1定道議会予算特別委の質問・答弁概要(28年3月18日)
(道議会 2016-06-16付)

 一定道議会予算特別委員会(三月十八日開催)における池本柳次委員(北海道結志会)の質問、および柴田達夫教育長、成田祥介新しい高校づくり推進室長、馬橋功教職員課長、相馬哲也新しい高校づくり推進室参事(改革推進)の答弁概要はつぎのとおり(役職等はすべて当時)。

◆看護師養成施設早期整備

池本委員 人口減少が進行する地方では、多種多様な課題が山積している。特に、医療環境における医師や看護師不足は常態化しており、深刻な問題であると言っても過言ではない。

 道内における現状としては、看護師の養成は十分との見解の機関もあるようだが、地方における実態は常々不足に悩んでおり、このことが地方の医療過疎を生むばかりか、病院経営を圧迫していると考える。

 道保健福祉部が、昨年三月から四月にかけて実施した十勝圏域での看護師等状況調査結果からも、看護師が不足している状況が明らかになったと聞いている。看護師不足の状況をどのように把握しているのか伺う。

相馬新しい高校づくり推進室参事(改革推進) 看護師の状況について。業務従事者届による二十六年末の道内における人口十万人当たりの看護師等就業者数は一千三百二十四人であり、全国平均を上回る状況にあるが、看護師は、都市部の比較的大きな病院に集中する傾向があって、地方の病院では不足するなど、地域偏在が続いているものと認識している。

 十勝圏域については、保健福祉部において、昨年三月に、十勝圏域三百二十七ヵ所の医療機関等に対して、看護師等の求人状況を調査した結果、回答のあった三百十ヵ所における三月一日現在の求人数は、二百七十二人となっており、看護師不足の状況にあると承知している。

池本委員 看護師不足を解消して、今後さらに加速すると思われる地方の人口減少対策と地域活力の創造を促進する観点からも、地方において、地域医療を担う人材を育成することは極めて大切なことだと思う。

 道内には、看護科五年一貫校が美唄聖華高校と稚内高校の二校あると承知している。

 さらに近年、札幌市等に看護師養成施設が民間によって開設されているが、退職者と新卒者、都市と地方とでは人材確保において大きな差異が生じることも否めない事実であって、早急に対策を講じなければ、地域医療の崩壊につながる可能性があると考える。

 このような状況の中、十勝管内の鹿追町議会において、昨年十一月六日に「地方における看護師不足解消に向けた看護師養成施設等の早期整備を求める決議」がされている。

 鹿追町は、「高齢化が進行する中で地方病院の看護師不足の常態化に加え、高齢者人口増で看護師の需要はますます増える」と考え、「札幌に大学や専門学校はあるが、地方に来てくれる看護師は少ない」との認識から、町内に「看護科誘致期成会」を設立し、地方で働いてくれる看護師を地方で養成するため、道立鹿追高校に看護科の併設を目指して、十勝管内の医師会、管内の病院をはじめ、十勝町村会、議会議長会の同意を得るとともに、道町村会の協力も得て、道教委に対して強く今日まで要請していると承知している。

 道教委として、道内の五年一貫校の現状と地方の看護師の養成施設の必要性について、どのような所見をもっているか伺う。

相馬新しい高校づくり推進室参事(改革推進) 看護科の現状と養成施設等について。二十七年度の道内における看護師養成施設数は、大学が十三、専修学校等が五十、高校が二であって、収容定員は三千五百四十二人となっている。

 これらの六十五施設を管内別にみると、札幌市を含む石狩管内には十八施設が所在し、その収容定員は、全体の四割弱となっている。 

 こうした中、道教委では、美唄聖華高と稚内高の二校に看護科を設置し、募集人員を百二十人として、十四年からは専攻科を含めた五年一貫教育によって、看護師を養成しており、これまで、地域の医療機関等との連携・協力によって看護にかかわる有為な人材を輩出してきた。

 なお、二十七年度における、道内の看護師養成施設の定員のうち、道立高校二校の占める割合は、三・四%であって、全国の公立高校が占める割合の一・四%より高い状況となっている。

池本委員 鹿追町が目指しているのは、「衛生看護科(三年)・専攻科看護学科(二年)」の五年一貫高校である。

 看護師の国家試験の受験資格を得るためには、大学や短大、養成所においては、高校を含めて六年から七年を要しているが、一貫校の場合は、最短の五年間である。

 しかも、学費の差も大きいと言われている。

 また、生徒確保の面でいうと、美唄聖華高は、二十六年の在校生三百六十四人のうち十勝出身者は一割強の四十人、釧路・オホーツク管内を含めて東北海道では六十三人となっていると思う。

 この数字からみて分かるように、医療を担いたいと志す生徒が地元にいることは、生徒確保を見込めることを証明していると思う。

 つまり、一間口を確保できる人数がいるということが言えるのではないか。

 そこで、看護師確保のため、資格を得るための期間や学費の負担問題等を考慮し、五年一貫校の増設の必要性について、どのように受け止めているのか伺う。

成田新しい高校づくり推進室長 看護科の設置について。本道の高校の看護科については、中学校卒業者数が年々減少する中、高校での普通科進学志向や、大学進学志向の高まりなど、生徒の進路希望や保護者の意識が変化し、高校看護科への志願者が減少傾向にあること、高校の教員免許状を有する看護の専任教員の確保が難しいことなどの課題があるとともに、国においては、医療の進歩等を背景に、看護教育は大学を中心として、その養成を図ることを期待しており、道内でも看護学校は、三ヵ年平均で一五・二%となっており、必ずしも高いとはいえない状況もある。

 こうした状況を勘案すると、道立高校に新たに、五年一貫教育による看護科および専攻科を設置することについては、引き続き、検討を要する課題があると考えているが、道教委としては、中学校卒業者の進路希望の状況や専攻科卒業者の就職状況、さらには看護師養成施設の充足の状況を見極めるとともに、専任教員の確保に努めるなどして、看護科をもつ道内二校の教育の質の維持・向上に取り組んでいく。

池本委員 看護師養成のために五年一貫校を増設した場合、専門教員をどう確保するかが課題だということが今、答弁された。

 現在、美唄聖華高は看護科目に対して二十人、稚内は九人の講師のほか外部講師を擁していると承知している。

 教員の確保に関しては、鹿追町が独自に調査したところによると、九州では全体で三十校、定員一千九百五十人、福岡県では八校、定員四百四十人となっており、その専門教員のほとんどが臨時教員であったこと、また、専門教員を確保するため、「看護師の資格を有して五年間の実務経験と一定の講習を受講すれば看護教員になれる」としていることが明らかになっている。

 看護師の給料と道職員としての教員の給料とのギャップなど様々な課題が生じているが、まずは、他県の事例も参考とするなど、看護師養成の専門教員を確保する取組を進めることが重要ではないかと考える。

 そこで、「専門教員」の確保についての見解を伺う。

馬橋教職員課長 専門教員の確保について。教育職員免許法では、高校の教員は、原則として、教科ごとの普通免許状が必要とされており、こうした普通免許状を有する者を採用できない場合に限り、臨時免許状によって助教諭として任用することができるとされている。

 また、優れた知識経験等を有する社会人を学校教育に活かしていく観点から、特別免許状を授与して教員として採用することも可能となっている。

 道教委では、看護科を有する高校二校の専門教員の確保に当たっては、看護師資格を有する者に特別免許状を授与して採用してきており、毎年、定例の選考検査のほか、追加募集を行うとともに、二十七年度からは選考検査において、看護師資格を有する者の勤務実績の要件を五年から三年に緩和したが、募集定員が確保できず、一部の教員を臨時免許状による期限付の助教諭として任用している状況にある。

 こうしたことから、道教委としては、今後、採用年齢制限の見直しや処遇等について検討を行うとともに、道保健福祉部や道看護協会などと密接に連携を図りながら、教員を希望する看護師についての情報の把握や、道教委のホームページでの看護教員の魅力ややりがいの発信、さらには、道外の看護系大学へ直接訪問し、働きかけを行うなど、専門教員の確保に努めていく。

池本委員 看護科五年一貫校については全国で二十六校、道内は二校ということである。看護師不足解消に向けた取組はまだまだ必要である。

 十勝においても、今後、中学校卒業者数は減少傾向にあることは明らかであるが、反面、高齢者人口は増加しており、老健施設の定員が上昇傾向にあって、看護師の育成確保が必要になっている。

 今回、私は、都市と地方とでは、人材確保の環境において、差異が生じている事実と、地方での看護師不足を解消するための政策をもつことが必要と考え質問した次第である。

 鹿追高校では、特色ある教育として、短期留学派遣事業であるとか、文部科学省の研究開発学校の指定を受け、小中高一貫教育を進め、鹿追高校生のそれぞれの希望する進学や就職が可能となる「夢がかなう学校」として位置付けられ、その充実ぶりは高く評価されている。地域になくてはならない学校なのである。

 ついては、こうした鹿追高が地域で果たしている役割を踏まえて、看護師人材の育成も含めて、今後の目指す方向性などについて、道教委と鹿追町との間で協議する場を設けるべきと考えるが、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 高校の在り方に関する地元との協議について。道教委では、広域分散型の本道において、人口減少社会への対応や地方創生の観点から、高校が地域で果たす役割は重要であると考えており、このたび、他の高校への通学が困難であり、かつ地元進学率が高い小規模校に導入している地域キャンパス校について、再編基準の緩和や特色ある高校づくりなど、教育環境の充実策を取りまとめた。

 道教委としては、今後、こうした方向性に沿って、高校が地域で果たす役割を一層発揮できるよう、教育環境の充実に取り組んでいくこととしている。

 こうした中、鹿追高については、十五年度から、先ほど委員から指摘もあったが、連携型中高一貫教育校として、町内の二つの中学校と、英語を中心とした乗り入れ授業や、地域のふれあい事業への参加によるボランティア活動などに取り組むとともに、カナダへの短期留学や、外国人講師を招聘し、地球上の諸課題について考察する「ワールドスタディ」の授業の実施等によって、国際理解教育の充実に向けて取り組んでいる。

 また、新しい教育課程や指導方法等について研究開発を行う、文部科学省の研究開発学校として、英語を核とし、地域の環境や文化をよりよく理解し、発信する活動を行う新設の教科である「地球コミュニケーション」のカリキュラム開発に、幼小中学校と連携して取り組むなど、二十一世紀を生き抜く汎用的な資質や能力をもつ人材の育成に向けた教育活動を推進していて、地域の方々や道内の教育関係者はもとより、研究開発学校の取組の助言を行う学識経験者等からも高く評価されている。

 道教委としては、こうした優れた取組に加え、これまで果たしてきた役割などを踏まえた特色ある教育活動の一層の充実や、地域社会の産業等を担う人材育成の在り方など、鹿追高の将来の方向性について、地域に職員をあらためて派遣するなどして、十分に町と協議していきたい。

―意見―

池本委員 これまでの質疑を通して、道教委では本年度から選考検査において、看護師資格を有する者の勤務実績の要件を五年から三年に緩和したことであるとか、一部の教員については、臨時免許状による期限付きの助教諭として任用していること、また、今後、採用年齢制限の見直しや処遇等についても検討しており、専門教諭の確保に努めることが明らかにされた。

 五年一貫教育による看護科および専攻科を新たに設置することについては、検討を要する課題があると答弁した。この意味は、教育長自ら、

 すでに美唄や稚内の高校二校を訪問しており、卒業生の進路希望の状況であるとか、養成施設の充足状況等について把握してきているということから、おそらく見極める必要があるというような言葉を使ったのではないかと思う。

 つまり、環境は厳しいが、教育長から、これまで鹿追高が果たしてきた役割、特色ある教育活動に取り組んでいて、地域になくてはならない学校であるということも評価され、地元から看護科設置に関する要望を受けて、その必要性や課題等について今日まで意見交換を行ってきているという経緯についても話にあった。

 かつて憧れの職業ということで、看護師を目指す人がたくさんいた時代もあった。しかし、現代では離職をなんとか防止しなければならない、残ってもらうための労働条件の改善を急がなければならない、という社会的な問題が論じられている状況である。このような状況の中で、この議論であるので、今後はぜひ、道の保健福祉部との緊密な連携を取っていただいて、そちらの面からと、これからの人口減少社会の対応、地方創生の観点からの地域医療という産業を担う人材を地元で養成するために、高校が地域で果たす役割の重要性を踏まえていただいて、引き続き、地元・鹿追町との間での前向きな協議、検討をするよう申し上げる。

(道議会 2016-06-16付)

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