1定道議会本会議の質問・答弁概要(28年3月4日)(道議会 2016-04-15付)
一定道議会本会議(三月四日開催)における大河昭彦議員(北海道結志会)、志賀谷隆議員(公明党)、真下紀子議員(日本共産党)の代表質問、および柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。
◆学校運営協議会制度の活用
大河議員 学校と保護者や地域の人々がともに知恵を出し合い、一緒に協議しながら、学校運営に意見を反映させることで、子どもたちの豊かな成長を支え、地域とともにある学校づくりを進める仕組みがコミュニティ・スクール。そして、この制度は、「いじめ」や「不登校」等、学校を取り巻く様々な問題の解決に有効に役立つと考えられるが、所見を伺う。
また、北海道教育推進計画では、コミュニティ・スクールを二十九年度までに、小・中学校一〇%に導入するとしているが、昨年出された北海道総合教育大綱においては、北海道の全地域において、コミュニティ・スクールの導入を進めることを明確にしていることから、今後、さらなる推進を図るべきと考えるが、併せて伺う。
柴田教育長 コミュニティ・スクールについて。コミュニティ・スクールは、地域住民が学校運営に参画し子どもの成長を支えることによって、「地域とともにある学校づくり」や地域コミュニティづくりを進める上で有効な手立てであり、先進的に導入した学校においては、特色ある学校づくりが進むとともに、教職員の意識改革やいじめ、不登校など、生徒指導上の課題の解決などの成果も挙げられており、学校運営の改善・充実に資する取組であると考えている。
道教委としては、これまでも、小・中学校の一割を目指して、その導入に取り組んできており、少子化が進む中、学校・家庭・地域が協働し、本道の未来を拓く人材を育成するための持続可能な仕組みとしてコミュニティ・スクールの活用が広がるよう、これまで開催してきた制度を周知するための説明会を今後、充実させるとともに、道内外の先進事例を発信する全国的なフォーラムを開催するなど、各学校への導入促進に向けた取組を強化していく考えである。
◆フリースクールの必要性
大河議員 何らかの理由で学校に行くことができない、行かない、行きたくても行けない子どもたちが、学校以外で学ぶ場所として、いわゆるフリー・スクールがあるが、「クラスでいじめられる」「先生が苦手」「学校が嫌い」など、原因は様々である。不登校や引きこもり、軽度の発達障がい、身体障がい、知的障がい等の事情をかかえるたくさんの子どもたちを受け入れ、学びの場となっている。
安倍首相は、今国会の施政方針演説で、「このような子どもたちが、自信をもって学んでいける環境を整えると表明するとともに、フリースクールへ通う子どもたちへの支援に初めて踏み込む」と言明した。一人ひとりの個性を大切にする、教育再生を進めていく決意のほどを示した。
そこで、いわゆるフリースクールについて、どのような認識をもっているか。また、フリー・スクールに通う子どもに対する支援について、所見を伺う。
柴田教育長 フリースクールについて。フリースクール等の民間の施設については、子ども一人ひとりの状況に配慮しながら、学習指導や自然体験など多様な取組がなされており、こうした活動を通して、不登校の児童生徒が学校へ復帰した事例もあるなど、悩みや困難をかかえる子どもたちの自立に向けた学びの場として、一定の役割を果たしているものと考えている。
現在、国において、不登校児童生徒に対する教育機会の確保等についての検討が進められており、道教委としては、こうした国の動きを注視しつつ、フリースクール等民間の相談・指導施設とも懇談を行いながら、子ども一人ひとりの教育機会の確保や学びの充実に向けた支援の在り方などについて検討を行っていく考えである。
◆教育行政執行方針について
志賀谷議員 今日、いじめや不登校など、子どもたちを取り巻く環境は多様化・複雑化しており、また、学校現場でも、様々な課題を抱えているものと考える。
教育長は、先の教育行政執行方針の中で、「子どもたちには、ふるさと北海道に誇りをもち、生涯にわたって生き抜く力を身に付けさせることが求められている」などと述べている。
具体的に、どのような重点的な取組を展開しようとしているのか、所見を伺う。
柴田教育長 二十八年度の重点的な取組について。人口減少の加速化やグローバル化など社会が急激に変化する中で、子どもたちに、生涯にわたって生き抜く力を身に付けさせるためには、学校・家庭・地域・行政が連携して教育環境の一層の充実に努めることが重要であると認識している。
このため、二十八年度においては、子どもたちの学力・体力の向上、望ましい生活習慣の定着、いじめの問題に引き続きしっかりと取り組むとともに、教育の質が地域によって異なることがないよう、ICT機器を活用した遠隔授業の拡充、生まれ育った地域に誇りをもちながら、世界にも目を向け、貢献していくことができる人材の育成、さらには、学校の運営に地域の方々が参画していくコミュニティ・スクールの導入促進などを、知事部局とも連携して、重点的に進めていく考えである。
道教委としては、「北海道の子どもたちは、道民の手で、地域全体で育んでいく」という認識のもと、本道教育の一層の充実・発展に取り組んでいく。
◆ICT活用した教育の推進
志賀谷議員 近年、情報通信技術、いわゆるICTが様々な分野で広く活用されている。こうした急速に進展する情報化社会で主体的に活躍できる人材を育成するためにも、教育現場におけるICT環境の整備促進が急務と考える。
来年度、具体的にどのような取組をするのか、所見を伺う。
柴田教育長 ICT環境の整備について。ICTの活用は、子どもたちの興味や関心を高めるとともに、分かりやすく、効率的な授業の実現など、教育の質の向上を図る上で有効であることから、効果的な導入と、一層の活用を進める必要があると認識している。
このため、道教委では、本年度から、地方創生交付金を活用して、小中高校十校程度を指定し、実物投影機やタブレット端末などのICT機器を実践的な授業に活用する取組を始めた。
二十八年度においては、本事業の取組をさらに進め、指定校における成果を発表する公開授業や実践交流会の開催、高校におけるICTを活用した遠隔授業の拡充および小・中学校における遠隔授業の試行、さらには、遠隔技術を活用して行う、教員研修の実施方法の研究などを行うこととしている。
道教委としては、こうした取組の成果を全道に普及しながら、教育の質の向上に向け、ICT環境の整備促進に取り組んでいく考えである。
◆特別支援教育の充実
真下議員 標茶町を訪ね、全国一の敷地を有し、酪農をはじめ様々な実習施設をもつ標茶高校に、釧路養護学校の分校設置を求めている方々から直接、話を伺ってきた。標茶町では、障がいのある子どもたちの保護者を中心に、子どもたちの成長に合わせて、放課後の居場所づくりや学習支援、発達相談などに積極的に取り組んできた先進的経過があることが分かった。
ところが、高等部入学になると、今は四十㌔㍍離れた寄宿舎生活しかない。子どもたちが自宅から身近な高等部に通学し、卒業後も地元で働き、暮らしたいと強く願っていることを伺ってきた。
教育長は、昨年十二月に分校設置等の要望を直接受けているが、保護者の思いと期待をどのように受け止めたのか伺う。
柴田教育長 特別支援学校高等部の設置について。昨年十二月に、標茶町の住民や関係団体などから、標茶高に釧路養護高等部の分校設置を求める要望を、署名とともにいただいた。
標茶町では、障がいのある子どもに対する早期からの一貫した相談・支援体制の充実に取り組んできており、このたびの要望については、「義務教育を終えたあとも、生まれ育った地域で子どもたちを学ばせたい」という、保護者や地域の方々の強い思いの表れであると受け止めている。
特別支援学校の配置に当たっては、できるだけ身近な地域において専門的な教育を受ける機会を確保するとともに、効果的な学習や集団活動を行うための教育環境を確保することも重要であることから、道教委としては、今後とも、児童生徒の在籍状況やその推移、さらには、地域の実情などを十分踏まえ、検討を行っていく考えである。
真下議員 近年、高校における特別支援教育の推進が重要な課題になっているのに対し、現行制度上、高校においては、教育課程の弾力的運用を行うことはできるが、小・中学校の通級による指導や特別支援学級のような特別な教育課程の編成を行うことができない。
このため、中央教育審議会等においても、特別の教育課程の編成に関する検討の必要性が指摘されており、現在、文部科学省では、高校における通級による指導の制度化を見据えた特別な教育課程の編成について検討していると承知しているが、このような国の動きを踏まえ、本道における高校の特別支援教育の在り方について、道教委としてどのように考えているのか、見解を伺う。
柴田教育長 高校における特別支援教育について。国においては、インクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、児童生徒等それぞれの教育的ニーズに的確に応える、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であるとの考え方のもとで、現在、高校における特別な教育課程の編成の制度化について、検討が進められている。
道教委としては、こうした国の動向を注視しつつ、本道の高校における特別支援教育の在り方を検討するため、昨年四月に、外部有識者等で構成する検討委員会を設置し、地域特性を踏まえたインクルーシブ教育システムの構築、通級指導教室の必要性とその役割などについて、検討を進めており、今後は、こうした検討や高校における調査研究の状況なども踏まえ、生徒の自立や社会参加に必要な力を育成するという観点から、高校における特別支援教育のなお一層の充実に取り組んでいく考えである。
― 指 摘 ―
真下議員 地元・標茶町で聞いた母親たちの言葉を届けたい。
母親の一人は、「家族で、このまちで一緒に生きていきたい。このまちのために、この子と一緒に生きていきたい」と話していた。また、「障がいのある子どもは、自分自身の生きづらさや、自分の気持ちを伝えられないつらさがある。親は後ろめたさや、隠したいとも思っている。でも、標茶のお母さんたちが、何度も壁を取り払って頑張ってきたのをみて、頼ってもいいのかなと思えるようになった」と涙を拭いながら話していた。
母親たちが立ち上げたNPO法人には、若い専門職の職員が何人も雇用され、移住してきて結婚し、子どもも生まれている。「一人ひとりの住民が主役になって、この土地にとどまって家族で生活を営んでいきたい」と話していた。
教育長と道教委の皆さん、そうした親たちの気持ちをしっかりと受け止め、一日でも早く、その期待に応えることを強く求めておく。
◆18歳選挙権等について
真下議員 十八歳選挙権の実現によって、さらに広い民意が反映されることは、民主主義の発展につながるものであり、若者の政治参加を広げる大きな転機にもなる。十八歳選挙権が実施される意義について、見解を伺う。
柴田教育長 選挙権年齢の引下げについて。選挙権年齢を十八歳以上に引き下げることとした、このたびの法改正は、将来、わが国を担っていく世代である若い人々の意見を、国の在り方を決める政治に反映させていくことが望ましいという考え方に基づくものであると認識をしている。
道教委としては、生徒が有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう、各学校に対し、政治参加の重要性や選挙の意義について理解を深め、様々な課題を多面的・多角的にとらえ、根拠をもって自分の考えを主張しつつ、他人の考えに耳を傾け、合意形成を図っていくという政治的教養を育む教育の一層の充実を図るよう指導していく考えである。
真下議員 文科省の通達では、高校生の政治的活動は「必要かつ合理的な範囲で制約を受ける」としている。しかし、主権者に対して政治的活動の自由は最も尊重されるべきものであって、決して法律で禁止されるものではない。
道教委は、高校生の政治活動を学校への届け出制にすることに対して、「各校ごとに判断する」と報道されているが、主権者として政治活動の自由が抑圧されたり、萎縮が出るようなことはあってはならない。
主権者たる高校生の思想信条や政治活動を行う自由を道教委として、どのように保証していくのか伺う。
柴田教育長 高校生による政治的活動等について。このたびの法改正によって、十八歳以上の生徒が有権者として選挙権を有し、選挙運動を行うことが認められることとなったことから、国の通知においては、放課後や休日等に学校の構外で行われる高校生による政治的活動等については、家庭の理解のもと、生徒が判断し、行うものとしているが、生徒の学業や生活などに支障があると認められる場合や、学校教育の円滑な実施に支障があると認められるなどの場合には、学校において適切に指導を行うことが求められている。
道教委としては、こうした考え方を十分踏まえ、生徒の政治的教養が適切に育まれるよう、家庭や地域と連携しながら、各学校において、適切に指導を行うことが必要であると考えている。
(道議会 2016-04-15付)
その他の記事( 道議会)
1定道議会予算特別委の質問・答弁概要(28年3月17日)
一定道議会予算特別委員会第二分科会(三月十七日開催)における千葉英也委員(自民党・道民会議)の質問、および柴田達夫教育長、山本広海教育部長(当時)、梶浦仁学校教育局長(当時)、菅原行彦学校...(2016-05-12) 全て読む
1定道議会一般質問の質問・答弁概要(28年3月11日)
一定道議会一般質問(三月十一日開催)における中司哲雄議員(自民党・道民会議)、村木中議員(自民党・道民会議)、藤沢澄雄議員(自民党・道民会議)の質問、および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長の...(2016-05-11) 全て読む
1定道議会一般質問の質問・答弁概要(28年3月10日)
一定道議会一般質問(三月十日開催)における中川浩利議員(民主党・道民連合)、広田まゆみ議員(民主党・道民連合)、久保秋雄太議員(自民党・道民会議)の質問、および柴田達夫教育長の答弁の概要は...(2016-05-10) 全て読む
1定道議会一般質問の質問・答弁概要(28年3月9日)
一定道議会一般質問(三月九日開催)における内田尊之議員(自民党・道民会議)、丸岩浩二議員(自民党・道民会議)の質問、および柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。 ◆政治への関心高める...(2016-05-06) 全て読む
1定道議会本会議の質問・答弁概要(28年3月8日)
一定道議会本会議(三月八日開催)における塚本敏一議員(自民党・道民会議)、川澄宗之介議員(民主党・道民連合)、安住太伸議員(北海道結志会)の一般質問、および柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎ...(2016-04-21) 全て読む
1定道議会本会議の質問・答弁概要(28年3月3日)
一定道議会本会議(三月三日開催)における柿木克弘議員(自民党・道民会議)、高橋亨議員(民主党・道民連合)の代表質問、および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。 ◆高...(2016-04-14) 全て読む
道議会文教委の質問・答弁概要(28年2月25日)
道議会文教委員会(二月二十五日開催)における川澄宗之介委員(民主党・道民連合)の質問、および山本広海教育部長(当時)、秋山雅行総務政策局長(当時)、馬橋功教職員課長(当時)の答弁の概要はつ...(2016-04-13) 全て読む
道議会文教委の質問・答弁概要(28年2月25日)
道議会文教委員会(二月二十五日開催)における佐々木恵美子委員(民主党・道民連合)の質問、および杉本昭則学校教育監(当時)、佐藤和彦学校教育局特別支援教育担当局長(当時)、小原直哉特別支援教...(2016-04-12) 全て読む
道議会文教委の質問・答弁概要(28年2月25日)
道議会文教委員会(二月二十五日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、川澄宗之介委員(民主党・道民連合)の質問、および杉本昭則学校教育監(当時)、成田祥介新しい高校づくり推進室長(...(2016-04-11) 全て読む
道議会文教委員会(28年4月5日) 投票日に留意して行事日程の設定を 18歳選挙権の対応で道教委
道議会文教委員会(五日)では、十八歳選挙権にかかわる道教委の対応について質疑が行われた。 河原範毅高校教育課長は「学校行事等によって、生徒が投票日当日に投票することが困難となる場合も考...(2016-04-07) 全て読む