アクティブ・ラーニング調査研究プロジェクト 旭川市朝日小ほか5校の研究成果②(道・道教委 2016-04-06付)
【アクティブ化シート】
アクティブ・ラーニング(=AL)の視点を取り入れた授業を考える上で注意すべきことは、ALは「この方法しかない」「すべての教科やすべての学習場面で取り組まなければならない」など、パターン化したり、型にはめたりしてはいけないことである。
子どもの思考を活性化させるためには、ときとして暗記・再生型が重視される学習も必要であり、すべてをALの視点で授業を行えるものではないとおさえている。要はバランス良く授業に取り入れることが必要であり、そのためには、今まで以上に、「教師がねらいを明確にし、見通しをもって授業づくりを行う」ことが重要である。
授業のどこで「習得」し、「活用」とどのように関連づけるかなど、教師が意図をもって「主体的」「協働的」な学びを仕組んでいくことが重要である。
アクティブ・ラーニングプロジェクトスタッフ(=ALPS)では、授業をアクティブ化するためのポイントを示した基本モデル「アクティブ化シート」(A=単元レベル、B=一単位時間レベル)を作成した。
シートは授業を型にはめることを目的とはしていない。シートを活用しながら、「この場面では、このようなことをポイントとして授業を構築していけば良い」などを確認しながら、各教科や学習内容、発達段階に応じて教師自身が授業をコーディネートしていくことを願っている。
【アクティブ化シートA(単元レベル)】
単元の学習計画を見直す際には、各教科や単元の特性に応じて、ALの視点を取り入れた学習過程をどのように構築していくか、教師が単元のイメージを具体的にもつことができるかが重要になってくる。
ときには単元に入る前から教師の働きかけが始まり、子どもたちが共通体験を行うことや、事象に興味・関心をもつような学習環境づくりを行うなど、日常の中で自然と学習へ導かれるように仕組むことも考えられる。ALの視点では、教師の〝単元をマネジメントする力〟が鍵である。
ALPSでは、単元を一~三次の三つの場面に分け、各場面で予想される子どもの思考の流れをもとに、必要な教師の意図的なかかわり、手立てなどの例を示した。
ALの視点では、子どもが主体的・協働的に活動する、「追究解決・交流」場面が重視されがちであるが、実は子どもたちに、「強い課題意識」をもたせることが最も重要である。
ALの視点を取り入れた学習でも、「個の考え」が保障されなければならない。「個の考え」が根底にあるからこそ、集団での学びの中でより質の高い学びへと構築されていく。子ども自ら課題意識をもつからこそ、追及活動にも主体的に参加することができ、「知識・技能」がしっかり身に付くとともに、必要な「資質・能力」が育成されていくと考える。
そのためには、「事象との出会い・課題設定・解決の見通し」場面の充実が一層重要になってくる。
また、自らの成長を実感することや、充実感、達成感を感じること、協働的に学ぶ価値を実感するなどの「手応え感覚」が得られる「振り返り・吟味」場面が、その後の学びに向かう力や資質能力の発揮に大きく関係していく。今まで以上にこの場面の質も重要になると考えている。
◆シートAの概要
▼単元における事象との出会い(一次)
▽子どもの思考の流れ
・具体的な体験や活動を通してテーマへの疑問や関心をもつ(個→学級全体)
▽指導上の留意点
・実体験(本物に触れる、見るなど)や間接的体験(資料や映像を見る)などの共通体験の場面を設定する
・事象との出会いは、「子どもにとって身近なもの」「子どもの疑問、気づき、予想などが生まれやすいもの」「興味や関心を誘発するもの」を扱う
・子どもが課題意識、目的意識などが生まれやすい発問を工夫する
・子どもに既有の知識や経験では対処できないような「ズレ」を感じさせたり、「あこがれ」「可能性」を感じさせたりするように、事象との出会わせ方や発問を工夫する
・子どもにとって学習する必然性のある課題、目的が明確な課題になるよう工夫する
▼単元における課題をつかむ(一次)
▽子どもの思考の流れ
・単元を貫くような課題(ゴール)を明確に設定した上で、子どもが自ら解決すべき課題を明確にする
▽指導上の留意点
・個の思いから学級全体の課題へと、子どもの言葉からキーワード的に収束していく
・どこに向かって学習が進んでいくのかという方向性(ゴール)のイメージを子どもにもたせる
▼単元における解決の見通しをもつ(一次)
▽子どもの思考の流れ
・学習課題への解決の見通しを立てる
▽指導上の留意点
・具体的な学習計画を子どもとともに立てる
・単元を通して育てたい資質能力に沿って、調べ方、学び方を提示し、子どもが選択するなど教師のかかわりが重要である
▼追究解決(二次)
▽子どもの思考の流れ
・計画をもとに追究、解決活動を行う
・協働的な学びを通して、学びを深めていく
▽指導上の留意点
・追究活動は必ず交流活動を意識して進め、課題解決が協働的に図られるよう工夫する
・子どもの思考の流れに沿い、十分な時間を保障する
・「必然性のある学び」「目的意識の継続化」「参画意識の向上」につながるよう、目的に合わせて学習形態を工夫する
・子どもの思考の流れが見えるよう、模造紙やホワイトボード、付箋紙、ICT等を用いて工夫する
・子どもの見取りを適切に行い、目標達成に困り感のある子どもへの支援の手立てを明らかにする
▼交流(二次)=単元のゴールとしての子どもの変容した姿を設定する
▼まとめ(二次)
▽指導上の留意点
・交流場面に協働的交流が生まれるように工夫する
・キーワードをもとに、課題と正対したまとめになるよう促す
▼振り返り(三次)
▽子どもの思考の流れ
・単元を通して学んだことを自覚し、学び方を振り返る
▽指導上の留意点
・学びの自覚化を促し、学びの有用感がもてるよう工夫する
・自分の獲得した知識の妥当性と有効性を批判的に評価し、つぎの学習へのプロセスとして生かしていくよう工夫する
(道・道教委 2016-04-06付)
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