道議会文教委の質問・答弁概要(28年11月28日)
(道議会 2017-02-17付)

 道議会文教委員会(二十八年十一月二十八日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、川澄宗之介委員(民進党・道民連合)の質問、および梶浦仁学校教育監、岸小夜子学校教育局指導担当局長、鈴木淳義務教育課長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆学力調査北海道版報告書

加藤委員 本年度の全国学力・学習状況調査の結果については、九月二十九日に国の公表に併せて、北海道の概要が公表され、十月の文教委員会で報告があった。今回は、調査開始から十年目となることから、道内の小・中学校について、これまでの状況を含めて、さらに詳しく分析された結果が示されているので、以下、数点伺う。

 教科に関する調査結果について、今回の詳細な分析によって、具体的にどのような改善がみられたのか伺う。また、調査開始時から継続して課題としている事項があれば併せて伺いたい。

鈴木義務教育課長 教科に関する調査結果について。本年度の報告書の作成に当たり行った詳細な分析では、昨年度、課題として挙げられた小学校国語Aの「話すこと・聞くこと」、算数Aの「量と測定」、算数Bの「数量関係」で全国との差が縮まり、中学校数学A・Bの「関数」で全国平均を上回るなど、改善がみられるほか、本年度の調査対象である中学校三年生が小学校六年生だった二十五年度の結果と比較すると、全国との差が国語Aでは二・三から〇・五、国語Bでは三・〇から一・五、算数・数学Aでは二・三から〇・四、算数・数学Bでは四・四から〇・八と大きく縮まるなど、全教科で改善しており、これまでの授業改善の取組などが一定の成果として現れているものと受け止めている。

 一方、十九年度に調査が始まってから小・中学校ともに、「知識」に関するA問題よりも、「活用」に関するB問題で、全国との差が大きい傾向にあり、特にB問題における適切な根拠に基づいて説明することや、筋道を立てて考え証明することなど、記述式の問題に依然として課題がみられる。

加藤委員 質問紙調査の項目については、継続しているものや調査年度によって変更されているものがある。今回の分析結果に、新たな質問項目にかかるものがあるのか、また、その結果、どのようなことが明らかになったのか伺う。

鈴木義務教育課長 質問紙に関する調査結果について。国は、本年度の質問紙調査に、次期学習指導要領等に向けた審議等を踏まえ、「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善」や「カリキュラム・マネジメント」「小中連携」の取組状況などに関する項目を新たに盛り込んだ。

 本道の状況は、「主体的・対話的で深い学び」に関する項目については、児童生徒質問紙では、多くの項目で全国を下回っているものの、学校質問紙では、多くの項目で全国を上回っており、学校質問紙調査にのみ盛り込まれた「カリキュラム・マネジメント」に関する項目については、小・中学校ともに、すべての項目で全国を上回っている状況である一方、「小中連携」に関する項目については、小・中学校ともに、五項目中四項目で全国を大幅に下回っている。

 こうした状況から、学校が指導を行ったと考えていても、そのように受け取っていない児童生徒が一定割合存在していることや、全国に比べ、小中連携に関する取組が十分ではないことが明らかになった。

加藤委員 昨年度までの結果では、道内における管内別の差が大きいことが指摘されていた。本年度の結果では、管内の差はどのようになっているのか。また、全国平均に届いていない管内や、これまで改善が図られていない管内に対して、今後、どのように手立てを講じていくのか伺う。

鈴木義務教育課長 各管内の状況について。各教科の平均正答率が最も高かった管内と最も低かった管内とのポイントの差は、昨年度は、小学校では、国語Aで八・二、国語Bで九・八、算数Aで九・三、算数Bで六・九であり、中学校では、国語Aで八・三、国語Bで九・〇、数学Aで一一・五、数学Bで八・七であり、二十八年度は、小学校では、国語Aで八・七、国語Bで七・一、算数Aで九・〇、算数Bで六・六であり、中学校では、国語Aで五・四、国語Bで六・七、数学Aで九・一、数学Bで七・六となっており、昨年度より小学校国語Aを除くすべての教科で差が縮まっている。

 各管内においては、これまでも学力向上に関する取組について、自らの課題を明らかにし、主体的な取組を進めてきている。今後も、実効性のある取組を進めることができるよう、本庁と教育局とが課題解決に向けて協議するミーティングを個別に行うなどして、各管内の取組の一層の充実に努めていく。

加藤委員 本年度新たに行った多角的な分析とは、どのような内容だったのか伺う。また、分析結果から、北海道の子どもたちにはどのような傾向がみられるのか、併せて伺う。

鈴木義務教育課長 多角的な分析について。道教委では、本年度、国の報告書を参考に質問紙調査と学力のクロス分析や、学校と児童生徒の質問紙調査結果の比較などの分析を行い、報告書に掲載した。

 質問紙調査と学力のクロス分析では、「先生は、よいところを認めてくれている」という質問に対して肯定的な回答をしている児童生徒や、「学校全体の学力傾向や課題について全教職員の間で共有している」という質問に対して肯定的な回答をしている学校の教科の平均正答率が高い傾向がみられた。

 また、学校と児童生徒の質問紙調査結果の比較では、例えば、「児童生徒は学級のグループでの話し合いなどの活動で、自分の考えを深めたり、広げたりすることができた」と回答した学校の割合と、「学級の友達との間で話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすることができた」と回答した児童生徒の割合に一〇ポイント程度の差がみられた。

加藤委員 先の文教委員会で、学校と子どもの意識に差があることを指摘した。こうした差の解消に向けて、今後、道教委ではどのような手立てを講じていくのか伺う。

鈴木義務教育課長 学校と子どもの意識の差について。道教委としては、今回の質問紙調査の結果の比較などから、学校が指導を行ったと考えていても、そのように受け取っていない児童生徒が一定割合存在する状況がより明らかになったことから、各学校において、子どもの学習への関心・意欲、学習状況等をきめ細かく把握するなど、子どもの実態を踏まえながら、多様な学習活動を工夫することなどについて、より一層教職員全体で共通理解を図り、組織的・継続的に取り組むことができるよう、このたびの報告書では、学校における学力向上の取組や校内研修に関する事例を掲載しており、今後、こうした事例に加え、学校経営や子どもの授業評価を生かした授業改善等に関する資料を作成するとともに、これらの資料を活用し、学校と子どもの意識の差が縮まるよう、指導主事の学校訪問等を通して、各学校に指導助言していく。

加藤委員 市町村別の結果の公表について、昨年度の報告書では、同意が得られた百三十五市町村の結果が掲載されていた。本年度の状況はどのようになっているのか伺う。

鈴木義務教育課長 道教委による市町村別結果の公表について。道教委では、二十六年度から、国の実施要領を踏まえ、同意を得られた市町村の結果を北海道版結果報告書に掲載することとしており、より多くの市町村の同意が得られるよう、市町村教委に対して、教育局の職員が出向き、報告書に掲載した市町村の事例を丁寧に説明するなどして働きかけてきており、本年度は昨年度の百三十五市町村に加えて三十二市町村の同意をいただき、百六十七市町村の状況を報告書に掲載した。

加藤委員 今回の報告書では、学力向上関連の取組についての検証が行われている。検証の結果、これまで取り組んできた事業において、どのような成果が上がっているのか伺う。

岸学校教育局指導担当局長 学力向上関連の取組について。道教委では、本調査が始まった十九年度から、これまでの間、授業改善を促すための取組や、学校の組織的な取組への支援、子どもに直接かかわる人的措置の支援など、様々な取組を行ってきており、本報告書の作成に当たり、これらについて分析した。

 その結果、例えば、校長のリーダーシップのもと、学校が一体となって組織的に学校改善を推進する「学校力向上に関する総合実践事業」では、指定校の教科の平均正答率が改善したり、授業でノートに目標とまとめを書く指導など授業改善の取組を行った学校の割合が全国よりも高くなっている。

 また、一層の学力向上が望まれる地域への支援を行う「地域の学力向上支援事業」では、拠点校の教科の平均正答率が改善したり、調査結果を分析し、学校全体での成果や課題を共有し、教育活動の改善に活用したなど検証改善サイクルの取組を行った学校の割合が全国よりも高くなっている。

加藤委員 全国学力・学習状況調査が始まって十年である。調査で明らかになった全国との学力差の解消に向けて、これまで様々な取組が進められてきたことは承知している。確かに、全国平均との差が縮まるなど、一定の成果がみえるが、まだまだ道半ばの感があると思っている。

 二十九年度には、すべての教科で全国平均正答率以上となることを目指すという目標の達成に向けて、道教委として今後、どのように取り組んでいくのか伺う。

梶浦学校教育監 今後の取組について。道教委では、十九年度の調査開始以降、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、本道に住むすべての子どもたちに社会で自立するために必要な学力を身に付けさせるため、授業改善と望ましい生活習慣の確立等に向けた取組を進めてきた。

 この十年間で、本道の状況は、全国の平均正答率との差が全教科で縮まってきており、本調査の結果等を活用しながら教育活動の改善を進める学校も増えてきているが、学校が指導を行ったと考えていても、児童生徒がそのように受け止めていない状況や、児童生徒に望ましい生活習慣が十分身に付いていないといった状況もみられることから、学校の組織的な取組のさらなる充実や、家庭・地域との一層の連携の強化などが求められる。

 道教委では、これらのことを踏まえ、今後も、本道の子どもたちの学力・学習状況の課題や改善方策を共有しながら、学校、家庭、地域、行政と一体となって本道の子どもたちの学力向上に取り組んでいく。

◆学力調査北海道版報告書

川澄委員 この調査が始まってから、学校または先生方は、授業の在り方や指導方法について意識をするようになったことは確かなことと思っている。

 その一方で、点数を目的とした形で取り組んできたこと、その一つが、画一的な指導方法であり、指導スタンダードという形で、机の上の物の置き方から発言の仕方がすべての先生で共有できるという意味合いはあると思うが、それで一方的に進んできている状況もある。

 また、授業方法についても、例えば、国語では、文学的な指導が気持ちを読み取ろうという課題ではなく、紹介を目的とした中身に変わっていくように、授業の形も大きく変わってきている気がしている。

 こうした中、各管内で学力向上を目指し、様々な研修が行われていると承知しているが、参加した先生から、この調査結果を活用した指導法の工夫改善ばかりで、本来期待していた、もう少し踏み込んだ学力についての指導方法等の研修ができず残念であったという声も聞こえてきている。

 これまで取り組んできた検証改善サイクルが、学力調査に対応した授業改善が目的となってきて、現場の先生方の学力の考え方との溝が埋まりきっていない。

 調査結果向上が目的ではないとしているが、やはり、実施してきた学力向上施策は、結果向上を意識していたものとなっていると考えているが、この点についていかがか伺う。

鈴木義務教育課長 道教委の学力向上に関する取組について。道教委では、本道の子どもたちに、学ぶ意欲はもとより、基礎的・基本的な知識・技能や、思考力・判断力・表現力など、社会で自立するために必要な学力を確実に身に付けさせる必要があるとの考えのもと、児童生徒の学力や学習状況を把握し、分析を行い、教育施策および教育指導の成果と課題の検証や、その改善に役立てることなどを目的とする本調査を活用し、授業改善と生活習慣の確立を柱として、チャレンジテストや家庭での望ましい生活習慣を確立するための取組、授業の内外における学習サポートの実施など、子どもたちの学力向上を支援する取組を進めてきた。

 なお、道教委では、教育の機会均等という義務教育の趣旨を踏まえ、「全国平均」という目標を掲げているが、これまでも申し上げているように、平均点を上げることそのものが目的ではなく、子ども一人ひとりに基礎・基本を身に付けさせることが大事であるとの考えで進めている。

川澄委員 全国平均の目標を掲げているが、それが目的ではないというところは押さえておきたい。

 学力向上の取組にかかわり、学校が多忙化している点について聞きたい。

 指定を受けている、または、公開研を予定している学校を訪問すると、負担感が増しているという話が出ていた。

 子どもたちの学力を向上させる、また、より良い授業づくりということで、指導に一生懸命取り組むのは当然であり、そのように熱意をもって行っているが、こうした指定校等に勤務している先生方にとっては、一層多忙化、また、超過勤務に拍車がかかっていると認識している。このことについて、どのように考えているのか伺う。

鈴木義務教育課長 学力向上に関する事業に取り組んでいる学校について。道教委では、学力向上関連事業の指定校等を決定する際には、市町村教委を通じて、事前に事業の目的や実施方法等を説明して理解を図った上で、指定しており、指定を受けた学校では、それぞれの事業の目的等を踏まえ、地域や学校、児童生徒の実態に応じた日常の学力向上の取組はもとより、その取組を全道に普及啓発するために、計画に位置付けて開催する研究会での公開授業や実践発表などにも、熱心に取り組んでいるものと承知している。

 道教委としては、学校がこうした取組を進める際には、教職員が負担感をもつことなく、事業を通して教育活動の質を高めることに情熱をもって、健康で取り組むことができるよう、環境を整えることが重要であると考えている。

―意見―

川澄委員 先生方が授業改善に取り組むのは当然であり、熱意をもって取り組んでいるのも承知している。

 そうした中で、指定を受けることによって、仕事量が増えると思わざるを得ないような状況が、実際にあるのは、皆さんも認識しなければならないと思っている。

 よりよい授業をつくっていくという部分で、労力を惜しむ先生はいないと認識している。今、お答えいただいたように、健康で取り組める、情熱をもって取り組めるだけの環境をつくっていくということが、皆さんの役割だと思っているので、この点、時間外勤務の部分と重なる部分があり、健康的に取り組める環境の充実に向けて、早急に取り組んでいただきたい。

川澄委員 昨年は秋田県だったが、それ以外にことしは、石川県や福井県との比較をしている。どのような分析をされたのか伺う。

鈴木義務教育課長 他県との比較による分析について。このたびの報告書では、学校質問紙からこれまでの本道の課題となっている項目を選択し、継続して成果を上げている、昨年度掲載した秋田県のほか、石川県、福井県について、全国の平均値を一〇〇とした数値で比較を行った。

 石川県との比較では、例えば、授業で扱うノートに学習の目標とまとめを書く指導をよく行った学校は、小学校で二八・〇ポイント、中学校で五三・二ポイント低くなっており、小・中学校ともに、ノート指導の充実が学力向上の要因の一つであると考えられる。

 また、福井県との比較では、例えば、家庭学習の取組として、家庭での学習方法を具体例を示しながらよく教えた学校は、中学校で四一・一ポイント低くなっており、中学校では、家庭での学習方法を丁寧に指導することが、学力向上の要因の一つであると考えられる。

―意見―

川澄委員 他県の状況を比較していく中から、参考になる部分をみつけながら、それを北海道にどう合わせていくかが非常に重要な取組だと理解しているが、一方で、北海道の方が一生懸命やっているものも中にはあると思う。

 それぞれの県には、それぞれのやり方があると思っているので、結果向上が目的ではないということは理解しているが、子どもたちにとってより良い方法を他県からしっかり導き出していくことが、今後も必要だと考えている。

川澄委員 全国学力・学習状況調査の過去問題の実施が行われているのではないかということに対して、教材づくりや問題づくりに活用するよう指導助言しているということで、直接的に活用することはないという認識であったかと思う。

 すでに文科省は、次年度の調査を行う意向を示しているが、文科省の通達等においては、過去問題を直接活用することがふさわしくない、学習指導要領にのっとった形で、しっかりとやらなければならないということも記載されている。

 こうした点について、過去問題を直接活用することがないよう、地教委または学校長に厳しく指導すべきだと考えているが、その点の見解を伺う。

鈴木義務教育課長 過去の調査問題の活用について。道教委では、これまで、学習指導の改善・充実のため、調査問題を児童生徒の弱点やつまずきの改善、授業で扱う教材づくり、学習の成果を評価するための問題づくりなどに活用するよう、市町村教委や学校に対して指導助言しており、今後も、文部科学省が示す実施要領に基づいて、本調査の趣旨・目的を踏まえ、適切に活用するよう説明していく。

―再質問―

川澄委員 いろいろな学校で四月の調査実施前に過去問題を子どもたちに解かせる活動を授業の中で行ったり、家庭にもち帰って取り組んだりしていることも聞こえてくる。このことについて、直接、学校長からお願いできないかという形で、該当学年に対して話があるようなことも、実は聞こえてきている。

 四月の調査前に、集中的に過去の問題の練習をさせるということになると、この調査の目的・趣旨を損なうことになってしまうと思うので、各学校にしっかりと指導すべきと考えるが、あらためて見解を伺う。

岸学校教育局指導担当局長 過去の調査問題の活用について。ただいま担当課長から答弁申し上げたとおり、道教委では、本調査の趣旨・目的を踏まえ、調査問題が適切に活用されるよう、引き続き、各種会議や研修会、学校訪問等の様々な機会を通じて、市町村教委や学校に対して説明していく。

―意見―

川澄委員 過去問題を直接活用していたら、やはり結果向上が目的ではないかと思われてしまうと思っている。この問題をどのように活用して、教材研究または授業づくりに生かすかが重要であり、これを直接活用させれば、いわゆる大学入試の赤本のようなものになってしまうと考えている。これは、教員自身の指導の問題にもつながると思う。また、学習指導要領にも反する中身で、授業の中でこうしたことに取り組むのは、全くずれていると思うので、こうした部分をしっかりと説明するよう求めておきたい。

川澄委員 チャレンジテストは、学力調査の結果向上が目的ではないことは理解している。

 その活用方法について、柔軟な形が必要ではないかということを、私もこの間、申し上げてきたが、うまく活用されている学校もあると同時に、この活用方法について、一方的に使いなさいという形で求められているところもあると思っている。

 私がこれまで質問してきたとおりに、柔軟な運用によって、より効果的に使っていけるのではないかと思う。この点についてはいかがか伺う。

鈴木義務教育課長 チャレンジテストについて。チャレンジテストは、全国学力・学習状況調査の結果から、本道の子どもたちが苦手としている問題などを分析し、学習指導要領に示されている各学年の学習内容が確実に定着しているかどうかを把握することができるよう、年間を通して計画的に配信している。

 道教委ではこれまでも、チャレンジテストに対する学校等の意見や要望を、各種学力向上関連の研修会やWebシステムでのアンケート、学校訪問など、様々な機会を通じて把握し、改善を図ってきており、今後も、学校等の意見や要望を聞きながら、子どもたちに基礎的・基本的な学習内容の定着を図ることができるよう、効果的な活用を含めて、チャレンジテストの改善・充実に努めていく。

―意見―

川澄委員 チャレンジテストも、初期のものに比べると、中身が濃く、充実をしてきていると認識はしている。

 ただ、現場の先生方からは、子どもたちがこの単元でうまくできなかった場合の振り返りに活用しよう、それぞれ先生方のもつ学級の子どもたちの状況に応じて柔軟に使っていきたい、その方が効果的に使えるのではないかという声が出てきている。

 聞くところによると、この使い方について一方的に定めてしまうような学校や、使い方について教室内に掲示をしなさいという話ができていたり、指導の部分について強要が進んでくると、本当の意味で効果的に使うことができないのではないかと危惧している。今後も学校等の意見を聞き、より改善・充実させながら、柔軟な運用ができるよう、進めていただくことを求める。

川澄委員 様々な施策、改善に向けた取組がここ数年にわたり、されてきていると思う。

 しかし、毎回結果をみると、あともう少し、あともう少しというような形で出てきている。

 なかなか思っていたような成果が出ていないというのであれば、他県と比較しながら、それを北海道の教育施策に生かしていくことは当然だが、他県を追う、または、他県で取り組んでいるところを取ってくる、また、加配事業についても、言い方は良くないが、いわゆる紐付きという形が続いてきている。こうした部分では、全く違うアプローチが必要だと考えている。この点についての見解を伺う。

岸学校教育局指導担当局長 学力向上に関する取組について。このたびの報告書では、これまで道教委が実施してきた学力向上に関連する取組について分析し、例えば、校長のリーダーシップのもと、組織的に学校改善を推進する「学校力向上に関する総合実践事業」の指定校では、教科の平均正答率が改善したり、また、複数の学校を教員が巡回し、若手教員とのチーム・ティーチングや授業づくりの指導を行う「巡回指導教員活用事業」の実施校では、「学習指導等の計画作成に当たり教職員が協力した」などの項目で、「よく行った」と回答した学校の割合が全国よりも高くなるなど、事業の効果がみられ、道教委としては、こうした分析結果も踏まえ、引き続き、本道の子どもたちの学力向上に資する教育施策の改善・充実に取り組んでいく考えである。

―意見―

川澄委員 指定校における多忙感が増している問題もある。また、加配事業についても、その加配を受けるためには、様々な条件が出てくるということもある。

 加配の問題については、本来であれば、少人数指導が効果を上げるのであれば、すべての学校、また、本当に必要としている学校に対して条件を付けることなく加配を進めていくという取組が必要だと思っているので、こうした学力向上にかかわる問題については、今後、しっかりと取り組んでいく必要があると認識している。

川澄委員 十年たって、良くも悪くも、学力がクローズアップされて、様々な方が学力に対して関心をもっていただいたという部分については、一定程度、意味があったかと思っている。

 ただ、学力がどういうものであるかという論議がなかなかされないまま、この十年が来ており、その中で、先生方が様々な施策に基づいて学力向上に向けて取り組んできたが、毎回結果が報告されると、教育長のコメントは、もう一歩というような形で、現場で奮闘している先生方に対する激励の言葉がないことに、私は憤りを感じている。

 また、教職員の声を反映した学力向上施策の部分については、様々な研修会でも、十分に深い論議ができていない状況も残っていると思う。

 こうしたことから脱却して、実際に授業を行う先生方と、学力についてどう考えているのかという論議を十分深めていく中で、今こそ教職員と一体になった学力向上策に取り組んでいく必要があると考えている。この点の見解を伺う。

梶浦学校教育監 今後の学力向上に関する取組について。道教委では、子どもたちの学力向上のためには、学校の教職員はもとより、保護者や地域の方々、行政が学力向上に向けた認識を共有し、連携、協力して取組を進めることが重要であると考えており、これまでも、市町村教育委員会や学校、PTA等の意見や要望の把握に努め、理解を得ながら、学力向上の各種事業を推進してきており、今後においても、施策の展開に当たっては、教職員が参加する各種研修会や学校訪問など、様々な機会を通じて現場の意見や要望の把握に努め、学校、家庭、地域、行政と一体となって学力向上の取組を進めていく。

―意見―

川澄委員 今、施策の展開に当たり、先生方が参加する、また、現場の意見の要望を把握するという答えをいただいた。

 よりよい授業方法について今も研鑚に努めている実態がある。そうした中で、先ほども話したように、研修会の中で、なかなか学力に対する意見交換が十分にできていないという状況がある。

 十年たったので、学力とはどういうものなのか、北海道にとっての子どもたちに身に付けさせるべき力を、もう一度、共有できるような環境をつくっていただくためにも、しっかりと現場の先生方の意見をこのあとも把握しながら取り組んでいただくことを求める。

(道議会 2017-02-17付)

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