4種校長会長インタビュー①道小学校長会・角野誠氏 校長団結し改革にうねりを 山積する課題、チームで対応
(関係団体 2017-07-07付)

4種校長インタ道小・角野会長
道小学校長会・角野誠会長

―道小学校長会会長としての抱負

 道小学校長会は、本年度、昭和三十二年の発足から六十年目を迎える伝統ある組織である。これまで、北海道の教育が幾多の困難に直面する中で「正論を以って正道を歩む」という理念のもと、校長の職能向上と北海道教育の振興・発展を図ることを目的として、半世紀を超えて活動を行ってきた。全道の会員一人ひとりが北海道教育の向上のために、真摯に取組を進めているが、今後も、このような伝統を引き継ぎ、全道の校長と力を合わせながら目的の達成に向けて努力していきたいと考えている。

 昨年度の「組織の在り方検討委員会」では、各地区校長会から、道小の活動に対して貴重な意見をいただいた。会員一人ひとりにとっては、道小という組織を考える一つの契機となったのではないか。地域による教育事情は様々かと思うが、各地区校長会が道小という組織を通して、大同団結していくことが大切である。それが全国連合小学校長会の活動の充実にもつながり、教育改革の大きなうねりにも結び付くと確信している。

 この道小という組織を活性化させるとともに、道教委、道中学校長会、道PTA連合会、民間教育団体等の教育関係諸団体などとも連携を図りながら「チーム北海道」として、北海道教育の充実に努めていきたいと考えている。

―道小学校長会が抱える課題と対策

 各学校においては、二〇二〇年度から完全実施される新学習指導要領の円滑な実施に向けて、社会に開かれた教育課程の推進、指導体制の整備、校内研修の充実等に取り組んでいる。子どもたちには、変化の激しい時代を生きていくために、基礎的な知識・技能を身に付けるとともに、それらを活用した思考力・判断力・表現力、主体的に学ぶ豊かな人間性などが求められている。

 こうしたことを踏まえ、道小学校長会では、近年、本道教育の質の向上を目指す上で、時代の要請に応える「授業改善」が重要課題であると主張してきた。各学校においては、校長のリーダーシップのもと、教師一人ひとりが授業研究を通して研鑚を積み重ね、授業力の向上に努めていかなければならない。

 その一方では、今日、学校が抱える問題は、複雑化・多様化しており、いじめ・不登校などの生徒指導上の問題への対応、貧困・児童虐待などの課題を抱えた家庭への対応、特別な教育的支援を必要とする児童への対応、保護者へのきめ細かな対応など、様々な課題が山積している。

 さらには、子どもと向き合う時間の確保や時間外勤務等の縮減、教職員定数の改善、服務規律の徹底なども喫緊の課題となっている。

 こうした状況において、学校が教育課程の改革等を実現し、複雑化・多様化した課題を解決していくためには、学校組織全体を一つの「チーム」としてとらえ、対応していくことが必要になる。教員には「チームとして自分の力を発揮し、チームとして対応する能力」が求められ、校長には「チームをまとめていくリーダーシップや組織マネジメント」が求められる。

 さらには、教員のみが子どもの指導にかかわる現在の学校組織体制を転換し、教員に加えて、多様な専門性をもつ人材が学校に配置されることを望む。

 それぞれの専門性を発揮して様々な業務を連携・分担しながらチームとして職務を行うことによって、学校の教育力・組織力を向上させることができる。教員の業務を見直し、本来の業務に専念できるような体制を整備していくことが重要である。

 いずれにしても、教育行政や関係諸機関との連携は、これまで以上に必要となる。

―本年度の重点

 一点目は、研修体制の充実。

 本年九月、第六十回道小学校長会教育研究宗谷・稚内大会が開催される。全道校長の半数以上が集う研究の場において、教育の現状を語り合い、北海道教育の質の向上に向けて、我々自身が研鑚を積んでいくことが大切である。現在、宗谷校長会の皆さんが、総力を挙げて鋭意準備している。第四十回大会以来、二十年ぶりの開催となる。日本最北の地での開催は、大変意義深いものだと考えている。私たちは、宗谷の風を肌で感じながら、北海道教育の在り方を考えていきたいものである。この教育研究大会は、私たち道小の根幹を支える活動だと考えている。

 二点目は、新学習指導要領の実施に向けて、つぎに掲げるポイントを中心に共通理解を図っていくこと。

 その一つは「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」についてである。これまでの教育実践の蓄積に基づく授業改善の活性化によって、知識の理解の質を向上させることが大切となる。これまでと全く異なる指導方法を導入しなければならないなどと浮き足立つ必要はなく、教育実践の蓄積を引き継ぐということに留意する必要がある。

 その二つは、道徳教育の充実についてである。「考え、議論する道徳」への転換や「問題解決的な学習」「体験的な学習」など、指導方法の工夫を行うことが求められている。評価の在り方については「ほかの児童生徒との比較ではなく、児童生徒がいかに成長したのかを積極的に受け止めて認め、励ます個人内評価であること」に留意する必要がある。

 その三つは、英語の教科化に伴う教育課程の編成と指導の充実について。各学校においては、授業時間の一時間増をどのように組み入れるかが悩みどころかと思う。「小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する検討会議」においては、昨年度末、年間の授業日数を増やすパターンや、短時間と長時間の授業を設定する授業などの四パターンを例示している。次年度からの移行措置に伴い、指導体制の充実も急がなければならない。

 三点目は、要望活動の推進について。

 本年度の道教委への提言書は、タイトルを「今求められている教育の実現に向けた教育条件の整備についての提言」とした。内容については、大きく「次期学習指導要領の趣旨を生かした授業構築に向けた教育条件整備への提言」「チームとしての学校の実現に向けた教育条件の整備」の二つとして、すでに提出している。また、各地区の要望をまとめた「北海道文教施策・予算策定に関する要望書」も併せて提出している。

 八月に行われる文教施策懇談会・各課懇談会では、教育現場の生の声を教育委員会の皆さんに伝えていきたいと考えている。

 加えて、本年四月に実施した「二十九年度当初の期限付教諭配置にかかわる実態調査」においては、全道における教員未配置による定数欠一人の学校が三十四校、定数欠二人の学校が二校あったことが判明している。今後、こうした問題が起こらないようにしていかなければならない。

 様々な要望の中でも、特に、教職員の定数改善については、教員が日々の授業を充実させるための重要な要件であるとともに、生徒指導上の問題への対応や教員の時間外勤務等縮減への対応に向けて欠かせない問題である。道教委だけではなく、関係諸機関に対しても働きかけを続けていきたいと考えている。

 かくの・まこと

 昭和55年道教育大札幌分校卒業後、札幌市立平岸西小に赴任。平成13年札幌市教委指導主事、19年札幌市教委人事担当係長、22年札幌市立美しが丘緑小教頭、24年札幌市立美しが丘緑小校長、27年札幌市立幌南小校長。

 昭和32年4月21日生まれ、60歳。宮城県塩釜市出身。

(関係団体 2017-07-07付)

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