道議会文教委の質問・答弁概要(28年3月23日)(道議会 2016-06-22付)
道議会文教委員会(三月二十三日開催)における佐々木恵美子委員(民主党・道民連合)の質問、および山本広海教育部長、成田直彦生涯学習推進局長、阿部武仁生涯学習課長の答弁の概要はつぎのとおり(役職等はいずれも当時)。
◆体験活動支援施設の条例案
佐々木委員 道立青少年教育施設は、二十六年度の条例改正によって、青少年の集団宿泊活動、自然体験活動、その他の体験活動を支援することを主な目的とする「道立青少年体験活動支援施設」として、旧青年の家、少年自然の家を統合して、道内に六ヵ所設置されている。本道の子どもたちの体験活動の推進に大きな役割を果たしていると承知している。
私は、十八年度に指定管理者制度が導入されて以来、道内の少年自然の家を回った。指定管理者が導入されることで、どういう実態になっているのかを含めて、現場の話を聞いた。
それ以降、これまでに標準生活時間の柔軟な対応や利用者のニーズへのきめ細やかな対応をはじめとして、子どもたちの体験活動の機会を効率的・効果的に提供するための、道立都市公園や道民の森など、他の道立施設との連携の必要性や、その施設を運営している指定管理者への配慮、他市町村の社会教育施設を含めて、施設の果たすべき役割、効率的、効果的で安定した運営などの観点から、施設の在り方について質疑、指摘してきた。
その際、施設の宿泊利用者の約半数が学校の宿泊研修によるものである点に着目して、学校教育の動向や要望等を踏まえた分析や検討が必要であることや、施設においては、学習指導要領にある、基本的生活習慣の形成、きまりや善悪の判断といった規範意識の育成などに向けて、小学校では、集団の宿泊活動、自然体験活動など、中学校では、職場体験活動など、社会参加を通じて、体験に基づく、子どもたちの内面に根ざす教育が求められていることを考慮すべきであることを申し上げてきた。
今回の利用料金の見直しに当たっては、それらを十分に検討しているように思えないような改正案であると感じている。
改正に当たっての考え方が事務方中心で、極めて一方的な感じである。今、話したことへの配慮に欠けているのではないかと感じられている。
そういう意味で、今回の見直しにかかわって、いくつか質問する。
料金改定の関係だが、条例の改正案では、一般の宿泊者の料金を二千二百円から、二千八百六十円にするとともに、幼児から高校生、大学生まで、すべての区分で一律の引き上げが提案されている。今回の料金改正に当たっては、どのような考え方に基づいて料金設定をしたのか伺う。
阿部生涯学習課長 利用料金改定の考え方について。今回の道立青少年教育施設の利用料金の条例改正については、道の使用料、手数料の四年ごとの一斉見直しに伴い、道の公共施設の「使用料および手数料改定方針」における、フルコスト計算による料金改定を行うという基本的な考え方を踏まえつつ、道立青少年教育施設の果たす役割や、他府県や道内の類似施設の料金の状況などを勘案し、指定管理者が弾力的に設定できる額の上限を定めるものである。
実際の利用料金は、道教委と指定管理者とが協議の上、見直す枠組みとしており、道教委では、前回、二十四年度の改定時には、利用者への十分な周知期間が必要であること、料金の改正で利用者が減るおそれがあることなど、利用者や指定管理者の視点・要望などを踏まえ、二十六年度からの新たな指定管理者選定までの間、利用料金を据え置いた。
佐々木委員 利用拡大に向けた取組等の関係について伺う。財政当局の方針に基づいて、きめ細やかな分析なしに値上げをするのは教育的な対応とは言えないのではないか。
宿泊利用者の約半数が、学校の宿泊研修によるものである。ここが大事。
道教委は、道立青少年教育施設の在り方において、体験活動の重要性を示している。自然の中での活動、九人が大きな部屋で一緒に泊まるというのは、人生の中で簡単にあることではなく、子どもたちにとって貴重な経験となると、これまでも聞いている。そのことは理解するし、否定するものではない。
しかし、本当に体験活動が必要であれば、そうした経験を生かしていかに多くの子どもたちに提供していくかが重要ではないかと思うし、学力が優先されて、体験活動を実施したくても、なかなか外に出られないといった学校現場の声を聞いたこともあった。
前回の改正から、四年間経ったわけで、より多くの子どもたちに利用してもらう手立てを考える時間は十分にあったのではないか。フルコストで算出しても、基本的に手立てをきちんと講じて、利用者が増えていれば、単価を低くおさえられるはずだが、前回の改正から、これまでの間に、子どもの数が少子化で減ってきている。
改正から、これまでの間に、利用拡大に向けて、どのように取組がなされてきたのか伺う。
阿部生涯学習課長 利用者の拡大に向けた取組について。各施設の指定管理者においては、利用目的などに応じた広報資料の作成・配付、地元のケーブルテレビなど、各種メディアを活用した広報活動、学校へ出向いた体験プログラムの実施を通じたプロモーション活動、さらには、バスの運行による利用者の送迎など、それぞれが創意工夫を凝らした取組を進めてきている。
また、道教委においては、ホームページや道庁ブログなどを活用した広報活動、札幌市の地下歩行空間等の公共スペースや、道と包括連携協定を結ぶ企業の店舗を活用した広報機会の提供、多様な体験プログラムが提供できるよう、委員の提言も踏まえ、道立都市公園等、近隣の道立施設との円滑な連携体制づくりを進めるなど、施設の周知や利用の促進に努めるとともに、サービスの向上につながる取組を行ってきている。
その結果、延べ宿泊者数については、二十二年度の約九万五千人から、四年後の二十六年度には、約四千人増加し、約九万九千人となっており、今後とも、これまでの取組に加え、利用者の一層の拡大に向けた効果的な取組をさらに積極的に展開していく考えである。
佐々木委員 指定管理者は頑張っている。古い施設ではあるが、サービス向上に向けて、日々頑張っていると評価したい。
しかし、毎年、子どもの数が減ってきている。とするならば、新たな学校の開拓が必要ではないか。六ヵ所の少年の家で、規模は二百人くらい。五間口以上の大規模校は、ほとんど使っていない。ホテルを使っている。利用しているのは、毎年、同じ学校である。五間口以上の学校は二百人を超える。利用したくても、二百人を超える五間口以上の大規模校は利用していないという状況がある。
そこを見過ごしているというのは、働きかけが十分ではなかったのではないか。六年間、何をやっていたのかと申し上げたい。
大規模校を受け入れるためには、近隣の施設と連携しながら分散宿泊を提案したり、増床などをして二百の定員をもう少し増やしたりするなど大胆な発想で、利用拡大を進めていくことも、これからは必要ではないか。
そういうことを進めるためにも、きちんと利用者のニーズや意見を聞く。一番の利用者である学校からの意見、要望を丁寧に聞き取って分析をし、手を打っていくことが必要ではないかと考えている。
今回の改正に当たり、こうした学校をはじめとする、利用者の要望などをどのように分析してきたのか伺う。
成田生涯学習推進局長 利用者からの要望等の把握などについて。道教委においては、学校をはじめ、生涯学習団体や親子など、宿泊者が施設を利用するごとに、建物や設備の利用のしやすさや、食事の質、利用料金などについて、アンケート形式で満足度調査を行っている。
最近の満足度調査では、例えば、「建物や設備」について、「満足」と「やや満足」と回答した割合は、二十六年度は九一%、二十七年度については九三%となっており、また、「利用料金」については、二十六年度は九二%、二十七年度については九六%となっているなど、利用者からは、現行のサービスの内容や料金について、一定の評価と理解が得られているものと考えている。
道教委としては、利用者のニーズに応じた多様なサ-ビスを提供していく施設として、その意見・要望を伺うことは大切であると考えており、委員から提言のあった、収容定員などから、これまで利用を積極的に働きかけてこなかった大規模校を含めた学校の意見等を把握するとともに、実際の利用料金の見直しについても、満足度調査に必要な工夫を加えながら、引き続き、利用者の意向などを把握し、分析していきたいと考えている。
佐々木委員 施設の利用者の約半数が学校の宿泊研修によるもの。今まで大規模校にしっかりと手をつけてこなかった、工夫も智恵も出していなかった。しっかりと学校からの意見を聞くことが当然であると考えるが、今回の値上げについては、そのようなことも一切していない。施設の目的が子どもたちの体験活動を支援することであるのにもかかわらず、大人と同様に料金を値上げしようとしている。
聞くところによると、他府県や道内の類似施設においては、学校教育活動として利用する場合は、利用料金を免除するなど配慮している場合が数多くある。
こうした配慮と併せて、サービスの向上やプログラムの組み方、利用拡大の方策や検討などをしながら、教育行政における体験活動の位置付けや推進の方向性なども含めて、料金の設定を考えるべきと考えるが、この対応を含めて、道教委の見解を伺う。
山本教育部長 道立青少年体験活動支援施設における学校教育活動への配慮などについて。子どもたちが、本道の豊かな自然、文化をはじめ、食や産業などに直接ふれる「体験活動」は、豊かな人間性、郷土への愛着や誇りなどを育む貴重な経験であり、基本的生活習慣の形成、あるいは、規範意識の育成など、自立した生活に必要な力を身に付ける上で、大変有効な教育活動と認識している。
こうした中、道立青少年教育施設は、宿泊者の利用者の約半数を占める学校の宿泊研修はもとより、地域活動やボランティア活動など、学校教育活動を中心に多様な「体験活動」を支援する拠点の施設として重要な役割を果たしており、少子高齢化で子どもたちの数が減少する中、さらなる利用拡大を図るためには、学校関係者などのニーズや要望を踏まえ、大胆な発想でサービス向上などに取り組むことが必要と考えている。
今回の検討に当たっては、様々な角度からの検証が十分ではなかったものと考えているが、道教委としては、委員から指摘のあった、他府県、あるいは、道内の類似施設における利用料金の減免状況等の調査・分析を行うなどして、三十年度から始まる、つぎの指定管理期間に向けて、学校教育活動などにおける「体験活動」が一層充実されるよう、指定管理者との連携のもと、様々な工夫に努めるとともに、利用目的、あるいは、人数などに応じた柔軟な利用料金の設定について、検討していきたいと考えている。
(道議会 2016-06-22付)
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