より良い制度運用に向け成果・課題検証―道小「広域人事調査の集計と考察」から⑥(終) 地域間格差の縮小へ配慮必要
(関係団体 2016-07-15付)

【考察】

 道教委、各教育局、市町村教委ならびに実務担当者への制度の周知については、昨年よりも説明の丁寧さに差が生じているようである。各校長会への説明や意見交換会等について、行われていないところもあり、行っていたとしても十分とは言えない地域もある。

 今後、校長に対して制度の趣旨や意義を文書だけによることなく、より一層丁寧に伝え、十分理解されるようにしなければ、意欲的に広域人事に参加する学校や異動希望者は増えてこないと思われる。

 異動者については、経済的・精神的な負担は大きいものがある。必要な支援を具体化していくことが必要である。また、人事協議等の折に異動者の希望に該当すると思われる学校の校長に情報提供するなど、異動者と受け入れ校の状況がマッチするように選定すること、加えて、異動学校間(校長間)での異動者の情報交流をすることで、受け入れる学校も体制を整え、学校運営に力を発揮できると思われる。これによって、異動者の精神的負担も軽減される。

 異動者の多くは、制度の趣旨を理解し、意欲と使命感をもって三年を過ごしている。若年層の教員は、元の管内に戻ってその力を発揮するべく個人の力量の高まりを実感している。また、中堅層の教員は、管内に新しい風を吹き込み、学校の活性化に力を尽くしている。元の管内に戻る際には、経験と視野の広がりから、さらに学校運営に力を発揮できると思われる。

 元の管内に戻って二年が経過した学校の校長や教員本人への調査から、広域の異動を経験することで、異動者は授業力の向上や教育課程改善への寄与など、学校全体をけん引し、仲間とともに積極的に学校運営に参画している様子がうかがえる。

 しかし、異動者の意欲や資質・能力の問題から、受け入れる学校側の体制が異動者の状況とマッチしていない場合はこの限りではない。

 三年を終えて元の管内に戻った教員、意気込みをもって一年目をスタートした教員、元の管内に戻って二年を終えた教員、そして、それらの教員にかかわる校長の貴重な意見から、この制度の成果、課題・改善点を明らかにし、より良い運用に向けた取組が進められることを願う。

【成果】

▽教職員の適正配置を推進することによって、地域における学力向上や教育課程の改善を図ることができる

▽異動者は、今まで経験のない他管内の教育実践にふれることで、新たな気づきや意欲の向上につながり、実践の幅や視野を広げることができる

▽受け入れる学校にとっては、意欲をもって異動してきた教員の言動を通して職員が刺激を受け、意識改革や意欲の向上につながる

【課題・改善点】

▽制度の趣旨や期待されていることを丁寧に説明し意見交換しながら、制度の改善を進める(校長に対する説明、意見交換会等)

▽異動者への経済的・精神的なサポートを充実させる

▽元の管内に戻る際の待遇措置を明確にする

▽異動者や受け入れ校の希望に配慮し、年限等について柔軟に運用する

▽三年間を見通して計画的な研修を進められるよう、異動先の学校でビジョンをもち、異動者と共有して実践を進める

▽異動元の学校での異動者選定がスムーズに進むように工夫する

▽制度の運用にかかわるすべてについて、地域格差が少なくなるように配慮する

(連載おわり)

(関係団体 2016-07-15付)

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