道立文学館特別展「没後50年 文豪・谷崎潤一郎」 愛と美の文学堪能して 直筆原稿など展示
(道・道教委 2015-10-29付)

特別展谷崎潤一郎
道立文学館特別展 谷崎潤一郎

 道立文学館は、同館特別展示室で開館二十周年・特別展「没後50年 文豪・谷崎潤一郎―愛と美を求めて」を開催している=写真=。谷崎作品に登場する女性たちに着目し、松子夫人と交わした書簡をはじめ、『細雪』の原稿などの自筆資料、棟方志功らの装幀本や挿絵、『潤一郞訳源氏物語』ほか、関連する文学・絵画資料約百四十点を通して〝永遠女性〟の探求者・谷崎の愛の文学を紹介している。十一月十五日まで。

 わが国を代表する文豪・谷崎潤一郎(一八八六~一九六五)は、東京下町に育ち、一九〇八(明治四十一)年、東京帝国大学国文科に入学、小説家を志し創作を続け、『新思潮』(第二次)や『スバル』に戯曲や小説を発表。永井荷風は、谷崎の短編・戯曲を取り上げ、耽美的な独自の文学を激賞した。

 一九二三(大正十二)年、関東大震災を機に関西に移住。以後、七十九歳で世を去るまで独自の文学を展開。その作品は、日本の古典や伝統的美意識に根ざしつつ人間の本質に迫るもので、その魅力は時間と空間を超えて、現在も国内外で高く評価されている。

 谷崎が亡くなって、ことしで五十年。同展は、「東京日本橋に生まれて~江戸のおもかげを求めて」「関東大震災と関西移住~上方の女」「古典美の世界~永遠に女性的なるもの」「夢の浮橋~谷崎源氏から『細雪』へ」の四章で構成。耽美主義に連なるデビュー作『刺青』から、関東大震災を機に関西に移住して取り組んだ『痴人の愛』『卍』、日本の伝統と美を発見した『春琴抄』『細雪』、そして老いとエロスの心理をみつめた晩年の『癇癪老人日記』まで、登場する女性たちを中心に取り上げ、紹介している。

 また、谷崎文学に強い影響を与えた松子夫人と交わした書簡を展示。来場者は、鮮やかな便せんに流麗な筆致で書かれた松子夫人の手紙に見入っていた。

 谷崎は、三度(旧訳、新訳、新々訳)にわたって『源氏物語』の現代語訳に取り組み、それらは十五種に及ぶ形態をもって中央公論社から出ている。昭和二十六~二十九年かけ刊行された新訳は、翌三十年に中央公論社から創立七十周年記念の愛蔵本として装いも新たに世に出るに当たって、十四人の画家による挿画を掲載。同展では二期に分け、挿絵の原画を展示。二十日から始まった後期は徳岡神泉、前田青邨などの挿絵原画を紹介している。また、『鍵』や『癇癪老人日記』の装幀を行った棟方志功の板画も展示している。

『源氏物語』(旧訳)完成後、まもなく執筆された谷崎文学の代表的な長編小説『細雪』を紹介するコーナーを設置。大阪旧家の四姉妹が織りなす人間模様を描いた作品で、松子夫人とその姉妹がモデルと言われている。直筆原稿や松子夫人と姉妹の写真のほか、挿絵原画も数点展示している。

 このほか、谷崎愛用の硯、筆、文鎮、晩年の原稿用紙なども展示。谷崎文学の全体が把握できる展示構成となっている。

 開館時間は、午前九時三十分から午後五時(入場は午後四時三十分)まで。問い合わせは、道立文学館(電話〇一一―511―七六五五)まで。

 観覧料は一般七百円、高大生四百五十円、小中生三百円。

(道・道教委 2015-10-29付)

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