3定道議会一般質問の質問・答弁概要(9月18日)(道議会 2016-01-21付)
三定道議会一般質問(二十七年九月十八日開催)における中野秀敏議員(自民党・道民会議)、中司哲雄議員(自民党・道民会議)の質問、および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。
◆改正地公法への対応
中野議員 二十六年五月に改正された地方公務員法の施行日を定める政令が、今月初めに公布され、改正法は二十八年四月一日から施行されることとされている。
今回の法改正のポイントは、能力、実績に基づく人事管理の徹底と、退職管理の適正の確保であり、二十六年の第二回定例会におけるわが会派の同僚議員の質問に対し、知事からは、人事管理のより一層の徹底に取り組むとともに、退職管理に関する条例の制定などに向け検討を進めていくとの答弁があった。
また、教育長からも、知事部局と連携を図りながら学校職員の評価制度の充実に取り組んでいくとの答弁があり、改正地方公務員法への対応に向け、検討が進められているものと受け止めている。
改正法では、職員が職務を遂行するに当たって発揮した能力およびその業績を把握した上で行われる人事評価制度を導入し、任用、給与、分限、その他の人事管理の基礎とするとしている。
知事部局、教育庁では、現行、人事評価に加え、給料月額の昇給と勤勉手当にかかわる勤務実績評価などの制度をもっているが、法改正を受けて、現制度について、能力と実績を把握した上で行われる勤務成績の評価として整備し、人事管理のより一層の徹底を図っていかなければならないと考えている。
知事部局、教育庁の職員、および学校職員にかかわる人事管理について、どのような検討を行い、整備をしていこうとしているのか伺う。
高橋知事 地方公務員法の改正への対応について。退職管理については、昨年度来、現職職員への働きかけの禁止や、これに対する罰則など、改正法の規制について退職予定者に周知してきており、現在、各任命権者間で調整を図りながら、こうした新たな退職管理制度の導入に向け、条例の制定などを含めた準備を進めている。
また、新たな人事評価制度についても、二十七十月からの評価の試行に向けて、準備を進めており、退職管理と併せ、改正地方公務員法の二十八年四月一日の施行日に向けて、来年度から円滑な制度運営ができるよう取り組んでいく考えである。
柴田教育長 地方公務員法の改正への対応に関し、人事管理について。これまで道教委では、事務局職員については十年度から、学校職員については二十年度から段階的に人事評価制度を導入し、順次、勤務実績の勤勉手当への反映と、勤務実績に基づく査定昇給を実施するなど、能力および実績に基づく人事管理の取組に努めてきた。
今後は、このたびの地方公務員法の改正に伴い、職制上の段階に応じて求められる能力を定めた「標準職務遂行能力」を策定するとともに、評価基準の明示や評価結果の開示などによって、客観性等を確保した人事評価を実施し、その結果を任用、給与、分限等に活用する準備を進めている。
道教委としては、知事部局と連携を図りながら、資質能力の向上に加え、こうした能力および実績に基づく人事管理を一層徹底するとともに、組織全体の士気の高揚や公務能率の向上を図っていく考えである。
中野議員 退職管理に関して、改正法では、国家公務員法の取扱いを踏まえて、元職員による現職員への働きかけの禁止や罰則など新たな規制が設けられるとともに、適正な退職管理を確保するために必要な措置を講ずることが求められている。
退職管理に関する条例の制定など、退職管理の適正の確保に向け、どのように取り組んでいく考えなのか伺う。
また、改正地公法が二十八年四月から施行されることを踏まえれば、能力と実績に基づく人事管理や退職管理の適正の確保などへの対応は本年度内に行う必要があると考えるが、どのように進めていく考えなのか、併せて伺う。
柴田教育長 退職管理などへの対応について。このたびの地方公務員法の改正に伴い、道教委事務局職員および道立学校職員について、営利企業等に再就職した者が、離職前の職務に関して、現職職員に働きかけることの禁止や、これらの行為に対する罰則などが規定されており、現在、知事部局と連携を図りながら、新たな退職管理制度の導入に向けた準備を進めている。
また、新たな人事評価制度についても、学校職員においては、抽出によるモデル的な実施に向けて準備を進めており、退職管理と併せ、改正地方公務員法の二十八年四月一日の施行日に向けて、新年度から円滑な制度運営ができるよう取り組んでいく考えである。
◆市町村教委の活動について
中野議員 「地方教育行政の組織および運営に関する法律」が改正され、本年度から、自治体の首長も関与する、新しい教育委員会制度となった。
このたびの改正は、教育の政治的中立性や継続性・安定性を確保しつつ、地方教育行政における責任体制の明確化、迅速な危機管理体制の構築、首長との連携強化等を目的としたものと承知している。
文部科学省では、全国の都道府県、指定都市および市町村教委を対象に、「教育委員会の現状に関する調査」を行っていると承知しているが、二十六年度の調査結果からは、道内の市町村教委の在り方について、改善すべき点が多々あると指摘せざるを得ない。
例えば、委員会の議事録について。簡単なものしか作成していないところが三分の一近い五十六市町村、議事録を公開していないところは三分の二を超える百十九市町村にのぼるという。
また、所管の学校を訪問した回数も、多いところでは六十回以上に対し、少ないところはわずか一回に過ぎない。
さらに、学校を訪問して、教職員との意見交換は一度も行っていないというところは、三十八市町村となっている。
道の教育委員は、道立学校ばかりでなく市町村立学校への訪問も行っており、教職員との意見交換も六割近くの学校で行っているという。
このたびの教育委員会制度改革は、大津市のいじめ問題が発端となり、教育委員会が十分に機能していないという反省に立ったものである。
いじめ問題をはじめ、学力や体力の向上対策など学校、家庭、地域が一体となって取り組まなければならない課題が山積している中、教育委員会はその中心となり、積極的に取り組まなければならない。
市町村の教育委員は、そこの住民であり、折をみて学校を訪れ、子どもたちの様子や施設設備の状況を自らの目で確かめ、教職員と言葉を交わすことによって、感じ取るものがあるはずである。
今回の調査結果をどのように受け止めているのか、見解を伺う。
柴田教育長 教育委員会活動に関する調査結果について。教育委員会が会議の議事録を作成し、ホームページなどで公表することや、教育委員が学校をはじめ所管する施設を訪問し、教職員等と意見交換することは、会議の透明化を図るとともに、地域の実情を踏まえた施策を展開する上で重要なものと考えている。
このたびの教育委員会の活動に関する文科省の調査は、地方教育行政法の改正前の二十五年度の状況を対象としたものではあるが、道内市町村における議事録の公表や、学校訪問における意見交換が全国に比べ進んでいないことは、残念なことと受け止めている。
道教委としては、迅速な危機管理体制の構築、市町村長との連携強化など、新しい教育委員会制度の趣旨について、昨年度、道内各地で説明会を開催してきたが、学力・体力の向上やいじめの解消など、学校、家庭、地域が一体となって取り組まなければならない施策の推進に向け、市町村教委の積極的な活動が展開されるよう、今後も、教育委員会や関係団体との会議や研修会などを通じて、指導・助言に努めていく。
◆北海道を担う人材の育成
中司議員 今後、新総合計画や道創生総合戦略を実現していくことで、本道の自立、本当は独立であるが、図っていくに当たっては、それを担う人材の育成が最も重要であることは言うまでもない。
しかし、本道の子どもたちの学力のレベルや、実業教育の場である職業科に対する受験生側の評価の低下などをみると、人材育成のスタート時点での大事なところが欠けているのではないかと思う。
最近では、義務教育の段階で、職業意識をもたせるような時間を設け、様々なところへ見学に行くなどの学習が行われていると承知しているが、その子どもたちの親にもこうした情報が届くように工夫して、職業教育を含むキャリア教育の活性化を図っていくべきと考えるが、見解を伺う。
柴田教育長 キャリア教育について。本道の児童生徒が、時代の変化に柔軟に対応しながら社会人・職業人として自立していくことができるよう、発達の段階に応じて、望ましい勤労観や職業観等を育む職業教育も含めたキャリア教育を充実させることが大切であり、その推進に当たっては、学校が家庭や地域と積極的にかかわり、連携・協力して進めることが重要であると認識している。
道内の小・中学校においては、保護者や地域の人たちも参加した職場体験報告会の実施や、子どもが自分の親の職場を訪問し、仕事の様子を見学する学習など保護者等とのかかわりを重視した取組もみられる。
道教委としては、今後、こうした取組が広く行われるよう、指導主事の学校訪問等において指導助言を行うとともに、家庭向け啓発資料『ほっとネット』等にキャリア教育の意義や学校の実践事例を掲載して発信するほか、本年度から新たに地域の産業などにかかわる教育資源を生かし、職業体験などを行う小・中・高が一貫したふるさとキャリア教育推進事業を実施することとしており、こうした取組の成果を普及するなどして、学校・家庭・地域が一体となったキャリア教育を推進していく考えである。
中司議員 人材育成にかかわって、新しい発想でものづくりに当たる人材は貴重だと思うが、日本人の特徴として言われるのは、決められた物事をきっちりとこなす、あるいは、細かい精密加工などは世界にも冠たるものをもっていながら、新しい発想で今までにないものをつくり出す能力は遅れをとっているということである。
国の基本方針で、ゆとり教育を打ち出したのも、こうした個性的な人材を育てる必要があるとの目的だったと承知しているが、なかなかその成果が現れず、学力が低下してきたという弊害が目立つようになったため、見直しがされているが、一方で、豊かな発想力をもつことは、今後の本道にとって重要なことだと思う。
そもそも、日本と欧米の教育の違いは、学んで習うという日本の農耕民族としての伝統教育と、個性を大事にし、自己主張を生き抜くための大事な要素としている狩猟民族の違いがあり、そうした欧米の人材の中から、新しい産業を担う人たちが出てきたと受け止めている。
今後の本道においても、学力の向上と、新しい発想のできる人材を育てるための教育方針策定が必要と考えるが、見解を伺う。
柴田教育長 今後の教育方針について。人口減少の加速化やグローバル化の進展、情報通信技術の発達など、社会が急激に変化する中で、今後、本道が持続的に発展していくためには、基礎的な知識や技能を身に付け、新しい知や価値を創造する主体的で豊かな発想力をもち、地域の活力ある未来を切り拓くことができる人材の育成が重要であると認識している。
このたび示された北海道総合教育大綱の素案においては、社会で活きる力の育成として確かな学力を育む教育の推進や本道の未来を拓くグローバル人材の育成が基本方針として示されているが、道教委としては、指摘の点も踏まえて、本道の教育施策の目指す姿や根本となる方針を定める教育大綱の策定を通じて、知事と十分に議論を深め、政策の方向を共有し、一致して教育行政を推進していく考えである。
(道議会 2016-01-21付)
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