Pick Up2015④ 札幌市フードリサイクル事業 高まる食への関心と意欲 一層の普及・啓発図り全市展開へ(市町村 2015-12-16付)
食べ物を大切にする心が着実に根づいている
札幌市教委が中心となって実施している「さっぽろ学校給食フードリサイクル事業」はことし、十年目を迎えた。モデル校二校からスタートし、現在ではフードリサイクル堆肥活用校が百六十八校にのぼる。児童生徒が栽培活動への興味・関心や食べることへの意欲が高まるなど、大きな成果がみられる同事業の現状を取材した。
同事業は、学校給食の調理くずなどの生ごみを堆肥化し、その堆肥を教材園等で活用して作物の栽培活動や調理を行うなどの体験型学習を通じて、食育や環境教育の充実を図ることを目的としている。十八年度から実施しているもので札幌市環境局と経済局、札幌市教委などが連携し、事業を円滑に進めるため関係者による連絡会議を設置。事業の方向性や進捗状況の確認等も行っている。
リサイクル堆肥を活用して、同事業を教科および総合的な学習の時間や給食時間の指導などと関連させ、食育・環境教育の充実を図ることを目指すフードリサイクル堆肥活用校は、モデル校二校からスタートした。
教科と関連付けた授業をどのように行うのか、教材園での栽培活動のノウハウの不足など課題があったが、市教委では農体験リーダーを派遣し、栽培活動の知識や技術等の支援を実施。また、フードリサイクル堆肥活用校の交流会を開催し、各校で給食時間のほか、教科と関連付けた授業の取組を交流することでノウハウの浸透を図るなど、取組の充実を図った。
これらの成果によって、フードリサイクル堆肥活用校は年々増加し、二十七年度は百六十八校に。今後も市教委では全校での実施を目指し、取組を進めている。
フードリサイクル堆肥活用校の札幌市立三角山小学校(渡辺寛志校長)ではことし、四年生の総合的な学習の時間で、フードリサイクル堆肥を使用して栽培されたトウモロコシの皮むき体験を実施した。トウモロコシの皮をむかせ、食べられない部分が多いことに気づかせるとともに、同事業の仕組みについて学ばせた。児童が皮むきしたトウモロコシのひげを活用したお茶作りなどを体験。様々な再利用の方法があることも実感させる学習を展開した。
二十一年度から事業に取り組んでいる同校では、一年生から積極的に栽培活動に取り組むなどの体験を通じて、栽培活動への興味・関心や、食べることの意欲が高まるなどの成果がみられているという。同校の佐藤あや栄養教諭は、児童たちに「農作物に対して、“自分が育てなければいけない”という責任感が生まれている」と、確かな手応えを感じている。
また、佐藤栄養教諭が「フードリサイクルされるなら給食は残してもいいんじゃない?」と問いかけると、児童は「給食は肥料になるためにあるのではなく、自分たちの健康や成長が考えられたもので、食べるためにある」と答えるという。佐藤栄養教諭は「リサイクルされるから“食べ物を残してもいいかな”などと思わないで、食べ物を大切にする気持ちが育っている」と、長年実施している取組の成果を口にする。
市教委ではことし、事業の取組を紹介するポスターを作成。市立全小・中学校と特別支援学校に配布したほか、堆肥活用の可視化を図るためのプラカードを堆肥活用校の百六十八校に配布するなど、事業の普及・啓発を図っている。
また、本年度内に教育教材として作成したDVDを各学校に配布する予定で、給食時間や教科の指導に役立てるなど、食や環境を考え、ものを大切にする子どもを育てるため、取組の充実を図っている。
(市町村 2015-12-16付)
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