道都市教委連文教施策要望に対する道教委回答〈下〉(関係団体 2016-11-10付)
道都市教育委員会連絡協議会(長岡豊彦会長)、道都市教育長会(同)が六月に道教委に提出した二十九年度文教施策要望に対する回答の概要はつぎのとおり。
▼学校教育の振興充実について
(1)全国学力・学習状況調査等の学力向上策の推進
道教委では、できるだけきめ細かく分かりやすい調査結果を示す観点から、報告書の内容について不断の工夫改善を行っているところ。
二十六年度は、変更された国の実施要領に基づき、市町村の同意を前提として市町村名を明らかにした公表を行うこととし、教科の領域別の状況を分かりやすく示すことができるレーダーチャートを基本としつつ、市町村教委がこれまで取り組んできた施策等の成果として、教科や質問紙のデータ、分析結果を今後、重点的に推進する施策等を掲載するなどの改善を加え、市町村の成果や課題が明らかになるよう工夫したところ。
また、二十七年度は子どもが見通しをもてるよう、授業の冒頭で示す目標を工夫すること、授業の最後に子ども自身が学習したことを振り返る活動を位置付けることなど、すべての学校で共通して取り組む授業改善のポイントや、家庭学習の定着に成果を上げている市町村の取組事例など、市町村教委や学校の学力向上の取組の参考となる具体的な方策を掲載したところ。
今後も、教科に関する調査と質問紙調査の相関をさらに分析するなどして、より一層きめ細やかな分析に取り組み、市町村教委や学校の取組がさらに充実するよう工夫していく。
「ほっかいどう“学力・体力向上運動”」については、本道にかかわりのあるスポーツ選手を起用したポスターなどこれまでの取組に加え、新たに本道の子どもたちに望ましい学習習慣を身に付けさせることをねらいとした保護者向けリーフレットの作成・配布などに取り組んできており、今後も多くの方々の協力を得ながら、学校・家庭・地域・行政が一体となった取組を推進していくので、支援をお願いする。
(2)小学校における英語教育の拡充強化に向けた教員研修会の充実および英語専門教員の配置拡充
小学校における英語教育に関する教員研修については、道教委では英語指導力や英語力の向上のため、カナダ・アルバータ州立大学から外国人講師を招へいし、道立教育研究所を会場とする研修講座を実施しており、本年度は新たに「夏季集中セミナー」をネイパル砂川において実施することとしている。
また、二十六年度から国が実施している「英語指導力向上事業」の研修に教員を派遣し、研修を修了した教員が英語教育推進リーダーとして、各管内における研修会で講師を務め、すべての小学校の中核教員に研修の成果を還元する取組を計画的に進めている。
今後も、なお一層、英語指導力や英語力の向上が図られるよう、研修内容や方法等の改善・充実に努めていく。
なお、教員の専門性を生かした質の高い授業を通じ、学力の一層の向上を図るため、小学校専科指導にかかる加配の拡充について、引き続き国に要望していきたいと考えている。
(3)就学援助の財源措置拡大
道教委では、市町村が必要な就学援助を行えるよう、補助金や交付税の財源措置の拡充についてこれまでも国に要望しているが、市町村の認定要件や援助項目に違いがあることから、国においてガイドラインを策定することや、生活保護基準の見直しに伴い、二十九年度以降の就学援助に影響が出ないよう財源措置することなどについての検討も含めて、引き続き要望していきたいと考えている。
(4)中学校の全道大会・全国大会に対する引率教員の旅費の充実
道教委としては、昭和五十六年度から日本中学校体育連盟が主催する全国中学校体育大会にかかる引率旅費を措置してきたところで、二十五年度からは十人以上の生徒を引率する場合、引率者一人の加算ができるよう、改善したところ。
また、道中学校体育連盟が主催する地区大会(地域およびブロック大会も含む)にかかる引率旅費についても、二十五年度から新たに全国大会同様の措置をしてきたところ。
全道大会の引率旅費については、全国・地区大会の執行状況や全道大会規模などの把握を行い、予算措置に向け引き続き検討していきたいと考えている。
文化的諸行事の全道大会・全国大会の部活動引率旅費については、「中学校文化連盟」の組織化の進展状況等を注視しながら、検討していきたいと考えている。
(5)生徒指導旅費等の十分な確保
生徒指導旅費については、家庭訪問や校外指導等生徒指導を行う際の旅費をいじめ関連生徒指導旅費として一本化し、各学校が柔軟に予算執行できるように配慮している。
厳しい財政状況にあるが引き続き、予算の確保に向け努力していきたいと考える。
(6)校外学習指導旅費の十分な確保
各学校における校外学習指導がより円滑に実施されるよう、学校の実態の把握に努めるとともに、厳しい財政状況にあるが、引き続き必要な予算の確保に努めていきたいと考えている。
(7)教職員の研究会・研修会にかかる旅費の十分な確保
教職員の研究会・研修会等への出席旅費については、これまで自主的・創造的な研修活動や学校の研究課題にかかわる調査研究を奨励するため、「校内教職員研修促進費」を予算措置してきた。
二十四年度からは、学校の小規模化の問題に対応するため、複数の学校が合同で研修を行うことができるよう地域連携型の事業を拡充し、二十五年度においては、約二千万円の予算を増額して措置するとともに、二十六年度においては新たに特別支援学校を対象とするなど、拡充を図ってきたところ。
道の財政状況が厳しい状況にあるが、予算の確保に向け引き続き努力していく。
(8)へき地児童生徒援助費のスクールバス・ボート購入費の補助拡充
スクールバス購入費の補助限度額の引き上げや通学距離要件等補助要件の見直しを行い、児童生徒の通学手段を確保するための施策が充実するよう、引き続き国に要望していきたいと考えている。
(9)給食にかかる助成制度の拡充
道教委では、学校給食用物資の安定的供給にかかる補助制度の充実について、引き続き、国に要望していきたいと考えている。
また、消費税率の引き上げについては二十八年三月に消費税法が改正され、飲食料品は、軽減税率の適用対象とされている。
(10)食物アレルギー対応食の提供等に必要な学校生活管理指導表の文書料にかかる補助制度の創設
学校給食におけるアレルギー対応について、就学援助が必要な児童生徒への学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)の作成等に要する経費の財政措置を引き続き、国に要望していきたいと考えている。
(11)フッ化物洗口にかかる経費負担
フッ化物洗口については、「北海道歯・口腔の健康づくり8020推進条例」等に基づき、児童生徒にかかる歯・口腔の健康づくりの推進を図るため、一校でも多くの学校等で実施されるよう、市町村教委へ協力をお願いしてきたところ。
また、未実施市町村における円滑な導入の支援の一貫として二十四年度までに道教委の指定を受けた公立の幼稚園、小学校および中学校に対して知事部局と連携し、導入初年度の機材および薬剤の支援や指定期間にかかる二年目以降の試薬相当分の薬剤を負担しており、二十五年度からは都市教委連等の要望を受け、新規にフッ化物洗口を実施する公立の学校等に対して、初年度分の薬剤支援を行っているところ。
道教委としては今後、知事部局と連携し、新規にフッ化物洗口を実施する学校等への負担軽減措置について検討していきたいと考えている。
(12)学校におけるNHK放送受信料の免除措置の継続
日本放送協会(NHK)の放送受信料の免除措置については、義務教育諸学校における教育内容の一層の充実・向上と放送教育の普及・拡大の観点から、十一年八月に本放送協会札幌放送局長および同局を通して日本放送協会会長に対して、免除措置の継続を要望するとともに、これまで、国に対して要望してきているところ。
今後とも、日本放送協会の動向を注視しながら、引き続き日本放送協会や国等の関係機関に働きかけていきたいと考えている。
(13)教育の情報化を着実に推進するための支援措置の拡充
道教委としては、必要な機器や支援体制の整備に使途を限定した補助制度の創設などについて、引き続き国に要望していきたいと考えている。
(14)地域にとって重要な役割を果たしている小規模高校の存続
高校教育に関する指針では一学年三学級以下の高校については、原則として再編整備を進めることとしているが、一律に再編するのではなく、地理的条件などから再編が困難な場合には地域キャンパス校とするなど、地域の実情等に配慮するとともに、地域別検討協議会の意見なども参考としながら検討している。
職業学科については、地域の産業構造や特色、高校が地域で果たしている役割などを踏まえ、将来の地域社会を担う人材の育成や特色ある教育活動の展開の観点から、保護者や地域の方々の意見などを伺いながら、配置計画を検討していく。
また、高校は文化・スポーツ活動といった生涯学習の場として役割を担っており、高校の配置は教育や文化だけではなく、地域の経済や産業などにも影響を及ぼすといった意見もある。人口減少社会を迎える中、地域の教育機能を維持向上させることは重要な課題なので、今後とも高校配置が地域に与える影響、高校に対する地域の期待や取組などを考慮しながら適切な配置計画に努めていく。
(15)公立高校の再編整備に伴う通学費補助制度の充実
通学費等補助制度は道立高校の募集停止に伴う進路変更や通学費負担等の増加など、学習環境の激変を緩和する観点から創設したものであり、従来から高校のない地域との均衡にも考慮し、補助期間を五年としている。
このような制度の趣旨を考慮すると、補助期間の延長は難しいものと考えているが、地域別検討協議会などでの要望を踏まえ、控除額を引き下げて一万円を超える額を補助することとしたほか、補助金を月ごとに支払いができるよう改善している。
また、この制度の対象となる地域の生徒に対しては公立高校生徒奨学金によって、通学費等補助の補助期間終了後においても、期限を設けずに貸付限度額の引き上げを行っており、こうした制度の周知も図り、生徒の修学機会の確保に努めていく。
(16)義務教育費国庫負担制度の維持
道教委としては、義務教育費は義務教育費国庫負担制度の根幹を尊重し、国の責務において確実に財源を保障するべきものと考え、これまでも国に対して全国都道府県教育委員長委員協議会や教育長協議会を通して必要な財源が確保されるよう要望を行ってきており、今後とも引き続き国に働きかけるとともに知事部局とも連携し、必要な財源の確保に努めていきたいと考える。
(17)学校の安全体制の強化
道教委では各学校が児童に対し、安全に関する知識を身に付けさせるため、「安全教育実践事例集」の作成や道教委のホームページへの掲載、地域住民等と連携し、学校の安全管理体制のモデルを示した「北海道実践的安全教育モデル」を作成・配布するなど、防犯教育を含む安全教育の充実に努めているところ。
また、教育局ごとに「学校安全推進会議」を開催し、地域ぐるみで児童に対する犯罪被害の防止の具体的な方策等について共通理解を図っている。
さらに、スクールガード・リーダーの確保や育成、学校支援のボランティアの協力を得た見守り活動等によって、児童の安全を見守る体制の拡充や警察等の関係機関と連携して、児童の安全確保の徹底が図られるよう取り組んでいるところ。
登下校時間帯の通学路における警察等のパトロール強化については、各種会議などの場を通じて、道警察や関係団体等に対して通学路の巡回パトロールや街頭活動の強化の働きかけを継続していきたいと考えている。
今後とも、道、道警などの関係機関等と一層の連携を図りながら、すべての市町村において、地域ぐるみの安全確保体制が整備されるよう努めるとともに、引き続き、国に対して、学校安全体制の整備を推進する事業の充実を働きかけていきたいと考えている。
(18)北方領土問題に関する学習の充実
北方領土に関する学習を一層充実するため、学習指導要領に北方領土に関する内容をさらに具体的に記述するよう、これまでも国に要望しており、引き続き要望していきたいと考えている。
(19)携帯電話やインターネットの利用による有害情報や被害から子どもを守る取組促進
道教委では「北海道教育推進計画」に基づき「有害情報に対する指導の充実」を図る観点から、児童生徒のネットの不適切な利用によるネット上のいじめ等の問題行動の未然防止、早期発見・早期対応に向け、ネットの監視やネットトラブル未然防止にかかる学校の取組の支援に取り組むほか、教員を対象としたネットパトロール講習会、保護者を対象とした携帯電話のフィルタリング設定についての説明会の実施や子どもたちが陥りやすいトラブル事例をまとめた保護者向けリーフレットの作成・配布などの啓発活動に取り組んできた。
また、道として二十六年四月一日に北海道青少年健全育成条例を改正し、青少年の携帯電話のフィルタリングを義務化するなどの法整備を図ったところ。
道教委としては、これまでも有害情報や犯罪被害・トラブルから子どもを守るために学校のネットパトロールを支援する事業の拡充や携帯電話会社事業者にとどまらず、インターネットに接続可能な機器に対するフィルタリングサービスの提供義務の対象範囲の拡大など、さらなる法的規制について国に対して、働きかけてきたところだが、引き続き、要望していきたいと考えている。
(20)教育目的で利用する貸切バスの確保および補助の新設
教育目的で利用する貸切バスの借上料に対する国庫補助金制度の新設については、実現が極めて難しい状況にあると思われるが、道教委としては今後の推移を注視しながら対応していきたいと考えている。
また、貸切バスの台数確保の改善については、関係部局に要望の趣旨を伝えていきたいと考えている。
▼幼稚園就園奨励費補助事業の改善について
幼稚園就園奨励費補助については、国において補助単価の引き上げや優遇措置の拡大など制度の改善が図られているところ。道教委としては、各自治体の負担の軽減が図られるよう、施策の充実についてこれまでも国に要望しており、引き続き要望していきたいと考えている。
▼その他文教施策の充実について
(1)国指定文化財の保存管理費用に対する助成の拡大
国庫補助事業の対象の拡充については、これまでも道の「国の施策および予算に関する提案・要望」において、要望してきたところで、引き続き国に要望していきたいと考えている。
史跡の維持管理については、面積にかかわらず一律に特別交付税が措置(一件につき年間六十二万円から百十三万円が交付)されているところだが、要望の趣旨を踏まえ、国に働きかけていきたいと考えている。
(2)道立図書館の図書資料費の確保
道立図書館では、道内図書館のセンターとして大量一括貸出しなど市町村立図書館等への支援や、利用者へのインターネット予約貸出、さらには各種研究・研修事業などを行っている。
道財政が厳しい状況にあるが、道民や市町村立図書館等からの要望に応えられるよう、図書資料の整備充実等に努めていきたいと考えている。
(3)社会教育施設の改修にかかる補助制度の創設
道教委としては、社会教育施設の現状等を踏まえ、引き続き全国都道府県教育委員会連合会と連携を図りながら、社会教育施設の改修にかかる補助制度の創設などについて、国に要望していきたいと考えている。
(4)へき地等学校の級別指定にかかる基準の改正
へき地等学校の級別区分については、へき地教育振興法施行規則で定める基準に基づき、その学校等のへき地性を基準点数および調整点数によって点数化し、その合計点数に応じて決定することが基本とされており、二十八年一月一日に級別指定の見直しを行ったところ。
なお、現行の指定基準は二十二年四月に施行されたへき地教育振興法施行規則の一部改正によって約二十年ぶりに見直しが行われたもので、今後とも国や他都府県の動向を注視し、社会・生活環境の変化に応じたへき地の相対的な格差を反映した基準となるよう、必要に応じて国への働きかけなどを検討していく。
(5)教育の事務の広域化にかかる運営体制の改善
二十六年に改正された地方教育行政の組織および運営に関する法律では、「地方公共団体の長」が大綱の策定や総合教育会議の設置を行うこととしており、地方自治法上、地方公共団体の組合も地方公共団体の一つなので、一部事務組合でもその長(管理者)が、本法に基づき大綱を定め、総合教育会議を設置することとなる。
地域住民の意向のより一層の反映や地方公共団体の長と教育委員会との連携の強化など、このたびの法改正の趣旨を踏まえ、適切な事務処理が図られるよう配慮をお願いする。
(関係団体 2016-11-10付)
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