4種校長会長インタビュー③道高校長協会・大鐘秀峰氏 課題解決へ協働体制構築 支部活動の活性化を促進
(関係団体 2016-07-21付)

道高校長協会大鐘秀峰
道高校長協会・大鐘秀峰会長

 ―高校長協会会長として本年度の抱負

 本年度、新たに道高校長協会会長に就任した。公立高校二百三十五校、私立高校五十六校を束ねる会長としての重責を感じ、会員の皆さんの協力をいただきながら本道高校教育の発展に微力ながら貢献していく所存である。

 今日、急速かつ全体的に教育改革が進行している。国レベルの教育行政上の課題が共通に学校に降りてくることから、協働してその課題の解決に当たることができると考えている。

 そのためには、協働体制の構築に向けて、校長会本部のリーダーシップを発揮しなければならない。発信力を高め、校長会活動の基幹となる支部活動の活性化を促したいと思う。また、本年度も継承する本協会の主題「北海道の未来を担う人を育む高等学校教育の創造」にあるように、新しい教育の在り方、新しい学校の在り方を「創造」し、それを提言していきたいと考えている。

 その際、今日のグローバル社会に対応できる学力が求められているだけに、大きな枠組みとして世界に基準を置くような視点は欠かせない。これまでの日本型の学力観や学習観を大きく変えていく方向へ前進するための研究・研修の在り方や学校組織改革といった枠組みの再構築も連動する、取り組むべき課題である。

 さらに、各学校で教育行政上の施策を実現レベルに落としていくには、新しい柔軟な発想による創造が不可欠。その意味では、能動的かつ主体的に施策を受け止める必要がある。その点では、道教委からの指導助言を仰ぎ、道の施策との関連も重要視しながら、課題の位置付けを明確にして課題解決に取り組んでいく。

 校長会会員の協働性を高めるには、情報交換や情報共有が不可欠。本部からの発信だけではなく、支部からの情報収集も推進し、相互のコミュニケーションを活発にする必要がある。小さな取組でも、価値あるものや発展性のあるものがある。希望ある取組や価値を創出して行くことが大切である。

 加えて、課題を解決していく上で必要なことは、長期、中期、短期それぞれの校長協会としてのビジョン。対処療法的な解決では、持続可能性という点で不安が残る。進行する教育改革の中で段階的目標を措定し、それを軸にしながら、これからの学習指導要領の改訂や新しいテストが導入される激動の十年程度を視野に入れて、本協会の活動ビジョンを策定していくことが必要である。それによって個々の課題の位置付けとともに、解決の方向と方策が確かなものになると考える。

 ―高校長協会の抱える課題と対策

 校長協会が抱える課題として、まず、体制の問題がある。昨年度と本年度で百人近くの校長が退職することから、研究・研修を行う組織文化と盤石な体制の継承が求められる。本部の発信力を高め、支部への情報提供による研修を軸として支部活動を活発にすることが何よりの課題である。

 そこで核になるのは、教育改革動向の把握とそれへの対応。これは、どの学校にも共通の課題であり、そのため、一体となって取り組むことができるという点で、組織的な学習機会であるととらえている。

 また、一昨年度から重点的に取り組んでいる不祥事防止についても、作成したテキストを軸に継続的、計画的に研修を継続していく必要がある。順守すべき法制度について、知識レベルだけではなく、認知レベルに高めていくことが不可欠である。

 不祥事防止については、後継者の育成という観点から、校長がロールモデルとして、リーダーシップを発揮することが王道である。組織文化としての同僚性やリーガルマインドの醸成を図ることも大切だと感じる。

 さらに、二十二年度から財務・組織の検討を継続的に行ってきたが、予算面で再検討の時期が訪れている。保護者負担の軽減という観点から、学校規模別負担金を廃止し、校長の個人負担を中心に財源としてきたが、繰越金を取り崩している状況にある。

 現在の活動を縮小させないことと、個人負担を増やさないということを基本方針にしながら、財務の見直しを行う予定である。

 ―本年度の重点

 本年度の重点としては、目まぐるしい教育改革に対応するため、研究・研修が最重要課題である。その中核となる調査研究部の活動については、道教委の高校教育課から六つの委員会のそれぞれに担当者についていただき、必要な情報や助言をいただける体制とした。

 また、論文の作成に当たっては、本部役員の担当者を査読者として特定し、徹底した検討が可能になるよう、研究体制のさらなる組織化を図った。また、主査が全国校長会に参加できるよう門戸を広げたのも、研究・研修の推進を企図したことによっている。

 学習指導要領の改訂に伴う学力および学習の在り方を自校の実態に合わせて構築していきながら、それを評価する仕組みとしての新しい二つのテストについては、周到な対策が求められる。特に、二〇二〇年度に始まるセンター試験に替わる大学入学希望者学力評価テスト(仮称)への対応は、協働的研究・研修が不可欠である。研究実践を積み上げて、共有していきたいと考えている。

 地域レベルでの支部活動の活性化も重点としている。ローカルな課題の中に、今日的課題の本質や普遍的な解決の仕方が潜んでいる。本年度は、全国校長会への支部選出理事等の参加の拡大や、本部役員の支部への派遣等を考え、支部活動の活性化を図っていく。

 教育行政上の課題はどれも喫緊の課題だが、それを学校事情の異なる各校でそのままの形で実施するのは難しい場合が多い。その施策の背景や趣旨を押さえながら、理念レベルから実現レベルに落とす方法論が必要となるし、その方法論を組織として学習していくことが求められる。

 どの学校にも共通の課題が降りてくる中で、個別の課題も確かに存在する。それらは、決して性質の異なる別個の課題ではない。並列的に、同時に解決が図られることが可能な、通底する面がある。そういう点で、共通課題を受動的に受け止めるのではなく、改善好機として、積極的に受け止めることで、関連する個別課題の解決につなげることができると考える。

 改正公職選挙法、女性活躍推進法、障害者差別解消法、ストレスチェック制度等の法制度にかかる施策も学校経営にかかわる喫緊の課題。時間外勤務の縮減等の業務改善も求められる中、本道の新しい高校教育の在り方を描出する時期に来ていることを、厳粛な気持ちで受け止めている。

(おおがね・ひでお)

 昭和58年北大大学院修了。平成18年日高高教頭、20年札幌西高教頭、22年美深高校長、24年札幌真栄高校長を経て、27年から札幌北高校長。

 昭和32年1月15日生まれ、59歳。札幌市出身。

(関係団体 2016-07-21付)

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