道立近代美術館「日韓近代美術家のまなざし」展 作品解説を初のライブ発信 豊富高3年日本史の授業へ(道・道教委 2015-10-23付)
道立近代美術館から豊富高へライブ配信
道立近代美術館は、十二日まで開会していた特別展「日韓近代美術家のまなざし」の会場から、豊富高校(沼田靖生校長)三年生の日本史の授業へ、井内佳津恵主任学芸員の作品解説をインターネット回線を使い「ライブ発信」した=写真=。美術館の展示作品を活用した動画配信による授業の試みは、近代美術館としては初めて。生徒たちは教室にいながら、美術館に展示されている作品を鑑賞することができ、井内主任学芸員の説明に聴き入っていた。
今回の試みは、豊富高校三年生の日本史の授業において、日本にとって重要な隣国である韓国との近代史について歴史的な基本知識を身に付けるとともに、道立近代美術館が十二日まで開催していた「日韓近代美術家のまなざし」展の会場からの展示作品の映像、説明によって、日本と韓国との文化的な相互関係の歴史を理解することを目的に実施したもの。
実施に当たっては、遠隔地の高校に対し動画配信によって授業を行っている有朋高校が協力。また、ネットワーク接続については、道立教育研究所附属情報処理教育センターなどからも協力を得た。
当日は、豊富高三年A組の日本史の授業で佐久間英喜教諭が近代の日本と朝鮮半島の関係について説明したあと、近代美術館と中継をつなぎ、あらかじめ豊富高の生徒からリクエストのあった展示作品を中心に、井内主任学芸員が説明・解説し、有朋高の吉嶺茂樹教諭(地歴)と須藤由希子教諭(美術)が聞き手となって進行した。
李惟台(イ・ユテ)の作品「和音」と「探求」。ピアノがある室内でテーブルを前に置き、いすに座っている女性を描く「和音」と、顕微鏡、フラスコなど様々な実験道具に囲まれた白衣の女性を描く「探求」は対をなす作品。これについては、「女性の伝統的役割から抜けだし、積極的に社会的役割を担う姿を描くことで、韓国の伝統を踏まえつつ、近代的な女性としての理想美を表現しようとしたもの」と解説した。
佐藤九二男の作品「自画像」。佐藤は、札幌の北海中学校(現・北海高校)に学び、同校美術部・団栗会創立者の一人。一九二七年から京城第二高等普通学校の美術教師となり、課外では美術展を立ち上げた。教え子たちの中から、張旭鎮(チャン・ウクチン)、李大源(イ・デウォン)、劉永國(ユ・ヨングク)といった俊英が成長し、戦後の韓国美術界をけん引した。しかし、佐藤本人の現存作品が確認できたのは、東京美術学校の卒業制作であるこの“自画像”一点のみ。「展覧会開催のための調査によって、初めて、このような人物がいたことが分かり、また、札幌出身ということも分かった」「日韓国交正常化の前、一九六〇年代はじめのころに教え子たちが集まって佐藤の名前をひっくり返して“二九会”というグループ展を開催している。佐藤が一九四五年に亡くなってから十年以上経てもなお、佐藤に対する敬愛の念があったのではないか」などと説明、解説した。
最後に、井内主任学芸員は「社会的な枠組とか、政治的な枠組だけから考えるのではなく、一つ一つの作品、あるいは、一人ひとりの出会いとか交流、そういったことから、日本と韓国の未来に向けた関係を考える一つの材料としてほしい」。吉嶺教諭は「日本と韓国がうまくやっていくためには、普通の人たちの交流を深めていくことが大切。この経験が歴史の学習につながっていけばいいし、美術と歴史がつながっているということを考えてほしい」。須藤教諭は「皆さんのまなざしと、活躍された画家のまなざしが交差する部分が出てくると思う。絵を通してだったり、歴史を通してだったり、いろいろな視点で物事を考えてほしい」などと述べた。
生徒たちからは、「普通の授業では聞けない話や時代背景なども知ることができたので良かった」「新鮮で貴重な体験ができた」「美術館にいるような感覚で、授業を受けられてとても楽しかった」「学芸員の方の解説が分かりやすかった」などの感想が挙がっていた。
(道・道教委 2015-10-23付)
その他の記事( 道・道教委)
道子どもの貧困対策推進計画素案 教育支援―退職教員の学校配置など 成長段階に応じた施策展開(27~31年度) 道保健福祉部
道保健福祉部は、道子どもの貧困対策推進計画(素案)をまとめた。二十一日に開かれた第三回北海道総合教育会議で示されたもの。計画期間は二十七年度から三十一年度までの五年間。「教育支援」「生活支...(2015-10-26) 全て読む
道都市教委連・道都市教育長会28年度文教施策要望に対する回答(上)
道都市教育委員会連絡協議会(長岡豊彦会長)、道都市教育長会(同)が六月に道教委に提出した二十八年度文教施策要望に対する回答の概要はつぎのとおり。 ▼公立文教施設の整備促進について (1...(2015-10-23) 全て読む
道総合教育会議が教育大綱固める 新たに重点取組3点盛る 大綱に基づいた施策を―柴田教育長
道総合教育会議の第三回会合が二十一日、京王プラザホテル札幌で開かれ、北海道総合教育大綱を固めた。素案で示した本道教育の目指す姿、基本的な考え方に加え、新たに「社会で自立するために必要な学力...(2015-10-23) 全て読む
第3回道総合教育会議 CS普及促進へ協議 大分県教育センター・梶原氏が取組報告
第三回道総合教育会議(二十一日、京王プラザホテル札幌)では、コミュニティ・スクール(=CS)の普及促進について協議を行った。大分県教育センターの梶原敏明所長による大分県玖珠町におけるCSの...(2015-10-23) 全て読む
27年度道社会貢献賞私学教育功績者表彰 浅井氏など5氏に栄誉 私学教育の振興へ決意新た
道は二十一日、札幌ガーデンパレスで二十七年度北海道社会貢献賞私学教育功績者表彰式を挙行した=写真=。長年にわたって本道の私学教育の振興に顕著な功績を挙げた浅井洋子氏(北海道ドレスメーカー...(2015-10-23) 全て読む
代表高校長研で道教委が所管事項説明(下) いじめ防止へ取組徹底 生徒との信頼構築へ努力求める
道教委主催の二十七年度第三回全道代表高校長研究協議会(九日、道庁赤れんが庁舎)における各課等所管事項の説明概要はつぎのとおり。 ◆学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 【生徒指導】...(2015-10-22) 全て読む
アウトメディアプロジェクト ネット利用協議し発信 11月の生徒会フォーラムで
道教委設置の道子どもの生活習慣づくり実行委員会(佐藤彰会長)は十一月、「どさんこアウトメディアプロジェクト」の一環として、深川・北見・足寄の各ネイパルで高校生徒会フォーラムを開く。公立高校...(2015-10-22) 全て読む
オホーツクで特別支援教育充実セミナー 専門性向上へ研鑚積む 80人参加し演習や協議など
【網走発】道教委は十月上旬、オホーツク合同庁舎でオホーツク管内特別支援教育充実セミナーを開催した=写真=。管内の特別支援教育コーディネーターなど約八十人が参加。演習や協議を通して、特別支援...(2015-10-22) 全て読む
設置学科、教育内容を確認 札幌あいの里高等支援学校説明会―道教委
道教委は十九日、道庁別館で二十八年四月に開校する札幌あいの里高等支援学校の説明会を開催した=写真=。設置学科や教育内容について説明し、約百六十人の参加者は熱心に聞き入っていた。 札幌あ...(2015-10-22) 全て読む
27年度道教育功労者表彰 大山氏(札幌東高校長)など10人 12月8日に札幌で表彰式
道教委は、二十七年度道教育功労者表彰の受賞者を決定した。札幌東高校の大山節夫校長など十人が栄に浴した。表彰式は十二月十八日午前十一時からホテルライフォート札幌で執り行われる。 受賞者は...(2015-10-22) 全て読む