通常学級在籍の要支援者調査―道教委 校内で相互連携体制を 個別の指導計画作成9割以上
(道・道教委 2017-02-24付)

 道教委は、二十二日の教育委員会会議で、二十八年度「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒等に関する調査」結果を報告した。特別支援教育コーディネーターの配置は、一校当たり「一人」が七割を占める一方、「複数配置」が増加。複数配置が増えたことを評価する一方、特別支援学級担任以外の教員もコーディネーターを担うなど、「校内で相互に連携できる体制の構築」に期待した。要支援者の割合が増加傾向にあることに関しては、「実態把握の意識が高まり、判断の精度が高まってきている」と分析。個別の指導計画は、九割以上が作成している一方、個別の教育支援計画は、四割弱の作成にとどまった。道教委では、調査結果を踏まえ、資料や研修の内容を工夫改善していく考え。

学校の実態把握精度が向上

 同調査は、通常の学級における特別な教育的支援が必要な幼児児童生徒(要支援者)の在籍状況や支援状況などの実態を把握し、特別支援教育の施策検討に当たり基礎資料とするため、二十五年度から継続して実施しているもの。

 本年度分は、昨年十一~十二月に実施した。

 調査対象は、道内の公立幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高校、中等教育学校を合わせて一千六百七十一校。幼児児童生徒数は三十三万二千三百八十五人。

 調査結果をみると―

▼特別支援教育コーディネーターの状況

 一校当たりの配置人数は、「一人」が七一・六%で最も多い。一方、「二人」が対二十七年度比三・七ポイント増の二一・七%、「三人以上」が〇・八ポイント増の六・七%と、複数配置が増加。道教委では、「学校全体で特別支援教育に取り組むための校内体制として、望ましい傾向にある」と分析している。

 コーディネーターに指名されたのは、「特別支援学級の担任教諭」が五九・二%が最も多く、以下、「通常学級の担任教諭」八・九%、「教務主任」七・六%など。「専門性の関係から自然な状況」と分析しつつも、「より望ましい校内体制としては、特別支援学級担任に加え、それ以外の教員も担うなど、校内で相互に連携できる体制の構築が進む」ことを期待した。

 経験年数は、「三年以上」が四七・九%を占め、「一度指名された人が継続して担当する傾向にある」。

 特別支援教育コーディネーターを対象とした研修の受講回数は、「一~二回」「三回以上」を合わせて九三・六%。「〇回」は六・四%で、年々減少傾向にある。

 特別支援学校教諭免許状の保有者は、幼小中高全体で四六・〇%で、年々増加している。

▼研修資料

 道教委は、すべての教員が、通常の学級における発達障がいのある子どもの指導や支援に関する基礎的な知識・技能を習得できるよう、二十七年三月に研修資料『校内研修プログラム』を作成した。

 同資料を活用しているのは、全体で七五・五%。活用した研修項目(複数回答)は、「発達障がいの特性の理解」六八・一%、「実態把握、支援方法の検討」四九・六%など。活用の効果(同)は、「指導や支援についての理解」九三・五%が最も多かった。

 また、道教委が、すべての通常学級で、特別支援教育の視点を生かした取組を実践できるよう、二十八年三月に作成した研修資料『実践事例集』を活用した割合は、全体で七〇・四%。活用した研修項目(複数回答)は、「通常の学級における支援の考え方」六九・六%、「好意に満ちた教師の言葉がけ」四〇・六%など。活用の効果(同)は、「指導や支援についての理解」八九・六%が最も多かった。

 新規設問項目の「学校として今後必要とする資料」(複数回答)は、「授業場面における指導や支援にかかわる資料」五八・五%、「保護者との連携にかかわる資料」五六・〇%、「関係機関との連携にかかわる資料」四八・四%など。道教委は、「今後作成する資料においては、連携についての内容充実を図ることが求められる」と受け止めている。

▼実態把握

 各学校の校内委員会において、特別な教育的支援が必要と判断した幼児児童生徒が「いる」学校は、全体で一千十四校、六〇・八%。

 要支援者数は、全体で九千四百十人、二・八%。この割合は、二十五年度の調査開始以降、平均〇・二ポイントずつ高くなっている。

 この状況について、道教委では、「実際に支援を必要とする幼児児童生徒が増加している状況もあると思われるが、そのほかにも、各学校において、実態把握の意識が高まり、支援を必要とする幼児児童生徒を要支援者として見極める、判断の精度が高まってきていることもある」と分析している。

▼要支援者の状況

 「通級による指導」を「受けている」要支援者は、小学校が三六・九%、中学校が一二・〇%。

 要支援者として判断した理由は、「知的な遅れはないが、発達の状態による学習面や行動面の困難があるため」七三・七%が最も多い。

 要支援者の困難な状況は、「全体への指示や説明を聞いて理解することが難しい」四九・九%、「気が散ることが多い」四七・五%、「文章題を解くことが難しい」四四・七%など。

▼個別の指導計画

 教育課程や指導計画、個別の教育支援計画等を踏まえ、一人ひとりの教育的ニーズに対応する指導目標や指導内容・方法などを盛り込んだ「個別の指導計画」を作成しているのは、全体で九三・七%。二十七年度よりも六・八ポイント高くなった。校種別では、幼稚園で一二・八ポイント、中学校で一四・七ポイントのアップと作成率が顕著に伸びた。

 活用状況(複数回答)をみると、「進級や進学時の引継に活用」九七・九%、「校内委員会やケース会議(支援会議)において活用」七六・六%、「年間指導計画や学習指導案等の作成に活用」四六・九%など、「各学校で有効に活用されている」。

▼個別の教育支援計画

 障がいのある幼児児童生徒一人ひとりについて策定する「個別の教育支援計画」の作成状況は、全体で三六・一%。九・一ポイントアップしているが、「個別の指導計画と比較すると、作成率が高いとは言えない状況」。

 作成していない理由として、「保護者の同意が得られていないため」六七・〇%が最も高く、「引き続き、保護者の理解促進を図る必要がある」。

 活用状況(複数回答)は、「就学時や学校間、卒業後の就労先への引継に活用」九〇・五%、「校内委員会やケース会議において活用」七五・八%、「個別の指導計画、年間指導計画、学習指導案の作成に活用」六〇・〇%などとなっている。

 これらの結果を踏まえ、道教委では、「今後、通常の学級に在籍している特別な教育的支援を必要とする児童生徒等に対する指導や支援の一層の充実に向けて、各学校における取組がさらに進むよう、資料や研修の内容について、さらに工夫改善していく」としている。

 教育委員会会議では、調査結果の報告を受けて意見交換。

 委員からは、特別な教育的支援を必要とする児童生徒のために、「すべての教員が専門的な知識や技術を学んでいく必要がある」との指摘があった。

 また、道教委作成の研修資料について、「具体的に取り組むべき内容が分かりやすくまとまっている」と評価。「特別支援教育に限らず、すべての学校で研修してほしい。また、保護者も学んでいく必要があるのでは」などの意見があった。

(道・道教委 2017-02-24付)

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