心が動き出す学習を追究 道教育大附属旭川中が教育研究大会(学校 2016-06-29付)
附属旭川小と合同で教育講演会(講師の石井教授)
【旭川発】道教育大学附属旭川中学校(安藤秀俊校長)は十七日、同校で二十八年度教育研究大会を開催した。研究主題「学習指導要領から観る各教科の本質と役割~一人ひとりの〝心が動き出す〟授業の創造」のもと、数学や理科など十四授業を公開。音楽科特設分科会「授業力向上セミナー」や教育講演会も行い、三年計画の最終年次としての研究成果を示した。
◆数学や理科など14授業公開
同校では、三年計画による研究主題のもと、研究を推進。導入場面における問題設定や、生徒が課題を自己決定し、自分なりの考えをもとに解決するための指導過程を工夫し、問題解決的な学習の充実に努めた。
また、各単元の学習への見通しをもたせ、意欲や関心を引き出す単元最初の授業「単元の扉」づくりを見直した授業構想と指導計画の工夫などに努めた。
本年度は、「一人ひとりの〝心が動き出す〟授業の創造」を副主題に据えた。「心が動き出す」の要件として、①生徒が目標を達成できること②教師による指導内容の熟知と深い教材研究③生徒を主体とした「やりとり」と「対話」④導入段階に盛り上がる場面の設定⑤授業の山場をつくる場面の設定―を位置付け、授業実践を重ねてきた。
当日、開会式と研究概要説明のあと、国語や数学など様々な教科で計十四授業を公開。授業後は、各教科の分科会を行い、研究のさらなる深化に努めた。また、音楽科では特設分科会として、「授業力向上セミナー」を開き、道教育大学附属釧路中学校の齊藤貴文教諭が「学習指導要領が求める中学校音楽の授業」について提言した。
このあと、道教育大学附属旭川小学校との合同で教育講演会を同校で開催。京都大学教育学研究科の石井英真准教授が「今求められる学力・学習と授業の在り方」と題して講演した。
石井准教授は、次期学習指導要領において、国立教育政策研究所の提唱する、基礎力と思考力、実践力からなる「二十一世紀型能力」の育成が求められることを説いた。今後はアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善、カリキュラム・マネジメントの充実、パフォーマンス評価などが重視されることを指摘。「内容ベースから、何ができるようになるかのコンピテンシーベースのカリキュラムとなっていく」と述べた。
また、アクティブ・ラーニングの際は、「深い学び、対話的な学び、主体的な学びの過程が実現できているか留意する必要がある」と説明。「タブレットをはじめとしたICT機器を活用するのも大切だが、ICTありきの授業とならないよう注意すべき」と話した。
このほか、国の動向にふれた上で、カリキュラム・マネジメントや評価などについて解説した。
◆具体例位置付けた指導―菅原教諭の3年数学「円」
公開授業のうち、三年B組数学「円」を菅原大教諭が指導した。円周上に等分に配置した十二個の点の一点からほかの二点に直線を引いて角をつくる問題を提示。具体例として紹介した図をもとに、弧と円周角、中心角の関係が比例することを確認する授業を行った。
数学科では、「主体的に考え問題を解決する力の育成」を研究主題に定めた。
①思考の連続を促す単元の指導計画の作成と具体例を位置付けた日常的な指導②数学的活動を明確にし、重視すべき思考の方法を位置付けた学習指導案③本時の目標の達成感と単元を通して意欲を持続させる評価―の三点を工夫し、研究主題に実現を目指した。
本年度の副主題に、「本時の目標と関連させた〝具体例〟を位置付けた指導」を設定。問題提示、集団解決、問題解決の三場面で具体例を提示することとした。その上で、生徒の「心が動き出す」授業に向け、「問い返し」を軸とした「やりとり」をもとに集団全体で考え合うことを意識した。加えて、生徒の「思考のことば」を引き出すための指導過程の工夫に努めた。
この日、菅原教諭が指導した三年B組数学「円」は、全十時間扱いの三時間目に当たる。本時は、等しい弧に対する円周角が等しいことや、円周角と中心角が弧の長さに比例している関係を見いだすことを目標とした。
導入において、菅原教諭は円周上に等分に配置した十二個の点の一点からほかの二点に直線を引いて三〇度の角をつくる問題を提示。また、三〇度以外の角度にも取り組ませた。
つぎに、課題として、「弧が等しければ、必ず円周角は等しくなるのか」と課題を示した。生徒は、菅原教諭が具体例として紹介した図をもとに、円周角が等しい理由を生徒同士で説明し合い、「等しい弧の円周角は等しい」ことを確認した。
続いて、最初の問題と同条件で何度の角をつくれるか、最大で何度までの角をつくれるか問いかけた。生徒は一五度の間隔で一五〇度までつくれることなど、自分の考えを発表。弧と円周角、中心角の関係が比例していることを確認した。
おわりに、練習問題に取り組ませ、学習の定着を図った。
◆生徒の科学的対話重視―2年理科「化学変化と原子分子」
公開授業において、二年B組理科「化学変化と原子分子」を栃谷悟教諭が指導した。実験結果に対する考察と生徒同士の〝科学的対話〟を通して、デンプンとブドウ糖をつくる物質について考える授業を行った。
理科では、「自ら進んで科学的に探究する力の育成」を研究主題に設定。研究主題実現に向け、①目的意識をもちながら課題解決を進める指導過程②理科における言語活動を適切に位置付けた協働的な授業展開③学習内容を日常生活や社会的な事象と関連付けた教材および指導内容―の工夫に努めた。
本年度の副主題として、「探究の過程に〝科学的対話〟を位置付け、思考を深める指導」を掲げた。
生徒の「心が動き出す」授業のため、現象と自分の知識との間に「ズレ」を発生させ、生徒の「解決したい」意欲の向上を図った。また、生徒と教師・生徒同士の交流での新たな知識や概念の獲得に配慮している。
栃谷教諭が指導した二年B組理科「化学変化と原子分子」は、全三十七時間扱いの十四時間目。物質の分解や化合の実験結果をもとにした議論を通して、物質の成り立ちについて見通しをもつことを、本時の目標に定めた。
最初に栃谷教諭は「デンプンとブドウ糖をつくっている物質に違いはあるか」と課題を提起した。生徒は前時までの学習をもとに、実験方法を個人およびグループで思考。栃谷教諭はタブレットPCで各班の実験計画をテレビに表示させ、生徒に発表を促した。
つぎに、集気びんや石灰水、塩化コバルト紙を用いて実験を開始した。生徒は結果と考察をワークシートにまとめ、グループで交流。実験結果と生徒の考察から、栃谷教諭は「デンプンもブドウ糖も、炭素や水素を含んでおり、同じような物質でできていると考えられる」と結論付けた。
おわりに、両者の性質が異なる理由について生徒に問いかけ、次時への見通しをもたせた。
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公開授業(3年B組数学「円」)
公開授業(2年B組理科「化学変化と原子分子」)
(学校 2016-06-29付)
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