道議会文教委員会の質問・答弁概要(11月4日)
(道議会 2016-02-09付)

 道議会文教委員会(二十七年十一月四日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、川澄宗之介委員(民主党・道民連合)の質問、および柴田達夫教育長、梶浦仁学校教育局長、赤間幸人高校教育課長、岩渕隆義務教育課教育環境支援担当課長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆北海道総合教育大綱

加藤委員 教育大綱は、本道の教育、学術および文化の振興に関する総合的な施策について、その目標や施策の根本となる方針を定めたもの。今後は、大綱に記載された各分野における取組方針の実現に向けて具体的に施策を進めていくこととなる。

 そこで、今後の取組について、いくつか伺う。

 まず、コミュニティ・スクールについて。大綱では重点的な取組として、学校・家庭・地域の連携のもと、コミュニティ・スクールを全道に広めるなど、地域全体で子どもの学びを支援する取組を進めていくとあるが、コミュニティ・スクール指定については、全国的に進んでいないと聞いている。全国と本道のコミュニティ・スクールとして、特色ある取組があるのか伺う。また、学校種別による特徴があるのか、併せて伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 学校運営協議会を設置した、いわゆるコミュニティ・スクールについて。指定の状況については、二十七年四月一日現在、全国では、幼稚園九十五園、小学校一千五百六十四校、中学校七百七校、高校十三校、特別支援学校十校、合計二千三百八十九校が指定されており、二十六年四月と比較し、合わせて四百七十校増加している。

 本道では、十一月一日現在、幼稚園と特別支援学校の指定はないが、小学校二十七校、中学校十四校、高校二校、合わせて四十三校が指定されている。二十六年四月と比較し、合わせて三十七校増加している。

 コミュニティ・スクールの特色ある取組としては、小・中学校においては、地域住民との連携・協力による、地域の文化や産業、自然等を活用した教育活動や学校行事への支援などの取組がある。また、高校においては、地元の基幹産業と連携した酪農研修牧場での実習体験など、学校と地域が連携したキャリア教育の取組が行われている。

加藤委員 地域が学校を支える仕組みとしては、学校支援地域本部事業や学校評議員制度など、これまでもコミュニティ・スクールと非常に似ている制度がある。学校現場では、どのように活用するのがよいか、分かりづらい状況であると聞いている。

 各市町村の実態に応じて、適切な制度を活用することが望ましいと考えるが、道教委では、既存の類似制度とコミュニティ・スクールをどのようにすみ分けして導入していく考えか伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 制度の活用について。学校支援地域本部は、地域全体で学校を支援するボランティア体制であり、学校評議員制度は、校長の求めに応じて、学校運営に意見を述べる制度である。いずれも、学校と地域の協働関係・信頼関係の土台となる大切な取組である。

 そのため、保護者や地域住民が一定の権限をもって学校運営に参画をする、コミュニティ・スクールの導入の際には、これらの制度の機能を活用しながら、段階的に発展させることが重要であると考えている。

 道教委としては、市町村の実情に応じて地域が学校運営に参画する持続可能な仕組みを構築できるよう制度の説明や先進地域の情報提供をするなどして、コミュニティ・スクールの理解の促進に努めていく。

加藤委員 コミュニティ・スクールは、市町村教委が、学校運営協議会を置くことによって指定となるものであり、一つの学校に一つの学校運営協議会を設置することが規定されている。しかし、小規模の学校では、PTA役員や学校評議員など、地域の人材がすでに活用されており、コミュニティ・スクールにかかわる人材の確保が難しい現状がみられると聞いている。

 このような状況について、道教委ではどのように認識し、今後、どのように支援していくのか伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 学校運営協議会の人材の確保などについて。中央教育審議会の議論においても、小規模自治体等では、委員の確保が難しいという意見がある。国の手引きにおいて、学校評議員を学校運営協議会委員に任命し直すなど、すでに進められている学校支援の機能を活用して、コミュニティ・スクールを導入する事例も示されている。

 道教委としては、現在、PTA役員や学校行事等に積極的にかかわっていただいている方など、学校に協力的で、子どもたちとのかかわりに熱心な人材を継続的に確保する取組について、情報提供に努めてきている。

加藤委員 学校が、保護者や地域住民の意見を聞くとともに、学校、家庭、地域が同じ目線で子どもを育てることは非常に大切である。今後のコミュニティ・スクールの指定拡充は必要と考えるが、これまで質問してきた事項を整理し、各市町村教委が主体的にコミュニティ・スクールの導入を進めるために、道教委はどのようにしていくのか伺う。

梶浦学校教育局長 コミュニティ・スクールの拡充について。コミュニティ・スクールは、地域住民が学校と同じ目線で子どもの成長を支え、学校は地域の信頼を得て充実した教育活動を推進するなど、学校教育の充実はもとより、学校を核とした地域づくりについても有効な手立てであると認識している。

 このため、道教委としては、文部科学省職員および文科省が委嘱したコミュニティ・スクール推進員「CSマイスター」による、導入促進のための課題解決を図る協議会を開催するほか、すべての教育局において、制度の周知を図る説明会を開催し、教育関係者はもとより、多くの方々にコミュニティ・スクールについての理解を深めていただくなどして、導入の促進に努めていく考えである。

加藤委員 生活困窮世帯等の子どもたちへの教育支援について。二十七年十月、文科省から発表された就学援助に関する調査結果によると、本道における就学援助を受ける要保護、準要保護児童生徒数は、二十三年度から二十五年度まで二年連続で減少するとともに、全児童生徒数に占める割合、いわゆる就学援助率についても、二十五年度は二三・一%と、二十四年度の二三・六%から初めて減少したとのことである。

 二十五年八月から生活保護基準が見直しとなり、これに連動して準要保護の認定基準額を引き下げている市町村もあるが、就学援助率の減少は、生活保護基準の引き下げによって、これまで援助を受けていた子どもたちが対象から外れた結果ではないのか、援助を必要とする子どもたちに対し十分な支援が行われているのか懸念される。

 そこで、生活保護基準見直しに伴う市町村の就学援助の状況について伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 市町村の状況について。二十七年十月に公表された国の調査では、道内の三市において、生活保護基準額の引き下げに伴う対応を行わず、準要保護の認定にかかる所得限度額が引き下げられたことによって、対象外となる世帯が生じた。

 道教委としては、就学援助は、教育の機会均等の精神に基づき、すべての児童生徒が円滑に義務教育を受けることができるように配慮し実施すべきものであることを踏まえ、これらの市に対し、現在、個々の状況を詳細に把握するとともに、就学に支障を来さないよう、個別に働きかけており、今後においても、市町村教委が制度の趣旨を踏まえ、適切に対応するよう働きかけていく考えである。

加藤委員 「グローバル人材の育成」について。本道の国際競争力の向上に当たっては、国際共通語である英語を使ってコミュニケーションを図ることができる人材の育成が重要である。そのためにも、子どもたちの英語力向上に関する取組は重要であると考える。

 教育大綱においても、「学校教育において、子どもたちに対し、会話力や表現力など実践的な英語力を育成する」とあるが、実践的な英語力とはどのようなものなのか伺う。

赤間高校教育課長 実践的な英語力について。グローバル化の進展への対応には、わが国の歴史・文化等の教養を身に付けるとともに、思考力・判断力・表現力等を備え、情報や考えなどを積極的に発信し、英語などの外国語を用いて、コミュニケーションを図ることができる人材の育成が重要であると考えている。

 現行の学習指導要領の教科「外国語」においては、中学校・高校共通の目標として、「外国語を通じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図ること」が示されており、さらに、中学校では、「聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養うこと」、高校では、「情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養うこと」が示されている。

 道教委としては、これらのことを踏まえ、英語を用いて、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするなど、身近な暮らしの場面などで活用できる会話や表現する能力を、実践的な英語力ととらえている。

加藤委員 子どもたちに対し、会話力や表現力など実践的な英語力を育成するためには、実践的な英語を指導できる力を備えた教員を養成することが重要と考えるが、教員の養成に向けて、具体的にどのような取組を行っていくのか伺う。

赤間高校教育課長 教員の養成について。生徒に実践的な英語力を身に付けさせるため、道教委では、これまでも、教育課程研究協議会や授業実践セミナーにおいて、担当教員の教科指導力の向上に努めてきた。

 こうした取組に加え、昨年度からは、国が実施する生徒の総合的なコミュニケーション能力の育成などを目的とした研修に、道内の小・中・高校の教員を派遣し、この研修を修了した教員を道内の英語教育推進リーダーとして、「グローバル化に対応した英語教育指導力向上研修」を道内の各地域において実施している。

 道教委としては、今後とも、これら国の研修への教員派遣やリーダーを活用した研修の継続的・計画的な実施などを通して、生徒の実践的な英語力を育成できるよう、教員の資質・能力の向上に努めていく考えである。

加藤委員 今回、策定された北海道総合教育大綱に基づく施策の推進に、大きな役割を担う教育長の決意を伺う。

柴田教育長 教育大綱に基づく施策の推進について。このたびの教育大綱においては、地域全体での子どもたちの学びへの支援、また、社会で生きる力の育成、こういったものを重点的な取組にしていただくなど、総合教育会議での道教委の意見を踏まえていただくとともに、本道教育がこれまで積み重ねてきた取組などを基礎としながら、知事に策定していただいた。

 今後は、個別具体的なプロジェクトの実現を着実に進めるための、知事部局と道教委との連携チームの取組などを通して、知事とより一層の連携強化を図り、大綱に定められた「本道教育のめざす姿」の実現に向けて、しっかりと取り組んでいく。

◆コミュニティ・スクール

川澄委員 北海道総合教育大綱について、今回、コミュニティ・スクールに限って伺う。

 まず、コミュニティ・スクールを積極的に推進しようとしている理由について伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 コミュニティ・スクールの推進について。コミュニティ・スクールは、地域住民が学校運営に参画し、学校と地域が力を合わせて子どもの成長を支えることによって、「地域とともにある学校づくり」や地域コミュニティづくりを進める上で、有効な手立てであると認識している。社会全体で、子どもの学びを支援する取組の中心となるものと考えている。

 道教委としては、少子化が進む中、本道の未来を拓く人材を育成することができるよう、知事部局との連携を深め、全道的な導入促進に向けた取組を進めている。

川澄委員 文科省が進めているコミュニティ・スクールの在り方と、道が考えるコミュニティ・スクールとの違いがあれば、見解を伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 コミュニティ・スクールの在り方について。コミュニティ・スクールについては、学校や子どもがかかえる課題や家庭・地域社会がかかえる課題を地域ぐるみで解決し、子どもの健やかな成長と質の高い学校教育の実現を目的として、十六年に、「地方教育行政の組織および運営に関する法律」が改正された。保護者や地域住民等が学校運営に参画する、いわゆるコミュニティ・スクールとして指定することができるようになったためである。

 道教委としても、法律に基づくコミュニティ・スクールの導入に向け理解の促進に努めている。

川澄委員 コミュニティ・スクールの目的について。コミュニティ・スクールの導入は、地域創生が大きく取りざたされているが、あくまでも、子どもたちの育ちを支える観点で行うべきではないかと思っている。その見解を伺う。

 併せて、学力向上という狭義な形ではなく、育ちを進める中で、子どもたち全体の学力が上がる、または、地域との関係をつくっていくという形にするべきだと思っている。学力向上を目指すような、狭義なものであってはならないと考えているが、その点についても見解を伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 コミュニティ・スクールの取組について。コミュニティ・スクールは、地域住民が学校運営に参画し、学校と地域が力を合わせて子どもの成長を支えることによって、地域とともにある学校づくりのための有効な手立てであると認識している。

 このため、学校だけではなく、地域が教育の当事者としての意識をもって、学校運営に参画することによって、地域住民との連携・協力による、地域の文化や産業、自然等を活用した教育活動や、学校行事への支援などによって、子どもの学びが広がり、学校教育の充実が図られるとともに、地域の活性化なども期待されるものである。

― 指 摘 ―

川澄委員 今の答えのとおりだと、私も考えている。地域住民との連携を図っていくといった点について、今後も検討していただければと指摘しておく。

川澄委員 市町村における導入の状況について。すでに道内においても、指定されている地域、これから指定を受けようとする地域があると認識している。

 ただ、道内は、広域分散型であるし、一自治体に小中一校ずつという状況もある。小さな地域においては、すでに学芸会や運動会等で地域の方が参画している、授業等にも積極的にかかわっているという状況もある。

 それぞれの地域や自治体の意向をしっかりと尊重していくべきだと考えているが、見解を伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 導入について。本道においても、コミュニティ・スクール導入の検討に当たって、すでに地域との連携ができている、小規模自治体においては、人材確保が難しいという意見もある。

 道教委としては、市町村の実情に応じて、地域が学校運営に参画することができるよう、制度の説明などを通して、コミュニティ・スクールについての理解の促進に努めていく。

川澄委員 学校運営協議会の委員について。運営協議会委員の選定が、特に地方に行けば行くほど、地域のいわゆる有力者と呼ばれるような、中心になっている方が入らざるを得ない状況もある。こういった中、一部の方の意見に沿うような形で運営協議会が運営されてしまうことがないように、十分に気を付けていかなければならない。

 運営協議会が行われる上では、しっかりと選任方法の透明性を高めていくこと。学校には、地域とともに進んできた歴史やそれぞれのスタイルがあると思う。こういった、学校の自主性や専門性を担保したものにならなければと考えているが、教育長の見解を伺う

柴田教育長 学校運営協議会の在り方について。国においては、運営協議会の委員の人数や構成等については、それぞれの学校の実態等に応じて教育委員会が判断することが望ましいことから、法律においては定めず、各教育委員会の規則等で定めることとしている。

 こうした中で、地域の実情に応じた特色ある教育活動を展開するためにも、公立学校としての運営の公正性、公平性、中立性の確保に十分に留意しながら、委員構成のバランスなどにも配慮しつつ、幅広い分野から優れた人材が登用されることが望ましいものと考えている。

― 指 摘 ―

川澄委員 すでに、道内各地域では、地域との連携が進んでいると思う。コミュニティ・スクールの目的は、学校が地域にかかわっていく、また、地域が学校にかかわっていく、わが町の学校だという意識をもってもらうことが一番と思っている。

 それぞれの地域が自分たちの力を引き出していく、学校、子どもたちが、その能力をさらに引き出していくという関係でなければならないと思っている。その仲立ちになるのが、コミュニティ・スクールのコーディネーターであり、それぞれの役割だと考えている。

 道内には、様々な形態がある。一律にコミュニティ・スクールを導入するのは、非常に難しいと考えているので、コーディネーターの育成や、協議会の委員の選任、透明性の問題、また、学校の職員がどのような形でかかわっていくのかという問題もクリアしていかなければならないと思う。

 また、子どもたちがどう参画していくのか。学校のことなので、教職員や地域が決めていくのは当然だと思うが、学びの当事者である子どもたちの意見を吸い上げながら、より良い学校をつくっていく。そこに地域がかかわっていくという関係をつくることが求められていると思うので、そういった点もしっかりと検討していただきたい。

(道議会 2016-02-09付)

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