1定道議会予算特別委の質問・答弁概要(28年3月18日)
(道議会 2016-06-02付)

 一定道議会予算特別委員会(三月十八日開催)における藤沢澄雄委員(自民党・道民会議)の質問、および柴田達夫教育長、杉本昭則学校教育監、秋山雅行総務政策局長、梶浦仁学校教育局長、桜井康仁教育政策課長、馬橋功教職員課長、野﨑弘幸教職員課服務担当課長、赤間幸人高校教育課長、岸小夜子義務教育課長、長内純子文化財・博物館課長の答弁の概要はつぎのとおり(役職等はすべて当時)。

◆教科書問題について

藤沢委員 先の一般質問でも、教科書採択にかかわる謝礼問題についてただした。これは、禁止されている検定中の教科書を教師ならびに教育委員会関係者等に閲覧、さらには、謝礼を支払っていたという問題である。そして、それが全国で五千人以上の教員、教育委員会関係者がかかわっていたこと、また、教科書発行者の半数以上が謝礼を払っていたということであり、このことが教育の信頼を大きく損ねる問題となっている。

 一般質問の時期には、道教委は、調査の途中だと言っていた。その後の調査の進捗状況はどうなっているのか、新たにまた分かったことを加えて、説明を求めたい。

岸義務教育課長 調査の進捗状況について。現在、調査対象となった教員等に対し、個別の聴き取りなどによる事実確認の結果について、集計整理を行っている。

 これまでのところでは、申請本を閲覧させた上で意見聴取等の対価を支払った事案として、文部科学省から情報提供があった五百人のうち、閲覧したのは申請本ではなく、当時使用中の教科書であったという事例や、閲覧した時期が検定期間外であったという事例、あるいは、数年前のことで、記憶が定かではないことから、引き続き事実確認を行っている事例等もあるが、現時点において、金銭を受領した者は約三百八十人、そのうち、調査員等になっていた者は約九十人などの状況が確認されており、現在、さらにこうした状況について、精査を行っている。

藤沢委員 早急にお願いしたい。

 今回の調査は、教科書会社の自己点検・検証結果によって判明した教員の確認や事実関係等の確認だが、これは、あくまでも教科書会社の自主的な報告だと思う。一部には、謝礼の域を超えて、接待などみえにくい形での関係もあったのではと報じられているが、道教委の見解を伺う。

岸義務教育課長 教科書発行者による自己点検・検証結果について。今回の個別の事実確認の中では、閲覧・金銭の受領のほかに、懇親会や二次会の有無・その代金の支払いの有無などについても確認しているが、委員指摘の謝礼の域を超える、いわゆる接待については確認されなかった。

藤沢委員 今回の検定中の教科書の閲覧、謝礼は、義務教育の教科書にかかわることだと伝えられているが、それでは、高校は、一体どうなのか、同様の問題がないと言えるのか、その件も伺う。

赤間高校教育課長 道立高校の教科書採択について。道立学校においては、毎年度、学校ごとに道教委が定めた教科書の採択に関する実施要綱に基づき、校長が、実施要綱の「教科書採択に関する基本方針」および「教科書採択に関する観点」に基づいて、各学校において使用する教科書を選定の上、道教委に選定結果を報告することとなっており、道教委は、校長からの教科書選定結果報告について、基本方針および観点に照らし、採択を行っている。

 「教科書採択に関する基本方針」では、選定する際の留意点の一つに、教科書の選定に当たって、過当な宣伝行為、その他外部からの不当な影響等によって問題が生じた場合には、速やかに道教委に報告の上、連携を図りながら、適切に対処することとなっており、これまで、そうした報告はない。

 道教委としては、今後、このことについて、すべての道立学校に対し、校長会議等を通じてあらためて周知し、学校における教科書選定に際して、疑念を抱かれるようなことが決して起こることのないよう指導していく考えである。

藤沢委員 あとになって、「やっぱり出てきた」「あった」などということは決してないように、これからも指導をお願いしたい。

 この謝礼を受けとっていた教員の数に注目すると、本道が全国に比べて非常に多いように感じるが、その要因は何かあるのか、道教委の見解を伺う。

岸義務教育課長 本道の対象者について。先ほども申し上げたとおり、申請本を閲覧させた上で意見聴取等の対価を支払った事案として、文科省から五百人の対象者の情報提供があった。本道が全国に比べて多い要因については、一概には言えないが、学校数や教員数が他県に比べて多いこと、さらに、採択地区も多いことなどが考えられる。

藤沢委員 たしかに採択地区は多いかもしれない。しかし、一番の要因はコンプライアンス、法令順守の意識が低かったと思わざるを得ない。今回の一件で、採択に関する信頼を大きく失墜させた。

 その要因に、検定中の教科書を閲覧し謝礼を受け取った教員の中に、教科書採択にかかわる教員、いわゆる調査員が含まれていたことがある。道教委は、このことを非常に重く受け止めるべきだと思う。そもそも調査員は、教科書採択において、どのような役割を担うのか伺う。

岸義務教育課長 教科書採択における調査員の役割について。都道府県教委においては、市町村教委等が教科書を採択するに当たって参考となる資料を作成し提供することとなっており、道教委が委嘱・任命した調査員が、各教科書発行者が発行する教科書について、「取扱内容」や「内容の構成・排列、分量等」など、同じ観点から調査・研究を行い、採択の参考となる資料を作成している。

 また、各市町村教委においては、一市町村が単独で採択する場合は、教育委員会において、複数の市町村が共同で採択する場合は、採択地区協議会において、委嘱・任命した調査員が、道教委が示した採択参考資料を活用しながら独自に教科書の調査・研究を行っている。

藤沢委員 どのような人たちが調査員になっているのか伺う。

岸義務教育課長 調査員の委嘱・任命について。文科省の教科書採択に関する指導通知では、教科書の調査研究については、必要な専門性を有し、公正・公平に教科書の調査研究を行うことのできる調査員等を選任するよう求めており、義務教育諸学校の校長、教頭、主幹教諭および教諭、あるいは、市町村教委の指導主事、その他学校教育に関し専門的知識を有する職員ならびに採択地区内の学識経験者および保護者などが選任されている。

藤沢委員 かなり専門的な人だということが分かった。

 多くの教員がいる中で、どのような人たちが調査員として選ばれるのか伺う。また、各教科書について、何人ぐらいの調査員で調査・研究を行っているのか、併せて伺う。

岸義務教育課長 調査員となっている教員等について。調査員は、教科書を専門的な観点から調査・研究を行うことから、その教科の免許を所有し、ほかの教員の参考となるような優れた授業を行うなど、教科の専門性が高く、実践的指導力を備えた教員が選出されている。

 各採択地区においては、全教科合わせて概ね四十人から八十人程度の調査員を委嘱・任命しており、二十七年度の中学校用教科用図書の採択における、一つの地区の例をみると、国語では、六者の教科書を調査研究するために六人程度、社会科では、地理四者、歴史八者、公民七者、地図二者の教科書を調査研究するために二十人程度、さらに、その他の教科で四十人程度の調査員を委嘱・任命している。

―再質問―

藤沢委員 専門的な知識をもち、なおかつ優れた人たちが選ばれ、なおかつ、概ね一者につき一人ずつくらいの人数が選ばれていることが今の報告で分かった。

 全部ではないが、採択における議事録を読んだ。そこで感じたことは、実際に調査員が最終的な決定段階にかかわるわけではないが、小委員会での報告があり、それを基に議論している。かなり小委員会の報告が重要な役割を占めるように感じた。だから、今回の件も疑惑をもたれると思うが、道教委は、どのような形で小委員会の結果報告を受けながら、最終的な選定をしているのか伺う。

岸義務教育課長 教科書採択における調査員が行う調査研究等について。教科書採択に当たっての調査研究は、いずれの採択地区においても、道教委が示している採択基準に基づき、学習指導要領の目標や内容、地域の実態等を踏まえ、発行者が作成する「教科書編修趣意書」および道教委の採択参考資料を参考として行うこととなっており、教科ごとに小委員会を設置して、複数の調査員によって、観点を定めて調査研究を行い、十分な協議を経て調査研究の結果を取りまとめている。

 また、小委員会の代表が採択地区協議会の委員に対して、調査研究の結果を説明する際には、小委員会内で協議し作成した原稿で説明を行い、質疑応答においては、調査研究の内容に基づいて対応しており、公平・公正に調査研究が行われていると認識している。

藤沢委員 道教委の見解は分かった。議事録がない小委員会の協議はあるが、その原稿を基にしっかりと説明しているということだから、それは聞いておく。

 あらためて確認したい。教科書発行者とかかわりのあった者は調査員になれないという規則があるはずだが、どうなっているのか。

岸義務教育課長 調査員の委嘱・任命について。教科書採択に当たっては、都道府県教委が教科書採択の基準を作成し、各採択地区等に提示することとなっており、その中で、発行者の役員や従業員とその配偶者および三親等以内の親族、顧問、参与、嘱託等の名称を問わず事実上発行者の事業運営に重要な影響力を有している者、教科用図書および教師用指導書の著作者、および、事実上、著作に参加し、または協力した者など、調査員になることができない欠格条項を定めており、各採択地区等では、これに基づき規約等を定めている。

藤沢委員 明確に欠格条項がある中で、なぜ多くの教員がそれに違反して調査員になっているのか。また、委嘱・任命を行う手続に重大な問題があるのではないかと思うが、道教委の見解を伺う。

梶浦学校教育局長 調査員の委嘱・任命の手続きについて。今回の調査において、多くの採択地区では、調査員の選出に当たって、検定中の教科書を閲覧し意見を述べる行為が、「教科用図書等の著作に協力した」という欠格条項に該当するという理解が十分ではなかったことが明らかになった。

 こうしたことから、今後、市町村教委や採択地区等に対し、調査員の委嘱・任命に関する規約等の順守を徹底するための具体的な手続き等について示して、指導を徹底していく。

藤沢委員 ルールがありながら、全道で五百人という情けない数字が出ているから、再度、ここは強く申し入れをしていただきたいと指摘をしておく。

 道内には、二十三の採択地区があると承知している。札幌市や旭川市など大きな所は市の教育委員会単位、地方では概ね教育局単位で協議会がもたれていると先ほどの説明にもあった。それぞれの採択地区で、教科書選定を最終決定する場には、具体的にどのようなメンバーがいるのか。

岸義務教育課長 採択地区協議会について。「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」等に基づき、関係市町村の教育委員会が採択地区協議会の規約の定めるところによって指名する委員をもって協議会を組織することとされており、道内の状況としては、二つ以上の市町村が協議して同一の教科書を採択する共同採択地区については、協議会を構成する関係市町村教委の教育長、また、一つの市町村のみで採択をする単独採択地区については、教育長と教育委員によって組織し、教科書を採択している。

藤沢委員 札幌市などは、教育委員が採択の最終決定の決断を下し、市町村の協議会は、教育長が主に担当しているということなので、それなりの立場の人が最終決定をしていることが分かった。

 ある報道で、元文部省の局長が「検定中の教科書を使った売り込みは古くから行われており、私が文部省にいた当時もやめるように指導してきたが繰り返されてきた」と述べている。教育現場では当たり前になっていたのではないかと疑わざるを得ない。道教委もある程度認識していたのではないかとも思わざるを得ないが、見解を伺う。

梶浦学校教育局長 検定中の教科書の閲覧について。文科省は、十四年に「教科用図書検定規則実施細則」を改正し、新たに、検定の申請を行った教科書発行者は、申請本の検定審査が終了するまでは、その内容を申請者以外の者が知ることのないよう適切に管理する内容の規定を盛り込んだ。

 道教委では、毎年、教科書採択に際し、公正な採択が阻害された事例がないかについて、報告を求めてきた。そうした事例の報告はなかったが、このたびの、教科書発行者が、検定中の教科書を教員等に閲覧させていたことが明らかになったことは、誠に遺憾である。

藤沢委員 十四年に細則ができたというと、それまではルーズに行われていた可能性もある。

 そして、十四年に細則ができてからも、なかなか徹底しないでここまできたと、どうしても考えてしまう。これから二度とこのようなことが起きないよう、しっかり指導をお願いしたい。

 わが会派には今回の問題に関して、道議会でしっかりと追及しろといった旨の、道内外から、遠くはアメリカからも日本人ではあるが、六十通以上のはがきが来ている。おそらく、道教委にも、同様のはがきが届いていると思うが、どのくらい来ているのか、また、内容はどのようなものが書いてあったのか伺う。

岸義務教育課長 道教委への投書について。このたびの事案にかかわって、道教委には、昨日までに、全国各地からほぼ同様の内容で、ハガキや封書、メールで百六十四件の投書が届いており、その多くは、「金品ではなく、内容の良さや正しさで教科書が選定されることを切に願う」「金品を渡した教科書会社とそれを受け取った教員の双方を厳重に処分してもらいたい」「かかわっている教科書会社の書籍は教育現場で用いるべきではない」などといった内容である。

―再質問―

藤沢委員 今の報告は、わが会派に来ているものと概ね一緒だが、私のところは、もう少し表現がダイレクトである。そこには、現金を受け取ったことが収賄になるのではないか、あるいは、懲戒免職にしたらどうだという意見もある。そのことに関してどのように考えるか、見解を伺う。

野﨑教職員課服務担当課長 教員等が行った行為について。現在、詳細な事実関係を確認しているが、今回の事案は、教員等が、職務外の行為として申請本などを閲覧し、その謝礼として五千円から二万円を受け取ったなどの事例であり、この中には、当該教員が、各地区の採択協議会の調査員等として、選定資料を作成している事例もあるが、その行為に対し、教科書発行者から、対価等は受け取っていないことが確認されている。

 公務員の収賄罪について定めた刑法第一九七条第一項においては、「公務員がその職務に関し、賄賂を収受し、またはその要求、もしくは約束」をすることを禁じているが、今回の事案においては、教員等は、職務上、教科書発行者に便宜を図ったものではなく、その対価として賄賂を受け取ったものではないことから、収賄には当たらないと考えている。

藤沢委員 一般質問で聞いたときに、謝礼を受け取ることが、場合によっては地方公務員法に抵触するおそれがある、可能性があると答えており、また、都府県では、懲戒処分を行っているようなケースもあると聞いている。道教委として、今回の件の全般にわたって、基本的な考えを伺う。

秋山総務政策局長 教員等に対する処分などについて。検定中の教科書を閲覧させる行為は、文科省が定める教科書検定の実施細則で禁止されており、こうした教科書を閲覧し、意見を述べ、謝礼を受け取ることは、公正性・透明性が求められる教科書採択に当たっての信頼を損ね、地方公務員法で定められている信用失墜行為に該当する可能性があるものと考えている。

 過日、東京都教委が、検定期間中に、教科書を閲覧し、意見を述べ、謝礼を受け取り、教科書採択にかかる委員を務めた小・中学校長に対し、戒告の処分を行った。

 道教委としては、こうした他県の処分事例も参考としながら、さらに具体的な内容の把握・確認を進め、申請本の閲覧や謝礼の受取の有無、閲覧時に指導的立場である管理職であったかどうか、調査員への就任の有無などを考慮し、処分などについて検討していく。

―再質問―

藤沢委員 東京都の事例は聞くところによると、そろそろ年度末であるから、退職する校長が、退職してしまったら処分できないということで、早めにということである。この処分に関して、四月一日付の人事異動も迫っているわけであるから、そのことを踏まえた対応を行うのか、重ねて伺う。

秋山総務政策局長 人事異動案について。ただ今答弁したとおり、現在、具体的な内容の把握を進め、処分などについて検討を進めているが、人事異動案については、処分結果や過去の取扱いなども踏まえ、対応していく。

藤沢委員 一刻も早く精査して、対応していただきたい。

 教員の処分を話題にしたが、一方で、教科書発行者は、文科省が定める教科用図書検定規則実施細則に、「教科書発行者は検定中の教科書の内容を外部の者が知るところとならないよう適切に管理しなければならない」と書いてある。これを承知で、世のためと言って違反したことは大きな問題である。しかも、謝礼を支払ったということであるから、道教委として、この発行者に対し厳しい制裁が必要と考えるが、見解を伺う。

杉本学校教育監 教科書発行者への対応について。教科書の発行者については、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に基づき、文科大臣が必要な要件を備えた発行者を指定し、国が、著作・編集から検定、採択、供給に至るまでのいずれの段階においても、直接指導を行っている。

 道教委としては、このたびの事案が全国で複数、明らかになった段階で、道内に支社や出張所を置いている義務教育諸学校用教科書の発行者を独自に直接訪問し、法令に則り、教科書採択の公正確保等に万全を期すよう、強く申し入れを行った。

 現在、国において、当該教科書発行者の検定手続きを停止することなども含め、検討していると承知しており、道教委としては、今後、国の対応を注視しつつ、必要な対応を検討していく考えである。

―再質問―

藤沢委員 国の対応を待つという姿勢に感じられるが、そんなことでは、多くの道民は納得しないと思う。例えば、入札要件であっても、何かペナルティを犯せば、完全に入札、指名から排除されるのであるから、何らかの措置があってもいいのではと考える。道教委は、直接採択には参画せず、最終的には、全道二十三の採択地区が判断することになるかもしれない。道教委として、国の判断を待つスタンスではなく、各採択地区に対して、地域の人を十分に理解させるような対策をとらなければ駄目だと強く指導してほしいと考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 保護者等への説明について。このたびの事案については、先ほど、担当課長が答弁したように、多くの方々から、大変厳しい意見が寄せられるなど、教科書の採択等にかかわり、大きな不安と疑念を与えている。誠に遺憾であり、重く受け止めている。

 教科書の採択権者である教育委員会等は、教科書採択に関する道民の理解や信頼を確保するためには、地域住民へ説明責任を果たす必要があると考えている。

 こうしたことから、ただいま委員からも指摘があったが、道教委としては、今後、市町村教委等に対し、教科書の採択結果とその理由、さらには、採択までの経過等について、保護者はもとより、地域住民に対して、あらためて丁寧に説明を行うよう指導していきたいと考えている。

藤沢委員 現場には、これまで使ってきた教科書の流れを汲みたいであるとか、教科書の教科によっては発行が限られているので、一律に排除すると、つぎに代わる良いものがあるか分からないため、簡単にはできないという意見もあり、それは承知している。

 しかし、多くの道民はやはり、今回の経緯を受けて、別な力が働いてこれに選定されたのではないかという疑惑があるから、そこは、しっかりと各採択地区でどのような理由でこういう教科書が選定されてきたかという説明を、これからも求めたい。

 道教委として、このたびの結果を踏まえて整理し、さらに必要な対応をとっていくと考えるが、今後の対応について、まとめを伺う。

柴田教育長 今後の対応策について。このたびの調査結果を受けて、非違行為が確認された教職員については、厳正に処分などを行うほか、調査を通じて、各市町村教委等が調査員等の欠格条項の基準の運用が徹底されていなかったことや、教員等と教科書発行者との公正な関係の確保について十分に理解がされていないことなどの課題が明らかになったことから、道教委としては、再発防止に向け、今後出される文科省の対応策の周知徹底はもとより、調査員等の欠格条項をあらためて明確に示すことや、教科書採択等にかかる留意事項の周知、さらには、教員が、教科書採択の仕組みや規定等を十分に理解していくための取組を徹底していきたいと考えている。

 いずれにしても、教科書は、児童生徒が必ず用いることとなる極めて公共性の高いものであり、中でも、教科書採択は、実際に児童生徒が用いる教科書を選択する重要な行為であることから、高い公正性・透明性が確保されるよう、万全を期して対応していく。

―意見―

藤沢委員 今回の件で、現場の先生方の意見を聞いてきた。より良い教科書をつくるために、現場の声を反映することは必要だと思う。そこで、直接意見を聞きたいということは理解できないわけではない。

 しかし、今回のケースは明らかに営業のため、教科書会社が優秀な先生方に接触したということであるから、このことで採択における不透明さが増したことは紛れもない事実だと思う。

 一部には、北教組が本道の教育界を牛耳り、採択をねじ曲げているとまで言う人もいる。今回の質疑や意見交換を通じて、現場がかなり真剣に、しかも議事録からも、教育委員会や採択地区の協議会の段階では公平な審査が行われていることが想像できた。

 しかし、まだまだ道民の中では、不信感が完全に払拭されたとは言えないと思う。

 今後の指導の徹底と、学校現場や教育委員会への厳格な指導をお願いしたい。

◆文化の振興について

藤沢委員 教育長は、教育行政執行方針における文化の振興について、「アイヌの人たちの歴史や文化などに関する学習を充実させる」と述べている。

 学校におけるアイヌ文化に関する取組であるが、私の管内の平取町の二風谷小学校では、地域の人の協力を得て、数年おきではあるが、アイヌ語の学習の時間を実施している。講師の都合もあり、毎年とはいかなかったが、何とか毎年実施できないか検討していることが先日、報道されていた。

 私は毎年、大学生のインターンシップを受け入れているが、学生から必ずアイヌの人たちに関する認識を聞かせていただいている。道内出身の学生でも、小学校くらいに少し習ったくらいの認識である。

 一方で、先日、アイヌの人たちにアンケート調査をしたところ、まだ差別があるなど、ずいぶん認識、状況にずれがあるし、道民には、アイヌの人たちの実態や現状を知らしめることが必要かと思う。

 そんなこともあって、道内の学校でアイヌ語に関する学習を行ってはどうかと考えている。

 ところが、現実問題を考えると、学習しようと思っても、アイヌ語などを教える先生がいないこともあると思う。全道の学校で、アイヌ文化などに関する学習の充実を図るために、道教委としては、どのように進める考えかを伺う。

岸義務教育課長 アイヌの人たちの歴史・文化等に関する学習について。学校教育においては、先住民族であるアイヌの人たちが自然などとのかかわりの中で育んできた歴史や文化などについて、子どもの発達の段階に応じて正しく理解させることが重要であると認識している。

 このため、道内の小中学校では、社会科等でアイヌの人たちの歴史・文化等に関する学習を行っており、中には、アイヌの人たちが伝承する歌や舞踊など、地域の特色を生かした体験活動を取り入れている学校もみられる。

 道教委としては、こうした取組を支援するため、教員研修の充実はもとより、啓発資料の発行や、昨年度からは、効果的な指導の在り方についての研究にも取り組んでいる。

 今後は、こうした取組に加え、二十八年度、新たに、各管内の中核となる教員等を対象とした実践交流会を実施するとともに、総合的な学習の時間等における優れた学習活動やアイヌ民俗文化財の保存・伝承活動を教材として取りまとめ、小中学校に配布するなど、各学校における学習がより一層充実するよう取り組んでいく。

―意見―

藤沢委員 なかなか良い話と思う。各管内で中核となる先生を対象として実践交流会を実施すること、あるいは、民俗文化財の保存・伝承活動などを教材として取りまとめるということであるから、これをさっそく、地元の平取にも、道教委として、さらに一歩踏み込んで取り組んでくれることを報告したい。

藤沢委員 道内には、アイヌ古式舞踊だけでなく、開拓の歴史とともに全国各地からもたらされた神楽や獅子舞など二百を超える民俗芸能が、この百五十年の間、豊作豊漁を祈り感謝し、今日まで伝承されてきたと承知している。

 教育行政執行方針では「郷土を愛し、発展させていこうとする気持ちを育むため、地域に伝わる民俗芸能に親しむ機会を提供する」とも述べている。

 具体的に、どのように取り組むのかを伺う。

長内文化財・博物館課長 民俗芸能に親しむ機会を提供する取組について。道教委では、子どもたちに、地域に古くから伝わる神楽や囃子などの民俗芸能に親しむ機会を提供し、民俗芸能への興味関心や郷土愛を育むとともに、後継者の育成などを通じた地域の活性化に資するため、二十七年度から、小・中学生を対象にした「ほっかいどう子ども民俗芸能振興事業」をスタートし、二十七年度は、渡島、桧山、胆振および日高の四教育局管内において実施した。

 二十八年度は、石狩、空知、後志の三管内で実施する予定であり、各教育局ごとに「運営委員会」を設置し、市町村教委をはじめ、小・中学校や関係保存会の方々などとの連携・協力のもとに、初歩的な所作体験や講話などを主とした「伝承講座」をそれぞれの管内で実施するとともに、子どもたちが習得した民俗芸能を実演するほか、地域間の相互交流を図り、広く道民に鑑賞してもらうため、三管内合同の「成果発表会」を開催するなどの取組を進めることとしており、二十九年度までの三ヵ年で、すべての管内において実施することとしている。

藤沢委員 教育行政方針では、「北海道らしい生涯学習社会の実現」に向けて、美術品等にふれる機会の少ない小学校における、鑑賞学習支援ツールを活用した授業の取組を推進するという考えを述べているが、どのように進めていくのか、具体的に伺う。

長内文化財・博物館課長 鑑賞学習用支援ツールを活用した取組について。道教委では、二十七年度から、美術品等にふれる機会の少ないへき地等の学校の児童生徒が、美術への興味関心を高め、本道ゆかりの作家や国内外の優れた作家の作品に親しむことができるよう、鑑賞学習用支援ツールの開発を進めている。

 これまで、美術教育に関する専門家や美術館の学芸員、教員で構成する検討委員会において、支援ツールの内容や授業での活用方法などについて協議を行い、道立美術館が所蔵する作品を活用した中学生向けのアートカードやワークシート、小学生向けの掲示用レプリカを作成しており、札幌市内の中学校において、モデル授業を行った。

 今後は、モデル授業での成果や課題を踏まえ、引き続き、美術館や学校と連携し、児童生徒向けの教材の充実を図るほか、授業展開例や学習評価シートなど、教員向け指導資料を作成するとともに、学校での一層の活用を促すことによって、本道における美術鑑賞学習の充実に向けて支援していく考えである。

◆教師力の向上について

藤沢委員 昨年十二月、中央教育審議会が、「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて」という答申を行った。

 その中で、「教員の指導力向上を図るには、教員が教職の生涯を通じて研鑚する環境づくりが重要であり、その基礎としての養成・採用・研修の一体的な改革に取り組むよう」に提言している。

 文科省はこの答申を受けて、二十八年度から、「総合的な教師力向上のための調査研究事業」を実施すると聞いている。そこで伺う。

 まず、教師力とは、耳慣れない言葉であるが、この定義について伺う。

桜井教育政策課長 「教師力」の定義について。昨年末に取りまとめられた中教審の答申においては、総合的人間力や実践的指導力など、これまでも教員に求められてきた資質能力に加えて、自律的に学ぶ姿勢をもち、時代の変化や自らのキャリアステージに応じて資質能力を高めていく力、主体的・協働的な学習方法として提唱されているアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善や道徳教育の充実など新たな課題に対応できる力量、「チーム学校」の考えのもと、多様な専門性をもつ人材と連携し、組織的・協働的に諸課題の解決に取り組む力などが、これからの時代の教員に求められるものと提言されている。

 委員指摘の「教師力」についても、こうした資質・能力を意味しているものと受け止めている。

藤沢委員 本道の教員の教師力の現状について、道教委は、どのように思っているのか。

桜井教育政策課長 本道の教員の「教師力」について。いじめ・不登校などの課題、保護者や地域との連携など、従来から指摘されている課題に加えて、主体的・協働的な学びの充実など、新しい時代に必要な資質能力の育成が学校教育に期待されており、こうした学校教育全体の変化に応じて、教員の資質向上を図ることが求められている。

 そうした中、道教委では二十四年度から毎年、すべての小・中学校を対象にPTAアンケートを行っており、「教員の資質向上に全力を注いでほしい。特に、若手教員のスキルを向上させてほしい」旨の意見も寄せられている。

 道教委としては、広域分散型で小規模校が多い本道においては、教職員一人ひとりの果たす役割が大きいことから、教員の資質向上に向けて、危機感をもって、継続的な取組を行うことが重要な課題であると認識している。

―意見―

藤沢委員 教師力といっても、その前に人間力、人としての素晴らしさがあって初めて教師としての素晴らしさだと考えるし、一概にこういうことをやったらすぐ伸びるということも言えない。これは永遠のテーマだと思う。

 いずれにしても、一丸となって向上に向けての努力は行っていただきたいし、PTAのアンケートは、注目を引くわけであるから、このようなフィードバックも、これからは大事と感じた。

藤沢委員 文科省が二十八年度から新しく実施する「総合的な教師力向上のための調査研究事業」にがことし二月に公表された。事業の実施要項によると、調査研究を行う七つのテーマが設定されている。

 そのうちの一つ、「教員育成指標等の策定のためのモデル事業」について、概要を伺う。

馬橋教職員課長 「総合的な教師力向上のための調査研究事業」について。昨年十二月の中教審答申において、教員の養成・採用・研修の一体的改革について提言されたことから、文科省において、その趣旨を踏まえ、新年度から本事業に「教員育成指標等の策定のためのモデル事業」をテーマの一つに加え、実施するものである。

 このモデル事業は、文科省から委託を受けた都道府県教委などが調査研究を行うものであり、教員の養成・採用・研修の接続を強化し一体性を確保するため、教育委員会と養成大学等が教員の養成や研修の内容を調整するための仮称ではあるが「教員育成協議会」を設置し、キャリアステージに応じて身に付けるべき資質や能力を明確化するための教員育成指標を協議し共有することなどが想定されている。

藤沢委員 教育長は、教育行政執行方針の中で、国において検討が進められている教員の養成・採用・研修を通じた一体的な改革を見据え、教員としてのキャリア全体を見通して計画的に力量を高める方策について検討することを表明している。

 道教委は、この新しい事業を積極的に活用して取り組むべきと思う。

 また、道内の教員養成大学はもちろんのこと、市町村教委にも呼びかけて、オール北海道で積極的に取り組んではどうかと思うが、併せて、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 教員の養成・採用・研修にかかる今後の取組について。社会が大きく変化する時代にあって、子どもたちには、ふるさと北海道に誇りをもち、互いに支え合いながら、生涯にわたって生き抜く力を身に付けさせることが求められており、こうした期待に応えていくためには、教育の直接の担い手である教員の資質能力を向上させることが重要であると認識している。

 このため、道教委としては、ただいま委員から指摘のあった「教員育成指標等の策定のためのモデル事業」の指定を目指して、国に強く働きかけるとともに、教員の養成・採用・研修を通じた一体的な改革に向けて、二十八年度から関係課に専掌職員を配置し、国の制度改正に的確に対応することとしている。

 さらに、今後は、市町村教委および各種校長会の代表者や、国公立および私立大学の関係者などで構成する「公立学校教員採用に関する協議会」の場を活用するなどして、本道の教育に携わる方々と密接に連携しながら、委員から提案のあった、オール北海道として教員のキャリアステージに応じた、資質能力の向上に積極的に取り組んでいきたいと考えている。

― 意  見 ―

藤沢委員 教科書の問題、北海道の文化、教師力と、北海道の教育はまだまだ課題がいっぱいだと思う。

 明日の北海道をつくっていくため、見通すために、教育は大事だと思うので、これからもどうぞよろしくお願いする。

(道議会 2016-06-02付)

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