこれまでの取組について。自分たちの住む地域の豊かな自然や歴史、伝統、文化、産業等に親しみ、理解を深める教育活動は、ふるさとへの愛着や誇りを育むとともに、地域社会の一員としてふるさとに生きることへの自覚を促すなど、意義あるものと考えている。

 道教委では、子どもたちに、ふるさと北海道への理解を深めさせ、郷土に対する愛着や誇りを育むために、「アイヌの人たちの歴史・文化」や「北方領土」などをテーマとして、地域の教育資源を活用した体験活動などに取り組む「北海道ふるさと教育・観光教育等推進事業」を実施しており、実践校での取組をまとめた事例集をウェブページに掲載するとともに、優れた事例を発表する「実践交流会」を継続的に開催するなどして事業成果の効果的な活用に努めている。

中野渡議員 「ふるさと教育」の一層の充実を図るためには、子どもたちがふるさとの産業や生活に対する理解を深めることはもちろん、歌舞伎などをはじめとする、地域の伝統や文化に対する関心を高めることも必要であり、そのためには、学校が家庭や地域と連携した積極的な取組を進めることが重要であると考える。

 道教委として、こうした「ふるさと教育」を充実させるために、今後、具体的にどのような取組を展開されるのか伺う。

柴田教育長 ふるさと教育における今後の取組について。道教委としては、子どもたちが、ふるさと北海道に誇りをもち、その未来を支えていくことができるよう、ただいま申し上げた取組を、今後一層推進するとともに、本年度から、新たに、地域の産業や環境などにかかわる教育資源を生かした職業体験やボランティア活動などを行い、小中高を見通した体系的なキャリア教育に取り組む「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」や、小・中学生を対象とした伝承講座などを、すべての振興局を対象として、三ヵ年に分けて開催し、地域に伝わる神楽やはやしなどの民俗芸能にふれる機会を提供することによって、次代を担う後継者の育成にも資する「ほっかいどう子ども民俗芸能振興事業」に取り組むこととしており、こうした取組を活用しながら、本道における「ふるさと教育」の一層の充実に努めていく考えである。

【性同一性障がいなど】

平出議員 学校教育における性同一性障がいをはじめとする性的マイノリティーへの配慮について。性的マイノリティーの方たちへの社会の認識はずいぶん変わってきた。国は、二〇〇三年七月十六日、「性同一性障害者の性別の取扱の特例に関する法律」を制定し、東京都渋谷区では、ことし三月三十一日にパートナー条例が制定され、アイルランドでは同性婚を認める法律がことし五月二十三日に制定された。

 学校教育分野が一番遅れているが、文科省も二〇一三年四月から十二月にかけて、全国の学校に「学校における性同一性障害にかかる対応に関する状況調査」を実施し、その結果を二〇一四年六月十三日に公表した。

 道議会議論もあったが、道教委は、ことし一月六日付で各教育局長あてに、「教職員向け資料『性同一性障がいの理解のため』の送付について」という通知を出し、性同一性障がいに対する教職員の理解の深化を図るよう指導助言を求めている。同様に、ことし五月八日にも、道教委は、性同一性障がいにかかる児童生徒に対するきめ細かな対応がなされるよう、各教育局長、各道立学校長、各市町村教育委員会教育長に求める通知を出していることは承知している。

 この二通の通知を受け、各学校では、どのような理解の深化やきめ細かな対応をしたのか伺う。さらに、道教委としての期待する理解の深化、きめ細かな対応とは、どのように考えているのか認識を伺う。

柴田教育長 学校教育における性同一性障がいへの対応について。教職員向けの資料を送付したことし一月以降の状況について、六月に各教育局から聞き取ったところによると、指導主事等による学校教育指導において、いくつかの学校から、児童生徒から相談があった場合の対応や、支援の在り方について質問があったものの、実際に相談を受けた事例はなかった。

 また、この資料の活用事例として、性同一性障がいに対する理解や支援の在り方について研修を行い、全教職員で共通理解を図るなどの取組を行ったという事例の報告があった。

 道教委としては、性同一性障がいのある児童生徒に対する支援については、児童生徒の不安や悩みをしっかりと受け止め、個別の事案に応じたきめ細かな対応を行うことが大切であると考えており、具体的な対応としては、相談を受けた教職員が一人で抱え込むことなく、組織的に取り組むことが重要であることから、学校内外に「サポートチーム」をつくり、保護者の理解を得ながら、ケース会議等を適時開催することや、医療機関と連携することなどが必要であると考えている。

平出議員 学校では、このような性同一性障がいに当てはまる児童生徒または保護者から対応を求められているケースは少ないのではないかと思ったが、性同一性障がいをはじめとする性的マイノリティーの方たちは、集団には十三人に一人は存在していると言われている。

 大手広告代理店の電通が、ことし五月に、全国の二十代から五十代の方たち七万人に、性的マイノリティーについての意識調査を実施したところ、自分がそう認識していると答えた方たちは七・六%、つまり、十三人に一人の割合になるという結果が出たそうである。

 そうであるならば、学校でも、児童生徒は自分で気づいていないかもしれないが、クラスに二~三人の性的マイノリティーの児童生徒が存在している可能性もあることを私たちは認識しなければならないと思う。

 性的マイノリティーの児童生徒が存在しているいないにかかわらず、「呼称はさん付けにする」「混合名簿にする」「性別による色分けはしない」「制服はスラックス可にする」等々、日ごろからの配慮が必要となる。そのことが、いじめ防止などの人権教育にも通ずるのだと思う。

 校内研修はもとより、道研等の研修項目に入れて、広く教職員研修の機会を講ずべきと考えるが、所見を伺う。

柴田教育長 教職員への研修について。性同一性障がいのある児童生徒や、性的マイノリティーとされる児童生徒は、自身の状態を秘匿しておきたい場合があることから、学校においては、児童生徒が日ごろから相談しやすい環境を整えるとともに、個々の教職員に、性同一性障がいに対する正しい理解を深めさせることが重要であると考えている。

 このため、道教委では、ことし一月に、先ほど申し上げた教職員向けの資料を作成・配布し、校内研修等での活用を促しているほか、各管内で実施する「生徒指導研究協議会」や、「初任段階養護教諭研修」などにおいて、学校の対応状況や、様々な支援の事例を紹介するとともに、対応のポイントなどを取り上げている。

 今後とも、学校において、きめ細かな対応が図られるよう、道立教育研究所の講座内容等に位置付けることなども含め、研修機会の充実に努めていきたいと考えている。

平出議員 二定で提案された教育長の教育行政執行方針に、学校における少子化対策として、知事部局と連携し、次世代教育を行うと記載されている。高校生向けの副読本を作成し、結婚や出産、家庭をもつことの素晴らしさを伝える教育のようである。

 一方では、多様な生き方、考え方を容認する時代になったことを認めようとする文科省の通知を知りながら、他方、同じ教育行政でありながら、従来の「子を産めよ増やせよ」の価値観を副読本作成で学校教育の中にもち込もうとすることは笑止千万と言わざるを得ない。

 私は、少子化対策の一環としての副読本作成の次世代教育には反対である。性的マイノリティーの考えも含めて多様な生き方、結婚観をお互い認め合い、その人らしい生き方を認める次世代教育にすべきと考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 次世代教育などについて。人口減少問題への対応が喫緊の課題となる中、道教委においては、道の保健福祉部局と連携しながら、高校生向けの副読本を作成し、結婚や出産、家庭をもつことの大切さなどを伝える次世代教育に取り組むこととしている。

 副読本の作成に当たっては、学習指導要領の趣旨に沿ったものとすること、使用する生徒の心身の発達段階に即していること、さらには、多様な見方や考え方のできる事柄については、特定の見方や考え方に偏った扱いとならないことなどに十分留意することとしている。

 道教委としては、子どもたちが、様々な価値観をもつ人々と互いに尊重し合いながら自己実現を図り、本道の様々な地域において、幸福な人生を送ることができるよう、次世代教育を通じて必要な資質や能力を育んでいきたいと考えている。

【学校のICT導入・活用】

藤沢議員 二十一世紀にふさわしい学校教育を実現できる環境の整備を図るため、国の「第二期教育振興基本計画」では、コンピューターや電子黒板・実物投影機などの整備について、目標となる水準が示されている。この中で、例えば、教育用コンピューターについては一台当たりの児童生徒数が三・六人、電子黒板や実物投影機については一学級当たり一台の整備を目指すこととされている。

 しかしながら、文科省による、本道の小・中学校におけるICT機器の整備状況の調査結果をみると、電子黒板のある学校の割合は、全国平均七六・四%に対し六二・八%、また、デジタル教科書を整備している学校の割合は、全国平均が三七・四%に対して、それを大きく下回る八・七%であり、全国最下位となっている。

 教育活動においてICT機器を活用することは、視覚や聴覚に訴えることによって、児童生徒の集中力や理解度を高める上でも有効だと言われている。また、人口減少に伴い、児童生徒数が著しく減少する学校にあっても、距離や時間を問わずに情報の相互やりとりを可能とするICT機器の活用が教育の質の維持・向上に有効であるのは明白である。

 したがって、学校へのICT機器の導入や活用促進を図ることが急務であると考えるが、道教委の認識と今後の取組について伺う。

柴田教育長 学校におけるICT環境の整備について。ICTの活用は、分かりやすく、興味や関心を高める授業の実現、子どもたちの情報活用能力の育成など、教育の質の向上を図る上で有効であり、その導入や効果的な活用を一層推進する必要があると認識している。

 国においては、学校への整備促進を図るため、前年度から四ヵ年計画で、重点的に交付税を措置しており、道教委では、各市町村における計画的な整備を引き続き、強く働きかけるとともに、学校の規模や地域にかかわらず、教育の質を維持・向上するため、本年度から実施することとしている、ICTを活用した遠隔授業や、タブレット端末や電子黒板等を積極的に活用するモデル事業などにおいて、実践を積み重ね、教員を対象とした公開研究会の開催や事例集の作成・配布などによって、効果的な活用方法の普及を図るなどして、教育におけるICT環境の充実に向けて取り組んでいく。

【高校入試について】

藤沢議員 現在、わが国では、領土問題や国際紛争がたびたび報道で取り上げられるなど、社会的な問題となっているが、それらを正しく理解するためには、学校教育において、社会科の歴史の中で近現代史をしっかりと学ぶ必要があるのではないだろうか。特に、領土問題にかかわりの深い本道においては、重要なことと考える。

 私が中学校のころは、歴史の教科書の後半に、近現代史についての記述がされていたが、十分な時間を確保した授業は行われなかったと記憶している。また、当時は、「近現代史は教科書を読むだけで終わった」「教科書の現代史の内容が最後まで終わらなかった」などの声も聞いており、十分な取扱いがなされていなかったのではないかと感じている。

 現在の中学校では、近現代史はどのように扱われているのか伺う。

柴田教育長 中学校における近現代史の取扱いについて。現行の中学校学習指導要領では、社会科の歴史的分野において、十九世紀ごろから冷戦の終結ごろまでを近現代史として、わが国の歴史について学習することとなっている。

 例えば、「近代」に関する学習では、明治の初期について、ロシアとの領土の画定や北海道の開拓のほか、わが国が国際法上、正当な根拠に基づき、竹島、尖閣諸島を正式に領土に編入した経緯などを理解させる、また、「現代」に関する学習では、第二次世界大戦後について、国際連合の発足、米ソ両陣営の対立、アジア諸国の独立などと、わが国の動きを関連させながら理解させるなどの学習活動が行われている。

藤沢議員 安倍首相が行う予定の「戦後七十年談話」の内容について検討する二十一世紀構想懇談会でも、近現代史の教育の充実を求める意見があるなど、国際情勢に合わせた教育内容を検討するべきだと考える。

 そこで、中学生に近現代史をしっかりと学ばせるためには、高校入試に近現代史を必ず出題するのも一つの方法と考える。

 さらに、道教委が作成している入学者選抜状況報告書を活用し、学習の定着状況を把握した上で、中学校の授業改善に活用するべきと考える。道教委の見解を伺う。

柴田教育長 入学者選抜における近現代史について。学力検査においては、中学校学習指導要領に示されている教科の目標に即して、基礎的・基本的な内容を重視して出題することとしており、学力検査の結果から、義務教育段階における学力の定着状況を分析し、指導の改善に生かすことは重要なことであると考えている。

 教科「社会」の学力検査においては、中学校三年間で学習した内容の一部に偏ることのないよう、地理・歴史・公民の各分野のバランスに配慮して出題してきており、歴史的分野についても、現代までの各時代のバランスに配慮して出題をしてきている。

 道教委では、毎年八月に、入学者選抜状況報告書を公表し、学力検査の領域別や設問ごとの正答率を掲載し、中学校において学習の定着状況の分析ができるよう取り組んでいるが、今後は、より詳細な分析ができるよう、「社会」の近現代史に関する設問の正答率も掲載するなど、入学者選抜状況報告書の充実を図っていきたいと考えている。

【道徳教育について】

藤沢議員 道徳教育については、二十五年の「教育再生実行会議」の第一次提言において、いじめ問題への対応の一つとして、道徳の教科化が提言されて以来、「道徳教育の充実に関する懇談会」、中央教育審議会の議論を経て、この三月に小・中学校の学習指導要領が一部改正され、道徳の時間が「道徳科」となるなど、急速に改革が進められている。

 こうした中、道教委でも、二十七年度の教育行政執行方針において、「道徳が特別の教科として新たに位置付けられたことを踏まえ、家庭や地域と連携した道徳教育を推進していく」としている。

 道徳の教科化によって、三十年度には、すべての児童生徒に道徳の教科書が配布されると伺っているが、現段階では、国から配布された『私たちの道徳』をはじめとする様々な教材を効果的に活用し、指導の充実を図ることが重要であると考えている。

 昨年の第四回定例会において、国からすべての児童生徒に配布された『私たちの道徳』の活用状況について質問したところ、「年度末にはあらためて調査を行う」という答弁があった。その調査において、学校での活用状況はどうであったのか伺う。

 また、道徳教育を一層充実させるためには、子どもたちが『私たちの道徳』を家庭にもち帰り、実際に保護者や地域の方々と一緒に読んだり、話し合ったりすることが重要だと考える。『私たちの道徳』の家庭へのもち帰りの状況については、すべての学級でもち帰っていると聞いているが、各家庭において活用を図るためには、学校が、家庭や地域に『私たちの道徳』の内容を周知したり、活用を働きかけたりする必要があると考える。

 学校は、家庭や地域にどのような働きかけをして連携しているのか、その状況についても伺う。

柴田教育長 道徳教育に関し、小・中学校における『私たちの道徳』の活用状況について。ことし三月に道教委が行った調査では、前年度において、道内すべての小・中学校で道徳教育の全体計画や年間指導計画に『私たちの道徳』の活用を位置付けており、道徳の時間はもとより、各教科や特別活動等において活用されている。

 また、同調査において、学校が行っている家庭や地域への働きかけについては、学級・学年・学校通信等での啓発が約九割、参観日やPTAの協議会等での呼びかけが約七割あるものの、『私たちの道徳』を活用した授業の公開が約五割にとどまっていることなどから、保護者や地域の方々に『私たちの道徳』の具体的な内容や活用方法などについて、より理解を深めていただくための取組が必要であると考えている。

藤沢議員 以前からわが会派で議論してきた『心のノート』の活用では、配布されてからしばらくの間、学校間の取組にかなりの濃淡があった。『私たちの道徳』では、そうしたことが再び繰り返されないよう、学習指導要領の一部改正を好機としてとらえ、しっかりと取り組む必要があると考える。学校や家庭、地域における『私たちの道徳』の一層の活用に向け、今後、道教委はどのように取り組むのか伺う。

柴田教育長 『私たちの道徳』の活用について。道教委では、これまで、『私たちの道徳』が、家庭や地域で確実に活用されるよう、学校には備え置かず、児童生徒がもち帰って有効に活用するよう指導するとともに、家庭での活用の仕方を掲載した保護者用の啓発資料を作成し、すべての家庭に配布したほか、各管内のPTA研修会でも、『私たちの道徳』の活用を働きかけてきた。

 今後は、先ほど申し上げた調査結果などを踏まえ、家庭や地域との連携を含めた『私たちの道徳』の活用に関する実践事例集を作成し、ウェブページに掲載するほか、新たに、ことし八月には、全道のすべての学校の道徳教育推進教師や各地区のPTAの代表者等が一堂に会する全道規模の研究協議会を開催し、『私たちの道徳』の活用の在り方などについて理解を深めることとしており、こうした取組などを通じ、各学校において、家庭や地域と連携した、より効果的な活用が促進されるよう取り組んでいく。

藤沢議員 おもてなしの心を育てる教育について。現在、人口減少やグローバル化が進展する中にあって、他者に共感できる感性や思いやり、意思疎通を図るコミュニケーション能力、多様性を受容する力を高める必要がある。

 こうした中、海外や道外から多くの観光客が訪れる本道においては、子どもが初めて会った人に優しく接したり、気持ちよく会話したりするなどの「おもてなしの心」を育てることが重要であり、わが会派は、これまで道議会でも議論をしてきた。

 道教委では、こうしたことを踏まえ、道内や他県の先進事例を参考にして、おもてなしの心を育てることをねらいとした本道独自の道徳教材『おもてなしハンドブック』を作成し、札幌市を除く小・中学校のすべての児童生徒に配布したと承知しているが、この教材は、どのような内容で構成されているのか、また、各学校で効果的に活用されるよう、道教委は、どのような取組を行うのか伺う。

柴田教育長 『おもてなしハンドブック』について。この教材は、国内外から多くの方々が訪れる本道において、子どもたちに「礼儀正しく真心をもって人に接すること」「相手の立場に立って親切にすること」「郷土を愛すること」などの資質や能力、態度を育むことができるよう作成したものであり、小学校低学年用、中学年用、高学年用、そして、中学生用の四種類ある。それぞれ「あいさつと礼儀」「思いやり」「私たちのふるさと」の三つの内容で構成し、子どもたちが自分の思いや考えなどを書き込んだり、話し合ったりできるよう工夫している。

 道教委としては、今後、この教材を活用した実践事例を掲載した『教員用の指導手引』を作成、配布するなどして、各学校で、『おもてなしハンドブック』が、有効に活用されるよう働きかけていきたいと考えている。

(道議会 2015-09-03付)

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