アクティブ・ラーニング調査研究プロジェクト 旭川市朝日小ほか5校の研究成果③(完)
(道・道教委 2016-04-07付)

【アクティブ化シートB(一単位時間レベル)】

 アクティブ・ラーニング(=AL)の視点を取り入れた授業を全教科、全時間の同じ時間配分、同じ流れで授業を行うことはできない。授業のねらいを達成させるために、子どもたちの思考を活性化させたい場面にしっかりと時間を確保することが必要である。そのためには、今までよりも軽重を付けた、柔軟で大胆な授業を展開していくことが重要となる。そこで、一単位時間レベルの学習過程を、「課題意識」「対話」「振り返り」の三パターンに分けて作成した。

◆「課題意識」重視(B―①)

 単元の導入場面の授業を想定すると、この時間では、強い課題意識をもたせ、単元を通してその課題意識をもち続けることが非常に重要である。

 今まで以上に単元で育てたい資質能力を意識した子どもの実態把握を行い、未知の体験、既有知識では分からない、対処できないような、「事象との出会い」を設定する。その際に、「できるようになりたい」「分かりたい」などの学ぶ意欲を引き出すよう工夫することが大切である。

 あくまでも子ども主体であるが、子どもの実態を把握し、解決の見通しの手立てを教師が多様にイメージし、準備しておくことが大切である。子どもが好きなように、やりたいように学習を進めるのではなく、ねらいに沿った適切な学習になるよう教師が意図的に仕組むことが大切である。

▼導入(二十~二十五分)

▽子どもの思考の流れ

・強い意欲や動機付けとなる事象と出会う

・具体的な体験や活動を通して、学習テーマへの興味や関心、疑問をもつ

▽指導上の留意点

・子どものよりどころを把握する(日常生活や生活経験、既習事項など)。

・課題意識をもたせるために、体験活動、過去の経験の想起、日常生活の困り感などの事象との出会いを工夫する

▽子どもの思考の流れ

・芽生えた想いから学習課題へつなげる

▽指導上の留意点=出会いから課題を明確にするために工夫する

・発問の工夫

・これまでの自分の考えとのズレを認識させる

・出会いを通して気づいたことや疑問を交流し合う中で課題を明らかにする

・夢やあこがれ、挑戦、理想を課題につなげる

▽子どもの思考の流れ

・子ども自らが解決すべき課題を明確にする

▽指導上の留意点=課題の共有化を図る

・出てきた疑問や課題を整理・分析し、全体の課題として精選していく

・課題性の優先順位を考え、解決への必要感の高い課題から全体のものとして共有する

・問いの目的化、主体化をする

▼展開(十~十五分)

▽子どもの思考の流れ

・学習課題への解決の見通しを立てる(課題設定重視では、この段階が追究ではなく、見通しをもつ段階となる)

・次時からの具体的な手立てを考える(課題設定重視ではこの段階がまとめではなく、次時への意欲化になる)

▽指導上の留意点

・課題解決を主体的なものにするために工夫する=既習事項や過去の経験をもとに解決の方法を考えさせる、追究の方法、解決に向けた必要なものなどを考えさせる、追究結果の仮説や予想を立てさせる、まとめ方や上限の仕方を考えさせる

・学習形態や学習活動の進め方を確認する

・グループなどで行う場面

では役割分担なども行う

・予想や学習の進め方をノートに整理する

▼終末(五~十分)

▽子どもの思考の流れ

・単元全体の見通しをもてたか振り返る

▽指導上の留意点

・課題が明確になったかどうかを振り返るための視点を工夫する(自分の課題が明確になったか、課題をはっきりさせるために何が良かったのか、学習計画を立てるために有効だったことと難しかったこと、自分のきょうの学びの良さと友達の良さ)

◆「対話」重視(B―②)

 追究・解決、交流、まとめ場面において、調べたことやできるようになったことなどを友達に伝えたり、考えをぶつけ合ったり、互いの共通点や相違点を話し合ったりすることで、新たな考えを生み出し、子どもの知識が深まり広がっていく。そのためには「対話(アウトプット)」する場面が、ALの視点を取り入れた授業では重要である。

 「対話」を成立させるためには二つのかかわりが考えられる。一つは、「子どもと子ども」の対話である。子ども同士がかかわるときには、単なる発表会にならないよう注意して、受信と発信を子ども間で絶えず行えるような交流の場面が必要である。

 思考しながら発信し、受信しながら思考するサイクルが積み重ねられることによって、必要な資質能力が育成されていく。日常的に、「対話」する場面を経験することで、教室内の学び合う関係がより良いものになっていく。そのためには、話し合うメンバーの構成、学習形態に配慮する必要がある。また、子どもの思考を可視化するためには思考ツールを活用することも有効である。

 もう一つは、「子どもと教師」とのかかわりである。教師は「コーディネーター」であり、「ファシリテーター」であり、「リーダー」である。子ども同士がつながることのできる適切な教師のかかわりが大切となる。

▼導入(一~三分)=本時の活動内容と到達目標を明示する

▽子どもの思考の流れ

・学習計画を確認したり、これまでの学習を振り返ったりしながら、課題意識の自覚化を図る

・解決の見通しをもつ

▽指導上の留意点=本時の活動内容と到達目標を明示する

・単元の学習課題との関連を意識させる

・前時で解決できなかったことや新たな疑問として明らかになったことなどをもとに、課題を設定する

・短時間で「つかむ」ことができる工夫をする

・きょうの学習のポイントを明確にする

・目的、学習のゴール、方法、時間の目安を明確にする

・目標達成に困り感のある子どもへの支援の手立てを明らかにする

▼展開(二十五~三十五分)=終末に向けて、授業のゴールでの「児童の具体的な姿」を明示する

▽子どもの思考の流れ

・課題解決に向けて資料を集めたり、操作したり、体験したりなどして得られた結果から、協働的な学習を通し、自分なりに課題に対しての考えをもつ

・自力解決をもととし、ペア、小グループ、学級全体と適時交流し、解決への方向性の確認や修正を図りながら、思考の拡散と収束を図る

・自力解決=自分が「何が」分かったか、できたのかを意識する

・ペア、小グループ解決=一緒にやってみる、一緒に調べる、伝え合う、説明し合う、教え合うなどの活動を通して課題解決に取り組む

・全体交流=情報を共有したり、未知のことに気づいたり、相違点や妥当性を見つけたりしながら思考を広げ深める

・学級全体で課題を解決し、価値の共有化と一般化を行う

・学習内容をまとめる

▽指導上の留意点

・思考が深まっていくよう十分な時間を保障する

・協働的に学ぶ場面を意図的に設定する

・子ども同士がつながる手立てをとっていく

・子どもの思考の流れを可視化するために思考ツールを活用する

・目標達成に困り感のある子どもへの支援の手立てを明らかにする

・子どものよりどころとなるアイテムを用意する(既習事項、ipad、資料)

・概ね到達できた児童への発展的な課題や、「揺さぶり」を工夫する

・思考の収束、または拡散への具体的な手立てを工夫する

・交流が自力解決の発表会にならないよう、交流の視点を明確にし、相互交流が生み出されるよう工夫する

・子どもの言葉を生かしながらまとめをする

▼終末(一~三分)

▽子どもの思考の流れ

・自分の学びの姿や学びの価値、学びの定着を振り返る

▽指導上の留意点

・自分の学びの姿や学びの価値について振り返らせ、つぎの時間への期待をもたせたり、意欲化を図ったりする

・単元全体との関係を確認させる

◆「振り返り」重視(B―③)

 「対話」する場面で得た知識を、しっかり自分のものとして確立するためには、文字言語を中心とした振り返り(リフレクション)の場面が重要となる。振り返りの要素として、今までと同じような「内容」に対しての振り返り「学習の自覚化」に加えて、「学び方」に対しての振り返り「学びの実感」が重要である。「振り返り」場面でも質の転換が必要になり、各教科や単元、学習内容に応じて振り返りのポイントを絞ることも考えられる。

また、友達との学びで得られた充実感や一体感等も含め、学びの手応えを連続的に感じることで、さらに、学びに向かう力が強まり、資質能力が発揮できると考えている。

▼導入(三~五分)

▽子どもの思考の流れ

・前時までに獲得した知識や技能等について確認する

・提示された事実等によって、既習の知識や技能では対応できないことを本時の問いとして明らかにする

・既習の知識と組み合わせて課題を解決するために必要な情報を選択し、解決への方向や方法を見通す

▽指導上の留意点

・本時の追究意欲や学ぶ必然性に関係する知識と技能について確認する

・既習の知識だけでは解決できない新たな事実を提示することによって、課題解決への意欲をもたせる

・課題解決のために必要な条件などを明らかにし、子どもたちが方向や方法に見通しがもてるよう適切な資料提示や助言等を行う

▼展開(二十~三十五分)

▽子どもの思考の流れ

・課題の自力解決に向け、必要な資料を集めたり、操作したりして得られた結果や既習内容を用いながら思考判断する

・解決した方法や内容について、小グループ等で表現し合い、自力解決した内容の修正や補強を行う

・課題解決に向け、学級全体で既習内容や技能だけでは解決できなかったことについての考えを交流し合い、協働的に学習課題を解決する

・自らの言葉で課題解決した内容をまとめる

・学習内容をまとめる

▽指導上の留意点

・見通しの段階で提示された方法や既習内容、必要な資料等を示しながら、個々に一定の自力解決が図られるよう配慮する

・小グループ内での発表会にとどまらず、方法や内容を互いに評価できるよう、短時間で視点を絞った交流となるよう工夫する

・個別に解決した内容が関係付くような発問や資料提示などを行い、課題が協働的に解決されるようなかかわり方を吟味する

・課題に対して集団解決した内容を自分の言葉でまとられるよう促す

・解決した内容を揺さぶったり、視点を変えた見方を促したりするような資料や事実の提示を行い、まとめた内容が補強されたり、考え方が高まったりするようなかかわり方を工夫する

・ここでのまとめは、児童が獲得した知識を教師の意図的な意味付けを反映させて、一般化するよう工夫する

・生活や社会、未来とのつながりを意識した働きかけを工夫する

▼終末(三~五分)

▽子どもの思考の流れ

・獲得した知識、技能、身に付けた資質能力を自覚したり共有する

▽指導上の留意点

・高まった見方や考え方を具体的に示し、身に付いた資質能力を自覚できるような自己評価活動を促す

(道・道教委 2016-04-07付)

その他の記事( 道・道教委)

ミニ道研開催日程

【「管内研修センター等連携」研修講座(ミニ道研)】=①内容・前半(カッコ内対象校種)②内容・後半(カッコ内対象校種)③会場 ▽空知=7月12日―①校内研究・研修(小中高)②情報モラル教育(...

(2016-04-08)  全て読む

受講条件示した講座開設 理科(小)を全道6会場で 道研が6月1日スタート

 道立教育研究所の二十八年度研修講座日程がまとまった。小・中学校、特別支援学校を対象とした六月一日の「道徳教育」を皮切りに、地域開催を含め五十三講座を開催する。  本年度の事業推進に当たっ...

(2016-04-08)  全て読む

道教委の28年度執行体制

 道教委の二十八年度執行体制はつぎのとおり(▼は課長級以上、敬称略)。 ▼教育長 柴田達夫 ▼教育部長(兼)教育職員監 杉本昭則 ▼学校教育監 梶浦 仁 ▼教育指導監 菅原行彦 ▼...

(2016-04-07)  全て読む

各教育局の28年度執行体制

 二十八年度の十四教育局執行体制はつぎのとおり。=敬称略= 【空知教育局】 ▽局長 小山茂樹 ▽次長 平瀬一弘 ▽義務教育指導監 中井清一 ▽企画総務課長 国安 隆 ▽総務係長 ...

(2016-04-07)  全て読む

道総合教育担当班28年度執行体制

 道総合政策部政策局の総合教育担当班は、本年度、新任の佐々木徹局長のもと、参事・主幹・主査・主事を合わせて八人体制で職務に当たる。  地方教育行政の組織および運営に関する法律(地教行法)の...

(2016-04-07)  全て読む

27年度青少年の意識・意見調査結果報告書―道 相談相手は「友達」が65.2%で最多 「いない」は7.8%と増加傾向

 道は、二十七年度青少年の意識・意見調査結果報告書をまとめた。悩みごとを相談する相手は、「友達」が六五・二%と最も多く、「相談相手がいない」は七・八%で増加傾向にある。「ネット・携帯だけの友...

(2016-04-07)  全て読む

地域の災害対応能力向上で道 避難所運営ゲーム作成 全市町村に配布、講師養成研修も

 道は、「避難所運営ゲーム(HUG)北海道版」を作成した。地域住民や教職員が避難所運営を疑似体験し、真冬の避難生活の過酷さを認識できるゲーム。地域の災害対応能力の向上をねらう。二百五十セット...

(2016-04-07)  全て読む

学校司書の配置促進で道教委 教科指導の支援など提示 実務中心に初の手引を作成

道教委学校司書の手引  道教委は、『学校司書の手引』=写真=を作成した。道教委の二十七年度新規事業「学校司書配置促進事業」の一環で、初めて作成したもの。「教科指導等への支援の在り方」など六章構成で、実務的な内容を...

(2016-04-07)  全て読む

道立文学館28年度展覧会日程 「佐藤泰志の場所」など

 道立文学館の二十八年度展覧会日程がまとまった。特別展は「〈青春の記憶 夢みる力〉佐藤泰志の場所(トポス)」など四本開催する。ファミリー文学館は「ワン!ニャン!どっちも大好き」を開催し、親子...

(2016-04-07)  全て読む

特別展5事業を計画 道立函館美術館28年度実施計画

 【函館発】道立函館美術館は、二十八年度の展覧会事業の実施計画をまとめた。本年度、開館三十周年を迎えるに当たって、道内外から多くの人に来館してもらえるよう、魅力ある事業展開を計画。特別展では...

(2016-04-06)  全て読む