3定道議会一般質問の質問・答弁概要(9月16日)
(道議会 2015-12-24付)

 三定道議会一般質問(九月十六日開催)における大越農子議員(自民党・道民会議)、志賀谷隆議員(公明党)、藤川雅司議員(民主党・道民連合)、菊地葉子議員(日本共産党)の質問、および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長、窪田毅総合政策部長、宮川秀明環境生活部長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆子どものネット利用

大越議員 わが会派が指摘してきたとおり、学力向上を図る上で、家庭学習の習慣化が不可欠であり、そのためには、子どものネット利用を適正なものにすることが重要である。私は、先の第二回定例会において、学校などにおける取組の促進について伺い、教育長から「地域の取組状況を把握しながら、さらに充実する」旨の答弁をいただいた。そこで伺う。

 携帯電話の普及でインターネットが身近で便利なものになり、子どもたちも日常的に、ブログやLINEなど様々な形で利用することが多くなっている。しかし、情報化の進展は便利な反面、性犯罪や高額請求などの被害、いじめの原因となるなど、様々なトラブルも後を絶たない。ネット上のトラブルから子どもたちを守るためには、学校での情報モラル教育だけではなく、ネット上の不適切な書き込み等の監視や指導、子どもが陥りやすいトラブルに関する保護者への啓発、実際にトラブルが生じた場合の相談体制の充実が必要であり、道教委として積極的に取り組むべきと考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 子どものネット利用に関し、ネットトラブルへの対応について。近年のインターネット等の普及に伴い、本道においても、子どもたちにかかわる個人情報の流出や誹謗中傷などが発生し、ネットを介した性犯罪等の被害に巻き込まれることなども懸念されることから、情報を適切に取り扱う子どもたちの能力を育成するとともに、学校、家庭、関係者が連携して子どもを守る取組を推進する必要があると考えている。

 道教委では、これまで、こうしたネットトラブルを未然に防止するため、学校における情報モラル教育の指導計画例の作成・配布をはじめ、保護者向け啓発資料の配布や講演会の開催、専門業者に委託し、ネットパトロールを実施するなどの取組を進めてきており、専門業者によるネットパトロールでは、他人を誹謗中傷する内容の書き込みを検出し、早期に当該学校への情報提供が行われ、大きなトラブルに発展する前に対応できた事例などもみられている。

 道教委としては、今後とも、こうした取組の一層の充実に向け、子どもたちが陥りやすいトラブル事例をまとめた保護者向けリーフレットを定期的に作成し、配布するとともに、ネットトラブルに関して、専門家が電話やメールで対応する相談窓口「ヘルプサイト」を広く周知するなどして、ネットトラブルから子どもたちを守るための取組の充実に努めていく考えである。

大越議員 子どもの健康にかかわるネット依存症や、望ましい生活習慣の問題も見過ごしにできない。

 道教委では前年度から、市町村教委や校長会、PTAをはじめとする様々な団体などと連携して、「どさんこアウトメディアプロジェクト」を進め、ノーゲームデーなどに取り組んでいると承知しているが、取組の推進状況と、それに対する教育長の認識を伺う。

柴田教育長 子どものネット利用にかかわる取組状況について。ことし八月に道教委が行った調査では、多くの学校や市町村が、ネット利用も含めた生活習慣を見直す取組を行っているが、「ノーゲームデー」に取り組む学校は約七割、市町村では約五割、ネット利用に関するルールを設定している学校は約五割、市町村では三割にとどまっており、「どさんこアウトメディアプロジェクト」の取組が、まだ地域には十分普及していないと受け止めている。

 このため、道教委としては、PTA等との一層の連携のもと、市町村や学校に、子どものネット利用にかかわる取組の重要性を理解していただけるよう、引き続き、働きかける必要があると考えている。

大越議員 こうした取組は本来、大人から子どもに押しつけるだけではなく、子どもたち自ら主体的に取り組むことが望ましいと考える。さらに、全国の事例からは、公立学校だけではなく、私立学校や専門学校の生徒がかかわっているケースも見受けられることから、その点からの対応も必要であり、取組の充実を図る必要があると考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 今後の対応について。道教委では本年度、PTA等の関係機関と一体となって、先進的な実践を普及するフォーラムを開催するとともに、国の事業を活用した生活習慣の改善を促すプログラムを、十四管内に設置した中・高の協力校において、新たに実施している。

 今後は、取組が進んでいない地域に対しては、実践を働きかけるフォーラムを新たに開催するなど、啓発活動を充実するほか、議員指摘のとおり、子ども自らが課題解決に向け、主体的に取組を進める必要があることから、生徒会フォーラム等を開催し、私立学校を含めた取組に拡充していく考えである。

 また、今回の調査結果で明らかとなった道内の特色ある先進事例を取りまとめ、市町村や学校に提供するなど、ネット利用にかかわるルールづくりなどの実践がさらに広がるよう、具体的な取組を進めていく。

◆犯罪防止策について

志賀谷議員 近年、少年の犯罪の再犯率が増加している。そのため、先のわが党の代表質問において、少年の犯罪防止について伺ったところ、道や道教委から、「学校・家庭・地域の連携によって、各種事業に取り組んでいる」との答弁があった。そこで、高齢者や少年の犯罪防止に向けて、具体的にどのような対応を行っているのか伺う。

宮川環境生活部長 更生保護に関し、高齢者や青少年の犯罪防止に向けた取組について。道においては、関係機関と連携して、地域全体で、犯罪や非行を防止し、犯罪者の立ち直りを支援する、社会を明るくする運動を進めるとともに、安全・安心どさんこ運動に取り組み、高齢者や子どもの見守り活動などを通じて、犯罪のない、安全で安心な地域づくりに努めている。

 また、青少年の非行防止に向けては、青少年健全育成条例に基づき、例年、五百人規模で、地元自治体や警察署などの協力を得て、カラオケボックスなどを対象に、二千五百件程度の立入調査を行うとともに、市町村を通じ、地域の方々などの協力を得て、お祭りなど各種イベントでの見回りや声かけ活動を進めるほか、強調月間の七月には、非行防止住民大会やポスター等の掲示による広報啓発などを実施している。

 これらの活動を通じて、今後とも、関係機関や地域の方々との連携を図りながら、高齢者や青少年の犯罪防止に向けて取り組んでいきたいと考えている。

柴田教育長 更生保護に関し、児童生徒の問題行動等の未然防止について。今日、児童生徒の生徒指導上の課題は多様化をしており、学校においては、学校生活だけではなく、家庭はもとより、地域社会における関係機関と相互協力して対応することが重要であると認識している。

 このため、道教委では、これまで、スクールソーシャルワーカーと関係機関等との連携によって、問題行動を繰り返す児童生徒の家庭への支援事例などを盛り込んだ指導資料を作成し、市町村教委や学校に対して配布するとともに、各管内で実施している「生徒指導研究協議会」において、保護者や地域の方々の参加も得ながらシンポジウムや事例研究等を行うなど、学校と家庭、地域の関係機関との積極的な連携について理解を深める取組を進めてきた。

 道教委としては、今後とも、こうした取組の充実を図るとともに、すべての管内で実施をしている「地域いじめ問題等対策連絡協議会」の場などを活用して、関係機関による研究協議や情報交換を行うほか、道PTA連合会等や道家庭教育サポート企業などと連携をし、家庭におけるルールづくりを推進するなどして学校、家庭、地域社会が連携した取組の一層の充実を図っていく。

◆チーム学校について

志賀谷議員 今日、いじめや不登校など、子どもを取り巻く環境は多様化・複雑化しており、教員に求められる役割は、授業や部活動のみならず、貧困問題への対応や地域活動など、実に多岐にわたっている。その負担も非常に大きくなっている。

 国際教員指導環境調査によれば、わが国の学校は教員以外の専門スタッフが諸外国と比べて非常に少ない状況にある。この教職員の総数に占める教員の割合は日本が八二%、米国が五六%、イギリスが五一%となっている。

 多様化する子どもの問題への対応策として、現在、注目されているのが、教員に加えて多様な専門スタッフを配置し、様々な業務を連携・分担してチームとして職務を担う「チーム学校」であり、先般、中央教育審議会の作業部会において、その在り方に関する中間報告がまとめられた。

 「チーム学校」の実現を図るため、「専門性に基づくチーム体制の構築」など三つの視点が掲げられるとともに、具体的な方策も盛り込まれており、多様化する子どもの問題への対応策として、極めて有効な取組であると期待している。

 「チーム学校」について、道教委として、どのような認識をもっているのか伺う。

柴田教育長 「チーム学校」について。校長のリーダーシップのもと、教員や教員以外の様々なスタッフが、それぞれの専門性を生かしてチームとして職務を担うチーム学校については、昨年、国の有識者会議からも提言があり、教員が授業などの本来的業務に専念できる体制の整備とともに、学校の教育力、組織力の向上に効果的であると認識している。

 道教委としては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどのほか、国の教職員定数の加配を活用し、校内の意識共有を図るミドルリーダーとしての主幹教諭や、学校の図書館業務やICT業務を担当する専門スタッフの配置を進めてきており、年内に取りまとめられる国の中央教育審議会の答申を十分に踏まえながら、今後とも、学校運営の改善に向けて「チーム学校」の推進に努めていく考えである。

◆主権者教育について

藤川議員 選挙権年齢を二十歳以上から十八歳以上に引き下げる改正公職選挙法が、ことし六月十七日に成立した。来年の参議院選挙から実施される予定とのことである。

 十八歳、十九歳は全国で約二百四十万人、全有権者の二・三%程度、道内では約九万六千人と推計されている。選挙年齢を十八歳以上としているのは百七十ヵ国。現在、選挙権年齢を十八歳から十六歳へ引き下げる動きがヨーロッパで本格化しているなど、選挙権年齢の引き下げは世界のすう勢となっている。

 若いうちから政治に関心をもち、社会問題に積極的にかかわるのは良いことだと思う。

 しかし、最近の選挙における若者の投票率は非常に低い状況にある。昨年末の衆院選では、二十歳代は三二・五八%と、六十歳代の六八・二八%の半分にも満たない。したがって、若者に政治に関心をもってもらうことが必要である。

 十八歳選挙権の実現は、国民の参政権を広げ、若者の社会参加、政治参加の推進を図ることによって、民主主義をさらに発展させる意義があるし、この政治改革を契機として、あらためて、学生・生徒、教職員など、学校現場の声に十分耳を傾けつつ学校教育での「主権者教育」を推進・確立するとともに、新たに選挙権をもつ十八歳には、高校生が含まれることからも、公職選挙法の順守、違反防止の徹底、そして、学生・生徒の投票機会拡大などを進めるべきと考える。

 子どもたちに、早い段階から、社会の課題について関心をもってもらうことは重要と考えている。

 さらに、国の段階でも、学習指導要領の改訂に向けて、このことが議論されていると聞いている。

 そこで、道教委として、特に、高校における主権者教育について、どのように認識しているのか、そして、今後、具体的にどのように進めていくのかを伺う。

柴田教育長 主権者としての自覚などにかかわる指導について。高校においては、学習指導要領に基づき、公民科の科目「現代社会」や「政治・経済」において、選挙などに着目して、主権者としての政治参加の在り方について考察させる学習を扱うこととなっており、高校生に対し、国家および社会の形成者として必要な政治や選挙への関心を高め、政治的教養を豊かにするための教育の充実を図ることは重要であると考えている。

 道教委としては、選挙権年齢を十八歳以上に引き下げる法律がことし六月に公布されたことを受け、今後、国が作成する指導資料等の内容を踏まえ、道内の各高校向けの指導資料を作成・配布し、「教育課程研究協議会」等を通じて、各学校に対し、政治参加の重要性や選挙の意義についての理解を深めさせる指導の充実を図るよう、指導助言を行っていく考えである。

 また、道選挙管理委員会が実施する選挙啓発出前講座について、道内の各高校に対し、積極的に活用するよう促すなどして、高校生の主権者としての自覚を高める取組の充実に努めていく。

― 要 望 ―

藤川議員 主権者教育について、二定の予算特別委員会で質問した。国からの資料待ちということであった。八月にも示されるのでないかということだったが、昨今の報道では、十月ころという情報もある。

 さらに、教育課程研究協議会は十二月に開催されるということであり、対応が遅いのではないかと思う。特に、三年生は大学受験の準備などで十分な時間がとれないと思われるので、早急な取組が必要と思う。

 現在の高校生三年生と二年生の一部が対象になるということであり、選挙管理委員会の出前講座を活用してということだが、クラスに有権者がいることを前提とすると、十七歳以下は、選挙期間中に候補者の発言をネットでは広めていけないという条項もある。今、高校生はネットでいろいろなやりとりをしており、知らず知らずのうちに公職選挙法違反となることも考えられる。しっかりと啓発することが必要と思う。

 さらに、高校生の政治活動の制限の緩和も検討されているようであり、そのこと自体はいいことだと思うが、学校現場での混乱も予想される。そこもしっかりと対応することが必要だと思う。

 いずれにしても、情報を議会にも早期に提供するよう求める。

◆総合教育大綱について

菊地議員 人材育成と人格の完成について。素案では、労働力人口の減少やグローバル化の進展を受け、北海道の経済発展や活性化に貢献する人材の育成を据え、産業人材の育成やキャリア教育、職業教育、グローバル教育がうたわれているが、大綱を人材育成計画にしてはならない。

 教育の基本は、一人ひとりの子どもを人格として尊重し、考える力を養うことではないだろうか。人格を自己で磨くという自己責任の枠に押し込めることを改め、大綱の目的に人格の形成を据えるべきではないのか伺う。

高橋知事 教育大綱について。教育基本法では、教育の目的として、人格の完成を目指すことがうたわれており、私としても、本道の未来を担う子どもたちが自立して生きていくために必要な学力と体力を身に付けるとともに、互いを尊重し、ともに助け合う豊かな心をもった人間に育ってほしいと考えている。

 教育大綱は、こうした考え方を踏まえて策定していきたいと考えており、学校、家庭、地域が協働して子どもたちの学びを支えていくことができるよう取り組んでいく考えである。

菊地議員 「郷土愛」や「郷土で生きる自覚を涵養する」こと、「北海道人のアイデンティティー」などが強調されているが、これも押し付けであってはならない。アイヌの人たちの歴史を含めて事実を正確に教え、子どもたちが自ら歴史的な事実を理解し、考えることができるようにする、そのような「ふるさと教育」とすべきと考えるが、いかがか。

柴田教育長 ふるさと教育について。本道の未来を担う人材を育てる上で、アイヌの人たちの歴史や文化なども含め、北海道ならではの豊かな自然や歴史、文化、産業などに親しみ、理解を深める教育を充実させることは、極めて重要であると認識している。

 道内の各学校においては、学習指導要領に基づき、社会科や総合的な学習の時間などにおいて、子どもたちが北海道の歴史や自然などについて理解を深める学習を行っており、前年度からは、こうした学習を一層充実させるため、子どもたち自らがアイヌの人たちの歴史や文化等に関して調べ学習を行うなど、主体的に学ぶことができる効果的な指導の在り方を研究する「北海道ふるさと教育・観光教育等推進事業」に取り組んでいる。

 道教委としては、今後、各学校等に対し、本推進事業における実践事例を提供するとともに、教員研修の一層の充実を図ることなどによって、子どもたちが本道の歴史や文化等について正しく理解し、考えることができる「ふるさと教育」の充実に努めていく考えである。

菊地議員 「雇用のミスマッチ」「早期離職」「若者の使い捨て」等への適切な対応のために、労働法制やワークルールを学ぶことが大切である。しかし、非正規雇用の拡大など社会の構造的な問題に、「順応」させるためならば、教育とは言えないのではないか。教育長はどのように考えるか。「ミスマッチ」や「早期離職」等の改善を推進するのであれば、全道に六人しかいない就職支援教員を、各高校一人の割合で配置することこそ、優先すべきではないか。どのように取り組むのか伺う。

柴田教育長 労働に関する教育などについて。高校生に、労働法に基づく権利および義務に関する基本的な事項を理解させるとともに、ハローワークの職員や企業の人事担当者、あるいは、卒業生による講話などを通して、雇用と労働をめぐる問題について、雇用の安定化と労働条件の改善やワーク・ライフ・バランスの視点などから考えさせることは、社会人・職業人としての自立を促す上で、大切なことであると考えている。

 このため、道教委では、こうした外部の方々の協力もいただきながら、生徒の主体的な進路選択能力の育成に向けた望ましい勤労観・職業観を育むキャリア教育の充実に努めるとともに、十四年度から、すべての教育局に進路相談員を配置し、生徒や学校の進路相談に対応しているほか、国の加配を活用して、求人企業の開拓などを行う就職支援教員を、道内の圏域に配慮しながら、研究指定校に配置してきており、今後は、これらの進路指導にかかわる職員の連携を密にし、情報を共有しながら、高校の就職指導の充実に取り組んでいく考えである。

菊地議員 子どもの学ぶ権利を保障するための教育環境の整備こそが、教育行政の仕事である。雨漏りするような校舎を放置してはならない。子どもたちが安心して過ごせるよう、現状を把握し、施設整備を加速することを大綱に盛り込むべきである。教育長に伺う。

柴田教育長 学校施設の整備について。道教委では、教育活動の基盤となる学校での安全・安心な教育環境を確保するため、学校からの改修要望などを踏まえ、計画的に建物の耐久性向上を図る抜本的な対策を講じるとともに、随時の改修を行ってきている。

 今後とも、担当職員による現地調査を行うなど、学校の実情を的確に把握しながら、教育活動や児童生徒の安全面に影響を及ぼすことのないよう、学校施設の整備・充実に取り組んでいく。

菊地議員 全国で十県が義務教育全過程での三十五人学級の推進に踏み出しており、教師が一人ひとりの子どもと向き合うためにも、少人数学級の推進と教員の充足・加配を大綱に組み入れるべきと考えるが、見解を伺う。

窪田総合政策部長 総合教育大綱に関し、少人数学級について。道教委においては、子どもたちへのきめ細かな指導を充実させるため、小学校と中学校の一部の学年において、国の加配措置を活用した少人数学級の実施に取り組んでいると承知している。

 道としては、今後とも、道教委と連携しながら、少人数学級の拡大など、教職員定数の充実について、国に対して働きかけていきたいと考えている。

柴田教育長 少人数学級について。本道では、これまでも、子どもたち一人ひとりに応じた指導の充実のため、国の加配を活用しながら、小学校第一学年、小学校第二学年および中学校第一学年で少人数学級を実施してきている。

 道教委としては、少人数学級のほかの学年への拡大には、国の教職員定数の改善が必要であると考えており、今後とも、全国都道府県教育委員会連合会と連携し、国に対して、改善が行われるよう強く要望していく考えである。

菊地議員 子どもの意見の反映について。学習権の主役は子どもたち。日本政府が批准している子どもの権利条約にも、子どもの意思表明権が明記されているが、大綱に子どもの意見を反映させるべきではないか。どのような取組をするのか伺う。

窪田総合政策部長 大綱への意見の反映について。すべての子どもたちに、社会で自立して生き生きと活躍できる力や、互いを尊重し、相互に支え合う心を育んでいくためには、学校、家庭、地域が協働して子どもたちの学びを支えていくことが重要と認識している。

 大綱については、日ごろから子どもたちを見守り、育てている保護者も含め、広く道民から意見をいただくことができるよう、現在、パブリックコメントを行っており、寄せられた意見を参考にするとともに、道議会での議論などを踏まえ、策定していく考えである。

― 再質問 ―

菊地議員 総合教育大綱は、教育の大もとの方針を示すもの。大綱の目的に、きちんと人格の完成を書き込むべきと考えるが、再度、答弁を求める。

高橋知事 教育大綱について。教育基本法では、教育の目的として、人格の完成を目指すことがうたわれており、こうした法の趣旨を踏まえるとともに、本道における教育に関する考え方を分かりやすく示すものとして、大綱を策定していく考えである。

菊地議員 少人数学級について。山形県は、義務教育全学年で三十三人以下学級を実現している。不登校やいじめの出現率が明らかに低く、現場の先生も、「どの子が授業を理解しているか、どの子がつまずいているか分かる。小さなうなずきや目の輝きがつかめるようになった」と話している。

 教育部局と知事部局が連携し、国の予算の枠だけではなく、道独自に財政措置をして少人数学級を進めるべきと考える。答弁を求める。

高橋知事 少人数学級について。道教委においては、小学校と中学校の一部の学年で、国の加配措置を活用した少人数学級の実施に取り組んでいると承知しており、道としても、今後とも、道教委と連携しながら、教職員定数の充実について、国に対して働きかけていきたいと考えている。

柴田教育長 少人数学級について。道教委としては、少人数学級のほかの学年への拡大については、国の定数改善が必要であると考えており、今後とも、義務標準法の改正による少人数学級の実現について国に強く求めていく。

―再々質問―

菊地議員 国の定数改善が必要、国に強く求める、道教委、知事の答弁は変わらない。

 しかし、全国都道府県教育長協議会第四部会が各都道府県教委へのアンケートをもとにした学級編制および教職員定数の現状と課題という研究報告を出している。

 これをみると、二〇一〇年、二〇一一年ともに、回答した都道府県のうち約五七%が少人数学級の財源等について、国定数・加配に県単費を組み合わせて実施している。

 そして、少人数学級の効果については、児童生徒の学力が向上した、不登校やいじめなどの問題行動が減少したとの回答が九割を超えている。

 教育大綱の中に掲げられている確かな学力、健やかな体、豊かな心を育む教育や、いじめの問題等への取組達成のためにも、少人数学級の推進に、道としても独自の財源措置をすべきではないか。それこそが、知事および教育長の役割と責任ではないか、いかがか伺う。

高橋知事 少人数学級について。教職員定数の充実を図るためには、国の定数改善が必要であると考えており、道としても、今後とも、道教委と連携して適切に対応していく。

柴田教育長 少人数学級について。道教委としては、少人数学級のほかの学年への拡大には、国の定数改善が必要であると考えており、今後とも、全国都道府県教委連と連携し、義務標準法の改正による少人数学級の実現について、国に強く求めていく考えである。

◆道立高校配置計画について

菊地議員 道教委は適正配置を「錦の御旗」にして、公立高校の統廃合を進めている。地域からは、学校がなくなることについての大きな影響と、生徒の利便性の後退など、反対の声が続出している。高校がなくなり、人口減少に拍車がかかったことが、地方創生が必要になった背景の一つと言える。二〇一六年度から二〇一八年度に及ぶ配置計画が示され、小樽市では、工業高校と商業高校の統合による新設校設置の計画が示された。

 小樽市内の中学卒業生の推移からみても、合わせて二間口の削減は整合性がないとの声もある。「これ以上、どこまで縮小再編するつもりなのか」と、道教委に対する厳しい声も聞かれる。三年間を見通すことにしてから、すでに八年が経過している。地域の声を反映もせず、縮小再編まっしぐらではなく、地域に必要な教育の在り方をじっくり検討する段階に来ているのではないか。

柴田教育長 高校配置計画について。道教委では、中学校卒業者数が減少する中、「高校教育に関する指針」の考え方に基づき、教育水準を維持し、活力ある教育活動を展開する観点から、高校の配置を検討しているが、広域分散型の本道において、人口減少社会への対応や地方創生の観点から、地域の教育機能を確保することも重要な課題であると認識している。

 このため、庁内に検討組織を設置し、現行の指針の成果や課題などを検証するとともに、生徒や保護者への負担なども考慮しながら、特に、ほかの学校への通学が困難な地域にある小規模校の在り方や教育環境の充実に向けた検討を進め、年度内を目途に方向性を取りまとめる考えである。

菊地議員 二〇一八年には留萌管内と小樽市でそれぞれ職業高校が統合再編され、新設校が設置されることになっている。留萌での新設校は学科が明確になっているが、小樽市の新設校では検討中となっており、子どもたちも将来像が描けない、二〇一八年の開校に間に合うのかという不安の声も聞かれる。準備不足で拙速な再編は問題と考えるが、見解を伺う。

 また、小樽市の新設校の学科の在り方については、今後、どのように決めていくのか、併せて伺う。

柴田教育長 小樽市内の新設校について。小樽市においては、中学校卒業者数の大幅な減少が見込まれることや、市内の職業学科校が小規模化していることなどから、このたびの配置計画では、三十年度に小樽工業高校と小樽商業高校を再編し、新設校を設置することとしている。

 高校の再編に当たって、小樽市教委では、市民へのアンケート調査を行うなど、多くの方々の意見を伺いながら、小樽にふさわしい高校の在り方について検討を進め、ことし一月には、小樽市から「観光やものづくりなどの産業構造等を踏まえ、観光ビジネス、ものづくりや食などを学ぶことのできる、小樽にふさわしい魅力ある高校」の配置を求める要望をいただいた。

 道教委としては、こうした小樽市の要望や地域の実情等を踏まえるとともに、関係団体等の意見も伺いながら、新設校の学科について検討を進め、中学生の進路選択等に支障を来すことのないよう、来年の配置計画案で学科構成を示すことができるよう取り組んでいく。

― 再質問 ―

菊地議員 小樽市内の新設校について。商業高校、工業高校ともに、卒業生の就職希望者への評価は、地元企業はもとより道外の企業からも高く、学科の検討に当たっては、道教委は、小樽市の要望や実情を踏まえると言うが、先に述べたような両高校生の進路状況の分析とともに、生徒を送り出した教育現場の意見が反映される仕組みをつくるべきと考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 小樽市内の新設校の学科について。道教委としては、小樽市からいただいた要望や後志管内の学校や学科の配置状況、地域や学校の事情、さらには、これまでの両校の取組や再編に向けた準備状況などを踏まえるとともに、小樽市教委や経済関係団体等と意見交換をしながら、新設校の学科について検討を進めていく。

◆自衛隊による就職勧誘等

菊地議員 ある道立高校の三年生の保護者から、自衛隊募集事務所の人間による家庭訪問での就職勧誘があったと情報が寄せられた。その地域では、ほかにも複数の男子生徒宅に自衛隊が勧誘に入っているとのことであった。道教委は、こうした事実を把握しているのか。把握する必要があると考えるが、いかがか伺う。

柴田教育長 自衛官の募集にかかる家庭訪問について。道教委では、これまでも自衛官の募集については、新規学卒者の求人活動の秩序維持の観点から、民間事業者等と同様に行われるよう、自衛隊に要請してきた。

 自衛官募集にかかる家庭訪問については、一部の学校において、確認されているが、道教委としては、自衛隊法に基づく自衛官の募集活動においては、生徒や保護者から説明を求められた場合などにおいては、家庭訪問が行われることもあるものと承知している。

菊地議員 家庭訪問があった当該高校では、自衛隊募集事務所に対して、保護者から苦情があったことを告げ、家庭訪問は求人ルールに反すると抗議したとのことであった。道教委は、自衛隊北部方面本部、または、協力本部に対して、就職・募集に関する民間との公平性、家庭訪問について、どのような立場で臨み、どのような事項を要請しているか伺う。併せて、先の事例はルール違反と考えるが、認識を伺う。

柴田教育長 自衛隊に対する要請などについて。道教委では、自衛隊が毎年度開催する会議において、自衛官の募集に当たっては、所定の時期に学校を通じて、学校の協力のもとで行うこと、求人申込みの受理や選考開始の期日などを順守することの二点について、民間事業者等と同様に行われるよう、協力を要請してきている。

 道教委としては、自衛官の募集にかかる家庭訪問については、学校の協力のもとで、生徒や保護者から要望があった場合などに行われることもあるものと承知しているが、いずれにしても、新規学卒者の求人活動の秩序維持が図られるよう、自衛隊に対し、協力を求めていく考えである。

菊地議員 自衛隊によるリクルート活動に使われているのが、自衛隊募集の適齢者名簿である。市町村の住民基本台帳がもとになっている。

 ことし三月二十六日、国会で取り上げられ、本来、閲覧で対応しなければならない中学生の名簿について、札幌、旭川、函館、帯広の各自衛隊地方協力本部が名簿提出を求めていたことが明らかになった。政府は、こういうことが起こらないように周知徹底を図りたいと答えているが、道内の四地方協力本部において改善されたのか伺う。

窪田総合政策部長 自衛隊による就職勧誘等に関し、中学生を対象とした募集について。このたびの、陸上自衛隊高等工科学校の学生等の募集については、自衛隊法等に基づく自衛官等の募集ではなく、必要な資料の提出を市町村長に求めることができる範囲の対象外である。

 防衛省においては、今回の事案に関して、そうした趣旨について周知が図られており、陸上自衛隊北部方面総監部に確認したところ、四地方協力本部とも、二十六年十一月以降、改善されたとの回答を得ている。

菊地議員 三月二十六日の国会質問では、本人や保護者から、適齢者名簿から名前を削除してほしいと求めがあった場合、当該市町村が判断すると答えている。

 そうであれば、住民基本台帳の一部閲覧または提供によって適齢年齢者情報を提供している事実を、市町村が対象住民に知らせる必要があると考えるが、所見を伺う。

窪田総合政策部長 自衛官等の募集に関する市町村の対応について。住民基本台帳の閲覧については、国または地方公共団体の機関は、法令で定める事務の遂行のため、必要のある場合は市町村長に請求することができるとされており、市町村長は、こうした閲覧の状況に関しては、国等の機関の名称や請求事由等を公表することとされている。

 また、自衛官および自衛官候補生の募集に関する名簿等、資料の提供の要請があった場合には、それぞれの市町村長の判断において適切に対応していると考えている。

― 指 摘 ―

菊地議員 自衛隊による個別訪問について。今回は、本人、保護者からの要望がないにもかかわらず、家庭訪問が行われたケースである。

 答弁からも、ルール違反と言わざるを得ない。自宅に自衛隊の人が突然やって来て、名前も何も名乗らずに、「お宅に高校生の男の子がいるでしょ、自衛隊に入らないか」と勧誘されたということである。

 全道四つの地方協力本部が、民間事業者の就職ルールに準じて、新規学卒者の求人活動の秩序維持が守られるよう、今後、このようなことが繰り返されることがないよう、道から、陸上自衛隊北部方面本部にしっかりと申し入れるよう、強く指摘しておく。

 中学生の名簿の提出について。陸上自衛隊高等工科学校の学生等の募集名簿について、昨年十一月に改善された旨、答弁があったが、日本共産党道議団の調査では、本年度も、二自治体が提出していることが分かった。自衛隊法に照らして、適切でない方法である。道として、各市町村に対し、この旨を徹底すべきと指摘しておく。

(道議会 2015-12-24付)

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 三定道議会一般質問(二十七年九月十八日開催)における中野秀敏議員(自民党・道民会議)、中司哲雄議員(自民党・道民会議)の質問、および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり...

(2016-01-21)  全て読む

3定道議会一般質問の質問・答弁概要(9月17日)

 三定道議会一般質問(二十七年九月十七日開催)における佐々木恵美子議員(民主党・道民連合)、村木中議員(自民党・道民会議)の質問、および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長の答弁概要はつぎのとおり...

(2016-01-15)  全て読む

道議会文教委員会(1月5日) 体力向上の効果確認 小学校体育専科教員配置で道教委

 道教委は、五日の道議会文教委員会で、小学校への体育専科教員配置が児童の体力向上につながったと報告した。山崎泉委員(北海道結志会)の質問に堀本厚健康・体育課長が答えた。  道教委では、小学...

(2016-01-07)  全て読む

児童生徒の体力向上に向け 日常的な運動量を調査 28年度に各管内でモデル校指定―道教委

 道教委は二十八年度、児童生徒の日常的な身体運動量の把握作業を進める考えを明らかにした。本道の児童生徒の体力向上に向けた取組の一環。児童生徒の運動に対する意識と、実際に運動に取り組む状況の関...

(2016-01-07)  全て読む

3定道議会一般質問の質問・答弁概要(9月15日)

 三定道議会一般質問(九月十五日開催)における中川浩利議員(民主党・道民連合)、白川祥二議員(北海道結志会)の質問、および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長、室城信之警察本部長の答弁の概要はつぎ...

(2015-12-22)  全て読む

3定道議会代表質問の質問・答弁概要(9月11日)

 三定道議会代表質問(九月十一日開催)における山崎泉議員(北海道結志会)、荒当聖吾議員(公明党)、宮川潤議員(日本共産党)の質問、および高橋はるみ知事、山谷吉宏副知事、柴田達夫教育長、室城信...

(2015-12-18)  全て読む

道議会予算特別委員会(12月7日) 年度内に事例集 部活動の外部指導者活用で道教委が方針

 道教委は、部活動指導の外部指導者活用について、優れた事例をまとめた事例集を年度内に取りまとめる方針を決めた。四定道議会予算特別委員会第二分科会(七日)で、柴田達夫教育長が赤根広介委員(北海...

(2015-12-14)  全て読む

道議会文教委員会(12月9日)―クリアファイル問題 政治的行為の制限を通知 服務規律確保へ道教委

 道議会文教委員会(九日)では、道教委のクリアファイル調査結果報告を受け、質疑が行われた。山本広海教育部長は「教室内でクリアファイルが生徒の目にふれたことが確認された」などの調査結果を踏まえ...

(2015-12-14)  全て読む

道議会予算特別委員会(12月7日) 設置の課題解消に向け検討 中学校夜間学級で教育長

 七日に開かれた四定道議会予算特別委員会第二分科会では、中学校夜間学級について質疑が行われた。柴田達夫教育長は、夜間学級設置の課題解消に向けた対応について検討を進める考えを表明した。太田憲之...

(2015-12-11)  全て読む