札幌市教委の29年度教育方針概要(上)
(市町村 2017-03-16付)

 札幌市教委の二十九年度教育方針説明会(三日付1面既報)で、引地秀美学校教育部長、和田悦明児童生徒担当部長、檜田英樹教職員担当部長、山根直樹生涯学習部長、山本真司教育制度担当部長が所管事項について説明した。

 概要を連載で紹介する。

【知・徳・体の調和のとれた育ち】

▼学ぶ力の育成

▽さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランの改訂点について

 札幌市では子どもたちに、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら問題を解決する資質や能力等の「学ぶ力」を育成することを目指しており、二十九年度のプランでは大きく二つの改訂点がある。

 一つは自ら疑問や課題をもち、主体的に解決する「課題探究的な学習」を、分かる・できる・楽しい「授業づくり」の充実に向けた手立てとして本プランに明確に位置付けた。

 もう一つは学校と家庭が一体となって子どもの習慣づくりを支えていけるよう、家庭向けリーフレット「さっぽろっ子『学び』のススメ」の配布と活用を新たに本プランに位置付けたこと。

▽さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランの実現に向けて

 これらの改訂点を踏まえ、「学ぶ力」の育成では、つぎの五点について、二十九年度に特に重視してほしい。

 一点目は、「学ぶ力」の育成に向けた五つのポイントについて。「難しいことにも挑戦する意欲を伸ばす」「自ら学ぶ方法と人と学び合う方法を身に付けられるようにする」「意味理解を伴った知識の習得と、知識を使いこなす力を伸ばす」「自分の伸びを実感して、新たな目標をもてるようにする」「生活を自らコントロールする力を育む」―の五つのポイントは、現在の札幌市の子どもの状況等から明らかになった課題をもとに、札幌市の目指す「学ぶ力」の姿をより具体的に表現したもの。

 各学校には二十九年度、より一層この五つのポイントによる指導方法等の充実改善を進めていくために、ぜひ、自校の「学ぶ力」育成プログラムの中にこの五つのポイントを関連付けてほしい。

 二点目は課題探究的な学習について。本市では、「自ら疑問をもち、主体的に解決する学習」を「課題探究的な学習」と定義しているが、次期学習指導要領で示される予定の「主体的・対話的で深い学び」いわゆるアクティブ・ラーニングと同様のものと考えている。

 課題探究的な学習に決まった「型」はなく、教科等の特質を踏まえ、各学校の子どもたちの実態に応じて柔軟に展開することが重要。各学校においては授業づくりや授業後の振り返りに、「子どもが興味・関心、疑問を十分にもてるようにするためには」「子どもが意欲を持続させることのできる課題を設定するためには」「子どもが課題の解決に向けて見通しをもてるようにするためには」「子どもが協働して課題解決に向かえるようにするためには」「子どもが多面的・多角的に考察できるようにするためには」「子どもが学びのよさや、できるようになった喜びを実感し、つぎの課題に向かえるようにするためには」―の六つのセルフチェックを大いに活用してもらい、「型」ではなく「質」の側面から授業改善を図ってほしい。

 なお、この課題探究的な学習については、今後より一層の推進を図るために、現在、「札幌市課題探究的な学習推進方針」を策定しているところで、年度初めに各学校に通知する予定。また今後は、各教科の実践事例を掲載した手引を作成したり、各会議や研修会で説明したりするなどして、教育委員会と全市立幼稚園・学校が、課題探究的な学習の考え方について共有し、より効果的に取組を推進していきたい。               三点目は家庭向けリーフレット「さっぽろっ子『学び』のススメ」について。このリーフレットは、学校と家庭が一体となって子どもの学習習慣・運動習慣・生活習慣づくりを支える指針となるもので、学校と家庭をつなぐものとして作成した。学ぶ力の育成に向けた五つのポイントを家庭向けに具体化し、その頭文字をとって合言葉を「まほうのかいわ」としている。

 ここには、「子どもは、どの子もよさや可能性をもっています。大人は子どもを他者と比較するのではなく、その子自身の成長を認めていくことが大切です。学校で、家庭で、子どもに寄り添い、伸びを認め、意欲を高める共感的・肯定的なメッセージを伝え、子どもの成長を促していきましょう」と書かれている。これは札幌市の学校教育における子ども観・教育観として位置付けたところ。四月四日の全国学力・学習状況調査の実施説明会において、このリーフレットの趣旨や活用例について説明した上で、各小・中学校から家庭に配布してほしいと思う。

 また、このリーフレットを有効に活用してもらうために、各学校には生活等を振り返るシートや、生徒向け資料、保護者向け資料等、実際に学校でアレンジして使ってもらうようなツールをデータで送付するので、各学校においても、積極的な活用をお願いしたい。 四点目は小・中学校段階における指導体制等の工夫改善について。小学校では二十九年度から専科指導が本格実施となる。すべての小学校は年間を通じて計画的に行う専科指導を、高学年を中心に各学級で週二~三時間程度実施する。

 次期学習指導要領では、小学校段階からの英語教育の充実が図られる方向性で、教育委員会では外国語活動における専科指導を主に考えているが、学校の実情に応じて他教科で実施することも可能と考えている。

 前年度に引き続き、本年度中に「専科指導の手引2」を発行する予定。各小学校においては、この手引も参考にしてもらいながら、実情に応じた取組の推進・充実を図ってもらえるようお願いする。

 また、教科担任制をとる中学校において、学年間の縦の連携に加え、教科横断的な意識を教員それぞれがもつことが重要で、校内の研修体制の充実なども教科横断的な視点から図っていくことが必要となる。まさに「五つのポイント」や「課題探究的な学習」をその視点の一つに、学校としての指導体制を構築するようお願いする。

 五点目は幼稚園、市立高校と中等教育学校後期課程における「学ぶ力」の育成について。本市の目指す「学ぶ力」は、「自ら」という主体性を重視したもの。幼稚園においては、幼児の自発的な活動としての遊びの中で、好奇心や探究心、思考力の芽生えを育むことで、「学ぶ力」の基礎づくりをお願いする。

 また、市立高校と中等教育学校後期課程では、子どもが幼稚園、小・中学校で育んだ「学ぶ力」を、社会に生きてはたらく力として発揮できるよう、二十七年度から実施しているすべての教科で実践研究を行う教科別研究協議会を最大限活用するなど、生涯にわたって学び続ける力を育むために必要な指導の在り方について追究するようお願いする。

▽進路探究学習の充実

 つぎに進路探究学習の充実について。「自立した札幌人」の育成に当たり、職業体験などを通して働くことの意義を子どもたちが感じ取るとともに、コミュニケーション能力や課題解決能力などを高めようとする意欲や態度を育んでいくことは、今後ますます重要になると考えている。各学校においては子どもが将来への夢や、社会で活躍する自分のイメージを描きながら、自分自身の在り方を見いだし、将来の生き方や進路について考える「進路探究学習」の充実を図ってほしい。

▼豊かな心の育成

▽豊かな感性と社会性を育む体験活動や道徳教育の充実

 他人を思いやる心や社会に奉仕する精神を育むためには、高齢者等とのふれあいやボランティア活動など、社会福祉や地域貢献についての取組を充実させることが大切。また、優れた文化施設を活用し、子どもの感性を育み、情操を養うことは、生涯にわたって文化や芸術に親しむ心豊かな市民を育成する上でも大変重要と考えている。

 道徳教育の充実については、子どもの発達の段階に応じた道徳教育を推進し、豊かな心を育成することが求められている。「特別の教科 道徳」は、小学校は三十年度、中学校は三十一年度から実施していくこととなる。これまでの指導を基盤としながらも、子どもの多様な考えを引き出すための言語活動、体験的な学習の充実等「考え、議論する道徳」を取り入れるなど、授業の工夫、指導の改善を図っていく必要があると考えている。

 また、道徳の教科化に向けて道徳教育推進教師を中心とする校内体制の整備、年間指導計画に基づいた年間三十五時間の「道徳の時間」の確実な実施をお願いする。     ▽命を大切にする指導の充実

 自分のことを肯定的に受け止め、自他のかけがえのない命を大切する指導は、今後も重要で教育委員会では「いじめ対策自殺予防事業」として、二十九年度も講師を招いての教員研修を行うほか、「子どもの命の大切さを見つめ直す月間」を設定し、各学校において「命を大切にする指導の取組」を重点的に行ってもらうことなどを通して、子どもが自ら命を絶つなどの痛ましい事故の未然防止に努めていく。

 各学校においては、前年度すべての教員に配布した「いじめの指導資料」および、今後配布する「子どもの心を理解するためのガイドブック」を有効に活用しながら、「命を大切にする指導」の取組を一層推進してもらえるようお願いする。

 一方で、児童生徒が不安や悩みなどから死をほのめかすほか、自傷行為等に関する相談は本年度一月末までで百件以上にもおよんでいるが、学校からの速やかな相談によって医療機関との連携が進むなど、今後もコンシェルジュ事業なども活用しながら、適切に対応するようお願いする。

 各園・学校においては、家庭との連携はもとより、全教職員による子ども理解や子どもが気軽に悩みを相談できる教育相談体制の構築に取り組んでいるところだが、教育委員会も学校とともに対応を進めるので、子どもに心配な状況があれば早期に相談をお願いする。

▽いじめや不登校の未然防止・早期発見・対処の取組

 「札幌市のいじめの現状」としては、毎年各学校にお願いしている「悩みやいじめに関するアンケート調査」において、一〇%強の児童生徒が「今の学年になってからいじめられたことがある」と回答している。ひやかしやからかいなど、見逃しがちないじめも、いつのまにかエスカレートして深刻な事態につながる可能性もあることから、その一つ一つに適切に対応する必要がある。

 二十五年にいじめ防止対策推進法が制定され、各学校においては、「学校いじめ防止基本方針」に基づき、保護者、地域と連携しながら、体系的・計画的に、いじめの防止・早期発見に取り組み、いじめがあった場合は、校内のいじめ対応にかかる組織において適切に対処もらっている。

 昨年六月には「札幌市いじめの防止等のための基本的な方針」を策定し公表したところだが、各学校においてはこの札幌市基本方針などを今一度参酌してもらい、学校の基本方針の評価および見直しに役立ててもらうようお願いする。

 なお、学校の基本方針については、学校のホームページ等で公開するなどして地域・保護者への理解を得て、いじめの適切な対処に努めてほしいと思う。           いじめの防止については、児童生徒が自らいじめについて考え、意見を述べ合う機会を設けるなど児童生徒の主体的な取組が大変重要。また、いじめられている子どもは、仕返しを恐れる余り、大人に相談することができず、大人がいじめに気づきにくい側面がある。

 学校においては、スクールカウンセラー等を有効に活用したり、いじめに関するアンケート調査の結果に基づいた教育相談を実施したり、いじめを早期に発見するための相談体制を構築することが求められている。

 教育委員会としても、今後もスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの拡充に努め、各学校における教育相談体制の充実を支援していきたいと考えているので、各学校においても、これまで以上にこうした人材の有効活用や体制の充実を図るようお願いする。

 併せて、いじめの問題等の解決においては、教育委員会としても学校をしっかりと支援していくことが重要と考えている。今後、児童生徒担当課の生徒指導担当者における、中学校長会との連携に加え、小学校長会とも定期的な連携の場を設けさせてもらい、学校との連携を一層深めていきたいと考えている。

 つぎに不登校への対応について。札幌市の不登校児童生徒数は、全国と同様に高い水準で推移しており、これまでの支援体制を検証し、工夫改善を加えるとともに、未然防止の取組を一層強化していくことが求められている。

 不登校の要因や背景は、多様化・複雑化しており、欠席状態が長期化すると、回復が困難となる傾向がある。そのため、新たな不登校が生じないような「魅力ある学校づくり」の取組が不可欠で、学校がすべての児童生徒にとって「心の居場所」や「絆づくりの場」となるよう、ピア・サポートなど互いに思いやり、助け合い、支え合う人間関係を育むための活動を取り入れた取組の一層の推進をお願いする。

 また、前年度までの欠席日数や遅刻、早退、別室対応等の状況などにも着目し、不登校の予兆をとらえ、迅速に対応する体制の整備が重要。そのためにも、幼児期や小学校といった早期の段階において、不登校の心配のある児童生徒の適切な状況把握に努めるとともに、丁寧な引継や校種間連携を図ってもらうことが、不登校の未然防止や組織的・計画的な支援につながる。

 早期対応の取組としては、特に欠席し始めた初期の段階での、家庭訪問などの丁寧な対応により、欠席が連続しないようにする取組の強化をお願いする。

 さらに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の人材を活用し、子どもの状況や不登校となる要因の的確な把握に努めながら、積極的に働きかけることやかかわり続ける支援が求められている。例えば、欠席期間における学習の遅れの改善を図ったり、貧困などの様々な家庭にかかる状況について関係機関と連携を図ったりするなど、不登校の要因の解消に向け、一人ひとりの児童生徒に応じた支援策を講じてもらうようお願いする。

 現在、札幌市では学校に登校することが難しい児童生徒に対する支援を、教育支援センターと相談指導教室の市内六ヵ所で実施しており、仲間とかかわりながら学習活動や体験活動に取り組むことで、人とかかわることへの抵抗感を和らげるなど、一人ひとりの状況の改善を図っているところ。今後は、不登校状態が長期化・固定化する前の段階において活用してもらうとともに、施設を訪問し通室児童生徒の状況把握に努めるなど積極的な連携を図ってもらうようお願いする。

 「相談支援パートナー事業」については、来年度も相談支援パートナーを全中学校および中等教育学校に、相談支援リーダーを小学校十校に配置する。不登校やその心配がある児童生徒への支援や家庭への訪問など、様々な形でのかかわりや働きかけに活用してほしいと思う。また、未然防止の観点から小学校での相談支援パートナーの活用について、効果検証を進めていきたいと考えている。

 今後も、不登校の子どもに対する将来の社会的自立に資する支援の推進とともに、すべての児童生徒を対象とした未然防止の取組に努めてもらうようお願いする。

▼健やかな身体の育成

▽さっぽろっ子「健やかな身体」育成プランについて

 「健やかな身体」の育成は札幌市の最重点事項であり、「学ぶ力」の育成とともに両輪として進めていくもの。これまで各学校においては、「さっぽろっ子『健やかな身体』の育成プラン」に基づき、体育・健康に関する指導の充実にかかる取組を積極的に進めてもらっているところだが、本年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の実技調査の結果では、体力合計点の平均値が依然として全国と比べると低い水準なものの、小・中学校の男女ともに前年度に比べると得点が上昇しており、各学校における地道な取組の成果が徐々にあらわれ、札幌市の子どもの体力・運動能力は、改善に向かっているととらえている。

 このことを踏まえ、二十九年度の重点には、「さっぽろっ子『健やかな身体』の育成プラン」を明確に位置付けた。本プランのポイントは、小・中学校の取組として、「『健やかな身体』育成プログラムの作成・実施」を新たに位置付けたこと。これに基づき、各学校においては、この一年をかけて自校の子どもの体力・運動能力および健康の状況を分析し、課題の改善に向けた具体的な取組の計画等について検討を重ねてきた。

 すでにいくつかの学校から、二十九年度「健やかな身体」育成プログラムを提出してもらっているが「健やかな身体」の育成に向けた目標を、「目指す子ども像」として具体化し、その実現に向けて徹底して行う取組を明確に位置付けているプログラムが大変多く、各学校の意気込みを感じた。

▽教育委員会の取組

 各学校においては、体育と健康の両面において指導の充実を図ってもらいたいと考えている。教育委員会としては、「体力・運動能力の向上」「部活動の活性化」「食育の推進」「性に関する指導の充実」「基本的生活習慣の確立」の五つの分野で各学校の取組を支援していく。

 一つ目の「体力・運動能力の向上」について。なわ跳び運動については、小学校を中心に積極的に取組を進めてもらっているところだが、これまでの取組の成果検証を行い、持久力や敏捷性の向上、運動習慣づくりにつながる、より効果的な行い方について研究し、新たな指導資料の作成や、子どもたちの目標となるような「なわ跳び大会」を計画していきたいと考えている。

 体育の授業や授業以外の運動・スポーツ機会の充実に向けては、体育の研究推進校を指定し、効果的に子どもの体力・運動能力の向上を図る指導についての実践研究を進める予定。本年度は、東京女子体育大学と連携して投力向上にかかる共同研究を行ってきたが、その成果を各学校の取組にも活用してもらえるよう、二十九年度も継続する予定で、このような大学との連携による取組を拡充していく予定となっている。

 このほかにも、「オリンピック・パラリンピック教育の推進」や、運動頻度が低い中学生が運動に親しむきっかけをつくる「文化系部活動等スポーツ大会」「スポーツグッズ貸出の仕組づくり」など、子どもたちが運動・スポーツへの関心を高め、日常的に運動・スポーツに親しむきっかけをつくる取組を進めていく。

 二つ目の「部活動の活性化」ついて。二月二十二日、各中学校に「部活動の適切な運営について」という通知を発出したところ。運動部活動については、その実態をきめ細かに把握するとともに文部科学省による「運動部活動での指導のガイドライン」や「札幌市中学校運動部活動在り方検討委員会報告書」を参考とするなどして、活動時間や休養日の設定など、学校としての部活動運営についてあらためて見直しを図るようお願いする。なお、文化系の部活動についても、運動部活動と同様に適切な運営をお願いする。

 三つ目の「食育の推進」について。食に関する指導の全体計画のもと、栄養教諭等の専門性を活用するとともに教職員が連携協力して児童生徒が望ましい食習慣の形成が図れるよう「食に関する指導の手引き」や「学校給食フードリサイクル」を活用するなど、計画的、継続的に食育を進めてもらいたいと考えている。

 四つ目の「性に関する指導の充実」について。性に関する指導についても、「性に関する指導の手引」や「産婦人科医師・助産師の講師派遣事業」等を活用するなど、「命を大切にする指導」と関連を図った指導の充実をお願いする。

 五つ目の「基本的生活習慣の確立」について。健康的な運動・生活習慣の定着を図るためには、健康三原則といわれる運動・食事・睡眠の大切さへの理解を深めることが重要。子どもが日ごろから健康的な生活を意識して実践できるよう、学校・家庭・地域が一体となった取組を進めてほしいと考えている。その際には先ほど話した、「さっぽろっ子“学び”のススメ」を大いに活用してほしいと思う。

▽「健やかな身体」育成プログラムの実行に当たってのポイント

 「健やかな身体」育成プログラムを作成する目的は、計画的・継続的に取組を進められるよう検証改善サイクル、いわゆるPDCAを確立させること。二十九年度に向けて、P(計画)の段階が終わりつつある今、つぎはD(実行)の段階となる。そこで、「健やかな身体」育成プログラムの実行に向けて、つぎの四つの「共有」について、特に重視してほしいと思う。

 まず、プログラムの実行には、何と言っても「教職員間の共有」が必要。プログラムの作成に当たっては校長・教頭をはじめ、体育教諭や養護教諭、栄養教諭、栄養士などを含めた複数で検討を重ね、その経過や内容について校内の各種会議等を通じて教職員全体で共有したことと思うが、来年度、新体制の中で実行に向けて、今一度共有をお願いする。

 つぎに「子どもとの共有」について。「健やかな身体」の育成については、子どもに育みたい力を三つ示しているが、特に「健やかな身体づくりへの意欲」を育てていくことが重要と考えている。この「意欲」を育てていくためにも、「なぜ、主体的に健康の保持増進を図ることが大切なのか」「なぜ、運動、健康、安全に関する基礎的・基本的な知識および技能が大切なのか」など、健やかな身体づくりの目的を、子どもと共有することをお願いする。

 つぎに「学校間の共有」について。同校種だけでなく、異校種間におけるプログラムの共有により、系統性のある取組をお願いする。例えば、現在、多くの小学校で縄跳びに取り組んでいるが、この小学校段階で身に付けた運動能力を中学校においてどのように生かしていくかが重要となってくる。

 最後に「家庭・地域・外部人材との共有」について。「学ぶ力」の育成同様、「健やかな身体」の育成においても学校・家庭・地域が一体となった取組を進めていくことが大切。プログラムを学校ホームページや学校便り等に掲載するとともに、その内容について保護者集会、懇談等において説明してほしいと思う。

【札幌らしい特色ある学校教育】

▼雪・環境・読書の具体的な取組について

 「雪」については、雪と親しむ学習活動の一つである「スキー学習」に関して、本年度もすべての小学校、約九割(八六・七%、八十五校)の中学校で実施した。また、冬季アジア札幌大会の開催に当たっては、大会を盛り上げる取組など様々な面で支援してもらうとともに、スキー学習日程の調整についてもご理解とご協力をいただきありがとうございました。

 昨今の貸切バスを確保しにくい状況と、借上代金の高騰などの課題があることも教育委員会として認識しているところだが、スキーリサイクルや中学校、高校教員を対象とした指導者研修会およびスポーツ局によるインストラクター派遣を引き続き実施していくので、各学校においてもスキー学習の実施に向けた取組の工夫をお願いする。

 併せて今後も、地域における冬のイベントへの参加や「雪かき汗かきチャレンジ」「中学生・高校生による除雪ボランティア」の取組など、地域と連携した取組をより一層進めてほしいと思う。

 なお、「青少年山の家」において、冬季に小学校の宿泊学習や中学校の体育の授業を実施している学校もあり、歩くスキーやスノーシュー、チューブ滑り、スノークラフトなど、「雪」にふれる楽しさを直接体験できる活動が可能となっているので、ぜひ活用してほしい。加えて、近隣の施設を利用したスケート学習やカーリング、リュージュ、スノーホッケーといった地域の特色を生かした活動等、札幌ならではのウィンタースポーツの積極的な取組もお願いする

 「環境」については、「さっぽろっこ環境ウィーク」における「エコアクション」、環境局と連携して進めている「エコライフレポート」の取組など、持続可能な社会の創造に主体的に参画する実践について取り組んでもらっている。

 各園・学校においては、引き続き、エコにかかわる取組を進めてもらうとともに、二十四年度発行のエネルギー・環境に関する指導資料や、太陽光パネル、環境について学ぶことのできる札幌市環境プラザを活用するなど、体験的な活動を通して環境の大切さを実感する学習の一層の充実をお願いする。

 「読書」について、札幌の子どもは全国と比べて「読書が好きな子ども」の割合が高くなっている。これは朝の一斉読書をはじめ、すべての園・学校において工夫した読書活動の取組を推進してもらっている成果と考えている。

 各学校においては、「寄託図書」や「ブックさぁくる」をさらに活用するなどしながら、子どもの読書活動の幅を一層広げるとともに、学校図書館ボランティアや学校図書館アドバイザーなどに加え、現在、中学校への配置を進めている学校図書館司書と連携を深め、学校図書館の「学習・情報センター」としての機能をより一層高め、授業等における学校図書館の利活用をこれまで以上に進め、子どもたちの豊かな学びを支えてもらうようお願いする。

 各園・学校においては、様々な地域の環境を生かした体験活動への取組とともに、重点の裏表紙にレイアウトを変えて掲載している札幌市民憲章をはじめ、ふるさと札幌の理解を深める学習によって、札幌の特色や魅力を学ぶ機会の充実を図ってほしいと思う。

(市町村 2017-03-16付)

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