3定道議会代表質問の質問・答弁概要(28年9月16・20日)(道議会 2016-12-14付)
三定道議会代表質問(九月十六・二十日開催)における松浦宗信議員(自民党・道民会議)、須田靖子議員(民進党・道民連合)、池本柳次議員(北海道結志会)、阿知良寛美議員(公明党)の質問、および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。
◆英語教育の充実について
松浦議員 グローバル化が急速に進展する中で、子どもたちの将来においては、外国語、特に、英語によるコミュニケーション能力が必要とされていることから、中央教育審議会の審議においても検討されているように、中学校や高校でのオールイングリッシュの授業が、これまで以上に求められている。
こうした中、教育長は、七月に開催された総合教育会議において、「最終的には、道立高校を卒業するすべての生徒に、英語で少なくとも日常的なコミュニケーションができる力を、確実に身に付けさせることを到達目標として、各種の取組を進めていく」という考えを示したと承知している。
私は、生徒の英語力向上を図るためには、指導に当たる教員がしっかりとした英語力と指導力を備えることが、欠かせないものと考える。
しかし、文部科学省が実施した二十七年度の英語教育実施状況調査によると、本道における「英検準一級以上の資格をもつ英語担当教員の割合」は、全国に比べ、かなり低いことが明らかとなった。
教育長が示した目標の達成に向けて、英語教員の資格取得に向けた取組を促進するなど、道教委として積極的に対応する必要があると考えるが、教育長の見解を伺う。
柴田教育長 英語教育の充実について。グローバル化が急速に進展する中、本道の将来を担う子どもたちに、ふるさとへの誇りや愛着をもちながら、豊かな国際感覚を身に付けさせ、具体的に行動できる資質や能力を育成することは、重要な課題であると認識しており、特に、英語教育については、道立高校を卒業するすべての生徒に、英語で、少なくとも日常的なコミュニケーションができる力を確実に身に付けさせるという、道独自の到達目標を設定し、その到達度を把握しながら様々な取組を進めることによって、本道の子どもたちの英語力の向上に努めていく考えである。
こうした英語教育の充実には、教員の英語力や指導力の向上が不可欠であり、道教委では、小学校英語の教科化などを見据え、道と姉妹提携のあるカナダ・アルバータ州の大学教授による実践的な研修や、小・中・高校の各段階における英語教育推進リーダーによる研修を拡充するとともに、英検などの資格試験団体と連携し、教員の資格取得を促進する新たな支援策を検討するなどして、教員の英語力などの向上を図り、英語教育の充実に努めていく考えである。
◆少年の問題行動について
松浦議員 昨年二月、川崎市で中学一年生が少年グループに暴行を受けて殺害され、遺体が遺棄された事件は、その手口の残虐さもあって全国に大きな衝撃を与えた。
全国の教育委員会や学校では、文科省の指導を受け、同じような事件の未然防止に取り組んでいたと聞くが、先月、埼玉県において、十六歳の少年を暴行の上、殺害した容疑で、中学生三人を含む十四歳から十七歳までの五人が逮捕されるという事件が発生した。
このような事件を未然に防ぐため、学校においては、PTAや警察、児童相談所などと連携した生徒指導の取組を進めるとともに、住民が「不良グループと交遊している」「深夜に子どもだけで、出歩いている」ことなどを見かけた場合、学校や警察にすぐ連絡するなど、地域と一体となった取組を徹底すべきと考えるが、教育長の見解を伺う。
柴田教育長 少年の問題行動について。道内の各学校においては、少年非行を含む生徒指導上の諸問題を解決するため、これまでも、教育活動全体を通して、人間としての倫理観や規範意識の育成はもとより、望ましい人間関係の構築などに取り組んできている。
また、道教委においては、昨年二月の川崎市での少年による殺人事件の発生を踏まえ、学校外の集団とのかかわりの中で被害に遭うおそれがある児童生徒の把握に努めるとともに、「子どもたちを危険から守るために保護者や地域ができること」を具体的に示した資料を作成して、学校や家庭のほか、全道PTA連合会や企業等に配布するなど、児童生徒の生命や安全の確保について適切な対応が図られるよう働きかけてきた。
道教委としては、ことし四月に新たに警察との連絡会議を立ち上げ、地域における児童生徒の問題行動等に関する情報を共有し、把握した情報を地域の青少年健全育成協議会等に提供するなどして、速やかな対応に努めてきたが、このたび、少年が被害者となる痛ましい事件が発生したことを踏まえ、同様な事件が決して起こらないように、より一層、学校、家庭、地域、関係機関等の連携体制の強化を図り、児童生徒の非行防止や被害防止等の取組を徹底していく考えである。
◆全国学力・学習状況調査
須田議員 全国学力・学習状況調査の結果公表が学校間・地域間の点数学力向上に拍車をかけるものとなっていることが明らかである。根拠のない目標である全国平均点以上のために、学校現場では、チャレンジテストや過去問題に取り組まざるを得ず、本来、取り組むべき創意工夫ある学習指導や子どもたちと向き合う時間を削られてきた。
また、新たな指導要領の中では、アクティブ・ラーニングを進めることなどが盛り込まれることとなっているが、現状の点数学力向上を目指すような授業では、子どもたち自身で学び合う環境など到底できるとは考えられない。
いまだに、全国平均点以上にこだわっていては、点数だけが教育の目的となり、本道の子どもたちの学習権は保障できない。本道の子どもたちにとって、本当に必要な学力とは何なのか、子どもたちにとって、読み書き計算を含めた基礎学力を身に付けることがそのことを指すのか。調査開始から十年経った今、調査および調査結果公表の在り方を含め、どう認識しているのか、知事ならびに教育長に伺う。
高橋知事 全国学力・学習状況調査について。この調査は、市町村教委や学校が、全国などとの比較において、児童生徒の学力や基本的な生活習慣、学校における指導方法などの状況や課題を把握・分析し、さらなる改善につなげることを目的としているものと認識する。
また、この調査結果の公表については、道教委において、教育施策や児童生徒の学習状況の改善に学校・家庭・地域・行政が、一体となって取り組むことができるよう、教育上の効果や影響等を十分考慮しながら、分かりやすい公表に取り組んできたと認識する。
道教委をはじめ、市町村教委や学校において、十九年の調査開始から、こうした検証と改善によって、子どもたちの学力の向上などに努めてきていると承知している。引き続き、このような取組を積み重ね、子どもたちが社会で自立して活躍できるために必要な学力を身に付けることができるように努めていくことが重要と考える。
柴田教育長 全国学力・学習状況調査について。道教委では、本道に住むすべての子どもたちに社会で自立するために必要な学力を身に付けさせる取組が確実に展開されるよう、同調査を活用し、これまで、チャレンジテストや授業の内外における学習サポートの実施など、子どもたちの学力向上を支援する取組を進めてきた。
また、子どもたちの学力向上のためには、学校・家庭・地域・行政が課題や改善方策を共有し、一体となって取り組むことが重要であることから、国の実施要領を踏まえ、市町村教委や学校に対し、保護者や地域住民が調査結果について理解を深めることができる分かりやすい公表を行うよう働きかけてきた。
道教委としては、本道の子どもたちに社会で自立するために必要な力を育むため、これまでの十年間の取組などを踏まえ、教科に関する調査と質問紙調査の相関などについて、より一層、多角的な観点から分析を行い、教育施策や教育環境の充実を図るとともに、市町村教委や学校の取組がさらに充実するよう支援を行っていく考えである。
― 再質問 ―
須田議員 知事の答弁は全く質問に答えておらず、知事自身が本道の教育にまったく関心がないことが明らかになるような答弁となっている。本道の置かれている状況を鑑みて、本道の子どもたちにとって必要な学力とは何かを知事にあらためて伺う。また、調査結果が学校に与えた影響をどのように認識しているのかを併せて伺う。
教育長の答弁は、あくまでも調査結果の向上のための施策がどのようであったのかを述べたに過ぎない。学力調査は、あくまでも学力の一側面に過ぎないことは、文科省が明確に示している。
伺ったのは、本道の子どもの学力とは何かということ。本道の子どもたちにとって必要な学力とは何か、あらためて教育長に伺う。さらに今、学校で必要とされている教育は、特定の教科の点数向上に向けた取組ではなく、すべての教科において、子どもたちが自ら学び、理解できる授業づくりの支援および教育環境整備に取り組むことが必要であると考えるが、再度、見解を伺う。
高橋知事 子どもたちの学力などについて。本道の未来を担う子どもたちにとって、社会で自立して活躍するために必要な学力を身に付けることが大切と考えており、調査開始からこれまで、学校をはじめ、道教委や市町村教委において、調査結果を活用した検証と改善を積み重ね、子どもたちの学力の向上などに向けた関係者の努力が続けられてきたものと承知している。
柴田教育長 子どもの学力などについて。道教委では、本道に住むすべての子どもたちに基礎的・基本的な知識・技能や思考力・判断力・表現力、主体的に学習に取り組む態度等、社会で自立するために必要な学力を身に付けさせることが重要であると考えている。
こうした学力を育むためには、各学校において、各教科、道徳、特別活動など、教育課程全体を通じて、知・徳・体のバランスのとれた教育活動を行う必要があると考えており、道教委では今後も、全国学力・学習状況調査を活用しながら、教育に関する継続的な検証改善サイクルをより一層確かなものとし、子どもたちが意欲的に学ぶことができる授業づくりをはじめ、様々な教育課題や地域特性に対応した施策の充実に取り組んでいく考えである。
― 再々質問 ―
須田議員 子どもたちの学力などについて、知事は、子どもたちが社会で自立して活躍するための必要な学力を身に付けるため、関係者の努力が続けられてきたと承知していると答弁した。
答弁が表すように、知事には、本道の教育環境をさらに整備充実して、本道の子どもたちに、未来に向かって羽ばたいてもらおうという主体性が、残念ながら感じられない。どこか他人事のように認識しているとしか思えない。
北海道総合教育会議の議長である知事が、教育環境の整備のために、真っ先に取り組むべきことは、教育現場や専門家、市町村教委から強く要望され、道教委も必要性を認識している教職員定数の増加であり、そのための予算措置ではないか。
わが会派も長年にわたり、知事に求めてきている教職員定数の増加について、国に要望するだけではなく、道独自の取組に取りかかる時期ではないかと考えるが、知事の所見を伺う。
併せて、教育長は、知事に対して、本道の教育環境について具体的に説明し、教職員定数の増加を強力に求めるべきと考えるが、教育長の見解を伺う。
高橋知事 教育環境について。道としては、これまでも、教職員定数の充実など、教育環境の整備に向けて国に対し、予算措置などを要請してきたが、今後とも、本道の子どもの学力の向上などにつながるよう、道教委と課題を共有し、連携しながら適切に対応していく。
柴田教育長 教育環境の充実について。道教委では、これまでも、知事部局と連携を図りながら教職員定数の改善を重点要望と位置付けるなど、教育環境の充実について国に強く要望してきた。今後とも、教育行政の推進に当たっては、知事と教育委員からなる総合教育会議を活用するなどして、本道の教育課題を共有するとともに、施策の方向性について協議し、教育施策の改善・充実に努めていく考えである。
◆活動状況に関する点検評価
須田議員 八月に道教委は『二十七年度北海道教育委員会の活動状況に関する点検・評価報告書』を公表した。十三の基本方向では、計画どおりが一つ、概ね計画どおりが十一、やや遅れが一つとの結果とされたが、施策項目ごとにみると、確かな学力の育成を目指す小・中学校での教育の推進、コミュニケーション能力を育む教育の推進、国際理解教育の充実、理科・数学教育の充実、情報教育の充実、体力・運動能力の向上などが「やや遅れ」のC判定、高校での確かな学力の育成を目指す教育の推進に至っては「遅れ」のD判定だった。
これは、これまでの道教委の取組が効果を上げていないということであって、学校現場の意見をしっかりと汲み取り、それを反映させた教育環境の充実・推進をすべきと考えるが、点検・評価結果に対する認識と今後の取組を教育長に伺う。
柴田教育長 教育委員会の活動状況に関する点検・評価について。道教委では、法律に基づき、二十五年に策定した北海道教育推進計画に定めた目標の達成に向けた進ちょく状況を毎年、点検・評価を行っている。
このたびの評価の結果、北海道教育推進計画に掲げている施策項目のうち約四割の施策で「やや遅れ」、あるいは「遅れ」となったことについて、厳しく受け止めている。
道教委としては、本道教育の課題である学力・体力について、引き続き、授業改善や生活習慣の改善に向けて一層取り組むとともに、いじめの防止等に向けた取組を含め、豊かな人間性や思いやりの心を育む教育の一層の充実を図るほか、広域分散型の本道の地域特性を踏まえた教職員定数の改善や学校施設の整備促進などについて国に強く働きかけるなど、様々な教育課題や地域特性に対応した施策の充実を図りながら、本道の将来を担う子どもたちが健やかに成長できるよう、市町村教委や学校の取組を支援するとともに、様々な機会をとらえて学校関係者や保護者などから意見を伺いながら、学校、家庭、地域、行政が一体となって、施策の推進に取り組んでいく考えである。
◆公立学校の合理的配慮
須田議員 国が障害者基本法や障害者差別解消法などを整備して、国連障害者権利条約を批准したことを受けて、インクルーシブ教育が明確に位置付けられ、就学先の決定に当たり、保護者の意向を可能な限り実現することや、就学後は障がいの程度に応じての合理的配慮が義務付けられている。
道教委として、市町村立学校および道立学校において、合理的配慮の周知はどうなされているのか、現時点でどのような合理的配慮があり、また、配慮できなかった事例があるのかを教育長に伺う。
柴田教育長 公立学校における合理的配慮について。道教委では、ことし四月の障害者差別解消法の施行に合わせ、道立学校に対して、『障がいのある方への職員対応要領』や『合理的配慮事例集』を配布するとともに、職場研修を実施するよう通知したほか、市町村教委にも情報提供を行い、周知に努めてきた。
また、現在、十四管内で実施している市町村教委の就学事務担当者の研修会や、小・中学校および高校等の特別支援教育コーディネーターを対象とした研修会において、合理的配慮に関して本人や保護者と合意形成を図ることの重要性や、障がいの特性に対応した事例を説明するなどの取組を進めている。
こうした中、各学校においては、掲示物の配置や車いす用の備品の使用など教室環境の整備や、映像教材への字幕挿入など教材教具の工夫、指導の場面における言葉がけの工夫など、児童生徒の障がいの状況に応じた合理的配慮に努めているが、支援を必要とする児童生徒の「個別の教育支援計画」が作成されておらず、必要な合理的配慮の内容が十分に把握できていないケースもみられることから、道教委としては、各学校において、個別の教育支援計画の作成などを通じ、本人・保護者との十分な合意形成に基づき、障がいの状況に応じた合理的配慮が行われるよう、引き続き取り組んでいく考えである。
― 再質問 ―
須田議員 各学校において、本人・保護者との十分な合意形成に基づき、障がいの状況に応じた合理的配慮が行われるよう取り組むとしているが、第二回定例会でのわが会派の一般質問で、道立高校の入学者選抜において、そのような状況にないことが明らかになっている。合意形成と言うが、合理的配慮を行うことは、あくまでも当事者の意向をすべて受け止める前提で行われることと考えるが、教育長の見解を伺う。
柴田教育長 公立学校における合理的配慮について。合理的配慮は、障がいのある児童生徒が、その年齢や能力、特性を踏まえた十分な教育が受けられるよう、本人や保護者の意向はもとより一人ひとりの障がいの状態や教育的ニーズ等に応じ、発達の段階を考慮しつつ、合意形成を図ることが重要であり、社会的障壁の除去のための手段や方法については、学校と本人・保護者双方の建設的な対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応する必要があると考えている。
― 指 摘 ―
須田議員 公立学校における合理的配慮について、教育長は、社会的障壁の除去のための手段や方法については、学校と本人、保護者双方の建設的な対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応する必要があると答弁したが、内容が明確ではない。
国連障害者権利条約とそれに関連する国内法は、障がいのある児童生徒本人と保護者の意向を、行政機関は最大限尊重し実現するという内容になっている。様々な理由を述べて社会的障壁をつくってきた責任は、道教委にもある。
そうした点を厳しく受け止めて、障がいのあるなしにかかわらず、すべての子どもがともに学べるインクルーシブ教育の推進に取り組むよう強く指摘する。
◆アクティブ・ラーニング
池本議員 現在、中教審特別部会では、次期学習指導要領について審議を進めており、小学校の英語教育の充実とともに、全教科への「アクティブ・ラーニング」の導入が検討されている。
「アクティブ・ラーニング」とは、授業者が一方的に学生に知識伝達をする講義スタイルではなく、課題研究やディスカッション、プレゼンテーションなど、学生の能動的な学習を取り込んだ授業を総称する用語だと解説されている。
ますます進むグローバル社会の中で活躍する人材を育てるには、知識だけではなく、自らが考え応用していく力を養うことが必要であり、私も方向性については賛成である。
ただ、この理念が学校現場で実を結ぶには、先生一人ひとりが、子どもたちの実情に合わせた多様な手法を繰り出す必要があり、現場での相当な研究と準備が欠かせないと思う。
多くの先生たちが、事務作業や部活動の顧問など長時間労働を強いられるなど、克服しなければならない課題も多くあるが、教育長は「アクティブ・ラーニング」をどう評価し、現場に根づかせていくためには何が必要と考えているのか、見解を伺う。
柴田教育長 アクティブ・ラーニングについて。グローバル化や情報化といった社会的変化が加速度的になっている中、将来を担う子どもたちには、主体的に判断し、他者と協働しながら新たな価値を生み出していく力を身に付けることが求められており、全国学力・学習状況調査などにおいて、知識を活用する問題などに課題がみられる本道では、直接子どもの指導に携わる教員が、「主体的・対話的で深い学び」を実現するアクティブ・ラーニングの視点から、授業改善を進め、子どもの学びの質を高めることが重要であると認識している。
このため、道教委では、二十七年度から、全道十四管内延べ三十五校でアクティブ・ラーニングに関する実践研究を実施しており、今後、その成果を広く普及するとともに、国が開催するセミナーや、道立教育研究所の講座への参加促進を図るほか、各種研修会や指導主事の学校訪問等において、アクティブ・ラーニングの視点を取り入れた校内研修の進め方や、学びの質を高める指導方法の改善について指導助言するなどして、各学校の取組を支援していく考えである。
◆院内学級について
池本議員 七月の新聞に、「急性リンパ性白血病」によって長期入院を余儀なくされた高校三年生の女子生徒が、秋元札幌市長に「高校の院内学級をつくってほしい」と訴える手紙を出したとの記事が載っていた。
現在、道内には義務教育の小・中学生を対象とする院内学級が、札幌市と苫小牧市の二つの病院にあるものの、高校生の学習環境は整備されておらず、その生徒はやむなく高校を退学したとのことである。
小児がんについては、二十四年六月に、がん対策推進基本計画において重点項目として位置付けられ、それを受け、二十五年二月には全国で十五ヵ所、道内では北大病院が小児がん拠点病院に指定された。
文科省では、小児がん拠点病院指定に伴う対応として病気療養中の児童生徒の学習の充実化を図るよう通達を出しているが、東京都と沖縄県が独自に高校生を対象とした院内学級を設置しているだけで、高校生に対する学習支援は全国的に乏しいのが現状である。
しかし、大阪府では二十四年度から、府立高校から教師を派遣し、入院中も出席日数として扱う制度を新設し、神奈川県でも二十六年度から、同様の制度を始めている。
「転校や留年は精神的にもこたえる。入院中でも学び、いつか友達のいる元の学校に戻るという気持ちが、治療に前向きに取り組む原動力になる」との専門医の指摘もあるし、北大の病院長からは、「高校生の院内教育充実にかかる要望書」も教育長に届けられていると承知している。
せめて、大阪府や神奈川県と同様の制度創設が必要と考えるが、教育長の見解を伺う。
柴田教育長 長期入院している生徒への対応について。これまで道立高校では、長期入院している生徒個々の病状等に応じて、学校が定めた教科・科目の学習内容を習得できるよう、教員の訪問による学習指導や、課題やレポートの添削指導を行うほか、生徒や保護者が抱える学習などの様々な相談にも対応してきている。
また、退院後においては、教科・科目の単位修得に向けて、生徒個々の病気の回復状況を踏まえ、補充授業や家庭を訪問しての学習指導など、必要な学習支援を実施してきている。
道教委としては、今後、他県の取組状況なども参考にしながら、長期入院している生徒が抱える様々な不安を解消するため、保護者や医師等との密接な連携のもと、学習支援や教育相談が適切に実施されるよう道立高校に対し指導助言を行っていく考えである。
― 指 摘 ―
池本議員 アクティブ・ラーニングについては、教育長も言うように、学びの質を高める指導方法の改善などが必要であり、次期学習指導要領の改訂までに必要な取組を進め、子どもたちの思考力や表現力が養われる学習環境を整えていただくとともに、院内学級については、公立のみならず長期入院を余儀なくされたすべての高校生に学習機会が確保されるよう、その体制確立に教育長が積極的に取り組むよう指摘する。
◆公立小中学校施設の耐震化
阿知良議員 四月に発生した熊本地震では、天井やガラス、外壁のひび割れなど、非構造物の損壊によって避難所として使用することができなかった事例などがあり、非構造物の耐震対策の課題が浮き彫りになった。
災害発生時に避難した地域住民の安全・安心が担保できるよう、非構造物の耐震対策についても積極的に取り組むべきと考えるが、道教委として、どのように取り組もうとしているのか。教育長の所見を伺う。
柴田教育長 学校施設における非構造部材の耐震対策について。文科省では、熊本地震における被害の状況を踏まえ、有識者による検討会を設置し、これまでの学校施設の整備状況や安全性の確保などについて検討を行い、今後の学校施設の整備に当たっての、緊急提言を取りまとめた。
この提言では、体育館等の吊り天井について、撤去を中心とした対策の早期完了を目指すべきことや、照明器具や外壁など、吊り天井以外の非構造部材については、できる限り早期の劣化状況等を点検し、対策を実施することが重要であることなどが示された。
道教委としては、この提言を踏まえ、今後、市町村における学校施設の適切な維持管理に向けた点検の実施状況や非構造部材の耐震対策の実施計画を把握した上で、引き続き、技術的な指導助言を行いながら、速やかな対策の実施を働きかけるとともに、必要な財源措置について国へ要望するなど非構造部材を含めた学校施設の耐震化の早期完了に向けて、積極的に取り組んでいく。
(道議会 2016-12-14付)
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