道高校長協会等文教要望への道教委回答〈下〉(道・道教委 2016-09-08付)
Ⅱ 道教委として、つぎの事項について早期実現を図られることを要望する。
6 教職員の待遇改善について
(1)給与改善措置〈重点〉
ア 給料表の最高号俸の上積み措置について、引き続き努力することを要望する。
【回答】
教育職三級および四級にかかる号俸については、人事委員会勧告に基づき、十八年四月一日から三号俸(新給料表においては十二号俸)、また、行政職三級から七級、教育職二級にかかる号俸については、二十七年四月一日から八号俸の増設を図っており、今後においても、人事委員会の勧告を尊重することを基本としながら対処していく。
イ 各種手当の削減・縮減等、教職員の待遇について改変を行う場合は、特に慎重に対応することを要望する。
【回答】
教職員の給与については、人事委員会の勧告を尊重することを基本とするとともに、国における義務教育費国庫負担金の算定基準の改正状況および他府県の状況等を踏まえ、検討していく。
ウ 寒冷地手当の支給については、本道の特性と物価の状況に配慮するよう関係機関に申し入れることを要望する。
【回答】
寒冷地手当については、今後とも、人事委員会勧告を尊重することを基本としながら対処していく。
エ 再任用職員にへき地手当、寒冷地手当等を支給することを要望する。
【回答】
再任用職員の給与については、無年金期間の発生による再任用職員の増加や、特定地域への勤務希望者の集中などを考慮し、二十六年四月から、人事委員会勧告に基づき、単身赴任手当および住居手当を措置した。
また、再任用職員の給与の在り方については、人事委員会報告において、引き続き、検討を進めていくことが報告されており、国や他府県の動向も注視しながら、所要の検討を進めていきたいと考えている。
(2)行政職員の待遇改善〈重点〉
ア 国における公務員制度改革の動向等を見極める中で、行政職員の職責に応じた待遇改善について、引き続き、取組を進めることを要望する。
【回答】
事務職員等の給与改善については、二十八年四月一日の改正地方公務員法の施行に併せて、学校職員給与条例に等級別基準職務表を新設したことに伴い、新たに置かれる専門主任主事を行政職給料表四級とするとともに、事務長にあっては、職務の級の改正、管理職手当の対象となるすべての学校に支給範囲を拡大等しており、現段階においては、現行以上の措置を講ずることは困難であると考えている。
イ 学校事務体制の維持と事務職員の資質向上に向けた事務主任・事務職員・職務換職員の階層別研修の実施および研修機会の確保と実務研修の充実を図ることを要望する。
【回答】
事務主任および事務職員について、可能な限り研修受講の機会を確保するとともに、資質・能力向上につながる育成・支援の方策を検討していく。
(3)管理職の待遇改善〈重点〉
ア 人材確保・育成の観点から、給与・管理職手当等、職責に応じた給与・手当等待遇の在り方について早急に改善し、直ちに完全回復を図ることを要望する。
【回答】
教職員の給与については、人事委員会の勧告を尊重することを基本とするとともに、国における義務教育費国庫負担金の算定基準の改正状況および他府県の状況等を踏まえ、検討していく。
なお、給与の削減措置については、二十八年三月に策定された「行財政運営方針~今後の行政改革と財政健全化に向けた取組」として実施しているものであることから、理解願う。
イ 女性管理職のための人事上の配慮事項など条件整備を要望する。
【回答】
子育てや親の介護等の家庭環境による事情がある場合は、異動や昇任に当たっては、勤務地など人事上の配慮をすることとしており、配置に当たっては、校長と協議しながら個別に対応していく。
(4)主幹教諭の待遇改善〈重点〉
主幹教諭の待遇改善を引き続き要望する。
【回答】
主幹教諭の給与改善については、人事委員会勧告を尊重することを基本としながら対処していく。
(5)舎監等の待遇改善
寄宿舎を有する学校教職員の業務が過重であることから、舎務手当の増額、舎監の増員および農業経営者育成寮の寄宿舎指導員の配置等の加重負担軽減措置の改善を進めることを要望する。
【回答】
舎務手当については、道独自で措置している手当であり、他府県の状況や厳しい道財政の状況を踏まえると、増額は難しいものと考えている。
また、舎監の増員については、寄宿する生徒の数が五十人以下の場合を除き、農業経営者育成高校には三人、その他の学校には一人の教員定数を「標準法」に準拠し措置していることから、増員は難しいものと考えている。
(6)公宅の新築・補修等
老朽化した公宅の改築や補修の一層の促進を図るとともに、地域の実情に応じて改築・改修年限の短縮措置を講じるなど、特に郡部の住環境を改善することを要望する。
【回答】
公宅については、道有施設の長期的視点に立った効率的な施設整備を進めることとし、十九年十月に策定した「教職員住宅有効活用プラン」「教職員住宅長期修繕計画」に基づいて、経過年数や老朽度、公宅需要等を考慮し計画的に既存公宅の修繕等を行っている。
今後も、当該プラン等を踏まえて、公宅の適正な管理に努めるとともに、プラン等の見直しも併せて進めていく。
7 教員の時間外勤務の取扱いについて
(1)縮減に向けた効果的な取組の推進〈重点〉
時間外勤務の縮減に向けた取組については、教職員の勤務時間を把握するシステムを構築するなどして、実態に基づいた効果的な取組を推進することを要望する。
【回答】
教育職員の時間外勤務等の縮減については、二十一年八月に策定した「取組方策」に基づいて、「時間外勤務等縮減推進会議」での議論などを踏まえ、具体の取組を進めており、二十八年度については、ことし七月に第一回の会議を開催した。
この七月の会議においては、文部科学省において本年度実施予定の教員の勤務実態調査を踏まえて、道教委でも実施を予定している「教育職員の時間外勤務等にかかる実態調査」について、調査項目や調査の進め方などについて、議論いただいており、現在、会議での意見等を踏まえて、調査内容などを検討している。
今後は、この調査によって、道内の教育職員の勤務実態の現状を把握・分析し、より効果的な時間外縮減に向けた取組について、「時間外勤務等縮減推進会議」等において検討していく。
(2)変形労働時間の対象業務の拡大等〈重点〉
変形労働時間の対象業務を一層拡大するなど、学校現場の実態を踏まえた、実効ある対応を早急に検討することを要望する。
【回答】
変形労働時間制の対象業務については、その業務が児童生徒に直接指導を行うもの、計画的に行われるものであるかなどを総合的に勘案し、修学旅行の引率業務や、文化祭・体育祭等の業務、さらに、二十七年度からは、登校時の通学指導業務などに対象を拡大してきており、ことし四月一日から、昨年度の時間外勤務等縮減推進会議での意見を踏まえ、校長の判断によって、勤務時間の割振り変更にかかる様式の一部を省略できるとした。
今後も、学校現場の実態や時間外勤務等縮減推進会議での議論等も踏まえ、対象業務等が適切なものとなるよう、引き続き検討していく。
8 事務長の職務・職制の明確化と学校事務の効率化について
(1)事務長の職務と職制等
事務長の職務と職制等に関し、関係条例・規則等において一層の明確化を図ることを要望する。
【回答】
事務長の職務や職責・権限については、学校教育法施行規則第八二条、道立学校管理規則第六条第一項および第七項で規定されており、さらなる明確化については、法令等の改正を踏まえて対応していく。
(2)学校事務の簡素化・効率化
ア 学校事務の簡素化・効率化を図るため、副校長、教頭、事務長の専決事項の見直しについて、引き続き研究を進めることを要望する。
【回答】
副校長、教頭、事務長の専決事項については、「道立学校事務専決代決規程」を定めているが、さらに事務効率を図るべき事項等について、高校長協会等からも意見を伺いながら、研究していく。
イ 現金取扱に伴う金銭事故を防止するため、日本スポーツ振興センター共済掛金の現金取扱による納入について改善を図ることを要望する。
【回答】
共済掛金の納入方法について、二十三年度末に見直しを行い、特別支援学校の加入希望者については、納入通知書による徴収方法に改善(新一年生については、入学式当日に現金で徴収しているため、新一年生を除く在校生を対象)し、その後も庁内において、さらなる改善について検討してきた。
また、二十七年度の定期監査の監査結果報告書において、事務の効率性の観点から、収入取扱員の収納実態に即した事務処理に見直すとともに、加入者による納付の利便性や金銭事故防止を図るため、口座振替による納付等について、「検討事項」とされた。
今後とも、事務長会から意見を伺いながら、収納事務の改善について検討していきたい。
ウ 道高校奨学会奨学金について、直接奨学会から支給する方式を取り入れることを要望する。
【回答】
道高校奨学会奨学金の支給方法については、関係部局や道高校奨学会とともに、引き続き、改善に向けた検討を行っていく。
9 二十一世紀を担う人材を育成する教育の推進について
(1)キャリア教育の推進
高校生のインターンシップ等を通したキャリア教育を推進するために、引き続き予算の増額を図り、関係機関等との連携を強化するとともに、研修の充実を図ることを要望する。
【回答】
高校生のインターンシップについては、望ましい勤労観・職業観を育成するために重要な体験活動の一つであることから、引き続き、「高校生インターンシップ推進事業」の予算の確保に努めるとともに、経済団体等に対し、インターンシップへの理解と協力についても継続して要請していく。
(2)グローバル教育の推進
グローバル社会において、リーダーシップを発揮し国際的に活躍する人材等を育てるグローバル教育を推進するために、道教委の担当課が知事部局や関係機関等との連携を強化し充実を図ることを要望する。
また、新たな英語教育を推進するため、国の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」に基づき体制整備等を図ることを要望する。
【回答】
これまでも、グローバル人材の育成に向け、知事部局などの関係機関や団体との連携のもと、「スーパーイングリッシュキャンプ」、ALTの指導力向上研修や海外からの研修旅行の受入れ等によって、外国語教育および国際理解教育の充実に取り組んできており、さらに本年度は、道内の高校生がPC等を活用し、海外の高校生等と意見交換を行う場として「U―18未来フォーラム」を実施する予定である。
今後とも、知事部局などの関係機関や団体との連携を一層進め、これらの取組の充実を図るとともに、文科省「スーパーグローバルハイスクール」の取組においても、知事部局等と連携し指定校の取組を支援するなどして、グローバル人材の育成に向けた教育の充実に努めていく。
(3)ICTを活用した教育の推進
情報化社会の中で、個人が社会の変化に応じ、生涯にわたって職業能力や就業能力をもち、社会生活を営んでいく上で必要な知識・技能などを習得・更新できる先進的な教育の推進およびICT支援員の配置を要望する。
【回答】
「ICT活用教育促進事業」の成果と課題を踏まえ、実践指定校を含む日高管内道立高校四校(浦河高校、静内高校、富川高校、平取高校)を、情報通信技術を活用した教育振興事業「情報教育推進校(IE-School)」に指定し、本年度から二年間、段階的にICT教育の推進について研究を進めている。
情報教育推進校四校では、教科横断的に情報活用能力を育成する指導方法や教材の利活用等を具現化する年間指導計画を作成するとともに、「タブレットPCを活用したアクティブ・ラーニングによる指導方法の開発」「遠隔システムによるプログラミングおよび情報セキュリティにかかわる学習プログラムの実施」「生徒の情報活用能力の実現状況等を把握するLearning Management Systemの構築」について実践的な研究を行う。
また、ICT支援員の在り方についても研究する。
同事業の成果を北海道の教育振興の「指導モデル」として、道内の高校に普及・啓発していく。
(4)政治的教養の教育の推進
選挙年齢の引き下げに伴い、高校生に国家・社会の形成者としての資質や能力を育む政治的教養の教育を推進するため、道教委の担当課が選挙管理委員会等の関係機関との連携を強化するとともに、研修の充実を図ることを要望する。
【回答】
これまで、道立高校では、道選挙管理委員会と連携し、模擬議会や模擬選挙などの実践的な取組のほか、教員を対象に、選挙管理委員会の職員を講師とした研修などを行っている。
道教委としては、国の副教材に加え、道教委が作成した指導資料を活用するなどし、指導主事の学校訪問や各種研修会の機会等において説明するとともに、効果的な取組事例を収集し各学校に提供するなどし、政治的教養を育むための取組の充実を行っていきたい。
10 学校における健康管理の充実について
(1)生徒の心の健康管理〈重点〉
不安やストレスに伴う不登校・薬物等の乱用・性の逸脱行為等が問題となり、生徒の心の健康管理が一層重要になっていることから、学校の実情に応じて、スクールカウンセラーの拡充やスクールソーシャルワーカーの派遣および関係専門機関との支援体制の構築を図ることを要望する。
【回答】
スクールカウンセラーの配置については、国の「スクールカウンセラー活用事業」(国庫補助事業)を活用し、七十六校の高校に月一回程度、年間を通して計画的に相談活動ができるよう配置しており、二十五年度からは、通年配置している高校以外の学校へも派遣できるよう取扱要領を定め、予算措置した。
また、緊急的に生徒の心のケアを要する場合は、スクールカウンセラーの緊急派遣を実施している。
つぎにスクールソーシャルワーカーの導入については、国の「スクールソーシャルワーカー活用事業」(国庫補助事業)を活用し、二十年度から、市町村と委託契約によって配置している。また、二十六年度からは、道教委でもスクールソーシャルワーカーを任用し、道立学校へ派遣できる体制を整え、二十八年度は五人体制としている。
道教委では、スクールカウンセラー活用事業およびスクールソーシャルワーカー活用事業は、学校の教育相談体制の充実を図る上で重要な事業と考えており、引き続き、国に対して、制度の充実を要望していく。
また、道財政は極めて厳しい状況にあるが、引き続き、予算の確保に努めていく。
(2)教職員のメンタルヘルス対策
教職員が心身の健康の保持増進を図るため、関係機関を活用した予防的なメンタルヘルスケアの取組を積極的に推進することを要望する。
【回答】
教職員は、日常的に児童生徒と接する立場にあり、その人格形成に大きな影響を与えることから、学校教育を円滑に実施するという観点からも、健康を維持することは重要である。
従って、教職員の健康は、目指す「学校力向上」や「学校づくり」等の基盤であり、メンタルヘルス不調や病気を予防する取組の推進は、学校経営上の重要な課題の一つと考える。
道教委では、メンタルヘルス対策として、教職員の病気休職者のうち、約七割が精神疾患による休職者である現状を踏まえ、「予防の取組」に重点を置いた、「道立学校職員等のメンタルヘルス計画」を二十七年三月に策定し、各道立学校長に対し、取組の充実をお願いしている。
同計画による取組の重点として、本年度は、①職場研修等の充実②衛生委員会の活性化③メンタルヘルス・アクションプランの策定④ストレスチェック制度の実施―などを示している。
特に、「ストレスチェック制度」については、教職員自身のストレスへの気づきを促すとともに、職場環境の改善につなげ、メンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としており、教職員の心の健康の保持推進を図る上で極めて重要な取組であり、本年度から毎年度、すべての道立学校職員を対象に実施している。
今後とも、教職員の精神疾患の未然防止、早期発見、早期対応に向けたこれらの取組を一層推進していくす。
11 体育・文化活動の振興について
(1)部活動の位置付け〈重点〉
学習指導要領に部活動の位置付けについて示されたことを踏まえて、各学校の規定等に部活動指導を校務として定めることができるよう、道立学校管理規則に部活動を位置付けることを要望する。
【回答】
部活動は学校の教育活動の一環として、希望する生徒の自主的・自発的な活動として行われているものであり、生徒の心身の健全な発達や社会性を養う上で大きな役割を果たしているものと考えており、位置付けも含め、部活動の在り方については、引き続き検討していく。
(2)高校体育・文化活動への道費補助
体育・文化活動振興のため、高体連・高文連・定通体連に対する補助金の増額を図ることを要望する。また、事務局体制の維持について、特段の配慮を要望する。
【回答】
高体連および定通体連に対する補助金の増額については、道の厳しい財政状況から困難であるが、引き続き、予算の確保に努めていく。
高文連に対しては、二十三年度をもって、全国高校総合文化祭生徒派遣費の補助を廃止しており、今後も、補助は困難であると考えている。
(3)大会参加旅費の補助
ア 高体連、高文連、定通体連の全国大会に出場する生徒の交通費等について、特に、定時制・通信制に通学している生徒は経済的に困窮している家庭が多い状況にあることなどを考慮し、予算確保することを要望する。
【回答】
全国大会への生徒派遣補助費については、高文連は二十三年度をもって、高体連および定通体連は二十四年度をもって廃止しており、今後も、道の厳しい財政状況から困難であると考える。
イ 専門学科等の各種クラブ活動は学習指導要領に位置付けられ、本道産業の発展を担う重要な活動であることから、全国大会に出場する生徒の交通費等について補助することを要望する。
【回答】
厳しい財政状況から、新たな財政措置を伴う補助は困難な状況にある。
(4)使用料の減免措置等
道立の体育・文化施設等の使用料の減免措置を引き続き要望する。また、道立体育施設においては、高体連等の大会が開催できるよう会場使用について特段の配慮を要望する。
【回答】
観覧料の免除や利用料金の減免をしてきているが、今後も、これらの措置を行っていく。
(5)学校図書館の充実〈重点〉
改正学校図書館法の趣旨を踏まえた学校図書館への学校司書の配置について計画的に進めることによって、アクティブ・ラーニング・スペースとして、また、豊かな人間性を形成する場としての学校図書館の充実を図ることを要望する。
【回答】
学校図書館担当事務職員(いわゆる学校司書)については、高校標準法に準拠し、十二学級以上の全日制高校に事務職員を一人定数配置しているが、さらなる配置については、国による定数改善が必要と考えており、引き続き、学校図書館機能の充実のための定数措置の充実について国に要望していく。
(道・道教委 2016-09-08付)
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