1定道議会一般質問の質問・答弁概要(28年3月10日)(道議会 2016-05-10付)
一定道議会一般質問(三月十日開催)における中川浩利議員(民主党・道民連合)、広田まゆみ議員(民主党・道民連合)、久保秋雄太議員(自民党・道民会議)の質問、および柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。
◆主権者教育について
中川議員 七月実施予定の参議院通常選挙から、有権者が十八歳以上に拡大される予定である。選挙や民主主義など、具体的に学生に勉強させる機会を提供する主権者教育について、現在どのように実施されているのか伺う。
柴田教育長 政治的教養を育む教育について。このたびの法改正によって、選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられ、学校においては、政治的教養を育む教育を一層推進することが求められている。
高校などにおいては、これまでも、学習指導要領に基づき、公民科の授業において、政治参加の重要性や選挙の意義についての理解を深める学習を行ってきているが、昨年九月、国から、有権者として身に付けるべき資質や選挙の実際、議員や政党の果たす役割などについての解説や実践的な学習内容を紹介した高校生向けの副教材『私たちが拓く日本の未来』が各高校などに配布された。
現在、各学校では、この副教材を活用して、これまでの学習に加え教科「公民科」や、総合的な学習の時間などにおいて選挙管理委員会などと連携した出前講座や模擬選挙等の実践的な学習などを実施している。
中川議員 政治は実生活に広範に作用を及ぼすものであり、理念や概念を超えて、自らの日常と密接不可分であることを伝えるためには、教員の指導力を信頼し、政治的中立については配慮しつつも、現実に起こっている政治的な事象、背景について積極的に取り上げ、解説など指導することが必要であると思うが、教育長の見解を伺う。
柴田教育長 学校での指導内容について。このたびの選挙権年齢の引き下げなどを契機として、高校生には国家・社会の形成者としての資質や能力を育むことが一層求められており、授業において、民主主義の意義や選挙の仕組みなどの政治や選挙に関する知識に加えて、現実の具体的な政治的事象も取り扱い、有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう、具体的かつ実践的な指導を行うことが大切であると考えている。
なお、そうした授業において、政治的に対立する見解がある現実の課題を取り上げる場合には、学校は政治的中立性を保ちつつ、政治的教養を育む指導を行う必要があり、その際には、生徒が個人として、多様な見方や考え方の中で自分の考えを深めることができるように、冷静で理性的な議論が行われるよう留意することが大切であると考えている。
中川議員 主権者教育として重要なのは、地域や社会と自分自身が有機的につながっていて、社会の一員として尊重され、また、責任を負って生きているということを再確認することではないかと考える。
そういった観点から、教室を出て、広く社会で学ぶ機会を増やすとともに、地域の課題解決の方法を学習するため、地方議会、役所などの単純な訪問・視察を超えた学習機会の提供を行うべきと考えるが、見解を伺う。
柴田教育長 実践的な指導の充実について。高校生が政治や選挙に関する理解を深め、わが国や地域の課題を理解し、課題を多面的・多角的に考える学習の機会を設けることは大切なことであると考えている。
道内の高校などにおいては、これまでも議会の仕組みを理解し、地域社会への関心を高めるための模擬議会や、町の問題点とその解決方法を「総合的な学習の時間」の中で考え、町に提言する「子ども会議」などの実践的な取組が行われている。
道教委としては、『教育課程編成・実施の手引』や指導資料でこうした学習活動の事例を掲載し、普及を図るとともに、教員を対象に、選挙管理委員会の事務局の職員を講師とした研修なども行っており、今後とも、地域の課題などについて生徒が自ら学ぶ実践的な指導事例や関係機関と連携した取組について情報収集を行い、各学校へ提供するなどして、政治的教養を育む教育の一層の充実に努めていく考えである。
◆日本遺産認定に向けた取組
広田議員 本道は、蝦夷地から北海道へと近代化の新たな時代を迎える過程において、移民による急激な人口増や海外からの技術移転によって、急速な産業化を迎え、そこには、先人たちのたゆまぬ努力があった。私は百五十年を一つの契機とし、文化庁による日本遺産認定の機運、北海道遺産の磨き上げをし、地道に本道の歴史研究や文化資源の保全や発信のために活動してきた方々の実践や知見に光が当たるような取組が必要だと考える。
本道は歴史がないと言われるが、縄文時代から続く歴史や北前船の往来のように、北海道のニシンからつくる肥料が日本の伝統工芸品を支えてきたことなども、日本遺産の一つのストーリーとして他府県とも連携しながら、本道から発信していく大きな契機とすべきと考えるが、見解を伺う。
柴田教育長 日本遺産の認定に向けた取組について。本道には、北東北三県とともに世界遺産の登録を目指している縄文遺跡群をはじめ、歴史的魅力にあふれ国内外に発信できる多くの文化遺産があるものと認識している。
中でも、北前船については、日本海側の寄港地の連携や地域間交流による地域活性化を図るため、平成十九年度から民間団体や関係市町村による「北前船寄港地フォーラム」が開催されてきており、これまでの連携を基盤として、日本遺産の認定実現を目指し、函館市を含む道内外の市町村などで構成する協議会の設立を検討している動きもあると承知をしている。
道教委としては、江差町や小樽市などそれぞれ地域の文化財群による日本遺産の認定を目指す市町村の取組を今後とも積極的に支援するほか、道内の複数市町村にまたがる取組や他府県との連携についても、引き続き情報収集に努めるとともに、関係自治体の意向を十分把握した上で、ことし二月に設置した観光や地域振興など関係部局で構成する「日本遺産連絡調整会議」において、必要な対応や支援について検討していく。
◆強みを生かす人材育成
広田議員 学校運営協議会の導入は、本道において著しく導入率が低く、地域に開かれた学校運営のために推進することは、当然と考えるが、なぜ、多くの課題がある中で、学校運営協議会が重点とされているのか、学校運営協議会の導入によって、子どもたちの未来のためにどのような変化を学校や地域に期待し、実現しようとしているのか伺う。
柴田教育長 コミュニティ・スクールについて。人口減少や少子高齢化など、社会が急激に変化する中、子どもたちには、これからの時代を生き抜く力を育むためには、学校と地域が目標や課題を共有しながら地域総がかりで子どもたちを育むことが重要である。
このため、道教委としては、地域住民が学校運営に参画するコミュニティ・スクールを導入することによって、学校においては、地域住民の連携・協力を得て、地域の文化や産業、自然などを活用した教育活動の充実が図られ、子どもの学びの広がりや学習意欲の向上が期待されるとともに、地域においては、学校に対する理解を深め、学校を中心とした地域のネットワークを形成するなど、地域づくりの促進が期待されるものと考えている。
―指摘―
広田議員 確かに、開かれた学校運営は重要である。これまで私自身、教室炊飯などの学校給食の在り方や、部活動指導における外部指導者の導入、学校図書館の開放、アウトドア教育の導入など、地域からの様々な学校との協働・連携にかかわる要望に携わってきたが、残念ながら、決して簡単ではなく、閉鎖的な印象を受けたことも一度ではない。
これまで総合的な学習の時間などを活用して、個別の教職員などの努力によって、学校と地域の連携が図られていた面があると、認識をしている。その中で、総合的な学習の時間が減少し、教科教育の重視の傾向に、私としては、危惧をもっていた。
道教委としては、ウェブページなどの活用や、各種研修会を通じて、指導助言しているとのことだが、知事・教育長が、重点としてこだわる学校運営協議会の推進においても、私としては、教科学習以外の総合的な学習の時間の有効活用や、体験活動の推進、また、日本においては、学習指導要領に現在位置付けられていないアウトドア教育なども、保護者の側の意識改革も必要ではあるが、地域発、北海道発の新たな挑戦として、あと押しされるような仕組みが、その中においても検討されるべきである。
広田議員 北海道の強みを生かす人材育成を国内外に発信していくためには、具体的には、体験活動の強化が重要だと考える。
ところが、現実的には、現行の学習指導要領では、二十年度以降から、教科重視の傾向が高まり、総合的な学習の時間が減少している。体験活動についても現在の学習指導要領における位置付けは薄いと言わざるを得ない。総合的な学習の時間のもつ意義と現在の総合的な学習の時間の活用状況、今後の取組についてどのように考えるか伺う。
併せて、体験活動の現状と推進に向けた考え方について教育長に伺う。
柴田教育長 総合的な学習の時間における体験活動などについて。総合的な学習の時間は、変化の激しい社会に対応して、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、より良く問題を解決する資質や能力を育成することなどをねらいに、探究的な学習として、例えば、道内の小学校では「地域の人々の暮らし」や「環境教育」などにかかわる課題などの解決、また、中学校では「キャリア教育」や「地域の歴史・産業等」にかかわる課題などの解決に向け、体験活動を取り入れた学習が行われている。
二十年の学習指導要領の改訂において、授業時数の見直しが行われたが、総合的な学習の時間以外においても、各教科等の指導内容に応じ、自然体験やボランティア活動、ものづくり、生産活動などの体験活動が行われている。
道教委としては、今後とも、各学校において取り組まれている体験活動が学習のねらいを踏まえて効果的に実施されるよう、優れた事例を取りまとめ、指導のポイントとともに道教委のウェブページに掲載するほか、各種の研修会などを通じて指導助言を行っていく。
◆専門高校での特色ある取組
久保秋議員 道教委では、つぎの時代の地域産業を担う、専門的職業人を育てるため、二十七年度から三ヵ年計画で「専門高校プログレッシブ・プロジェクト推進事業」を進め、大学や試験研究機関、企業等と連携し、先進的な実践研究を行う研究指定校を置くこととしたと承知している。
紋別高校では、「カキの貝殻が排水の浄化に効果があるなら、地元のホタテの貝殻も効果が得られるのではないか」という発想から始めた研究や、ホタテの貝殻を粉砕する装置の改良が必要だという地元の声を受けた研究に、北見工業大学や地元の水産加工業協同組合と連携した取組を進めている。
専門学科を置くすべての高校が、大学や企業などと連携しながら、それぞれの地域特性や産業課題に目を向けた教育活動に取組、地域になくてはならない学校になることが大切であると考えるが、見解を伺う。
柴田教育長 専門高校における特色ある取組について。道教委では、専門高校における教育の充実を図る上で、地域との連携は極めて重要なものと考えており、二十七年度から「専門高校プログレッシブ・プロジェクト推進事業」を実施し、職業学科などを設置する道内八校の研究指定校において、地域の大学や試験研究機関、企業などと連携しながら、それぞれの学科の特性に応じた先進的・先導的な実践研究に取り組んでいる。
実践研究の具体例としては、先ほど議員から紹介のあった、紋別高におけるホタテの貝殻を水質浄化剤として活用するための研究をはじめ、釧路商業高校では、地元の景勝地を紹介するスマートフォン用アプリの開発、また、総合学科の美唄尚栄高校では、アスパラガス等の規格外の農産物を活用した商品の開発などが行われている。
道教委としては、今後、指定校における実践研究のより具体化を図るとともに、こうした取組をまとめた事例集を実施期間中、毎年度作成して、道内の高校に配布するなどして、地域と連携した教育活動の一層の充実に努め、地域の未来を担う人材の育成に取り組んでいく。
(道議会 2016-05-10付)
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