道議会文教委の質問・答弁概要(28年3月23日)(道議会 2016-06-28付)
道議会文教委員会(二十八年三月二十三日開催)における丸岩浩二委員(自民党・道民会議)の質問、および山本広海教育部長、秋山雅行総務政策局長、梶浦仁学校教育局長、馬橋功教職員課長、野﨑弘幸教職員課服務担当課長、岸小夜子義務教育課長の答弁概要はつぎのとおり(役職等はすべて当時)。
◆教科書発行者の調査報告
丸岩委員 教科書発行者の教科書採択ルールに抵触をする行為を巡る問題については、子どもたちが、学校の授業で必ず用いるものであることから、二月の本委員会での報告時にも私から質問し、調査に万全を期することと、再発を防止するための手立てを講じることなどを指摘した。
また、定例会の一般質問や、予算特別委員会でもわが会派の同僚議員が取り上げ、教育長の見解を伺った。
この問題については、世論も大変厳しい見方をしており、相応の処分が必要であると考える。
処分に関する決定は、今後の取組として、事実関係などをさらに精査をしてから判断するとのことなので、その結果については、後日あらためて伺うこととして、ここでは報告の内容にかかわり数点伺う。
同調査の結果は、道教委から文部科学省へ三月二十日に調査結果を報告され、その後、新聞等で掲載されているが、報道では、延べ三百八十人もの教員等が謝礼を受け取っていたことを大変問題視しているように感じている。
教科書の採択には影響はなかったようだが、教科書発行者が規則に反して、教員等に検定中の教科書を閲覧させてしまったことに問題があるものの、教員という立場にありながら、教科書について意見を述べて謝礼をもらったという行為は、道民からみれば、不信感をもたざるを得ないのではないかと考える。
そこで、道教委は、このたびの調査結果で延べ三百八十人もの人たちが、謝礼を受け取っていたこと、この事実が明らかになったことに対してどのように受け止めているのか伺う。
山本教育部長 教科書発行者による自己点検・検証結果の報告に関する調査結果について。検定中の申請本を閲覧させる行為は、文科省が定める「教科用図書検定規則実施細則」で禁止をされており、道教委としては、教科書は、すべての児童生徒が学校の授業や家庭における学習活動において必ず用いることになる極めて公共性の高いものであり、こうした教科書を閲覧し、意見を述べ、謝礼を受け取っていた者が三百八十人もいたことが明らかになったことは、誠に遺憾であり、重く受け止めている。
丸岩委員 報告書には、申請本を閲覧した行為等、その対象者として、「閲覧をしたものや時期が規定に反しないことが確認された者」という区分があるが、これはどういった意味か伺う。
岸義務教育課長 報告書の記載内容について。このたびの調査においては、申請本を検定期間中に閲覧させるという行為が規定に反していることから、教員等が閲覧したものや時期を個別の聴き取りの中で明確にする必要があり、検定中の申請本ではなく、当時、実際に子どもたちが使用している教科書を閲覧した者、または、検定期間以外の時期に閲覧した者を「閲覧したものや時期が規定に反しないことが確認された者」とし、検定期間中に申請本や、その指導書、または、それらのコピー等を閲覧した者は、「閲覧したことが確認された者」として区分した。
丸岩委員 このたびの調査では、答弁にあった「閲覧したことが確認された者」、すなわち、禁止されている期間内に申請本やそのコピー等を閲覧した教員等が問題となっていると認識をしている。その人たちの中で、謝礼を受け取った対象者は、どの程度の金額を受け取っていたのか伺う。
岸義務教育課長 受け取った金額について。このたびの調査では、教員等が申請本を閲覧し、その対価として受け取った金品の額は、二~三千円から二万円である。
丸岩委員 申請本を閲覧し、金銭を受領することは不適切であったことを知っていたり、あとで分かったりした場合、謝礼金を受け取った教員の中には、すでに返金をした者もいると考えられるが、そういった事実関係について伺う。
岸義務教育課長 返金の状況について。教科書発行者から金品を受け取った教員等の中には、例えば、口座に振り込まれていたのですぐに返金した、車代として渡されたが多額だったので返金した、事案が発覚し、受け取ってはならない金銭であることが分かり、直ちに返金をしたなど、ほとんどの教員等が返金しており、調査中に返金をしていなかった者も、「近日中に返金する予定」という回答だった。
丸岩委員 返金をしても業者から金銭を受領したという事実は変わらず、決して許されるものではない。予算特別委員会では、法律要件を考えれば「収賄」に当たらないという答弁があった。しかし、教育職として倫理的な面からみた厳しい批判があることを踏まえれば、法律論もさることながら、教育者の行動として適切であったかどうか、そういった面からの判断も必要と考えるが、見解を伺う。
秋山総務政策局長 このたびの教員等の行為について。子どもたちの教育に直接携わる教員の果たす役割は極めて大きく、子どもたちや保護者の願いに公正・公平・誠実に対応し、信頼される存在であることが求められることから、閲覧させることを禁止されている検定中の教科書を閲覧し、意見を述べ、謝礼を受け取ることは、公正性・透明性が求められる教科書採択に当たっての信頼を損ね、地方公務員法の信用失墜行為に該当するものと考えている。
なお、現在、それぞれの事案について具体的な内容の把握・確認を進めており、ただ今、申し上げた考えのもと、処分の内容などについて検討している。
丸岩委員 先ほどの調査結果の報告で課題として述べていたが、申請本の閲覧及び金銭の受領を含めた教科書採択にかかわる制度等については、教員はあまり理解をしていなかったということが明らかになった。
このたびの事案は、先生方が教科書制度について理解をしていれば、未然に防ぐこともできたのではないかと考える。先生は日々、授業研究を中心に指導内容や指導方法等に関する校内研修を通じ指導力の向上を図っているようだが、教科書制度や教職員の服務、公務員倫理などに関する内容は、教員に採用されてから深く学ぶ機会がなかったものと考える。
道教委は今後の再発防止に向け、指導通知を発出するとのことだが、それと併せて、初任段階教員研修や十年経験者研修などの節目でも繰り返し指導するなどして、教科書制度や教職員の服務などについて理解を徹底するべきと考えるが、道教委の見解を伺う。
梶浦学校教育局長 教員研修について。このたびの調査を通して、教員等が教科書採択に関する法令や国の指導通知などについての理解が不足していたことが明らかになった。
また、地方公務員である教職員は、高い職業倫理が要求されるものであり、その職の信用を傷つけ、職全体の不名誉となるような行為はあってはならないものと考える。
こうしたことから、委員指摘のとおり、あらためて、教科書採択等にかかる留意事項や採択の手続き、公務員として法令を順守することなどについて今後、教科書採択の仕組みや服務の基本的な事項、関係法令等を掲載した啓発資料を新たに作成し、それを活用しながら、校長をはじめとする教職員および市町村教委職員に周知し、指導するとともに、初任段階教員研修や十年経験者研修などの各種研修会や会議など、様々な機会を通して指導していく考えである。
丸岩委員 調査報告によると、申請本を閲覧するなど、この事案にかかわった者の中には、退職者も含まれているようである。
教育庁など職員の再就職に関しては、道職員と同様の取扱い要綱が定められていると承知をしているが、この要綱は、道が任命権をもつ市町村立小・中学校と道立学校の校長をはじめ教員も、対象となると考えて良いのかどうか伺う。
馬橋教職員課長 再就職に関する取扱い要綱について。道教委では、「北海道教育庁等職員の再就職に関する取扱要綱」を定め、職員が再就職する際の制限等に関し必要な事項を規定している。
この要綱は、道教委事務局および、道教委が所管する道立学校をはじめとする教育機関の職員を対象としており、道立学校に勤務する教職員については、道の競争入札参加資格を有する企業のうち、退職前五年間に在職した所属と密接な関係にある企業の役員および営業部長、支店長等の営業に携わる地位への再就職や、道への営業活動を、退職後二年間、自粛することとしている。
なお、市町村立小・中学校に勤務する教職員については、市町村の職員であることから、当該市町村が再就職に関する事項を定めることとなるが、現在、小・中学校の教職員を対象とする再就職に関する規定などを定めている市町村はない。
丸岩委員 この要綱は主として、競争入札に関連する不祥事防止の観点が強く記述されているが、事務系の職員はそれで対応できるかもしれないが、学校の場合は、今回話題となった教科書採択のほか、入札になじまない問題集などの生徒に購入させる補助教材・教具、いわゆる学校指定の体育着や運動靴、さらには修学旅行かかわる旅行関係事業者についても、過去に問題があったと聞く。
先ほどの答弁では、市町村立小・中学校の教職員を対象とする再就職に関する規定などを定めている市町村はないとのことだが、このたびの地方公務員法の改正によって新たに導入される退職管理制度については、退職後それらの関連会社に再就職した先輩などが、後輩の校長、教頭や体育の教員などを相手に営業することは、一定の期間禁止されると考えるが、見解を伺う。
秋山総務政策局長 改正地方公務員法における退職管理制度について。四月一日に施行される改正地方公務員法においては、学校の教職員を含めた地方公共団体の職員のうち、離職後に営利企業等に再就職した者は、離職前五年間の職務に関して、在職していた組織の職員に対し、離職後の二年間、契約などの事務に関する要求や依頼といった働きかけが禁止されるとともに、これらの行為に対する罰則などが規定された。
道教委としては、ことし一月、こうした改正法の趣旨と、改正法に基づき制定された道職員の退職管理に関する条例、規則などについて各道立学校および市町村教委に周知しており、今後、市町村教委などと連携を図りながら、校長会議や教育局長会議などで、あらためて改正法および条例などの趣旨を周知徹底するなど、公務の公正性・透明性を確保し、保護者をはじめ道民の誤解を招くことのないよう、適切な退職管理に取り組んでいく。
丸岩委員 今回の処分対象者の中には、二十七年度末で定年退職を迎える者もいると思う。退職した職員に対しては懲戒処分ができなくなると考えるが、道教委は、処分を行わないまま対象者を定年退職させるのか、懲戒処分はいつ行うのか伺う。
野﨑教職員課服務担当課長 処分などの時期について。三月三十日に開催する教育委員会において、このたびの事案に対する処分などを審議し、決定した上で、ただちに、戒告などの懲戒処分については、任命権者である道教委から、また、訓戒措置については、服務監督権者である市町村教委から、それぞれ行うこととしている。
丸岩委員 今、信用失墜行為に該当するとの答弁もあったが、その処分の内容はどのようなものを考えているのか伺う。
野﨑教職員課服務担当課長 処分などの内容について。道教委としては、検定期間中に教科書を閲覧し、意見を述べ、謝礼を受け取り、教科書採択にかかる委員を務めた小・中学校長に対し、戒告の処分を行った東京都教委の事例も参考としながら、訓戒措置を基本とし、申請本の閲覧や謝礼の受け取りの有無、調査員への就任の有無、また、閲覧時に指導的立場にある管理職であったかどうかなどを勘案し、それぞれの教員等に対する処分などを行うものと考えている。
丸岩委員 教員に対する処分については、法令等に基づいて厳正に行ってもらいたい。そもそもこの事案は、教科書発行者が禁止をされている検定中の教科書を教員らに見せ、その対価として謝礼を払ったことが原因であり、教員とともに、教科書発行者に対して何らかの働きかけが必要であると考える。
教科書発行者への対応については、予算特別委員会で、「今後、国の対応を注視しつつ、必要な対応を検討する」と答弁をしていたが、これだけ道民の信頼を損ねる事案が判明したのであれば、国の判断を待つスタンスではなく、教科書発行者に対して、再発防止に向け、道教委が独自に対応すべきと考えるが、見解を伺う。
山本教育部長 教科書発行者への対応について。教科書の発行者については、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に基づいて、文部科学大臣が必要な要件を備えた発行者を指定し、国が、著作・編集から検定、採択、供給に至るまでのいずれの段階においても、直接指導を行っている。
道教委としては、このたびの事案が全国で複数、明らかになった段階で、道内に支社や出張所を置いている義務教育諸学校用教科書の発行者を個別に直接訪問して、法令にのっとり、教科書採択の公正確保を図るよう、強く申し入れを行った。
今後は、文科省が示す対応策の周知徹底に加えて、このたびの調査結果を踏まえ、道独自に毎年度、教科書採択の事務が始まる時期に、教科書発行者に対し、公正かつ適正に実施するよう申し入れる取組を行うほか、速やかに、道内の教科書発行関係者を集めて、あらためて教科書採択における公正性・透明性に疑念を抱かせる行為を再び行うことがないよう、強く要請していく。
―意見―
丸岩委員 小・中学校の教科書採択を巡って、過去にも出版社との癒着を疑わせる事例があったことが指摘されている。
また、四十年ほど前には、全国紙が出版社と教育界の不明瞭な状況を連載企画で掲載し、警鐘を鳴らしたこともあったようである。そのようなことも、年数がたつと、残念ながら教育界では伝えられないように見受けられ、猛省を促したい。
今回、誘いを受けたのは、ほとんどがそれぞれの管内において、各教科で高い指導力をもつ先生だったはずだという声も聞いている。そうであればなおさら、教科書採択期間中の禁止行為をきちんと守り、教科書の改善内容について自由に意見が述べられる採択手続期間以外の時期に積極的に提案するよう、道教委としてもしっかりと指導すべきと考える。
また、ニュースを見ていると、道外では制服やジャージ、運動靴など、いわゆる学校指定についても、不明朗さを指摘する保護者の声が取り上げられている。
このような点についても、保護者に対して指定することの必要性と指定に至った経緯について、学校の考え方をしっかりと説明しながら、誤解を招かないようにするべきであり、併せて周知徹底されるように申し上げる。
(道議会 2016-06-28付)
その他の記事( 道議会)
2定道議会一般質問(28年6月24日) 関係部局と連携して適切に対応 保育所への小学校教諭など派遣
二定道議会本会議(二十四日)では、国が示した保育士配置の特例について質疑が行われた。 保育の担い手確保が喫緊の課題となっている中、厚生労働省は省令を一部改正。保育所等における保育士配置...(2016-06-29) 全て読む
2定道議会一般質問(28年6月24日) 飲酒運転根絶へ道・道教委・道警 意識改革等のプラン策定 公表や処分の在り方検討も
道職員や公立学校教職員、警察官が酒気帯び運転によって相次いで逮捕、検挙された事案にかかわって高橋はるみ知事は、二十四日の二定道議会本会議において、道、道教委、道警本部が連携して新たな再発防...(2016-06-28) 全て読む
2定道議会一般質問(28年6月24日) 年30人程度対象に訪問教育を実施 35年度までの計画で道教委
二十四日の二定道議会本会議一般質問では、訪問教育について質疑が行われた。 柴田達夫教育長は、昭和五十四年の養護学校義務制の実施以前は、重症心身障がい者の多くが就学を猶予・免除されていた...(2016-06-28) 全て読む
2定道議会一般質問(28年6月24日) 新設する基金で仕組みづくり検討 給付型奨学金で知事
二十四日の二定道議会本会議一般質問では、給付型奨学金について質疑が行われた。 高橋はるみ知事は、国が給付型奨学金の制度設計に向けた検討を進めていることを取り上げ、道として、その動きを注...(2016-06-28) 全て読む
2定道議会一般質問(28年6月24日) 次年度の財源確保へ働きかけ 小・中耐震化で教育長
二定道議会本会議一般質問(二十四日)では、小・中学校の耐震化について質疑が行われた。 柴田達夫教育長は、国が市町村で計画している校舎改築などの事業の大半を未採択としたことについて、道教...(2016-06-28) 全て読む
24日から2定道議会一般質問 配置計画などで論議 学校施設耐震化の取組も
二定道議会本会議では、きょう二十四日から一般質問が始まり、本格的な論戦に入る。道教委が今月発表した公立高校・特別支援学校配置計画案や、熊本地震の発生を踏まえた学校施設の耐震化などについて、...(2016-06-24) 全て読む
道議会文教委(28年6月20日) 乗船実習生14人、参院選で投票できず 国に制度改正要望―道教委
道教委は、二十日の道議会文教委員会で、長期乗船実習中の小樽水産高校と函館水産高校の専攻科生徒十四人が来月の参議院議員選挙で投票できないことを明らかにした。 乗船中の船員を対象に、FAX...(2016-06-23) 全て読む
道議会文教委(28年6月20日) 学校トイレ洋式化、小中は5割弱に 今後の整備方針で総務政策局長答弁
道議会文教委員会(二十日)では、学校トイレの洋式化について質疑が行われた。 道教委は、洋式化の状況について、小学校が約四九%、中学校が約四五%、道立高校が約三三%、道立特別支援学校が約...(2016-06-23) 全て読む
道議会文教委の質問・答弁概要(28年3月23日)
道議会文教委員会(三月二十三日開催)における佐々木恵美子委員(民主党・道民連合)の質問、および山本広海教育部長、成田直彦生涯学習推進局長、阿部武仁生涯学習課長の答弁の概要はつぎのとおり(役...(2016-06-22) 全て読む
1定道議会予算特別委の質問・答弁概要(28年3月18日)
一定道議会予算特別委員会(三月十八日開催)における池本柳次委員(北海道結志会)の質問、および柴田達夫教育長、成田祥介新しい高校づくり推進室長、馬橋功教職員課長、相馬哲也新しい高校づくり推進...(2016-06-16) 全て読む