4種校長会長インタビュー②道中学校長会・赤岩輝雄氏 粘り強く歩み進めたい 教育課題解決へ小中連携が重要
(関係団体 2016-07-20付)

道中会長赤岩輝雄校長
道中学校長会・赤岩輝雄会長

 ―中学校長会会長としての抱負

 ことしは道中学校長会にとって創立七十年目の節目の年を迎えるが、創立以来「中学校長の職能向上」と「北海道中学校教育の振興」を目的として、時代時代の課題に向き合い、たゆまぬ歴史を刻んできた本会の会長職の任に就くに当たって、大変光栄なことであると同時に、職責の重さをひしひしと感じている。副会長の皆さんをはじめ、運営委員・理事・幹事の皆さん、そして何よりも全道二十地区の校長会、五百九十六人の会員の皆さんの支援と協力をいただきながら、道中の歴史と伝統を引き継ぎ、諸課題に対し全力で取り組んでいきたい。

 ことしは、次期学習指導要領の改訂に向けて、中央教育審議会から「論議のまとめ」を経て、年内に答申が行われる予定である。ことし五月に行われた全日中総会の二日目に、文部科学省初等中等教育局の合田哲雄教育課程課長が、学習指導要領の改訂について「先生方が日々指導いただいていること一つ一つが、子どもたちにとってどんなに大きな宝であるのかということをあらためて認識いただくような指導要領の改訂をしている」と話されたが、「大きな宝」がどのようなビジョンとして描かれるのか期待したい。

 また、ことし一月に策定された「次世代の学校・地域」創生プランに示された工程表によると、ことしは「学校の指導体制の充実」や「チーム学校の実現」に向けて文科省内で検討がなされ、法令等の改正に向けた具体的な取組が計画されている。全日中を通じて意見表明の機会があると思うが、全道の実情を踏まえ、声を届けたい。

 一方で、道内の状況に目を向けると、域内に中学校が一校しかない自治体が九十に迫る実態がある。ことし二月に発表された道の「教育行政執行方針」には「北海道が持続的に発展し、地方創生を実現するためには、地域の発展を支える教育の役割がますます重要となっている」と地方創生における教育・学校の役割に言及し、その実現に向けて「学校・家庭・地域・行政が連携して教育環境の一層の充実が図られるよう、効果的な施策を講じる」と述べられている。

 教育制度が改正され二年目となるが、教育の振興と地方創生とが一体となった実効性のある取組が実現するよう、校長会の立場で協力したいと考えている。

 ―中学校長会の抱える課題と対策

 同会では、平成二十六年度から組織検討委員会を立ち上げ、業務・組織の在り方を見直し、スリム化とともに経費の縮減を図ってきたが、これによって校長会の体力が弱まるとは考えていない。

 現在、ほぼ全会員とのインターネット環境が整っており、各会員に届くまでの時間が飛躍的に短縮し、配信される情報量も以前に比べ格段に増えている。事務局としては副会長、各地区理事の皆さんと双方向で情報交換し、より確かなネットワークの構築に努めたいと考えている。

 また、組織検討にはスクラップ・アンド・ビルドの精神を基本とし、スリム化の一方、各地区で必要な研修にかかる経費の補助や、全日中総会・研究協議会への参加補助等、「必要なところに必要な支援をする」との認識で、会計理事を中心に検討を進めているところである。

 特に、来年度に迫った政令市への税源移譲にかかる札幌市中学校長会との在り方について、道中の一地区としての活動のほかに、札幌市への文教施策・予算要望や、政令市等の校長会により運営される大都市中学校長会連絡協議会への取組を、今後、より強めたいとの申し入れがあり、その取扱いについて事務局間で慎重に協議・調整を進めている。

 また、昨年度、道小と連携して、十年後の学校数調査をしたが、中学校は平成二十七年度比五十三校減という結果が出た。地区校長会の多くはすでに小学校長会と中学校長会が一体となった校長会で運営されているが、今後はより一層、地区の教育課題に小・中学校が連携して取り組む体制が求められることからも、今後、遠くないうちに道小・道中で統合にかかる議論がされてしかるべきと考える。

 ただし、政令市への税源移譲の話題と同じ土俵での論議は混乱を招きかねないので、道小、また各地区の意向を十分にくみながら、慎重に進めなければならないと認識している。

 つぎに、多くの校長が課題に挙げる問題として時間外勤務の解消がある。これまでもたびたび取り上げられているが、TALIS2013調査結果によると、わが国の教員、特に中学校教員の一週間当たりの勤務時間は調査国中特異的に長いとの指摘がある。

 五月の全日中総会では馳浩文部科学大臣が来賓として臨席され、参加した全国の中学校長に直接挨拶されたが、教員が休みなく働き、研修ができていない現状は異常であり、SCやSSW、部活動の指導など、専門的な人に参加してもらうチーム学校を推進する姿勢を強調された。

 また、秋の臨時国会で、法改正も視野に入れて検討するとし、加えて「財務省に、教職員定数の配置について要求を出したい」と教育に対する先行投資の重要性を訴えられた。これらのことは先にもふれたが、馳プランと呼ばれる「次世代の学校・地域」創生プランに盛り込まれていることだが、システムとしての教育現場の改善や人的な支援なくして時間外勤務の問題は解決しないと考える。

 全日中はもちろんのこと、道小や道P連等の関係団体とも連携し、道や国へ強く要望したいと考えている。

 ―本年度の重点について

 五月の総会において、本年度から始まる四ヵ年継続研究の研究主題を、「社会を生き抜く力を身に付け、未来を切り拓く日本人を育てる中学校教育」とし、主題の実現のために、新しい時代に求められる学校づくりに向けてこれまで以上にリーダーシップを発揮し、特色ある教育活動の一層の充実に努めるとの決意を一同新たにした。

 また、校長会の使命である「教育の質の向上」を目指し、これまでの検証をもとに学校改善・学校力の向上に全力を注いでいくことを確認し合った。

 九月三十日、十月一日に道中研究大会上川・旭川大会が行われるが、新しい研究主題のもと、先に述べた決意や姿勢に基づく実践研究の成果と課題を各地区からもち寄り、熱心な討議が展開されることを大いに期待している。

 教育改革の真っただ中で開催される研究大会であるが、副主題に掲げられ、また、大会の合言葉でもある「子どもたちの未来に責任をもつ学校経営」の姿を全道に、全国に発信する大会にしたい。

 つぎに、先の課題でもふれたが、本会の業務や組織の見直しについては、これまでの組織検討委員会での議論を十一月までに取りまとめ、十一月十一日に開催される第五回理事研修会で「最終答申」として報告・提案する予定で進めている。

 組織運営の在り方について見直されることが見込まれており、各地区校長会および会員の皆さんに理解と支持をお願いすることになろうかと思うが、地教研等の場で経緯の説明をするなど情報を正しく伝えられるように努めるので、理解と協力をお願いしたい。

 結びになるが、本道中学校教育の振興のために、これまでの各地区、各学校での実践とその成果を十分踏まえ、保護者・地域の理解と協力を得るとともに、教育関係機関・関係団体と協働し、「チーム北海道」の意識に立って粘り強く、確実に歩みを進めたいと考えている。

 引き続き、会員各位・関係者各位の理解と支援をお願いしたい。

(あかいわ・てるお)

 昭和55年道教育大札幌分校卒。同年札幌市立伏見中学校を振り出しに、澄川中、平岡中央中、日章中に勤務。平成18年北白石中教頭、21年信濃中校長、24年東白石中校長を経て、26年から白石中校長(現職)。

 昭和31年8月19日生まれ、59歳。札幌市出身。

(関係団体 2016-07-20付)

その他の記事( 関係団体)

道・市造形教育連盟全道研究大会 〝シコウ〟促す学び展開 場面を工夫した7授業公開

全道造形教育研究大会授業公開  第六十六回全道造形教育研究大会(七月二十八・二十九日、札幌市立新陵東小学校)では、七つの授業を公開したほか、保育に関する提言や、特別支援に関するポスター発表が行われた。このうち、札幌市立伏...

(2016-08-01)  全て読む

道国公立幼・こども園教育研究大会十勝大会 主体的な学びを支えて 講演や公開保育などで研鑚

道国公立幼稚園こども園教育研究大会十勝大会  【帯広発】道国公立幼稚園・こども園教育研究会(綿屋圭子会長)は七月二十六日から二日間、幕別町百年記念ホールで道国公立幼稚園・こども園教育研究大会十勝大会を開催した=写真=。大会主題「〝生き...

(2016-08-01)  全て読む

道評研が夏の評価セミナー開催 意欲高める通知表とは 講話や実践的研修など

道評研セミナー  道教育評価研究会(=道評研、板田裕子会長)は二十六日、札幌市立東川下小学校で「夏の教育評価セミナー」を行った=写真=。「子どもの良さや伸びを知らせ、意欲を高める通知表にするためには?」と悩...

(2016-07-29)  全て読む

4種校長会長インタビュー④道特別支援学校長会・五十嵐利裕氏 本道の新たな実践構築 専門性とセンター的機能を

特支学校長会五十嵐利裕  ―本道の特別支援教育の歴史と課題  昨年度に引き続き、道特別支援学校長会会長の任をいただいた。本年度は、十九年に特殊教育から特別支援教育となり十年目を迎えた。先達が築いてきた特別支援教育...

(2016-07-22)  全て読む

4種校長会長インタビュー③道高校長協会・大鐘秀峰氏 課題解決へ協働体制構築 支部活動の活性化を促進

道高校長協会大鐘秀峰  ―高校長協会会長として本年度の抱負  本年度、新たに道高校長協会会長に就任した。公立高校二百三十五校、私立高校五十六校を束ねる会長としての重責を感じ、会員の皆さんの協力をいただきながら本...

(2016-07-21)  全て読む

道小学校家庭科教育連盟が総会 新主題を設定し実践研究 10月に札幌で研究大会開催

小学校家庭科教育連盟  道小学校家庭科教育連盟(新岡惠会長)は九日、札幌市立円山小学校で二十八年度総会・夏季研修会を開いた=写真=。本年度新たに、研究主題「自らよりよい生活を創りだす子ども~生活を見つめなおし疑問...

(2016-07-19)  全て読む

4種校長会長インタビュー①道小学校長会・松井光一氏 子の成長に責任もって 本道教育の質向上へ全力尽くす

道小学校長会インタ松井光一  ―道小学校長会会長としての抱負  道小学校長会の会長二年目を仰せつかった年を迎えるに当たり、初心に帰って教師の道、校長の道を進みたいと願っている。  道小は、「正論を以て、正道を歩む」...

(2016-07-19)  全て読む

学びの意欲、地域が支える 小・中対象の数学検定費用を負担―釧路ロータリークラブ

 【釧路発】釧路ロータリークラブ(木下正明会長)は、新たに日本数学検定協会の「実用数学技能検定」を受ける釧路市内の子どもたちの検定料を負担する。同クラブ八十周年記念事業の一環で、七月上旬に木...

(2016-07-19)  全て読む

より良い制度運用に向け成果・課題検証―道小「広域人事調査の集計と考察」から⑥(終) 地域間格差の縮小へ配慮必要

【考察】  道教委、各教育局、市町村教委ならびに実務担当者への制度の周知については、昨年よりも説明の丁寧さに差が生じているようである。各校長会への説明や意見交換会等について、行われていない...

(2016-07-15)  全て読む

戻り人事2年終了校校長、本人に対する調査―道小「広域人事調査の集計と考察」から⑤ 実践の幅、視野の広がりにつながる

道小広域人事調査⑤ 【戻り人事2年終了校校長、本人に対する調査】 ▼広域人事戻り教員の活躍ぶりについて(校長) ▽「授業力の向上」が八五%と最も多く、「学力の向上」六九%、「職場仲間」と「教育課程改善」がと...

(2016-07-14)  全て読む