3定道議会予算特別委の質問・答弁概要(9月29日)
(道議会 2016-01-28付)

 三定道議会予算特別委員会第二分科会(二十七年九月二十九日開催)における藤沢澄雄委員(自民党・道民会議)、小岩均委員(民主党・道民連合)の質問、および柴田達夫教育長、山本広海教育部長、杉本昭則学校教育監、秋山雅行総務政策局長、菅原行彦学校教育局指導担当局長、野﨑弘幸教職員課服務担当課長、赤間幸人高校教育課長、岸小夜子義務教育課長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆高校における主権者教育

藤沢委員 公選法の改正によって、来年の参議院選挙から選挙権が十八歳以上と変更になることで、高校生の一部が選挙権をもつことに関し、主権者教育の必要性について、これまで、様々な議論が行われているが、そもそも、この「主権者教育」とは、どのように定義付けているのか伺う。

赤間高校教育課長 主権者教育について。「主権者教育」という言葉について、現段階においては、文部科学省からは、定義は示されていないが、「社会に参加し、自ら考え、自ら判断する」という時代に即した主権者の姿を念頭に、常時啓発の在り方について検討を行った総務省の研究会報告によると、社会の構成員としての市民が備えるべき市民性を育成するために行われる教育の中心を成す、市民と政治のかかわりを「主権者教育」としている。

藤沢委員 欧米では、一九九〇年代から、シチズンシップ教育の必要性が論じられていると聞いている。このシチズンシップ教育と、主権者教育との違いについては、どのように考えているのか。

赤間高校教育課長 シチズンシップ教育について。ただ今申し上げた研究会の報告書では、「シチズンシップ教育」とは、社会の構成員としての市民が備えるべき市民性を育成するために行われる教育であり、集団への所属意識、権利の享受や責任・義務の履行、公的な事柄への関心や関与などを開発し、社会参加に必要な知識、技能、価値観を習得させる教育としており、その中心を成すのが、市民と政治とのかかわりである「主権者教育」であるとしている。

藤沢委員 これまでも、民主主義の基本として、政治参画の必要性を教育してきたと思う。公選法の改正によって一部の生徒に選挙権が付与されるということになるが、学校現場では、従来とは違った、より具体的な投票や政治参画に関する教育が必要ではないかと考える。文科省の考えも含めて、その違いについて、できるだけ具体的な内容を伺う。

赤間高校教育課長 政治参加に関する指導について。高校においては、これまで、「公民科」の科目「現代社会」や「政治・経済」において、わが国の民主政治や議会の仕組み、政治参加の重要性、主権者としての政治参加の在り方について学習してきている。

 二十七年六月十九日、「公職選挙法等の一部を改正する法律」が公布されたが、これに先立ち、二十六年十一月、文部科学大臣から初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について諮問がなされ、その中で、公職選挙法の改正が検討されるということを踏まえ、新たな科目等の在り方についての検討を求めており、現在、中央教育審議会において、次期学習指導要領の改訂に向けて、主体的な社会参画に必要な力を実践的に育む「公民科」の新科目、仮称であるが「公共」の設置の検討を進め、その内容として、例えば、模擬投票などの実践的な学習活動を通して、公共的な事柄に自ら参画しようとする意欲や態度、様々な課題について、より良い課題解決の在り方を協働的に考察し、公正に判断、合意形成する力などの育成を目指している。

― 要 望 ―

藤沢委員 主体的に自ら政治に参画するという意識を付けさせるのは、素晴らしいことと思うし、昨今の低投票率を考えたとき、学校現場での政治参画を進める教育が重要になってくると思うので、よろしくお願いする。

藤沢委員 報道によると、文科省は、これまで禁止されていた高校生の政治活動を、選挙権付与とともに緩和すると聞いているが、具体的な内容について伺う。

赤間高校教育課長 高校における政治的活動について。現在、国においては、生徒の政治的活動の規制などを示した昭和四十四年の通達「高校における政治的教養と政治的活動について」の見直しについて検討を進めていると承知しており、九月十五日の記者会見において、文部科学大臣から、高校生の政治的活動について、選挙権をもつにふさわしい政治的行動については緩和をすること、一方で、十八歳になっている生徒と、なっていない生徒がいることによって、学校現場に混乱を与えないことなどを考えていく必要があり、昭和四十四年の文部科学省通達をどのように見直すか検討していきたい旨の発言があったものと承知している。

藤沢委員 主権者教育など政治を扱う教育に関しては、例えば、新聞などでは、「過度な政治の介入が心配され、学校現場で教師が萎縮しないか」という旨の意見がみられる。

 しかし、主権者教育では、広く様々な意見や見方があることを紹介し、自ら考えることを学ばせるべきなのだから、教師がその基本を忘れずに堂々と授業を行い、それを検証可能なものにして、見直しや修正が図られる形にするべきではないかと考えるが、見解を伺う。

菅原学校教育局指導担当局長 政治に関する教育について。高校において、政治に関する事項を取扱う際には、学習指導要領等に基づき、高校生が政治について主体的に考察することによって、社会についての広く深い理解力と健全な批判力などを養い、政治的教養を高めることが重要であると考えている。

 このため、道教委としては、今後、国が作成する指導資料等の内容を参考に、道内の各高校向けの指導資料を作成・配布するとともに、「教育課程研究協議会」等を通じて、各学校に対し、政治参加の重要性や選挙の意義についての理解を深めさせる指導の充実を図るよう、指導助言を行っていく。

◆教育の中立性について

藤沢委員 当然のことであるが、教育現場では、政治的な中立は絶対条件であると考える。

 しかし、その中立を求める考えに対しても、一部には、現場が萎縮するとの意見もある。私は、中立を求める意見は必要であり、教師は、自らの考えに自信をもって、堂々と授業を行えば良いのであって、何にも萎縮する必要はないと考える。この中立性について、あらためて、道教委の考えを伺う。

杉本学校教育監 学校における指導について。教育基本法には、「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」、また、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、または反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」と示されており、学校においては、これらの規定に基づいて、指導を適切に行うことが必要である。

 道教委としては、学校で、政治に関する事項を扱う際には、こうした規定に反しないよう指導を適切に行うとともに、教科等の指導を通じて、生徒の政治的教養を高めることが、現代社会の基本的な問題に対する判断力の基礎を培い、人間としての在り方生き方について考える力を培うことになるという意義を十分踏まえて指導することが、重要と考えている。

― 再質問 ―

藤沢委員 現場の先生によっては、考え方、やり方、表現力も違うから、それに対してとやかく言うのではなく、授業したあとに検証することが必要と思うが、その点に対して、もう一度、見解を伺う。

杉本学校教育監 授業の評価・改善などについて。ただいま申し上げたように、学校においては、教育基本法の規定に基いて、指導を適切に行うことが必要である。

 各学校においては、このことを踏まえて、学習指導要領に基づき、校長の権限と責任のもとで、教育課程を編成・実施するとともに、指導計画の作成や授業の実施について、不断の評価・改善に努めることとしている。

 道教委としては、今後とも、各学校において、こうした取組が適切に行われるよう指導していく考えである。

藤沢委員 教職員組合の大会議案書をみると、明らかに政治的に偏った主張が見られるのは事実だと思う。だからこそ、中立性に関して大変危惧をしているが、道教委は、どのような方法でその中立性を担保する考えなのかを伺う。

秋山総務政策局長 教育公務員の政治的中立性について。教育公務員は、教育基本法に定める教育の政治的中立性の原則に基づき、特定の政党の支持、または反対のために政治的活動をすることが禁止されており、併せて、教育公務員特例法によって適用となる、国家公務員法およびこれに基づく人事院規則によって、特定の政治的目的を有する政治的行為に一定の制限がなされている。

 道教委としては、採用時に配布する服務ハンドブックや、初任段階研修、十年経験者研修などの各種研修会や通知等によって、政治的中立性をはじめとした服務規律について指導してきており、引き続き、様々な機会を通じ、指導を徹底していく。

 なお、仮に、法令等に違反する行為があった場合には、厳正に対処していく考えである。

藤沢委員 かつて、議会議論で、道内高校で集団的自衛権をテーマとして弁護士との対話形式の出前授業が行われた。政治的中立を疑わせる内容があったと議論になったことを記憶している。そのときは、道教委として、どのような見解で、どのような対応をとったのか説明を求める。

赤間高校教育課長 外部人材を活用した出前授業について。昨年度、道立高校で実施した、集団的自衛権をテーマとする出前授業にかかわり、道教委としては、こうしたテーマを取扱う際には、的確な資料を用いながら、現代の社会的事象を多面的・多角的に考察することを通して、客観的かつ公正な見方や考え方を育成する指導を適切に行うことが重要であることから、当該校に対し、適切に行うよう指導するとともに、すべての公立高校に対して、校長会議や教頭会議等の機会を通じて指導したほか、学校における外部人材の活用は、教育課程の編成・実施に関する事項であり、学級担任や教科担任等の判断のみに委ねることなく、校長の権限と責任のもとで行うことなどについて通知し、各学校において、政治的中立性の確保に留意した学習指導が展開されるよう指導した。

― 指 摘 ―

藤沢委員 当該教師のフェイスブックのコメントを見つけた。この議会議論を受けて、こんなことを言っている。

 授業における弁護士の説明も、あくまでも集団的自衛権の一般的な解釈について述べたものであり、個人的な考えや一方的な主義主張からの説明であるとは全く言えないもの。したがって、今回の質問において、出前授業における弁護士の説明が生徒に誤解を与えかねない一方的な説明であるという指摘は、全くの的外れのものであり、それにもかかわらず、道教委の教育長がこのような質問に対して、すべての道立高校を対象に、客観的な見方を形成する指導が行われるようにすると述べているのは、非常に大きな問題であるように思う。

 ―というもの。本当に指導が行き届いていたのか、疑わざるを得ないと思っている。

 この教師は、いろいろなところで発信しており、学校現場だけではない。とすると、管理職も、事前にチェックをするべきだったのではないか、指導体制、管理体制は、これからも注意するべきだと指摘する。

藤沢委員 二十七年八月、大阪府堺市の市立小学校で廊下や教室に「アベ政治を許さない」という、よくデモで使われているのと同じものをコピーして、ビラとして、校内に張っていた。それを堺市の市議会で取り上げたところ、教育次長が謝罪し撤去させたと報道があった。北海道で同様のことがないかと、心配したが、道教委として、把握しているものがあるか。

野﨑教職員課服務担当課長 学校内の掲示物について。これまでのところ、道立学校および市町村教委から、指摘のようなビラが学校内で掲示されていたとの情報は寄せられていない。

― 再質問 ―

藤沢委員 私のところに、道内の現役教師から、この堺市で使われた印刷物と同じものと、クリアファイルに印刷されたものが送られてきた。

 そして、これが、組合所属の教師ばかりではなく、一般の教師の机にまで置かれていたという情報がもたらされた。先日、道教委にこの事実を伝えた。道教委は、そのことに対して、確認などを行ったかどうか伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 クリアファイルに関する調査について。九月一日から七日にかけて、各教育局を通じ、全道立高校に対し、聴き取り調査を行った。

 その結果、石狩、渡島、上川、オホーツク、釧路の五管内の五校において、指摘のクリアファイルが机上に置かれていたことを確認した。

藤沢委員 情報を寄せた教師が、私に文書を書いてきているが、その学校現場での会話を紹介させてもらう。

 きょう、学校に行ったらびっくり。私の机の上に、こんなのがあった。そして、高教組の組合員のデスクに置いてあった。「これは何か」と聞くと、組合員である教師が「普段使いで、クリアファイルを使ってアピールしてくれ」と。その中をみると、A3判の紙に、「アベ政治を許さない」という大きな紙があった。組合員の先生は「これは、教室に飾ってくれということだった」「これをわざわざつくって、各学校の組合員に郵送している」。そんなことのために、私たちの組合費が使われているかと思うと―という会話があったと、私のところに寄せられた。

 道教委は、五校であったということだが、どのような指導をしてきたのか伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 道立高校に対する指導について。指摘のクリアファイルの取扱いが禁止されている政治的行為に該当するかなどについて、顧問弁護士に確認した上で、道立学校および市町村教委に対し、指導助言することとしていたところであり、聴き取り調査の段階では、事実確認にとどめていた。

 今後、当該五校を含め、速やかに指導助言していく。

藤沢委員 最初に調べたのが九月一日から七日。きょうは九月二十九日。今のような事実で、指導しなくてはならないというのであれば、なぜもっと早くやらなかったのか。スピード感のなさは、本当に腹立たしい。

 私は、あえて質問する気はなかった。いちいち質問するかどうかは別としても、現場できちんと対応してくれれば、それで済んだと思っていたが、道教委として、事なかれ主義なのかと思うくらいの対応だったので、きちんと議論して、道教委に対して、強い指導を発揮してほしいということで、今回、質問した。

 本当にこの五校だけだったのか。私に情報を寄せた学校も、この五校であるか分からないし、おそらく、ほとんどの学校で行われていたと感じる。再度、すべての学校において、調査するべきと思うが、道教委の考えを伺う。

秋山総務政策局長 今後の調査について。先に行った聴き取り調査を踏まえ、今後、あらためて全道立学校および市町村教委に対し、書面による調査を行っていく。

藤沢委員 道教委として、あらためて行う調査の結果を踏まえて、政治的中立性の確保について指導を行うとともに、厳正に対処すべきではないかと思うが、見解を伺う。

山本教育部長 クリアファイルの配布などについて。政治的行為の制限を具体的に規定している人事院規則一四―七の第六項第一三号においては、「政治的目的を有する署名または無署名の文書、図画、音盤または形象を発行し、回覧に供し、掲示し、もしくは配布し、または多数の人に朗読し、もしくは聴取させ、あるいは、これらの用に供するために著作し、または編集すること」を、禁止している政治的行為としており、指摘のようなクリアファイルを配布する行為は、これに該当するおそれがあると考えている。

 また、配布されたクリアファイルを机上に置く行為については、直ちに人事院規則に違反するとは言えないが、児童生徒あるいは保護者の目にふれ、誤解されるおそれがあるものと考えている。

 こうしたことから、道教委としては、今後、道立学校および市町村教委に対し、法令に違反する行為はもとより、道民の誤解を招くおそれがある行為について、指摘の事例を含め具体的に示し、指導助言していく考えである。

 また、こうした中で、法令等に違反する行為があった場合には、厳正に対処していく。

藤沢委員 クリアファイルを携行して、何となく見えてしまうことがあるわけだから、そこがボーダーラインであり、姑息(こそく)な手段でアピールしようと考えていると想像する。

 だからこそ、今、この場で、はっきりと誤解を招かないような指導をするということであるから、そこは徹底していただきたい。

 教育長に、このような状況に対して、道教委の考え、教育長の思いを伺う。

柴田教育長 政治的中立性などについて。学校教育監から答弁申し上げたが、教育基本法では、「政治的教養の尊重」とともに、「学校の政治的活動の禁止」が定められている。

 私としては、子どもたちが政治的教養を高めることが、現代社会の基本的な問題に対する判断力の基礎を培い、人間としての生き方などについての自覚を育てることになるということを十分踏まえることはもちろんであるが、その一方で、教員は、子どもたちに対して大きな影響力があることから、教育の政治的中立性を確保し、学校教育に対する道民の信頼を損なうことがあってはならないということを強く自覚して、教育活動を行うことが重要であると考えている。

 今後も、こうした考えのもと、教育活動が適切に行われるよう、学校における指導方法や服務規律の徹底について、研修会はもとより、指導主事の学校訪問など様々な機会を通じて、指導助言に努めていきたいと考えている。

― 要 望 ―

藤沢委員 学校と社会との信頼関係がなければ、教育は成り立たないと思っている。姑息な手段で、公務員としてあるまじき対応をしていることは、本当に腹立たしい限りである。ぜひとも、遠慮なく、強く指導していただきたい。

◆子どもの学力について

小岩委員 道教委は二十七年八月二十五日、文科省による全国学力・学習状況調査の全道の結果状況を公表した。その中身、在り方について、いろいろな議論があるが、そもそも、この調査について、道教委は、二十三年六月に当時の結果を受けて、「二十六年度の全国調査までに全国平均以上」を目標としたことから、その達成があたかも市町村教委や学校、地域の学習目標であるかのように取り上げられてきている。

 これを踏まえた上で、北海道型の学力観を一つ設定しながら伺う。

 学力向上については、道内のどの学校においても、日々取り組まれているだろうと思うし、道教委としても、学力を向上させることは、大きな本来業務であろうと思う。

 しかし、国が実施している学力・学習状況調査は、都道府県および地域単位での点数を競い、序列をつくり出しているのではないか、地域での教育状況やその課題の把握をないがしろにしてしまい、学校や家庭での教育の指導やその在り方の改善にはつながっていないのではないかととらえている。

 子どもたちの学力向上を図るためには、道教委の言う「全国平均以上」という目標ではなく、どんな学力が子どもたち、学校、地域に必要であるかということを、また、それを目指して、その指導に当たるべく学校、教職員、関係者に示していくべきではないか。道教委として、どのような「学力観」をもっているのか伺う。

岸義務教育課長 子どもの学力について。学校教育においては、確かな学力や豊かな心、健やかな体などの生きる力の育成に向け、知・徳・体のバランスのとれた教育活動を展開することが大切であり、子どもたちには、学校教育法に規定された基礎的・基本的な知識・技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等を育み、主体的に学習に取り組む態度を養うことが重要であると考えている。

 道教委では、こうした社会で自立するために必要な学力を子ども一人ひとりに確実に身に付けさせる取組を確実に行えば、結果として、平均正答率が全国を上回るという趣旨で「全国平均以上」の目標を設定し、学力向上の取組を進めている。

― 再質問 ―

小岩委員 答弁にあった道教委としての見解に、大きな異論はない。知・徳・体のバランス、基礎的・基本的な知識・技能、主体的に学習に取り組む態度を多くの子どもたちに共通して求めることが、学力の向上につながるというところまでは賛同できるが、その学力を身に付ける取組を着実にすれば、ここからが問題であるが、学力調査の「平均正答率が全国を上回る」としている。その結果、「全国平均以上」を目標としているという考え方はなじめないし、賛同できるものではない。

 平均点は、当然ながら、毎年、そう大きくはないが変動している。そして、北海道以上に他府県の正答率が上がった場合、北海道は前年度と同じような正答率であっても、全体が上がれば平均点は当然上がるし、そうなれば、道内の学校や生徒は頑張っていないということにもつながり、目標に達したことだけが取りざたされて、学習効果の評価も検証もされずに、正答率だけで市町村教委や地域が序列化されてしまうのではないか。

 道教委が掲げる「学力」を育むためにも、この「全国平均以上」という目標を見直すべきであり、新たな指針、基準づくりに取り組むべきと思うが、あらためて見解を伺う。

岸義務教育課長 学力に関する目標について。道教委では、教育の機会均等という義務教育の趣旨を踏まえ、「全国平均」という目標を掲げているが、これまでも申し上げているように、平均点を上げることそのものが目的ではなく、子ども一人ひとりに基礎・基本を確実に身に付けさせる取組が大事なのであり、そのことを確実に行えば、結果として平均正答率が全国を上回るという趣旨で設定したものである。

 道教委では、引き続き、この目標の実現に向けて、本道の子どもたちに、社会で自立するために必要な学力を身に付ける取組を進めていく。

― 再々質問 ―

小岩委員 「結果として、平均正答率が全国平均を上回るという趣旨で設定した」ということであるが、私が冒頭の質問で申し上げた、二十三年当時の答弁と同じ趣旨ということで理解して良いか、確認したい。

 その上で、今の答弁を踏まえて、「平均正答率が全国平均以上」というのは直接の目標ではないということで良いのかどうか、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 学力に関する目標について。課長から答弁したが、道教委としては、「機会均等を旨とする義務教育の趣旨を踏まえれば、生まれ育ったところによって学力に大きな差があることは本来あってはならないこと」であり、また、「正答率が低いということは、習得することが望ましい学習内容が他県の子どもたちと比べて身に付いていないということ」でもあり、そして、「基礎・基本の定着を図る取組を着実に行えば、結果として正答率が全国平均を上回る」、こうした考えに基づいて、二十三年六月の教育行政執行方針において、目標を明らかにしたものである。

 道教委としては、先ほど申し上げたが、子ども一人ひとりに基礎・基本を確実に身に付けさせる取組が大切であると考えており、このことを確実に行えば、結果として平均正答率が全国を上回るという趣旨で設定しているものである。

― 意 見 ―

小岩委員 行政は継続性も大事。しかし、一方で、教育長も替わった。人が替わることによって、あるいは、時代が変わることによって、子どもたちの置かれている状況も変わるので、全国一律で行われている調査に一喜一憂することなく、地域やそれを取り巻く地域の住民がしっかりと学校、あるいは、親を見守りながら、子どもたちがたくましく育つことをぜひとも願っている。

小岩委員 「学力観」に基づく指導方法について。北海道型学力観に基づく学力向上を図るため、PISAという、一つの指標の学力観で示された知識や技能を、実生活の様々な場面でどれだけ活用できるかという力を養うことが必要であると言われている。そのための実践的な能力を育む教育課程や指導方法の開発と研修を図るべきと考えるが、道教委の見解を伺う。

岸義務教育課長 指導方法などについて。全国学力・学習状況調査の問題は、学習指導要領の中から、A問題では、身に付けておかなければ、あとの学習内容に影響を及ぼす内容や、実生活において不可欠であり、常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能が、B問題では、知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や、様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力などにかかわる内容が出題されている。

 国では、これらの問題は、授業の改善を図る参考となるよう、言語活動などを取り入れた具体的な授業場面も想定して作成しており、道教委では、こうした出題の趣旨や問題の構成などについて、各教科の指導方法や教育課程の改善に関する研修会や、すべての学校の教員を対象とした学力向上推進研修会などで丁寧に説明し、指導方法の改善に向けた指導助言に努めている。

小岩委員 小規模校教育の研究について。人口が集積する大規模校と児童生徒が減少している小規模校では、自ずと学校運営、あるいは、学習環境も違ってきている。中央の整った学校で開発された学習方法が小規模校にそのまま適用できるかというとそうではないし、教職員の人数、あるいは、人材配置、そして、学校そのものの施設設備も十分ではない。

 そこで、道教委としての小規模校教育に対する見解を伺い、併せて、急速に進んでいる道内の人口減少社会によって、「小規模校」が新たに出てくるが、こうしたところに対する教育への具体的対策について伺う。

杉本学校教育監 小規模校における学力向上の取組について。二十六年度までの全国学力・学習状況調査の結果では、小規模の学校の中には、十分に学力を高めることができず、全国平均以下となっている学校もある一方で、児童生徒一人ひとりに応じたきめ細かい指導を行いやすいなどの利点を生かし、継続して全国平均を大きく上回る学校もあり、一律に小規模校に課題があるとは言えない状況である。

 道教委では、今後とも、小規模校に対して、指導主事等による学校訪問等を通して、小規模校の優れた実践事例を示したり、同様の教育条件の中で成果を上げている学校を、研修視察校として市町村教委に情報提供するとともに、生まれ育った場所によって、学力に大きな差が生じることは、本来あってはならないという考えのもと、本道のすべての子どもたちに社会で自立するために必要な学力を確実に身に付けさせることができるよう、それぞれの学校の実態に応じて、子どもが安心して学べる環境づくりに努めていく考えである。

― 再質問 ―

小岩委員 小規模校の学力という質問に対して、答弁の最初に学力調査の結果をもってきて、小規模であっても学力が高いところもあるし、そうでないところもあるということ自体、大変残念でもあるし、どうして教育委員会はその呪縛から解けないのかと思う。

 小規模校の教育、学力について、全国平均を基準に評価し、その観点から小規模校であっても平均以上、以下ということで序列化し、序列視するということは、本当に残念でならない。

 今、本道では、少子化、人口減少によって、児童生徒が減りつつある市町村が大変多くなっている。学校の統廃合や遠距離通学といった物理的な問題に、市町村教委も対策に苦慮しながら、学校運営を円滑に進めようとしている中、その小規模校教育に対して、一律の目標を求める道教委の姿勢には、問題があるのではないかと思う。そこで、あらためて、小規模校教育に対する教育長の考え方を伺う。

柴田教育長 小規模校の教育について。道教委では、機会均等を旨とする義務教育の趣旨を踏まえれば、生まれ育ったところによって、学力に大きな差が生じることは、本来あってはならないことと考えており、学校の規模等にかかわらず、社会で自立するために必要な学力を、すべての子どもたちに確実に身に付けさせることが必要であると認識している。

 本道には、こうした小規模校が多いことを踏まえて、道教委では、これまでも、小規模校に対する学校訪問等で、同規模校の優れた実践事例を示すなどのほか、教育課程や学習指導に関する研修会で、少人数の学級の指導の在り方を取り上げるなどして、少人数の利点を生かしたきめ細やかな指導や、異学年集団における効果的な指導、さらには、他校や地域との連携の在り方などを指導助言してきており、今後とも、そうした取組を一層推進し、小規模校の教育の充実に取り組んでいきたいと考えている。

(道議会 2016-01-28付)

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