4定道議会本会議の質問・答弁概要(28年12月2日)
(道議会 2017-02-23付)

 四定道議会一般質問(二十八年十二月二日開催)における梅尾要一議員(自民党・道民会議)、道下大樹議員(民進党・道民連合)、白川祥二議員(北海道結志会)の質問および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆教育行政に対する信頼

梅尾議員 教育長は、本年度の教育行政執行方針において、「教育は、教職員の人間性や指導力によるところが大きい」「体罰やわいせつ行為、飲酒運転など、教職員の不祥事根絶に向け、一層の危機感をもって取り組む」と述べた。

 しかし、この一月余りをみても、教職員が飲酒運転やわいせつ事件などで逮捕される事件が相次いでいる。また、監督すべき立場にある教育委員会においても、文部科学省が実施した「アスベストを含む断熱材の実態調査」に対して、十年前の調査結果をもとに、「アスベストが飛散するおそれはない」と回答したり、実態を把握していながら半年以上も学校や保護者に説明していなかったりするなど、道民の方々の信頼を損ねるような対応が、次々と明らかになっている。

 このような信頼を損ねる事態が相次いでいることを、知事および教育長はどのように受け止めているのか伺う。

高橋知事 教育行政に対する信頼について。子どもたちの健全育成に重要な役割を担う教育現場においては、社会の規範となる行動が求められているのにもかかわらず、教職員による飲酒運転などの不祥事が相次いで発生していることは、子どもたちに与える影響も大きく、教育行政に対する道民の信頼を著しく損ねるものであり、誠に遺憾であり、重く受け止めている。

 道教委では、各市町村教委に対し指導を行うなど、不祥事の再発防止に取り組んでいると承知しているが、教育に携わるすべての職員が、服務規律の確保や法令順守について、今一度襟を正し、教育現場全体として再発防止の取組を一層強化してもらいたいと考えており、道としても、あらためて公務員の倫理規範を徹底するなど、引き続き、全庁を挙げて綱紀の保持に努めていく考えである。

柴田教育長 教育現場の不祥事などについて。教育には、人格の完成と、国家および社会の形成者として、心身ともに健康な国民を育成するという目的があり、そのためには、教員が自己の使命を自覚し、その職責を遂行するとともに、教育行政が公正かつ適正に行われることが求められている。

 こうした中、児童生徒を指導する立場にある教職員による飲酒運転やわいせつ行為等の不祥事が後を絶たず、児童生徒や保護者のみならず、道民の学校教育に対する信頼を損ねていることは、誠に遺憾であり、大変申し訳なく思っている。

 また、一部の教育委員会において、児童生徒が一日の大半を過ごす学習や生活の場である学校施設で、適切なアスベスト対策が行われていなかったことが明らかとなったことについて、重く受け止めている。

 道教委としては、すべての教職員が、児童生徒の教育に対する自らの責任を深く自覚し、その職責を全うすることができるよう、より一層の危機感をもって、実効性ある不祥事防止策に取り組むとともに、各市町村教委における教育行政が、公正かつ適正に行われるよう、さらに指導を徹底していく考えである。

梅尾議員 道教委は、児童生徒の健康被害につながるおそれのあるアスベストの対応について、技術的な面に関する専門家の意見を聞くなどしながら、問題のある市町村教委に対し、適切な指導を行うべきであると考えるが、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 アスベストに関する、市町村教委に対する指導について。道教委では、アスベストを含有する煙突用断熱材等の使用状況調査において、点検が適切に行われていなかった事案や、剥落した断熱材に対する迅速な対応が行われていなかった事案などが明らかになったことを踏まえ、日常点検を十分に行うことや飛散するおそれがある場合は、早い段階で除去や封じ込め等の措置や改修を行うことなど、アスベスト対策に万全を期すことはもとより、保護者等に対しても丁寧な説明を行うよう通知するとともに、過日、市町村教委の担当者を対象とした会議を開催し、周知徹底した。

 今後、あらためて取りまとめる使用状況調査の結果を踏まえ、調査後の措置等の状況について随時確認を行うとともに、アスベストに関し一定の知見を有する者等で組織されている道アスベスト対策研究会のご協力をいただきながら、知事部局とも連携し、市町村教委に対し、アスベストの安全な取り扱いに関する適切な指導助言に努めていく。

◆いじめの問題について

梅尾議員 東日本大震災による東京電力福島発電所の事故によって、福島県から横浜市へ自主避難している子どもが、小学校で「ばい菌」呼ばわりされ、暴力を受けるなどのいじめを受け、「賠償金があるだろう」とゲームセンターで遊んだ代金など、およそ百五十万円をせびられたという事件が明らかになった。相談を受けた教育委員会、学校は、何の対応もしなかったという。

 道内に多くの被災児童生徒が避難していると聞くが、横浜市のような事案はないのか伺う。この事件のように周りと少し違う状況の子どもたちがいじめに遭うことが多いと言われているが、このたびの事件を契機として、いじめの防止などに、どのように取り組む考えか、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 いじめ問題に関し、被災地から避難した児童生徒について。本道においては、現在、札幌市以外の公立学校で二百十九人の児童生徒を被災地等から受け入れており、道教委としては、このたびの事案を受け、市町村教委や学校に対して緊急調査を行った結果、震災を理由としたいじめの発生は確認されなかった。

 道教委としては、このたびの事案の重大性にかんがみ、児童生徒の発する小さなサインを決して見逃すことがないようスクールカウンセラーの派遣の拡充など教育相談体制の一層の充実を図るほか、初期段階におけるいじめの把握と対応に向け、道教委の独自調査において、いじめの態様をより詳細に把握するとともに、各管内で開催する「地域いじめ問題等対策連絡協議会」において、保護者や関係機関等との情報共有を徹底し、連携をより強化することによって、いじめの未然防止、早期解消に全力で取り組んでいく。

◆学力向上について

道下議員 わが会派は、先の第三回定例道議会でも、全国学力・学習状況調査の結果公表や、道教委の進める学力向上施策が、点数学力の結果向上にのみ特化していることを、厳しく指摘してきた。特に、市町村別の結果公表については、自治体間の点数競争をあおること、点数向上に特化した学習が横行する問題があることから、その中止を求めてきた。公表によって、さらなる地域間格差を助長しかねないと考えるからである。

 そもそも、調査結果の解釈等に関する留意事項では、調査結果が学力の特定の一部分であり、教育活動の一側面に過ぎないことに留意すべきとされているが、このことが十分に理解されていると考えるのか、教育長の見解を伺う。

 また、教育長自身は、この調査結果は点数競争を助長するものではなく、学力調査の結果公表が目的ではないと理解していると受け止めてよいのか、併せて伺う。

柴田教育長 全国学力・学習状況調査にかかる市町村別の結果公表について。国の実施要領では、十九年度の本調査の開始から、調査結果の公表に関して、調査によって測定できるのは学力の特定の一部分であり、学校における教育活動の一側面であること、序列化や過度な競争が生じないようにすることなど教育上の効果や影響等に十分配慮することとされており、道教委では、これまでも市町村教委等に対し、様々な機会を通じて、こうしたことについて説明を行い、理解が得られるよう取り組んできた。

 また、調査結果の公表については、議員御指摘のとおり、公表そのものを目的とするものではなく、子どもたちの学力向上のためには、学校、家庭、地域、行政が課題や改善方策を共有し、一体となって取り組むことが重要であることから、保護者や地域住民に調査結果について理解を深めていただけるよう、分かりやすい公表について、市町村教委や学校に対し、働きかけてきた。

道下議員 道教委は、この十年間、点数学力向上を命題とした結果、迷走を続けていると映る。学校現場では、画一的な指導が強要され、一方的な研修が行われ、その結果、創意工夫ある実践が展開できなくなっている。この点への認識を伺うとともに、あらためて軌道修正すべきと考えるが、教育長の考えを伺う。

柴田教育長 学力向上に向けた取組について。人口減少や少子高齢化、グローバル化など社会が急激に変化する中、道教委では、本道に住むすべての子どもたちに基礎的・基本的な知識・技能や思考力・判断力・表現力、主体的に学習に取り組む態度等、社会で自立するために必要な学力を身に付けさせることが重要であると考えている。

 こうした学力を育むためには、各学校において、各教科、道徳、特別活動など、教育課程全体を通じて、知・徳・体のバランスのとれた教育活動を行う必要があると考えており、これまでも各学校に対しては、課題やニーズに応じた研修や学校訪問などを通して、創意工夫ある取組が進むよう支援に努めてきた。

 道教委では、今後とも、全国学力・学習状況調査を活用しながら、教育に関する継続的な検証と改善を積み重ね、子どもたちが意欲的に学ぶことができる授業づくりをはじめ、様々な教育課題や地域特性に対応した施策の充実を図り、学力向上に向けた取組を着実に進めていく考えである。

―再質問―

道下議員 本年度、結果公表に同意した自治体が増えたが、一方で、序列化に対する危惧や結果公表によらずとも学力向上に取り組む自治体もある。公表そのものを目的とするものではないと教育長は答弁したが、これまでの道教委の施策や直前に過去問題に取り組む自治体などは、結局は結果向上だけを目指しているととられかねないものである。今後も結果公表に対しては、慎重に対応するよう、強く指摘しておく。

 学力向上策については、地域特性に対応した施策の充実を図るとの答弁であったが、子どもたちの学力を把握し、力を付けるために実践しているのは、現場の教職員である。学力向上に向けた取組を着実に進めるには、教職員の学力に対する思いや考えを正面から受け止め、反映すべきと考えるが、いかがか。教育長の所見を伺う。

柴田教育長 学力向上に向けた取組について。道教委では、これまでも各学校に対しては、課題やニーズに応じた研修や学校訪問などを通して、創意工夫ある取組が進むよう支援に努めてきた。今後とも、教職員が参加する各種研修会や学校訪問など、様々な機会を通じて意見や要望の把握に努め、学校、家庭、地域、行政と一体となって学力向上の取組を進めていく考えである。

◆学校図書館について

白川議員 学校図書館の蔵書基準は、旧文部省が一九九三年に義務教育学校の規模に応じて定めた「学校図書館図書標準」で規定されている。文科省では昨年三月、全国の公立小・中学校等の学校図書館の状況を調査し、その結果が発表されているが、道内の小学校で「図書標準」を達成しているのは、全国の平均が六六・四%なのに対し三五・二%、中学校では、五五・三%に対し三八・〇%といずれも平均を下回っている。

 また、司書教諭とは別に、図書館の業務を専門的に担う学校司書の配置に至っては、小学校が全国平均五九・三%に対し一四・二%、中学校が五七・三%に対し一四・九%と大きく下回っている。

 文科省では「アクティブ・ラーニング」の実現や特別支援教育、小学校での英語教育推進など、学校現場の新たな課題に対応するためにも、図書館の充実が必要と判断し、学校図書館の機能充実を目的とした、自治体向けの運営指針を策定した。

 道教委においても今後、指針に従い取組を進めるとは思うが、教育長は学校図書館がもつ役割をどのように認識しているのか伺う。 

 また、道内の児童生徒の学力が低位に置かれている一因は、学校図書館の整備の遅れと関係があるのではないかと考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 学校図書館の役割等について。学校図書館は、豊かな感性と情操を育む読書センターとしての機能と、児童生徒が自ら学ぶ学習・情報センターとしての機能を有しており、教育課程の展開はもとより、児童生徒の健全な教養の育成にも寄与するものと認識している。

 本年度の全国学力・学習状況調査の結果では、「読書が好き」と回答した児童生徒の平均正答率が高い傾向にあることや、学校図書館の機能の充実と授業等における効果的な活用によって、国語の領域の平均正答率の向上に効果があったと分析する市町村もみられた。道教委としては、学校図書館は、児童生徒の主体的、意欲的な学習活動や読書活動などを通じ、学力の向上にもつながっていくものと考えている。

白川議員 学校の図書館については、蔵書数、学校司書の数などいずれをみても全国平均に及ばない状況が明らかになった。文科省の運営指針が策定されたが、道教委として学校司書の数などに数値目標を設定し、進捗状況を公表する必要があると考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 学校司書数などの数値目標について。道教委では、これまでも、学校図書の整備状況についての数値目標を設定し、進捗状況を把握し、各市町村教委に対し、助言するとともに、新聞の配備や学校司書の配置等の状況についての資料を市町村ごとに作成し、個別に働きかけを行うなど、学校図書館の環境整備が促進されるよう取り組んできた。

 このたび、国において、図書館資料の整備や学校司書等の配置など学校図書館の充実に向けた「ガイドライン」と学校司書養成のモデルカリキュラムなどが示されたことから、道教委としては、この内容を踏まえるとともに、他府県の状況などを参考としながら、学校図書館がその期待される役割を果たすことができるよう、数値目標の設定についての検討も含め、学校図書館の着実な整備が図られるよう取り組んでいく考えである。

―指摘―

白川議員 教育長も児童生徒にとって学校図書館のもつ重要な役割や学力との相関関係について認めているので、ぜひ、目標を立てて、計画的な整備充実に努めるよう指摘しておく。

(道議会 2017-02-23付)

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