4種校長会長インタビュー①道小学校長会・松井光一氏 子の成長に責任もって 本道教育の質向上へ全力尽くす
(関係団体 2016-07-19付)

道小学校長会インタ松井光一
道小学校長会・松井光一会長

 ―道小学校長会会長としての抱負

 道小学校長会の会長二年目を仰せつかった年を迎えるに当たり、初心に帰って教師の道、校長の道を進みたいと願っている。

 道小は、「正論を以て、正道を歩む」という理念のもと、校長の職能の向上と本道教育の振興を図ることを目的に半世紀を超える活動を展開してきた。来年度は六十周年の節目を迎えることになるが、平成二十九年度は、政令指定都市への税源移譲が行われる年度である。その年に道小六十周年が重なることも、新たなる道小の出発ととらえ、組織の在り方を中心に、改革していかなければならないと思っている。

 本年度も、「未来を見据え、チーム北海道として進む道小」をキャッチフレーズに掲げ、道中学校長会、道教委、道PTA連合会などの教育団体等と協働し、本道教育の具体的な問題や課題に対して積極的に取り組もうと考えている。

 諸先輩の皆さんが築き上げてきた業績や教育に対する熱き思いを真摯に引き継ぐとともに、地区校長会との連携と結束のもと、本道教育の質の向上を目指して、全会員とともに、全力を尽くす所存である。

 ―小学校長会が抱える課題と対策

 今、学校では、これからの変化の激しい社会の中で生きていく子どもたちのために、時代の変化に対応した様々な力を身に付けさせることが求められ、個々の教員の教師力の向上を図るとともに、学校全体で教育課程の改革や指導体制の整備、校内研修の充実等に取り組んでいく必要がある。

 その一方で、今日、学校が抱える課題は、複雑化・多様化しており、いじめ・不登校などの生徒指導上の課題への対応、貧困・児童虐待などの課題を抱えた家庭への対応、特別な教育的支援を必要とする児童への対応、多様な要望をする保護者への対応など、様々な課題への対応が山積している現状にある。

 これらの課題に、今の数の個々の教員が対応することには限界があるとともに、教員が子どもと向き合う時間や授業準備等の十分な時間を確保することができない状況にある。

 そこで大きく三点の対策を考えている。

 一点目は、教職員定数改善への動きである。三十五人学級実現等の基礎定数の見直しや専科教員の配置等学校現場のニーズに合った加配定数の確保のため、文部科学省や全国連合小学校長会の動きを見据えながら、行政機関への要望要請活動を行うことが必要である。

 六月に、財政審の発表した「経済財政運営と改革の基本方針2016」いわゆる骨太の方針に対して、全連小や全日本中学校長会、日本PTA全国協議会がそれぞれ緊急要望書・要請書提出の動きを行ったことに合わせて、「教職員定数のさらなる充実を求める緊急要望書」を作成した。

 この要望書は、「少子化に応じた機械的な加配定数の削減についての議論はもうしないでもらいたい。不登校児童への対応や専科指導の充実、障がいのある児童や外国人児童への対応など、地域学校の実情に合わせて定数は増やすべきである。加配定数をきちんと確保してほしい」ということと、「少人数学級の速やかな実現、小学校二年から中学校三年まで、三十五人学級を速やかにかつ、確実に実現するという基礎定数の改善を実行してほしい」ということの二点を核として構成している。

 また、昨年度より行動している「チーム北海道」として協働していくことが、教育課題の打開につながると主張していることから、道小、道中、道P連が「チーム北海道」として一つになって、関係機関への要望活動に取り組むことを考え、道中会長、道P連事務局長とともに、提出した。

 今回特筆すべきは、教育関係者だけではなく、新たに首長をはじめとする他部局等への要望活動として、道教委の全面協力をいただき、知事部局、道議会に対して直接お会いして働きかけたことである。この動きを今後も続けていきたいと思っている。

 二点目は、「チームとしての学校」を構築する動きである。

 前述した現場の厳しい状況において、学校が教育課程の改革等を実現し、複雑化・多様化した課題を解決していくためには、学校組織全体をチームとしてとらえ対応していくことが必要である。

 そのためには、教員に加えて、多様な専門性をもつ人材を学校に配置し、それぞれの専門性を発揮して様々な業務を連携・分担しながらチームとして職務を行う体制構築が重要である。

 また、「チームとしての学校」の実現には、学校と地域との連携・協働体制の強化が不可欠であり、その構築に向けた取組は地域の活力を高め、地方創生の実現へつながるものと考える。

 こうした「チームとしての学校」構築のために、道小は、「チーム体制構築のための多様な専門スタッフの配置と専門職員の導入」と「チーム力向上のための家庭、地域、関係機関との連携・協働体制の整備」を、道中とともに提言書を作成し、五月に、道教育長に提言した。

 三点目は、各地区の困りや課題を把握し、解決に向けて動くことである。

 理事研修会・会長研修会における情報交換や、道文教施策・予算策定に関する要望から、本道各地区における課題が山積していることが分かる。

 六月には、広域人事に関連して、道小が独自に集計したアンケート調査について、全道会長研修会において論議し考察したものを道教委へ資料提供した。その際、担当課長に直接会い、広域人事での異動元の局と異動先の局との連携を密にし、異動者をフォローすることを中心に要望してきた。

 今後は機会をとらえて、各地区の課題をさらに解決していくよう活動していかなければならない。

 また、七月から十月にかけて、道内二十の各地区に道小、道中の役員幹事が訪問し、地区の要望や質問に回答する地区別研究会を毎年行っている。ことしから、道小、道中の活動を、ICT機器を使ってプレゼンテーションしながら紹介し、理解を深めたり、その時々の最新の情報を用意し、分かりやすい情報提供に努めたりするなど、道小の存在価値を感じられるようにしたい。

 ―本年度の具体的な活動

 本年度の道小の大切にしていきたい具体的な活動について、四点ある。

 一点目は、「アンテナを高くして、最新で有効な情報を把握し、全道の校長先生方に正確にお伝えすること」についてである。

 われわれ校長が力量を高め、リーダーシップを発揮するためには、最新の正しい情報を素早く手に入れることが必要である。これからの時代、未来を見据えていくためにも、現状を直視し正しく分析するとともに、将来を予想していく時代感覚が望まれている。子どもたちに充実した教育活動を展開するために、国の教育改革の動向を注視しながらアンテナを高くして最新の情報を共有することを大切にしていきたい。

 二点目は、「北海道教育のために道小としての意見表明や要望活動を行うこと」についてである。

 ことしも道小・道中とのコラボレーションによるチーム北海道としての提言書を作成した。今回は、本道教育の質の向上を目指す上では、「授業改善」と「チームとしての学校」が重要課題であるととらえ、そのための条件整備を提言している。

 「道文教施策・予算策定に関する要望書」については、毎年,各地区からいただいた要望をまとめ、つぎの年度に向け、道中・道公立学校教頭会とともに作成し、道教委に要望するものである。八月の道教委とのコラボレーションとなる、文教施策懇談会・各課懇談会にも活用される。

 今後も、道教委、市町村教委だけではなく、文科省・関係行政機関・国会議員や地方議員等への意見表明や要望活動に結び付けていきたい。

 三点目は「『“チーム北海道”として他の教育関係団体と協働すること」についてである。

 機会をとらえて、道中、道公教はもちろん、道教委や各市町村教委等の教育行政機関とコラボレーションしながら進んでいくことが、困難と思える目の前にある教育課題の打開に必ずつながるのではないかと考えている。

 また、道P連との協働による保護者や地域への啓発や、各大学や道立教育研究所などの研究・研修センター機関、民間教育団体等とのコラボレーションによるさらなる研修活動の充実については、少しずつでも実現させていきたいと考えている。

 四点目は「校長の力量を高めるための研修の充実と組織の改善を図ること」についてである。

 これからの時代の要請に応えていくためにも、教員の資質・能力の向上とともにそれに支えられた「授業改善」が不可欠である。

 これから求められるアクティブ・ラーニングの視点に基づく授業の在り方の普及・啓発や授業力向上に向けた研修の充実の条件整備を提言書において提言している。

 また、道小の全道大会や全連小の全国大会を効果的に活用し研修することも大切である。

 特に本年度、小樽市校長会に主管していただき、「北の大地から世界を見つめ、新しい社会の形成に向けて挑戦する子どもを育む学校経営の推進」を大会副主題として、第五十九回の教育研究小樽大会が九月九日・十日に小樽市で開催される。すでに全体会・分科会場が決定され、着実に準備が進んでいる。この大会において、校長のための良い研修となるよう、道小としても研修部を中心に小樽市校長会と連携し、分科会の運営などについて検討している。

 組織の改善については、昨年度の「組織の在り方検討委員会」の報告を受け止め、本年度も「同委員会」を早期に立ち上げて、会費値上げの可否、値上げを実施する場合の時期や値上げ幅等を明確にすることを踏まえながら、さらなる検討を始めた。二十九年度の政令指定都市の税源移譲を控えている札幌市小学校長会は、道小との連携協力を維持すると明言しているが、新たに札幌市小学校長会との関係も模索していかなければならない。

 今こそ、道小の存在感を全道の校長先生が感じられるよう、アンテナを高くし、全道各地区の力になるよう積極的に行動していくことが求められている。

 この一年間、校長の職能向上と本道教育の振興を図るため、各地区において理事の皆さんが遺憾なく力を発揮できるよう、充実した研修・情報交流の場となることに努めたい。

 今後さらに「教育改革」の加速度が増していくと予想される。ある意味、追い風が吹いているとも言われているが、学校現場では、変わらず生徒指導や保護者対応に追われ、多忙で余裕のないのが現状である。

 あらためて道小は、「未来を見据え、チーム北海道として進む道小」をキャッチフレーズに掲げ,本道教育の具体的な問題や課題に対して積極的に取り組み、子どもたちの成長と本道の教育に責任をもつ校長会として、全道の校長と二十八年度の活動を推進してまいりたい。

          ◇          ◇          ◇

(まつい・こういち)

 昭和54年道教育大札幌分校卒業後、札幌市立八軒西小に赴任。平成16年札幌市立屯田小教頭、18年札幌市立幌南小教頭、21年札幌市立手稲北小教頭、23年札幌市立手稲北小校長を経て、25年から現職の札幌市立手稲東小校長。

 昭和31年11月4日生まれ、59歳。札幌市出身。

(関係団体 2016-07-19付)

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