4種校長会長インタビュー③道高校長協会・川口淳氏 「協働」による活動推進 3つの視点で重点目標設定
(関係団体 2017-07-11付)

道高校長協会・川口淳会長
道高校長協会・川口淳会長

―高校長協会長として本年度の抱負

 本年度、会長としての重責を担うことになった。会員の校長先生方の協力をいただき、職責を果たしていきたい。

 一つ目は「協働」による活動について。現在、高校教育の充実や高大接続の改善にかかる教育改革が進められており、仮称「大学入学共通テスト」および仮称「高校生のための学びの基礎診断」の実施方針案が示されたほか、本年度、高校学習指導要領が改訂される。こうした動きが各学校の検討・実行の段階に入り、早急に対応していく必要がある。特に、仮称「大学入学共通テスト」については、現在の中学校三年生から対象となることから、教育課程の編成等が急がれる。

 また、昨年度から実施の学校職員人事評価制度やストレスチェック制度など、新たな制度や取組の導入においては、各学校で円滑に行われることが大切である。

 さらに、各学校では、幅広く、ときには複雑な課題を抱えており、適切に対応していくことが求められているが、社会が急速に変化しており、人々の価値観が多様化している中、校長の学校経営の舵取りが難しくなる場合もあると思う。

 このようなことから、本年度は、特に「協働」ということに重点を置いて、会員のネットワークを大事にして、様々な活動に取り組むこととしており、高校教育にかかる様々な情報を共有し、課題を明確にして、協働して課題解決を図っていく考えである。

 二つ目は、主題および副題の設定について。本年度の活動方針の主題は「北海道の未来を担う人を育む高等学校教育の創造」で前年のとおりである。副題は「次期学習指導要領が目指す教育の研究と実践を推進する」と見直した。

 昨年十二月の次期学習指導要領の方向性を示す中教審の答申では、社会が大きく変化する中で「生きる力」の育成ということの意義をとらえ直し「カリキュラム・マネジメント」の確立や「主体的・対話的で深い学び」を視点とする授業改善について挙げられている。「生きる力」を育んでいくためには、社会の変化への対応という「流行」と知識や技術の習得という「不易」の、バランスの取れた教育が重要である。

 このためには、学校をよりよく変えていくという意識をもち、教育内容や教育方法等の工夫や改善を進めていく必要があることから、副題については焦点を絞って設定した。

 三つ目は、重点目標の設定について。本年度新たに、本協会としての「重点目標」を設定した。「教育課題」「経営課題」「協会運営」の三つの視点でそれぞれ四つの項目を挙げている。

 「教育課題」では、地域創生の核、共生教育の充実、主体的・対話的で深い学び、学校段階間や社会との接続を、「経営課題」では、カリキュラム・マネジメント、社会に開かれた学校づくり、教員の資質・能力の向上および管理職の発掘・育成、人事異動・人事評価制度を、「協会運営」では、協働体制の構築、不祥事防止・危機管理、研修・調査研究、本協会創立七十周年をキーワードとして、目標を明確かつ具体に掲げている。

 本年度は、主題・副題および「重点目標」をもとに、具体的な活動につなげていきたいと考えている。

―高校長協会の抱える課題と対策

 一つ目は、後継者の育成について。管理職やミドルリーダーの育成など、後継者の育成は喫緊の課題となっており、特に、教頭候補者の減少は深刻な課題として受け止めている。各学校において、教職員の学校経営参画意識を高めるなど、ミドルリーダーの育成に努めていただいており、部長・主任をはじめ、管理職としての資質・能力を有する教員は多いと思う。待遇の改善などを文教施策要望等において継続して要望しているが、管理職としての役割、やりがいや働きがいを伝えていくことも大切であると考えている。

 二つ目は、コンプライアンスの推進について。毎年、教職員による交通事故や違反、わいせつ行為などが発生しており、体罰が依然としてなくならない状況である。不祥事は高校教育に対する信頼を損なうものであり、大変残念に思う。また、学校における課題が複雑化・長期化する場合があり、危機管理への適切な対応が求められている。

 このようなことから、本年度、本協会内に特別委員会となる「コンプライアンス推進委員会」を設置し、学校において、不祥事の防止や危機管理の対応について、教職員の意識を高揚するための取組などを検討することとしている。二十六年に本協会が作成した、事例研究を主とする研修資料などを参考にして、より効果的な取組を検討していきたい。

―本年度の重点

 一つ目は、協働体制の構築について。毎年、年四回開催している支部長研究協議会に九支部のほか、本年度から五ブロックの校長にも出席していただくこととした。情報の共有と研修の充実を図るほか、支部やブロックにおける課題についても協議を深めたい。

 また、昨年度は、各支部で十月に開催された第三回研究協議会に本部役員も出席させていただいた。本道の高校教育の現状や課題、本協会の取組などについて、情報を共有し、課題等を協議することは、大変意義のあることと考えている。本年度についても、研究協議会等において、充実した協議をしていけるよう努めていきたい。

 さらに、昨年度、本協会内の特別委員会で、財務の在り方や情報の速報性の観点から検討を重ね、年八回発行している会報をすべてメールによって送信することとした。様々な情報を速やかに提供していきたい。

 二つ目は、調査研究の充実について。本協会では、調査研究部において、学校経営に資するための調査研究を進め、研修の充実を図っていくことを目的として、教育課程、管理運営、生徒指導、進路指導の四つの委員会を設け、生徒指導委員会の中に「学校安全」、進路指導委員会の中に本年度新たに「高大接続」の二つの小委員会を設置し、それぞれテーマに沿って調査研究している。委員会の組織を見直すことによって、研究成果が一層学校経営に生かされるよう努めたい。

 各委員会の本年度のテーマは、教育課程が「カリキュラム・マネジメントと主体的・対話的で深い学び」、管理運営が「次世代を担う管理職の育成」、生徒指導が「生徒の成長を支援する教育相談の在り方」、進路指導が「進学指導の現状から考える学校経営とキャリア教育の在り方」、学校安全が「社会の変化による新たな課題への効果的な対応」、高大接続が「高大接続システム改革に対応した学校経営の在り方」としている。

 今後、委員会および小委員会で調査研究を進め、その成果を冊子にまとめ、一月の後期研究協議会で発表する。

 さらに、各委員会や小委員会の代表の校長には、全国高校長協会における各部門の研究協議会に出席していただき、協議した内容等についての情報を提供していただくこととしている。

 三つ目は、社会貢献活動の継続について。本協会独自に取り組んできた〝DO3KO福プロジェクト〟は、校長先生方から協力をいただき、長期的な視野に立って社会に貢献する機会を設けることを目的に、一昨年度から実施している。将来の大きな夢に向かって、今後とも協力をいただきながら継続して取り組んでいきたい。

 かわぐち・じゅん

 昭和58年筑波大大学院修了。平成19年野幌高教頭、21年道教委新しい高校づくり推進室主幹、22年道教委高校教育課主幹、23年美唄尚栄高校長、25年道立教育研究所研究・相談部長、27年岩見沢緑陵高校長を経て、28年から札幌南高校長。

 昭和34年1月16日生まれ、58歳。旭川市出身。

(関係団体 2017-07-11付)

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