道議会文教委員会の質問・答弁概要(11月4日)
(道議会 2016-02-16付)

 道議会文教委員会(二十七年十一月四日開催)における川澄宗之介委員(民主党・道民連合)の質問、および山本広海教育部長、秋山雅行総務政策局長、桜井康仁教育政策課長、野﨑弘幸教職員課服務担当課長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆寄宿舎指導員の勤務について

川澄委員 教職員の勤務にかかわっては、いわゆる一般教職員の多忙化を解消する取組が、本年度も引き続き行われている。教職員の多忙化を含めて、勤務管理を適正に行うことは、非常に重要なこと。

 その一つとして、特別支援学校の寄宿舎指導員の勤務条件について伺う。

 宿日直勤務にかかわる通知について。二十七年二月に、特別支援学校寄宿舎指導員の宿直勤務にかかわる通知が、各道立特別支援学校に出されたと理解している。通知の内容がどのようなものであったのか伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 寄宿舎の宿日直勤務に関する通知について。この通知は、寄宿舎指導員の適切な勤務管理に努めるよう、二十七年二月に、関係の特別支援学校長に対して発出したもので、宿日直勤務を行うに当たっての留意事項として、宿日直勤務は、正規の勤務時間以外の時間に行う断続的な勤務であること、宿日直勤務の時間や勤務の内容については、労働基準監督署長の許可を受けなければならないこと、宿日直勤務の内容に変更が生じた場合は、あらためて労働基準監督署長の許可を受ける必要があることを示しているものである。

川澄委員 寄宿舎指導員の職務内容、宿直時間の業務内容について伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 寄宿舎指導員の職務内容などについて。寄宿舎指導員の職務は、学校教育法において、「寄宿舎における幼児、児童または生徒の日常生活上の世話および生活指導に従事すること」と規定されており、具体的な内容は、寄宿舎の清掃、児童生徒の健康状態の観察、食事指導や自学自習への援助などとなっている。

 また、宿直勤務は、道学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則で定める正規の勤務時間以外の時間において行う断続的な勤務であり、その内容は、校舎等の保全、外部との連絡、文書の収受、緊急または非常時に備えての待機、児童、生徒または幼児の生活指導などである。

川澄委員 今回、質問した理由の一つは、勤務と宿直があいまいになってきている状況があると、寄宿舎指導員から聞いたからである。

 今、多くの学校は、指導員の勤務時間が基本的に二十二時まで。断続的な勤務で、宿直があると理解している。運用としては、二十二時までが勤務であるにもかかわらず、宿直時間においても、実質勤務と同じ内容の職務に当たっている実態があると聞いている。認識について伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 宿直勤務について。校長は、寄宿舎指導員の宿直勤務の実施に当たって、宿直勤務の時間や勤務の内容について定め、労働基準監督署長の許可を受けなければならず、また、宿直勤務の命令は、道学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例等の規定によって、校長が行うこととされている。

 道教委としては、宿直勤務は、労働基準監督署長の許可を受け、校長の権限と責任において、適正な宿直勤務の命令が行われているものと認識している。

川澄委員 ある学校では、勤務時間が二十二時までと定まっているにもかかわらず、日課表をみると、就寝時間が二十三時となっている。二十二時に実質勤務時間は終了し、その後、宿直に入るはずであるが、その一時間が空白の時間というか、宿直でありながら、実質勤務になっている。

 そういうことを断続的に行っている状況があると伺っている。この点についての見解を伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 宿直勤務の時間について。正規職員の宿直勤務の時間に、労働基準監督署長の許可を受けた宿直業務以外の業務を行う必要がある場合は、臨時寄宿舎指導員が業務を行うなど、学校の実情に応じた対応となっているものと認識している。

川澄委員 実質は、正規の指導員が、そのまま勤務と同様の内容で、宿直時間に当たっている実態と私は聞いている。

 実際に宿直勤務の状況を把握するため、道教委が学校等に出向いて、寄宿舎指導員から状況を聞き取るなど、調査を行ったことがあるのか伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 寄宿舎指導員からの聞き取り等について。これまで、道教委職員が学校へ出向き、直接、寄宿舎指導員から宿直業務の状況を聞き取ってはいないが、宿直勤務の命令を行う校長が状況を把握するほか、教職員の勤務状況にかかる実地指導の場や、学校の管理職から照会事項が寄せられる機会などをとらえ、寄宿舎指導員の勤務状況を確認し、必要な指導助言を行っている。

川澄委員 二十七年二月に通知を出し、「労働基準法等の関係法令に基づいて、各学校の実情において実施している」として、「新年度に向けて、あらためて宿直の勤務に関する定めを確認をし、職員の適切な勤務管理に努める」よう、校長に対し指導している。

 学校で、そういう実態があれば、適正な管理を行うようにという内容の通知だと思うが、この通知発出後に各校の状況について調査したのか伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 通知発出後の調査について。二十七年二月に発出した通知は、新年度に向けて、人事異動による学校体制の変化に伴い、宿日直勤務の設定について変更が生じた場合に、あらためて労働基準監督署長に許可申請するなど、職員の適切な勤務管理に努めるよう通知したものであり、同通知の発出後、学校から通知内容に関する照会や相談は寄せられていないことなどから、特段の調査は行ってはいない。

川澄委員 ここまで聞いていくと、ある意味、道教委が見て見ぬふり、ほったらかしているような状況ではないかと思っている。

 宿直があいまい、宿直でありながら、実質勤務になっている状況がある。

 こういった中で、学校への指導について伺う。

 道立学校の状況を調査して、生徒の日課表や労働基準監督署からの許可書などによって、宿直の勤務の状況を把握するとともに、二十二時以降、勤務時間と同様な形で実質業務せざるを得ない状況があり、仮に、業務の変更、時間の割り振り等の変更をしなければならないのであれば、学校長は、労働基準監督署長の許可を得て実態に合わせて変更していく。

 あらためて、こういった点について、指導通知する必要があると考えているが、見解を伺う。

秋山総務政策局長 学校への指導について。正規職員の宿直勤務の時間に、労働基準監督署長の許可を受けた宿直業務以外の業務を行う必要がある場合は、臨時寄宿舎指導員が業務を行うなど、学校の実情に応じた対応となっているものと認識している。

 今後、道教委としては、より適切な勤務管理に向け、二十七年二月の通知の周知徹底に努めるとともに、各学校の宿直勤務の許可内容を確認し、必要がある場合は労働基準監督署の助言を受けるよう、指導していく。

― 指 摘 ―

川澄委員 これは、すぐにでもやっていただきたいと思っている。勤務管理については、教職員の超過勤務の問題もある。今、適正な管理が求められているわけであるから、この点について、学校長が、適切に判断しているだろうという認識ではまずいと思っている。

 また、学校長が、そういった状況を認識しているにもかかわらず、労基署に届けていないというのであれば、法的な問題にもなってくると認識している。こういった点については、すぐにでも、通知等を出して、今の状況を把握し、改善が必要であれば、学校長に対して指導していく必要があると思っている。この点については、すぐにでも動いていただくよう、求めておきたい。

◆臨時寄宿舎指導員について

川澄委員 正規の寄宿舎指導員と臨時の寄宿舎指導員の職務内容の違いについて伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 臨時寄宿舎指導員の職務内容について。臨時寄宿舎指導員は、正規の寄宿舎指導員のみでは対応できない部分について、十八時三十分から翌日八時までの勤務時間帯に従事するものとして任用しており、その職務内容は、「寄宿舎における幼児、児童または生徒の日常生活の世話および生活指導に従事する」もので、正規の寄宿舎指導員との違いはない。

川澄委員 本年度、臨時寄宿舎指導員の宿直回数が減少したと聞いている。宿直回数が減少した学校数およびその理由について伺う。

桜井教育政策課長 宿直回数について。宿直については、正規職員による宿直を基本として、正規職員のみでは対応できない部分について、臨時寄宿舎指導員を配置しており、本年度、寄宿舎を設置する道立特別支援学校四十校のうち、臨時寄宿舎指導員の宿直回数が減少したのは、十二校となっている。

 その理由としては、正規職員の増員によって正規職員による宿直回数が増加したこと、入寮者の状況などから、昨年度、巡視の頻度を増やすなどの特別な対応を行うために、一時的に回数増としていたが、本年度、その必要がなくなったこと、入寮者数が減少したことによるものである。

川澄委員 臨時寄宿舎指導員の宿直回数が減ったことによって、寄宿舎に影響が出ていないのか、その点についての認識を伺う。

桜井教育政策課長 寄宿舎への影響について。臨時寄宿舎指導員の宿直回数が減少した十二校については、正規職員の増員や入寮者数の減などに対応したものであり、寄宿舎の運営に影響は出ていないものと考えている。

川澄委員 指導員の方々から、夜間の病気や突発的な発作、情緒不安定な子どもや生活指導等での課題を抱えている子どもを指導しなければならない。そういった中で、昼間の勤務と同様に、宿直時間も対応せざるを得ない状況があると聞いている。こうした場合、臨時寄宿舎指導員の増員も必要ではないかと考えているが、その点についての見解を伺う。

桜井教育政策課長 臨時寄宿舎指導員の配置について。正規職員による夜間の宿直業務が、労働基準局の指導によって、七日に一回を限度とされていること、また、宿直業務以外の業務を行う必要があることから、入寮者数や障がいの種別、男女比といった状況などを踏まえて、臨時寄宿舎指導員を配置している。

川澄委員 学校長や寄宿舎の方から、臨時寄宿舎指導員の宿直回数を増やしてほしいという要望はないのか伺う。また、要望があった場合、どのような対応をとってきたのか伺う。

桜井教育政策課長 学校からの要望について。臨時寄宿舎指導員については、年度当初のほか、年度中途においても、入寮者の状況などによって、学校から回数増の要望があった場合、その都度、学校事情を詳細に把握した上で配置している。

― 指 摘 ―

川澄委員 臨時の方の回数については、各寄宿舎で、年度内の決められた回数を、うまく割り振りしているが、足りない部分があって厳しい思いをしているという状況が聞こえている。

 こういった点については、しっかりと学校の状況を、意見が上がっていないからではなく、しっかりとこちらからも聞いていく、そういう姿勢が必要ではないか。

川澄委員 今後の対応について。全道で二千人近い子どもが今、寄宿舎を利用していると聞いているが、子どもの安全・生活指導を行うためには、正規の寄宿舎指導員の適正な勤務管理と同時に、臨時寄宿舎指導員の配置数の改善を進めていかなければならないと思っている。

 今後、どのように対応していくのか、見解を伺う。

秋山総務政策局長 今後の対応について。寄宿舎は、幼児、児童または生徒が、家庭を離れて、長期間にわたって生活する場であることから、寄宿舎生活における指導は大切な役割を担っており、その指導に当たる寄宿舎指導員の勤務管理を適正に行うことは重要である。

 道教委としては、今後も、学校に対し、適切な勤務管理について指導するとともに、寄宿舎指導員の定数措置の拡充について、国に要望していく。

 また、臨時寄宿舎指導員の配置については、入寮者の状況などを踏まえ、校長と十分協議しながら措置してきており、引き続き、各学校の個別の状況を十分考慮しながら、適切な配置に努めていく考えである。

― 指 摘 ―

川澄委員 今、道として、特別支援学校を増やしていく状況にある。ただ、枠は増えているが、寄宿舎で生活する子どもたちを支えていく仕組みがしっかりとできているのかというと、いわゆる箱だけつくって、その後は、十分な手当がなされていないのではないかと思う。

 勤務時間の適正管理も含め、指導員は大変な思いをしながら、宿直に当たっていると認識している。子どもたちが置かれている状況をしっかりと把握するのであれば、正規寄宿舎指導員を増やすことも当然であるし、臨時寄宿舎指導員を十分に配置し、ゆとりをもって子どもたちの指導ができる体制をとっていく必要があると思う。

 答弁にあるように、各学校や寄宿舎の状況、配置状況、男女比などの課題について、しっかりと、年度当初だけではなく、随時、対応できる体制をとっていただきたい。

◆クリアファイルの調査

川澄委員 「アベ政治を許さない」という文言が書かれたクリアファイルが、職員室に置かれているとの状況があったことを受け、道教委が道立学校や公立小・中学校を調査する。

 今回の調査自体が、人事院規則一四―七の趣旨から逸脱しており、思想・良心の自由を示した憲法一九条や、表現の自由等を示した二一条、団結権等を示した二八条の侵害に当たり、問題であると考えている。見解を伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 調査について。最高裁の判例では、公務員の政治的行為の制限について、「もし、公務員の政治的行為のすべてが自由に放任されれば、公務員の政治的中立性が損なわれ、その職務の遂行や行政機関の公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、国民の信頼が損なわれることを免れず、したがって、このような弊害の発生を防止し、行政の中立的運営と国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応えている」とされている。

 今回の調査については、教育公務員の政治的中立性を確保し、学校教育に対する道民の信頼を損なうことのないよう、法令等に違反するおそれのある行為などについて、その状況を確認するものである。

― 再質問 ―

川澄委員 今回の調査が、憲法の一九、二一、二八条の侵害に当たらない、そういった認識で良いのか。

秋山総務政策局長 調査について。ただいま答弁したとおり、公務員の政治的行為の制限にかかわる最高裁の判例では、「行政の中立的運営と国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え、公務員を含む国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならない」とされている。

 今回の調査は、教育公務員の政治的中立性を確保し、学校教育に対する道民の信頼を損なうことのないよう、法令等に違反するおそれのある行為などについて、その状況を確認するものであり、憲法に抵触するものではないと考えている。

川澄委員 調査を実施するに当たって、道教委では、このようなファイルがいつ、どこで、誰の机の上に置かれていたのか、その事実について、確認したのか伺う。

 仮に、確認しているのであれば、当該学校に対して、どのような対応をとったのか伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 調査前の事実の確認などについて。クリアファイルが職員室内の職員の机の上に置かれているとの情報があったことから、二十七年九月上旬に各教育局を通じて、全道立高校に対し、聴き取り調査を行ったところ、石狩、渡島、上川、オホーツク、釧路の五管内の五校において確認した。

 この聴き取り調査の段階では、こうしたクリアファイルの取扱いが、禁止されている政治的行為に該当するかなどについて、顧問弁護士に確認した上で、道立学校および市町村教委に対し、指導助言することとしていたところであり、この時点では、事実確認にとどめていたものである。

― 再質問 ―

川澄委員 そうであれば、当該校に対しての指導でとどめておけば良かったのではないか。聴き取り調査で事実確認したあと、当該校への指導にとどめず、なぜ全校まで、調査を行ったのか、見解を伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 事実の確認について。ただいま答弁したとおり、寄せられた情報を踏まえ、全道立高校に対し、聴き取り調査を行ったところ、五校において、職員の机の上に当該ファイルが置かれていたことが確認された。

 こうした行為は、法令等に違反するおそれがあることから、指導通知を発出するとともに、道内の公立学校における状況を把握するため、調査を行っている。

川澄委員 集計状況および内容について伺う。併せて、これは基本的に任意提出ということであるが、教育局や各地教委、校長において、提出義務があるかのような発言、回収割合を指示するような発言があったと聞いているが、その事実について、どうなのか伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 調査の集計状況などについて。現在、所管の教育局で集計中であり、教育局から教職員課への提出期日は、二十七年十一月十六日としている。

 同調査は、一般職員は任意提出とし、その旨を調査要領および調査票に明記しており、教育局では、そのような発言などは行っておらず、また、教育委員会や校長について、そうした情報は寄せられていない。

川澄委員 通知において、仮にこういったことがあれば、該当する職員等に対して指導すると書かれているが、具体的に何を、どのように指導するのか、見解を伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 職員への指導について。クリアファイルを、「校内で配布しているところを見たことがある」、あるいは、「校内に置かれているところを見たことがある」などの回答があった場合については、そうした状況が、そのまま放置されていることのないよう指導する。

川澄委員 それは、当該学校で済ませれば良かったのではないか。

 このような調査を、全道すべての公立学校で行う必要があったのか、また、同様の調査が他府県または政令指定都市等で行われているのか、併せて伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 調査の必要性について。先ほど答弁したとおり、寄せられた情報を踏まえ、全道立高校に対し、聴き取り調査を行ったところ、五校において、職員の机の上に当該クリアファイルが置かれていたことが確認された。

 教育公務員については、法令等によって、教育の政治的中立性の原則が示され、特定の政治的目的を有する政治的行為に一定の制限がなされており、こうした行為は、法令等に違反するおそれがあることから、十月十四日付で指導通知を発出するとともに、札幌市を除く道内の公立学校における状況を把握するため調査を行っている。

 なお、同様の調査が政令市や他府県において行われているかについては把握していない。

川澄委員 今回、このクリアファイルは、置いてあったということであると思う。仮に配布があったとして、どのような問題があるのかを伺うと同時に、「アベ政治を許さない」という表現が、「特定の内閣を支持し、または、これに反すること」になぜ該当するのか。その根拠について伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 クリアファイルの配布などについて。教育公務員は、教育公務員特例法によって適用となる、国家公務員法およびそれに基づく人事院規則によって、特定の政治的目的を有する政治的行為に一定の制限がなされている。

 政治的目的を定義する人事院規則一四―七の第五項では、「特定の内閣を支持し、またはこれに反対すること」としており、「アベ政治を許さない」という文言は、当該ファイルの情報が寄せられた二十七年八月の、国会議論、また、それを取り巻く情勢を考えた場合、その表現は現政権を指し、それに反対しているものと考えている。

 また、政治的行為を定義する人事院規則第六項第一三号では、「政治的目的を有する署名または無署名の文書、図画、音盤または形象を発行し、回覧に供し、掲示し、もしくは配布し、または多数の人に対して朗読し、もしくは聴取させ、あるいは、これらの用に供するために著作し、または編集すること」は、禁止されている政治的行為としており、当該クリアファイルを配布する行為は、これに該当するおそれがある。

川澄委員 人事院規則一四―七の趣旨においては、学問の自由や思想の自由を尊重するよう、解釈運用されなければならないのは当然と思う。しかし、実質的に違反行為がない、おそれがあるという段階で調査することは、この規則では想定していないと認識しているが、その点についての見解を伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 人事院規則との関連について。道教委としては、一部の学校で、法令等に違反するおそれのある行為が確認されたため、教育公務員の政治的中立性を確保し、学校教育に対する道民の信頼を損なうことのないよう、全道立学校および市町村教委に指導通知を発出するとともに、あらためて書面による調査を行っている。

― 再質問 ―

川澄委員 法令等に違反するおそれがあるという段階で、調査することは、人事院規則一四―七の趣旨に違反していないという認識で良いか。

野﨑教職員課服務担当課長 人事院規則との関連について。人事院規則一四―七は、政治的行為の制限を規定する国家公務員法第一〇二条第一項の委任によって制定されたもので、適用の範囲、政治的目的の定義、政治的行為の定義などを定めているものである。

 この運用方針の「規則の目的」では、「国民全体の奉仕者として政治的に中立な立場を維持することが必要であるとともに、職員の地位は、政治動向のいかんにかかわらず常に安定したものでなければならない」とし、その中で、「学問の自由および思想の自由を尊重するように解釈され運用されなければならないことは当然である」としている。

 ただいま答弁したとおり、一部の学校で、法令等に違反するおそれのある行為が確認されたため、教育公務員の政治的中立性を確保するため、指導通知を発出するとともに、あらためて書面による調査を行っており、この調査は、政治的目的および政治的行為などを定義する人事院規則一四―七に抵触するものではないと考えている。

川澄委員 調査票について、今回、「九月十三日に職員室で誰が書類を中に挟んで自分の机に置いていた」といった形で、具体的な記入例まで書いている。

 これは、明らかに個人の思想を探る、または、密告するものととらえざるを得ないが、見解を伺う。

 同時に、これが憲法一九条を侵害していると思うが、併せて伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 調査の考え方について。教員も、一私人としては、思想の自由、表現の自由に基づく政治活動の自由が保障されているが、教員は、心身ともに発達段階にある児童生徒の価値観の形成に対し、強い影響力がある。

 学校は、教育基本法の定める教育の政治的中立の原則に基づき、特定の政党を支持し、または反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないとされており、併せて、教育公務員は、教育公務員特例法によって適用となる、国家公務員法およびこれに基づく人事院規則による特定の政治的目的を有する政治的行為に一定の制限がなされている。

 最高裁では、こうした制限は合理的で必要やむを得ないものであり、合憲であるとの判決が出されていると承知している。

 道教委としては、教育公務員の政治的中立性を確保し、学校教育に対する道民の信頼を損なうことのないよう、指導通知を発出するとともに、法令等に違反するおそれのある行為などの状況を把握するため、調査を行っている。

― 再質問 ―

川澄委員 再度伺うが、個人を特定して聞くことは、思想信条を把握することにつながると思うが、はたして、それが必要なのか。また、憲法違反でないかと思うが、見解を伺う。

秋山総務政策局長 調査の考え方について。ただいま担当課長から答弁したとおり、学校は、教育基本法の定める教育の政治的中立の原則に基づき、特定の政党を支持し、または反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないとされており、併せて、教育公務員は、教育公務員特例法によって適用となる、国家公務員法およびこれに基づく人事院規則によって特定の政治的目的を有する政治的行為に一定の制限がなされている。

 最高裁では、こうした制限は合理的で必要やむを得ないものであり、合憲であるとの判決が出されていると承知している。

 道教委としては、教育公務員の政治的中立性を確保し、学校教育に対する道民の信頼を損なうことのないよう、指導通知を発出するとともに、法令等に違反するおそれのある行為などの状況を把握するため、調査を行っており、一般職員は任意提出とするとともに、正確な状況が把握できるよう、具体的な記入の仕方を記入例として示しており、憲法に抵触するものではないと考えている。

― 指 摘 ―

川澄委員 具体的に誰がということを把握することは、その人が何を考えているかを調査するのと全く同じである。最高裁でやむを得ないと判例が出されているというが、そこはデリケートな部分。行政がそこを把握することについては、丁寧な形でやらなければならないと思っている。

 個人の思想信条を把握するという点については、配慮すべきことを指摘しておく。

川澄委員 同調査と併せて、教職員の政治的行為の制限にかかる通知を発出している。法令等に違反するおそれがある場合は適切な指導を求めているものと理解をしている。

 ただ、法令に違反していない段階で適切な指導をすることが理解できない。これ自体が非常に問題があるのではないかととらえている。この点についての見解を伺う。また、何を想定して通知を出しているのか、併せて伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 政治的行為の制限について。道教委としては、学校教育の成否の鍵を握るのは、保護者をはじめ地域の方々との信頼や協働を基盤として、校長のリーダーシップのもと、教職員が互いを信頼し、適切な学校運営を行うことであると考えており、このような信頼関係の前提となるのは、教職員の法令等の順守であると認識している。

 教育公務員は、教育の政治的中立性を確保すべき立場にあり、特定の政治的目的を有する政治的行為に一定の制限がなされていることから、法令違反はもとより、違反するおそれのある行為によって、学校教育に対する児童生徒や保護者を含む道民の信頼を損なうことのないよう、人事院規則の関係規定などを示した指導通知を発出した。

 各道立学校や市町村教委においては、こうしたことのないよう、適切な指導をお願いする。

― 再質問 ―

川澄委員 学校現場で、教育の政治的中立性が確保されていないという前提で、こういう通知を出しているのか、道教委の認識を伺う。

秋山総務政策局長 政治的行為の制限にかかる通知について。道内の学校では、家庭・地域との信頼や協働を基盤として、適切な学校運営に取り組んでいると考えているが、先ほど担当課長から答弁したとおり、寄せられた情報を踏まえ、全道立高校に対し、聞き取り調査を行ったところ、五校において、職員の机の上に当該クリアファイルが置かれていたことが確認された。

 教育公務員については、法令等によって、教育の政治的中立性の原則が示され、特定の政治的目的を有する政治的行為に一定の制限がなされており、法令違反はもとより、違反するおそれのある行為によって、学校教育に対する児童生徒や保護者を含む道民の信頼を損なうことのないよう、人事院規則の関係規定などを示した指導通知を発出した。

― 指 摘 ―

川澄委員 道内の学校では、家庭や地域との信頼、協働を基盤として、適切な学校運営に取り組んでいるという認識を、道教委が答弁で示している。

 こういった中、私は保護者から、ファイルの調査があるが、何かあったのかと聞かれている。保護者に要らぬ不安を与えている。こういった疑義をもたれることは、これまで学校と地域が丁寧に信頼関係を築き上げてきたことにひびを入れることになるのではないか。

 保護者会等が予定されていれば、この件について、保護者や地域から、何らかの形で、学校長、または担任に対して説明を求める場面が出てくることが想定される。

 これまで学校と地域が築き上げた信頼を壊すことになりかねない調査は、今後行わないよう、強く指摘しておく。

川澄委員 二十八年の参議院議員選挙から、十八歳以上に投票権年齢が引き下げられる。こういった中で、政治教育の必要性は、私だけではなく、すべての方が認識していると思う。特に、十八歳になると、高校で、創意工夫ある実践を行っていかなければならないと考えている。

 こういった行き過ぎた調査が、教職員の思想信条の自由や表現の自由を侵害して、学校における、教育上、必要な政治学習の実践を妨げるのは明らかだと思っているが、この点についての見解を伺う。

山本教育部長 政治的中立性などについて。教育基本法では、「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」、また、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、または反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」と示されている。

 こうした中、教科などの指導を通じて、子どもたちが政治的教養を高めること、これは、現代社会の基本的な問題に対する判断力の基礎を培う、人間としての生き方などについて、考える力を育てることになるということを十分踏まえることが大切である。

 その一方で、教員は、子どもたちに対して、大きな影響力があることから、教育の政治的中立性を確保し、学校教育に対する道民の信頼を損なうことがあってはならないということを、強く自覚して教育活動を行うことが重要であると考えている。

 今後も、こうした考えのもと、本道における教育活動が適切に行われるよう、学校における指導方法、あるいは、服務規律の徹底について、研修会はもとより、指導主事の学校訪問など、様々な機会を通じて指導助言に努めていきたいと考えている。

― 再質問 ―

川澄委員 もちろん、その重要性は理解されているとと思っている。ただ、服務規律の徹底が、なぜ、政治教育に寄与するのか。私は理解できない。

 投票率が低下し、また、選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられた中で、子どもたちの政治的な関心を高めるためには、創意工夫のある実践が必要だと思っている。政治に対する関心を高めるためには、どのような教育実践するのが良いと考えているのか、見解を伺う。

山本教育部長 政治的教養を育む教育実践について。道内の学校においては、議会制民主主義の意義や仕組みを理解し、地域社会への関心を高めるための模擬議会が登別市内で行われていると承知している。また、まちの問題点とその解決方法を、「総合的な学習の時間」の中で考え、町に提言する「子ども議会」が、浦河町の実践事例である。

 こうした取組を通して、社会の諸課題について多面的・多角的に考え、また、自ら参画しようとする意欲あるいは態度の大切さを学ばせ、政治的教養や関心を高める創意工夫のある教育の実践が重要であると考えている。

 こうした政治的教養を育む教育を行うに当たって、教員は、子どもたちに対して大きな影響力があることから、法令等によって教育の政治的中立性の原則が示され、特定の政治的目的を有する政治的行為に一定の制限がなされていることに十分に留意し、学校教育に対する子どもたち、保護者、道民の信頼を損なうことがないよう、強く自覚して対応することが重要であると考えている。

 今後も、こうした考えのもと、本道の未来を担う子どもたちの生きる力を育成し、知徳体のバランスをきちんと把握し、育てるような教育活動が適切に行われるよう、様々な機会を通じて、指導助言に努めていきたいと考えている。

― 指 摘 ―

川澄委員 社会の諸問題について、多面的、多角的にとらえる意欲・態度を養っていくことは、私も同様に考えている。各地域で、それぞれ創意工夫ある実践が取り組まれており、これは非常に重要だと認識している。

 ただ、昨今の状況をみると、例えば、他県のことだが、模擬投票をした結果の状況をみて、指摘を受けるといった状況がある。道内においても、社説を利用した高校の社会科の学習についての指摘があった。

 こういった中で、今回のような調査があれば、教職員がどこかで自制をかけてしまいかねない。

 また、思想信条の自由にかかわる部分もある。多くの教員は、こういった点について、しっかりと理解した中で、実践を進めている。

 こういった調査一つで、地域や保護者との信頼関係が壊れていくことにもなりかねない。

 これから先生方が、政治教育にかかわって、創意工夫ある実践ができる環境をつくっていけるよう、しっかりと道教委として取り組むことを指摘する。

(道議会 2016-02-16付)

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(2016-02-19)  全て読む

道議会文教委員会の質問・答弁概要(11月4日)

 道議会文教委員会(二十七年十一月四日開催)における田中英樹委員(公明党)、佐野弘美委員(日本共産党)の質問、および菅原行彦学校教育局指導担当局長、岩渕隆義務教育課教育環境支援担当課長、堀本...

(2016-02-18)  全て読む

道議会文教委員会の質問・答弁概要(11月4日)

 道議会文教委員会(二十七年十一月四日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、山崎泉委員(北海道結志会)の質問、および山本広海教育部長、杉本昭則学校教育監、梶浦仁学校教育局長、加賀学...

(2016-02-17)  全て読む

道議会文教委員会の質問・答弁概要(11月4日)

 道議会文教委員会(二十七年十一月四日開催)における佐々木恵美子委員(民主党・道民連合)、丸岩浩二委員(自民党・道民会議)の質問、および柴田達夫教育長、杉本昭則学校教育監、梶浦仁学校教育局長...

(2016-02-12)  全て読む

道議会文教委員会の質問・答弁概要(11月4日)

 道議会文教委員会(二十七年十一月四日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、川澄宗之介委員(民主党・道民連合)の質問、および柴田達夫教育長、梶浦仁学校教育局長、赤間幸人高校教育課長...

(2016-02-09)  全て読む

道議会予算特別委員会の質問・答弁概要(10月1日)

 道議会文教委員会(二十七年十月一日開催)における川澄宗之介委員(民主党・道民連合)、山崎泉委員(北海道結志会)の質問、および杉本昭則学校教育監、菅原行彦学校教育局指導担当局長、成田祥介新し...

(2016-02-08)  全て読む

道議会文教委員会の質問・答弁概要(10月1日)

 道議会文教委員会(二十七年十月一日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、佐々木恵美子委員(民主党・道民連合)の質問、および杉本昭則学校教育監、菅原行彦学校教育局指導担当局長、佐藤...

(2016-02-05)  全て読む

道議会文教委(2月2日) 公正性・透明性を確保 教科書採択問題

 道教委は、二日の道議会文教委員会で、本道分の「教科書発行者による自己点検・検証結果」を報告し、今後も、教科書採択の公正性・透明性確保に万全を尽くす意向を表明した。  教科書会社が、教員等...

(2016-02-04)  全て読む