道議会文教委委員会の質問・答弁概要(27年12月9日)
(道議会 2016-03-16付)

 道議会文教委員会(二十七年十二月九日開催)における川澄宗之介委員(民主党・道民連合)の質問、および杉本昭則学校教育監、梶浦仁学校教育局長、岩渕隆義務教育課教育環境支援担当課長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆放課後子ども総合プラン

川澄委員 昨年度、共働き家庭の小一の壁を打破するとともに、次代を担う人材を育成するため、すべての就学児童が放課後を安心・安全に過ごし、多様な体験活動ができるよう、文部科学省と厚生労働省とが連携して総合的な放課後対策に取り組むということで、「放課後子ども総合プラン」が策定されたと聞いている。このうちの「放課後子ども教室」について質問する。

 「放課後子ども教室」の目的、内容について伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 「放課後子ども教室」について。この事業のねらいは、子どもたちの安全・安心な活動拠点を設け、地域の方々の参画を得て、子どもたちに学習や様々な体験・交流活動の機会を定期的・継続的に提供することであり、学校の空き教室などを活用した多様なプログラムによる学習や体験活動を行っている。

川澄委員 道内でも、この事業に基づいて取組が進められていると聞いている。道を含めて、市町村における本事業推進にかかわる運営委員会の設置、また、行動計画、一体型、連携型の設置状況について伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 設置状況について。二十七年度、国の「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」を活用して「放課後子ども教室」を実施している市町村は六十一あり、そのうち、「放課後児童クラブ」との一体型は七、連携型は二十四となっており、各市町村において「放課後子ども教室」の在り方を協議する運営委員会は、六十一市町村すべてで設置している。

 また、行動計画および類似する計画の策定については、六十一の市町村の中で、七月現在で策定済みの市町村が四十七、二十七年度中に策定予定が十四となっている。

川澄委員 国は、二〇一九年度までに一体型を、一万ヵ所以上の設置を目指している。国としては、自治体に目標の割り当てはしないと言っているが、道としての目標は、どのようになっているのか。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 設置の目標について。道教委では、道教育推進計画において、「二十九年度までに放課後子ども教室およびこれに相当する事業を実施する市町村の割合を一〇〇%とする」ことを目標指標としている。

 なお、一体型の設置については、現在、特に目標は設定していない。

川澄委員 先ほどの答弁で、一体型は七つということであった。本来であれば、一体型で、「児童クラブ」に通う子どもたちと一体でやるのが望ましいと考えている。現時点において、「放課後子ども教室」導入に当たって、市町村の意識や課題には、どのようなものがあるのか伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 導入の課題などについて。「放課後子ども教室」の設置主体である市町村からは、子どもの安全・安心な居場所づくりを通して、地域住民が教育支援活動に積極的に取り組むようになったという成果がある一方、子どもたちの放課後の過ごし方として、地域の少年団活動など、他の活動をしている子どもも多く、「放課後児童クラブ」を実施していれば、子どもの居場所づくりは十分確保できているとの声があること、「放課後子ども教室」と「放課後児童クラブ」との内容の混同、運営主体の不明確さがあることなどが、「放課後子ども教室」の設置が進まない課題であると考えている。

― 指 摘 ―

川澄委員 放課後の過ごし方は、子どもたちによって多種多様だということは当然だと思う。また、今の時点で子どもの居場所づくりができていることや、今回の事業の中身について十分な理解がされていないところがまだあるかと思う。一体型については、居場所づくりとして必要だと思っているので、設置に向けた理解が進むよう、道教委としても助言をしていく必要があることを指摘しておく。

川澄委員 「放課後子ども総合プラン」において、設置を進めるためには、地域の協力者の確保が必要となる。併せて、協力者に対しては、謝金、交通費等の支給といった課題もあるのではないかと思っている。この点についての認識を伺う。

 また、学校支援地域本部等が設立されている地域もある。こういったところとの連携についても視野に入れるべきではないかと思っている。この点についての見解も伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 地域人材の確保について。道教委では、事業を進める上で地域人材を活用することは不可欠であると考えており、そのため、国の事業を活用し、教育支援活動等の総合的な調整役を担うコーディネーターや中心となってプログラムを実施する教育活動推進員、子どもたちの安全を管理する教育活動サポーター等に対する謝金等の運営経費を支援している。

 また、「放課後子ども教室」と学校支援地域本部事業について、運営委員会やコーディネーターをそれぞれ兼ねることが可能となっており、地域全体で子どもたちを育てるために、地域の実情に応じて様々な教育支援活動を有機的に組み合わせて、総合的な放課後対策を進めることは、重要であると考えている。

川澄委員 「子ども教室」を運営する上では、様々なプログラムを組んでいく活動が必要となっていく。他府県の状況などをみると、様々なプログラムを組み立てて、子どもたちが数多く参画するという状況がある。年間の開設日数が二百日を超えていて、子どもたちが喜んで放課後、この教室に通ってくる事例もあると聞いている。

 プログラムを充実させるためには、協力者の確保だけではなく、コーディネーターの確保も必要。また、コーディネーターは、子どもたちの発達段階を十分に理解した方でなければ務まらないと考えている。

 コーディネーター育成に向けた何らかの研修等を地域で行うべきではないか思っているが、この点についての見解を伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 コーディネーターの育成について。道教委としては、地域全体で子どもを育てる取組を行う上で、様々な人々や活動をつなぐ役割を担うコーディネーターの存在は重要であると考えている。

 そのため、道教委では、道内四ブロックで年二回、「放課後子ども教室」などの支援活動に携わる人材を対象に実施している「地域の教育支援活動推進研修会」において、コーディネーターの役割や心得などを学ぶ講義やワークショップ等を実施するとともに、効果的なコーディネーターの活用事例等をまとめたハンドブックの活用を促すなど、地域の教育支援活動の充実に向けたコーディネーターの育成に努めている。

― 指 摘 ―

川澄委員 協力者やコーディネーターについては、退職教員を活用する事例があると思うが、地域で育てていくという観点に立てば、地域の方にも担っていただく必要があると思っている。子どもたちの発達段階をしっかりと理解、把握した人材を育成していくことが、子どもたちの関係づくりに寄与すると思っているので、この点については、積極的に進めていただきたい。

川澄委員 一体型を含めて設置していくのに当たって、国からは、積極的に学校の空き教室を活用していくべきということが書かれている。そうなれば、学校管理下ということがある。何らかの防災といった問題や、様々なトラブルが生じることが想定できる。緊急時の対応については、その責任の所在をしっかりと明らかにしておく必要があると考えているが、その点についての見解を伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 学校管理下でのトラブルなどについて。事業の実施において、学校施設を活用する場合でも、事業実施の際のトラブルや緊急時の対応等については、実施主体である市町村教委や福祉部局などが、責任をもって管理運営に当たることとなる。

― 指 摘 ―

川澄委員 国からの通達にも、〝しっかりと責任の所在を明らかにして取り組むべき〟と書かれている。これから一体型を設置する市町村が出てくる。空き教室を活用する際、学校側が責任の所在を含めて戸惑うことがないように、責任体制を明確にした運営ができるよう指導していただきたい。

川澄委員 「放課後子ども教室」には、いわゆる障がいをもった子どもたちも参加することが予見される。国からの通達では、障がいのある子どもに対する配慮をしっかりとしていくことが求められている。こういった点について考えていくのであれば、支援員の配置等を検討していく必要があると考えているが、見解を伺う。

岩渕義務教育課教育環境支援担当課長 「放課後子ども教室」の支援員について。同事業においては、活動の内容や実施日数、対象の子どもの人数など、各地域の実情に応じて、活動を支援する教育活動サポーターを配置しているほか、特別な支援を必要とする子どもたちに対応する、特別支援サポーターも配置することが可能となっており、道教委としては、地域の実情に応じて、このような仕組みを有効活用するよう、市町村に周知していく。

― 指 摘 ―

川澄委員 障がいのあるなしにかかわらず、放課後の子どもたちの居場所づくりを進めていく中で、しっかりと保障していくのは当然であると考えている。障がいをかかえた子どもたちが、「子ども教室」を利用する場合、しっかりと受け入れ体制を整えていくという点について周知徹底、また、指導していくよう求めておきたい。

川澄委員 「子ども教室」において、生活困窮家庭や生活保護家庭の子どもたち、また、いわゆるネグレクトやいじめといった様々な課題をかかえた、特段の配慮が必要な子どもたちが通ってくることも考えられる。こういった特段の配慮が必要な子どもたちがいる場合、児童相談所や学校、関係機関との連携が重要であると考えている。この点についての見解を伺う。

梶浦学校教育局長 関係機関との連携について。事業実施に当たっては、地域全体で子どもたちの教育支援を行うという趣旨をかんがみ、都道府県に推進委員会、市町村には運営委員会を設置し、教育委員会および福祉部局、学校関係者、社会教育関係者など幅広い分野の方々の参画を得て取り組むこととなっており、道教委としては、様々な配慮が必要な子どもたちのためにも、必要に応じて関係機関と連携していくことが大切であると考えている。

― 指 摘 ―

川澄委員 「放課後子ども教室」の中で、様々な配慮が必要な子どもたちが見えてくれば、そこから、家庭や学校、その他の機関につないで、解決につながることも考えられる。総合的、横断的につながりながら、子どもたちの居場所づくりの中から、子どもたちをしっかりと支えていく仕組みをつくっていっていただきたい。

川澄委員 「放課後子ども教室」では、様々なプログラムを策定し、子どもたちがそこで豊かな活動を行っていくことが求められている。こういった中で、例示されている学習支援や活動だけではなく、子どもたちが自由に過ごすことができる時間を確保していくことや、子どもたちが自ら計画し、進めていくプログラムといった活動を行う場面の設定が必要であると考えている。こういった点について見解を伺う。

梶浦学校教育局長 「放課後子ども教室」の活動について。子どもたちの社会性、自主性、創造性などの豊かな人間性を涵養することを目的として、学習活動をするほか、読書活動や科学実験教室をはじめ、異学年の子ども同士の遊びの交流や子どもたちが企画したゲームによる遊びなど、様々な活動が行われている。

 活動を進めている市町村からは、子ども自身が進んで異なる年齢の友だちをつくり、主体的に活動することによって、子どもたちのコミュニケーション能力が高まるなどの成果が挙げられているという報告を受けている。

 道教委としては、同事業の趣旨である、安全・安心な活動拠点を設けることはもとより、多様な体験・活動を行う取組を通して、子どもの主体性を育むことは重要であると考えており、今後も、こうした活動が一層充実するよう、支援に努めていく考えである。

― 指 摘 ―

川澄委員 コーディネーターの方々や協力者のもとでプログラムを充実させていくことも重要であると同時に、子どもたちが自分たちで計画し、年齢に関係なく活動できる中身をつくり上げていく。最終的には、協力者と一緒にプログラムづくりに参画していく。こういったことで、自主性や自立した力が身に付くものと考えている。

 こういったことができるような、活動プログラムを策定できるよう、道教委としても、支援していただきたい。

川澄委員 コミュニティ・スクールが総合教育会議でも、大綱を策定する中に含められた。本事業と併せて、学校支援地域本部やコミュニティ・スクールとの関連について、現時点で道教委は、どのように考えているのか伺う。

杉本学校教育監 学校支援地域本部やコミュニティ・スクールとの関連について。「放課後子ども教室」は、安全・安心な居場所づくりによる学習や体験・交流活動等の取組である。また、学校支援地域本部は、地域住民等による学校の教育活動の支援を行うもの、さらに、コミュニティ・スクールは、地域住民等が学校運営に参画する制度であるなど、いずれも、地域が主体的に子どもを支える取組として重要であると考えている。

 今後においては、例えば、コミュニティ・スクールにおいて、地域住民等が協議した内容を学校支援地域本部や「放課後子ども教室」などで具体化するなど、地域の実情に応じて、それぞれの取組が相互に補完し、効果的に連携・協働した体制が構築できるよう、支援に努めていく考えである。

― 指 摘 ―

川澄委員 放課後の子どもたちの過ごし方が、多様化してきている。子どもたちに様々な選択肢を与えるという意味で、今回のプランについては、ぜひ進めていただきたい。

 何よりも、放課後、子どもたちの居場所があること。そして、子どもたちが自分たちの活動を豊かに行える環境を、地域や学校を含めた全体で取り組んでいくことが必要だと考えている。

 自治体において、この取組や理解が十分進んでいない、または、必要性を感じないといった答えもあった。地域や放課後の子どもたちの過ごし方を保障していくことについて、コミュニティ・スクールや学校支援地域本部と横断的に行って、子どもたちが安心して過ごせる放課後、または、自分たちの取り組みたいことが行える、豊かな子ども期が過ごせるような手はずを、道教委で支援できるような形をとっていただければと思う。このことについては、しっかりと進めていただくことを指摘する。

(道議会 2016-03-16付)

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