札幌市教委の29年度教育方針概要【下】
(市町村 2017-03-17付)

【学校教育の今日的課題】

▼校種間連携

 子どもが進学する際には、新しい環境での生活や学習に円滑に移行・接続できるよう、校種間で十分連携を図る必要がある。重点に示した内容も踏まえながら、校種間・学校間における先生同士の交流はもとより、子どもが参加する交流などの取組の充実をお願いする。

 幼小の連携・接続の取組については、幼児期の遊びと児童期の学びをつなぐ「スタートカリキュラム」の作成、実施を一層進めてほしいと考えている。また、小中の連携・接続の取組については前年度発行した「札幌市小中連携の手引」にもあるように、各学校においてそれぞれ独自の取組が行われており、小学生の中学校進学への不安を和らげるとともに、中学生の自己肯定感を高めるなどの教育効果が高まっていると認識している。

 二十九年度はこうしたこれまでの取組を土台として、小・中学校が目指す子ども像を共有し、九年間を通じた系統的な教育を目指す「小中一貫教育」の視点から連携・接続を推進してもらえるようお願いする。

 教育委員会としても二十九年度、「札幌市小中一貫教育在り方検討委員会」を立ち上げ、小中一貫教育にかかる本市の方向性について、検討していく予定。

▼特別支援教育

 重点には、校種や学級・教室別の指導・支援のポイントなどを示しているので、参考にしてもらうとともに、「個別の教育支援計画」などを活用し、一人ひとりの教育的ニーズに応じた早期からの継続的な指導・支援の充実に努めてほしい。

 その際、「サポートファイルさっぽろ」を札幌市における「個別の教育支援計画」の基本様式としてこのたび策定しているので、今後「サポートファイルさっぽろ」の十分な活用を期待している。

 また、いわゆる「障害者差別解消法」が施行されたことに伴い、教育委員会では「札幌市立学校職員における対応要領」に加え、各園・学校の協力を得て「取組集」を作成し、先日送付したところ。各学校においては、対応要領や取組集を参考にしながら、障がいのある子どもたちに合理的配慮を行い、学習活動の充実につなげてもらうようお願いする。

 なお、教育センターでは幼児教育センターおよび教育相談室において、市立幼稚園・認定こども園による地域教育相談の実施や、南区の複合施設「まこまる」における教育相談を開始するとともに、待ち期間の短縮を図るなど、教育相談の充実に努めていく。さらに、すべての教員が特別支援教育にかかる専門性を向上させるために、研修講座の内容の充実を図っていく。

 また、四月には五つめの市立特別支援学校として、南区に「市立札幌みなみの杜高等支援学校」を開校する。ご支援をよろしくお願いする。

▼国際理解教育

 特に、外国語教育の充実について、二十九年度は外国語指導助手(ALT)百七人を小・中学校および高校等に配置する。小学校では、各学級において年平均十二回ALTとの授業ができる予定。中学校はALTの増員配置と配置方式の見直しによって、各学級において週一回ALTとの授業ができる通年配置校は七十六校となる。今後は、すべての中学校において週一回ALTとの授業ができるよう配置のさらなる充実を図る予定。高校および中等教育学校では、全校に通年配置を継続する。

 さらに三十二年度の小学校高学年における外国語活動の教科化および中学年での外国語活動の円滑な実施に向けて、校内において外国語教育の推進役となる教師(英語専門教師)を各学校に位置付け、外国語教育の充実に努めてほしいと思う。併せて、教員の英語指導力向上を目的とした研修も計画的に実施していきたいと考えている。

 なお、小学校の時数増に伴う対応については、国の動向等を注視しながら、札幌市において望ましい対応案を適切な時期に示す予定。

 また、国際理解教育を推進するに当たっては、子どもたちがインターネット等を活用して直接海外の子どもと対話したり、手紙や作品を通して交流したりするなどの体験的な学習が重要。加えて、領事との対話を通じてその国について知識を深めることができる、札幌国際プラザの「SAPPOROこども領事」事業や、展示物を直接ふれて世界とのつながりを学ぶことができるJICAの「ほっかいどう地球ひろば」などの施設の積極的な活用をお願いする。

【信頼される学校の創造】

▼教員の指導力や資質の向上

 教育委員会では様々な教育課題に的確かつ柔軟に対応できるよう、教員の知識・技能を絶えず刷新し、その専門性を高めるための研修を実施してきた。二十九年度は、教員の指導力や資質の向上に向けた研修の充実について、つぎの二点を重点として考えている。

 一点目は「教員研修の充実」について。昨年十一月に教育公務員特例法の一部が改正されたことに伴い、二十九年度からこれまで実施してきた「十年経験者研修」をあらため、ミドルリーダーの育成を目的とした「中堅教諭等資質向上研修」を実施し、対象者にミドルリーダーとして中核的な役割を果たす資質・能力の向上を図っていく。

 また、初任段階における研修をはじめ、教職経験に応じた研修において、「課題探究的な学習」について実際の授業づくりを通して具体的に研修する。このような研修を通して、子どもの「学ぶ力」を育む授業づくりに、一層取り組んでいく。

 二点目は「札幌市教育研究推進事業」の充実について。札教研事業については、若手教職員と中堅・ベテラン教職員のかかわり合いによって、協働的に指導力を高め合う重要な研修の場となっている。

 二十九年度は、「小学校外国語活動研究部」を正式に立ち上げるとともに、道徳の教科化に向け、札幌市における道徳教育のさらなる充実を目指し、「小学校道徳研究部」と「中学校道徳研究部」、それぞれの設立に向けた準備を進めていく。引き続き、教育センターにおける研修の積極的な活用をお願いする。

▼安全・安心な学校づくり

 各学校においては、学校や地域の実態に即した「学校安全計画」を策定するとともに、子どもが危険に対して自ら身を守ろうとする態度や能力を育む体系的・具体的な安全教育を推進し、家庭や地域社会と連携して、登下校の安全確保など危機管理体制を構築してもらうようお願いする。

 併せて、「学校安全計画」については命を大切にする指導や、いじめ防止対策の取組についても体系的に位置付けてもらうようお願いする。

 重点には、安全教育として「生活安全」「交通安全」「防災教育」について、また安全管理と組織活動として「校内の危機管理体制の構築」「家庭および地域社会との連携」について、それぞれポイントを示しているので参考にしてもらいたいと思う。

 特に、不審者への対応については、事故の未然防止に向けて児童生徒へ指導を行うとともに、保護者や地域との一層の連携を図り、校区内の安全に努めるようお願いする。

 なお、例年、特に新学期から大型連休にかけて自転車での事故をはじめ、交通事故が多発する傾向があるので、登下校はもとより帰宅後や休日における交通事故防止に向け、自転車の安全な乗り方など、今一度交通安全指導の徹底を図ってほしいと思う。

【教職員の服務等】

▼服務規律

 本年度においては、管理職による酒気帯び運転や教諭によるわいせつ行為など、度重なる不祥事が発生し、学校と教育委員会が一丸となって不祥事防止に向けて取り組んできたところ。このような中で、すでに報道でご存じのことと思うが、去る二月十四日に市立小学校の教諭が北海道青少年健全育成条例違反の疑いで逮捕されるという重大な事案が発生した。このように不祥事が再発したことは極めて遺憾であり、札幌市の教育に対する信頼を根底から揺るがす大変憂慮すべき事態であると受け止めている。

 管理職の皆さんには、不祥事の根絶には服務規律の確保に向けた職員一人ひとりの意識改革が不可欠と認識し、特に、若年層の教員に対する指導に十分留意してほしいと思う。教育委員会としても今月末に二十歳代の男子教諭を対象とした研修を実施する。理解、協力をお願いする。

 それでは、服務規律の確保に向けて特に重要となるものをあらためて説明する。まずわいせつ行為やセクハラについて。二十七年度は二人を懲戒免職処分とした。本年度も二人がわいせつ行為によって懲戒免職処分となっている。

 申し上げるまでもなく、わいせつ行為は児童生徒の健全な育成を担う学校職員にとってあってはならない重大な非違行為であり、学校教育に対する信頼を著しく失墜させる行為。今後もわいせつ行為を起こした教職員に対しては、最も重い懲戒免職をもって臨んでいくので、あらためて教職員に対する指導の徹底をお願いする。また、児童生徒や保護者、同僚職員等からセクハラと受け止められる行為についても厳に慎むよう併せて指導をお願いする。

 つぎにパワハラについて。管理職として、所属職員に対して必要な指導を行うことは当然のことだが、二十八年度は現時点で前年度と比べても二倍を超える相談が寄せられている。ここにお集まりの管理職の皆さんは、教頭はもちろんのこと、教職員一人ひとりが持ち味を発揮し、気持ちよく仕事ができ、チームワークのよい職場づくりに尽力していると私たちは信じている。

 そうした中でのこの件数の増加は、残念だととらえている。是非、管理職の皆さんには、パワハラについての正しい認識をもち、自らの言動が適正な指導の範囲を越えたパワハラに該当する行為となっていないか、常に念頭に置いて指導を行うようお願いする。また、職場における先輩・後輩、同僚間においてもパワハラとなる場合があり、管理職だけではなく、所属職員に対する指導も併せてお願いする。

 つぎに交通事故、違反について。本市の懲戒処分において、例年、交通事故、違反によるものが大きな割合を占めている。教職員は児童生徒の交通安全教育をつかさどる立場にあることから交通事故、違反に対する処分はより厳しく考えざるを得ない。

 特に、社会全体として「飲酒運転の根絶」に取り組んでいる昨今は、公務員の飲酒運転に対する社会的非難が非常に高まっている状況にある。重大な事故の原因となる交通三悪の「飲酒運転・無免許運転・速度違反」については、引き続き十分な指導をお願いする。

 つぎに体罰について。体罰は二十六年度は五件、二十七年度は一件と管理職の皆さんの指導によって体罰事故は減少傾向にあり、本年度はこれまで体罰による懲戒処分は発生していない。しかしながら、依然として体罰電話相談窓口には児童生徒・保護者からの相談が寄せられているので、今後も職員に体罰禁止の趣旨を徹底し、懲戒と体罰の相違について、一層の理解を深め、日ごろから体罰によらない指導方法について職場で情報を共有するなど、指導力の向上に努めてもらうよう、継続した指導をお願いする。

 つぎに個人情報の紛失事故について。個人情報の紛失事故は、児童生徒、保護者、ひいては市民全体の信頼を著しく傷つけるほか、紛失した個人情報が外部に流出し、不正使用された場合には、取り返しがつかない事態になることから、あらためて情報セキュリティー実施手順などの順守について職員に対して再認識させるよう、丁寧な指導をお願いする。また、紛失だけでなく盗難事故にも十分留意し、個人情報の保管先や管理方法を関係職員間で共有するなど適切に管理するようお願いする。

 つぎに電子通信機器による不適切なやりとりについて。近年、メールやツイッター、LINE、フェイスブック等が急速に普及しており、職員と児童生徒・保護者との間でこれらを用いた不適切と思われる事案についての報告が増加している。職務を越えた私的なやりとりがわいせつ行為、ハラスメント、守秘義務違反等に発展する場合があるのであらためて職員に対する指導の徹底をお願いする。

 管理職の皆さん、昨年免職処分にした職員も日ごろから熱心に児童生徒の指導に当たり、周囲の職員との関係も良好な職員だった。服務的には、決して問題のある教職員ではなかった。しかし、ひとたび「担任の先生が逮捕」などの不祥事が起これば、職員個人の問題にはとどまらず、子どもたちへの影響はもちろんのこと、地域、保護者、市民からの学校を含めた札幌市全体の信頼を損なう結果となる。

 ここにお集まりの皆さんにおいては、教育行政が市民の信頼の上に成り立つものとあらためて認識してもらい、子どもたちを守る、教職員を守る、その家族を守る、最終的には学校を守るという強い決意のもと、日ごろから職員との対話を深め、不祥事防止に向けた服務規律の確保に努めてもらうよう、強くお願いする。

▼学校職員人事評価制度

 制度の運用開始から間もなく一年がたつが、これまで実施してきた昇給・勤勉手当にかかる評定の取り扱いと混同していると思われる問い合わせ・相談が多数寄せられている。各学校に配布している「要綱」「要領」のほか、「手引き」や「質疑応答」などを今一度確認の上、これらにのっとった適正な取り扱いをお願いする。

 本年度から導入したこの「学校職員人事評価制度」は道教委の制度に基づきながら、来年度からは札幌市が実施していく。制度の運用に当たって、これまで各学校に多大な負担をかけているが、今後はこれまでの制度を踏襲しつつ、事務の効率化等の負担軽減に向けた改善を検討していきたいと考えているので、ご理解のほどよろしくお願いする。

▼教職員の健康管理

 二十七年度は三十日以上休務した教職員は二百二人で、そのうち百人が精神疾患で休務しており、二十五年度以降は減少傾向にある。これは校長先生の指導のもと、学校全体で健康管理に取り組んできた結果と考えており、大変感謝している。二十八年度だが、教頭が体調を崩す事例が例年より多く、憂慮している。

 そのため、二十九年度からは精神科医などの専門的知識を有した職員と連携をとり、メンタルヘルスに関する予防、休務期間中の医師による面談、復職後のフォローなど支援体制の充実を図り、休務内容や手続きの方法などを変更する見込み。現在準備を進めているところで、後日に詳細な説明の機会を設けようと考えている。円滑な制度移行のため、理解と協力をお願いする。

 加えて、教職員の悩みごと相談窓口の「教職員相談室」だが、二十八年度は前年と比較して相談件数が倍増した。こうした事態もあり、来年度は体制を強化する予定。相談者の状況によって、精神科医やセラピストなどと連携した対応ができるよう準備を進めているので、是非積極的な活用をお願いする。

 なお、各学校に配置されている健康管理医・産業医は、教職員のメンタルヘルスなどの健康相談の職務も担っているので、最大限活用を図ってもらうよう、併せてお願いする。 つぎに教職員の健康診断だが、特に結核などの感染症は児童・生徒等に対する影響が大きいことから全教職員が受診するよう、強く周知徹底をお願いする。

 また、二十八年度より実施したストレスチェック制度については、初年度ということもあり試行錯誤の部分もあった。二十九年度はこの制度をより充実させ職員がメンタルヘルス不調となることを未然に防止することができるよう体制を整えていく。高ストレスと判定された場合は、医師による面接指導も可能となり一早く心身の不調に対応することが可能。職員自身がストレスの程度を把握し、ストレスへの気づきを促すため、積極的に受検するようお願いする。

▼教職員の勤務負担軽減

 教育委員会では、四月からの県費負担教職員の給与負担等の北海道からの移譲後において札幌市として、新たな取組を検討している。去る一月に管理職の皆さんにアンケートを行い、取組に関する学校運営上の意見や要望を伺ったところ。多忙な中、回答してもらい、また、様々な意見をいただき、ありがとうございます。

 現在、集計中で結果については年度末までに通知する予定。言うまでもないが現在でも教員は多忙な状況下で日々業務を行っているが、さらに次期学習指導要領においても、標準授業時間数の増加等が想定される。

 勤務負担軽減に当たって、特効薬はないが、「業務の見直し」や「働き方の見直し」が必要と強く認識。このことから、アンケート結果を参考に教育委員会全体で可能な取組を推進していきたいと考えている。

 さらなる負担軽減に向けては、学校現場はもとより教育委員会においても、これまでの慣例にとらわれず、優先順位を付けて思い切った業務のスクラップ、スリム化が求められている。具体的な取組の方策については、このアンケートや日々の業務で寄せられた要望等について、三つの視点で取組を整理する。

 一点目として事務量の軽減。学校に提出を求める調査・依頼件数の削減等が挙げられる。二点目としては学校の業務のサポート。法的な相談体制の整備、外部人材の拡充等が考えられる。三点目としては環境整備。長期休業中に連続休暇の取得を容易にする仕組みの検討、イントラメール取扱の効率化、文書保存に関する新たなルールづくりや、メンタルヘルスの改善に向けた取組等を行っていく。

 これらは来年度以降に、事務局内において協議を行いながら、順次、可能な取組を実施していきたいと考えている。

 管理職の皆さんにおいては、これまでも個々の学校の状況に応じて様々な取組を進めているところと思うが、業務改善に向けた教員の意識改革とともに、形骸化している業務がないか、業務効率化を進める余地はないか、また会議の必要性の精査、目的の明確化等によって、会議の運営方法の改善は図られているかなど、各学校においてもこれらの視点を含めて検討をお願いする。

 先ほど申し上げた教職員の健康管理の面でも、多忙な状況を改善することが必要。学校現場が非常に忙しい状況とは十分理解しているが、だからこそ管理職の皆さんには職員へ積極的に声かけや、適切なリーダーシップを発揮してもらい、負担軽減に向けた取組を進めてもらうよう強くお願いする。

 最後に、女性教職員に関する札幌市を含む全国的な動きについて説明する。一昨年、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が成立し、女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供などが求められている。

 このような状況を受け、札幌市としても一事業主として行動計画を策定し、その中で「女性管理職の割合」などの数値目標を具体的に設定したところ。今後、各学校においても性別に関係なく、能力に応じ、女性教職員の活躍の場を積極的に推進してもらうとともに、将来的な管理職への道づくりに努めてもらうよう、引き続きお願いする。

【管理・運営関係事項】

▼アスベスト対応

 昨年十月の煙突断熱材破損等にかかる市有施設の緊急点検において、学校施設十五校の給食用ボイラーを停止せざるを得ない状況となったことで、小・中学校三十校の給食提供を中止し、多くの児童生徒に影響を与えた。子どもたちをはじめ、保護者の皆さん、学校関係者の皆さんに多大な迷惑と心配をかけたことにおわび申し上げる。

 その後、文部科学省の調査要領に基づき、あらためて学校施設の全煙突の調査を行ったのでその結果について説明する。断熱材を使用している煙突二百九十四本中、現に使用している煙突は二百五十本あり、そのうちアスベストが含まれている煙突は百一本あった。さらに、アスベストが含まれている断熱材を使用した煙突の断熱材の状況を調査したところ、劣化しているものが九十三本あった。

 劣化した断熱材はアスベストを飛散させる可能性があるため、これらの煙突のボイラーを稼働させた状態で屋上および地上の大気中のアスベスト濃度測定を行ったが、結果はすべて不検出だった。

 しかしながら、断熱材が劣化している煙突九十三本については来年度からできるだけ早期に改修を行い、劣化していない八本についても計画的に改修を行う予定としている。

▼予算の概要

 まず、札幌市全体の予算について。二十九年度予算は、「子育て支援や経済活性化などの課題に着実に取り組む堅実予算」とのポイントが掲げられている。県費負担教職員の給与等権限移譲の影響により、対前年度比六・四%増の九千九百六十五億円余が計上されている。

 つぎに教育費予算だが、総額三百九十六億円余となっている。前年度比較では、みなみの杜高等支援学校の建設終了等によって、額にして約四十四億円の減、率にして一〇%減となっている。

 各部の予算の増減は学校施設の完成に伴う事業の終了のほか、県費負担教職員の給与負担等の権限移譲などが主な理由となっている。なお、教職員にかかる給与、約七百五十億円については総務局所管の予算に計上するため、この教育費予算には含まれていない。

 生涯学習部の二十九年度の主な事業については教育の情報化推進事業や学校施設の改築のほか、学校煙突断熱材劣化度調査の結果を踏まえた計画的な煙突の改修工事などが挙げられる。

 学校教育部では、新規事業として高校等生徒通学交通費助成の開始に向けた管理システムの構築を行うほか、高校改革や特別支援教育にかかる事業の拡充、ALTの増員が挙げられる。

 中央図書館ではことし八月から来年三月までの大規模改修に伴う仮庁舎の建設等にかかる経費のほか、三十年度に供用開始を予定している図書・情報館の整備など、さらなる教育環境の充実に取り組むための事業が盛り込まれている。

 教育委員会としては、学校運営にかかる予算の確保に全力を挙げているが、それと同時に効果的・効率的な事務の執行や事務事業の見直しを一層進めていかなければならないと考えている。これらの状況を十分に理解いただき、学校運営に当たるようお願いする。

▼適正な契約手続きの執行

 昨年十二月、市内の建築会社と本市が締結した麻生球場の営繕契約に際し、公正を害す行為が行われていたとして、本市の元職員がいわゆる官製談合防止法違反により逮捕され、その後に懲役一年、執行猶予三年の判決を受けた。また、この契約事務に関与した当時の管理職も指導監督責任が考慮され、減給一月の懲戒処分を受けた。

 さらに円山動物園においても、修繕契約に際し、実際には実施していない入札手続きを行ったかのように書類を整えるという不適切な契約事務を行っていたことが判明した。

 これらの事案については、修繕を急がなければならないという事情があったとはいえ、不適切な事務処理が行われたことは極めて重大な問題と言わざるをえない。皆さんの学校においては契約手続を日ごろから適正に行ってもらっているところではあるが、他部署において談合事件が発覚したことを受け、あらためて不正な事務処理を未然に防止する取組をお願いする。

 先ほど話した円山動物園での事例を学校現場における見積合せに置き換えると、複数の者から見積りを徴取する際に、特定の業者から他社の分の見積りも一括して受け取り、あたかも複数の者から見積もりを徴取したかのように見せかける、いわゆる「合見積り」と呼ばれる不正行為となる。

 このような行為は言うまでもないが、見積合わせにおける競争性や公平性を阻害するとともに、不当な契約金額によって市に損害を与えかねない悪質な不正行為となる。あらためてこのような行為が起こらないよう、事前のチェック体制の確認をお願いする。

 最後になるが管理職の皆さんにおいては、今一度契約事務の決定権者として、校内の管理職として、学校内で適正な事務が執行されていることをあらためて確認をお願いする。また、事務職員などの関係職員に対し、適正な契約事務手続に努めるよう、継続的に指導、啓発を行ってもらえるようよろしくお願いする。

【管理・運営関係事項】

▼県費負担教職員の給与負担等の移譲

 これまでもお知らせしてきたところだが県費負担教職員の給与等の負担、教職員定数および学級編制基準の決定に関する権限が、二十九年四月一日に北海道から本市に移譲される。

 これに伴い、教育委員会では権限移譲後の勤務条件について検討を行うとともに、関係組合と交渉を行ってきたところ。勤務条件にかかる関係条例の整備については、「市長部局職員に適用されている制度をそのまま適用することを基本とし、法令などにより必要となる制度については、教職員の職務や勤務態様の特殊性などを考慮して、現在適用されている制度を基本に本市において新設する」という基本方針のもと行い、二十八年第三回定例市議会で議決および公布された。

 条例および規則の内容については各学校・幼稚園に通知したところ。現在整備中の条例および規則の内容についても、定まり次第お知らせするのでよろしくお願いする。

 続いて学校事務職員の在り方検討について。学校事務職員に関しては移譲により、本市の一般事務職員と費用負担などに差がなくなることや、学校、教育委員会、本市および学校事務職員を取り巻く様々な課題に対応していくため、移譲後の学校事務職員の在り方について検討していくこととしている。

 具体的には二十九年四月から三年間程度、学校事務職員と一般事務職員の人事交流および複数校をグループ化して共同で事務を行う共同実施組織の整備の試行を行う。試行期間中の規模として、人事交流は学校事務職員と教育委員会事務局職員間で五人程度、共同実施組織は一区一グループ程度を想定している。

 つぎに共同実施組織について。事務職員は単数配置(一人職場)が基本の小・中学校において、複数校による事務の共同実施を行うことによって、一人職場の課題を克服することで事務機能を強化し、もって学校運営を一層向上させることを目的としている。

 共同実施組織が学校の管理職や教員をバックアップすることで、各学校が直面している複雑化・多様化した課題の解決や教員の多忙化対策の支援につながるものと考えているので、取組の趣旨を理解いただき、ご協力のほどよろしくお願いする。

 共同実施の概要について。試行実施は三年各区一グループずつの全十グループを想定しており、一つのグループは、概ね二中学校区内の学校を基本に構成することとしている。各グループを統括する職としてグループ長(係長)を一人配置するほか、共同事務処理は関係事務職員が集合して実施する。また、グループ内の各事務職員は、本務校発令に加え、教育委員会事務局兼務することとしている。

 グループについてはグループ長が所属する拠点校一校と拠点校と連携して事務を行う連携校四~五校の組み合わせとなるので、全十グループで五十~六十の学校が関係することとなる。

 共同実施組織で行う業務については、各校の事務を持ち寄り共同で処理する「共同事務処理」、グループ内での情報共有やノウハウ伝達などによる「各校事務支援」、グループ内OJTにより各職員の更なる資質向上を図るなど「人材育成・人事管理補佐」を基本に行う。

 「共同事務処理」では、定期的に事務職員がグループ校の空き教室に集まり、作業を行うこととなるので、ご理解・ご協力のほどよろしくお願いする。

 つぎに共同実施の組織等について。共同実施の組織については市教委と拠点校の校長および各グループ長で実施する共同実施会議、市教委と各グループ長で実施するグループ長会議、各グループで実施する学校運営支援グループ会議で構成される。

 学校運営支援グループ会議は、拠点校・連携校の校長および事務職員で構成し、毎年度当初にグループの業務および取り扱う事務等を協議した上で、業務運営計画書を作成する。

 また、九月末および毎年度末に当該年度の実施状況・成果・課題および改善案を確認し、実績報告書を作成する。作成した計画書や報告書は、教職員課に提出してもらう。

 グループごとに行う年三回のこれらの会議を基本にそのほか必要に応じて教育委員会主催で「共同実施会議」「グループ長会議」などを開催する場合がある。グループ校に該当した場合は、会議の参加について、協力のほどよろしくお願いする。

 続いて、事務の標準化・平準化について。小・中学校の学校事務職員は一人配置が基本なので、個々の事務職員の経験差等により、学校ごとに事務職員が扱う分掌事務が異なる状況がある。

 なお、事務の平準化、校務への一層の参画の将来的な到達点としては、既に共同実施組織を導入している他団体における標準的職務内容や、組織的な働き方をしている一般事務職域における平均的な庶務経理担当者の職務内容と同程度を想定している。また、共同実施組織ではグループ内で個々の経験差などを補うことで、事務職員が扱う事務の標準化・平準化及び所管事務の拡大を目指す。

 グループ会議を経てグループ内の事務職員が扱うこととした各校の事務については、グループ内各校において、事務職員の校務分掌としてもらうこととなるので、理解、協力をよろしくお願いする。

 来年度は権限移譲に伴い、様々な制度や事務手続き等が変更となるが、学校現場が混乱することなく、円滑に権限移譲ができるよう引き続き準備に努めていく。管理職の皆さんには権限移譲に伴う変更点等について理解いただくとともに、所属職員へ周知してもらうようよろしくお願いする。

▼健康管理・事故対応

 本年度から定期健康診断が大きく見直されたが、皆さんの協力のもと大きな混乱もなく初年度を終えることができた。来年度に向けて若干の修正を予定しているが、引き続き、学校全体で健康診断に取り組んでもらえるようお願いする。

 また、子どもの日常的な健康状態の把握に加えて、子どもが自ら命を絶つなどの痛ましい事故や様々な心身の健康問題を早期発見・早期対応する上で、学校等での日々の健康観察は必要不可欠なもの。各園・学校では、毎日、健康観察を実施してもらい、子どもの体や行動、態度に現れる心身のサインに早めに気付くとともに、必要な指導につなげてもらうようお願いする。

 なお、例年、学校保健計画の提出をお願いしているが、子どもの心身の健康の保持増進を図るために、引き続き学校保健計画を策定の上、子どもの命と健康を守るという教職員の意識向上と体制づくりに一層努めてもらうようお願いする。

 最後にアレルギー対応を含め、例年、救急搬送等の緊急対応事例がある。各園・学校においては、全教職員を対象に緊急時を想定した救命講習等について、遺漏なく実施するようお願いする。

(市町村 2017-03-17付)

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(2017-03-17)  全て読む

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北斗市教委永田裕  【函館発】北斗市教委の永田裕教育長は七日、第一回定例市議会で二十九年度教育行政執行方針を説明した。市内の小・中学校で積極的に取り組んでいる土曜授業については、「今まで以上に地域と学校が相互...

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