4種校長会長インタビュー④道特別支援学校長会・宮崎真彰氏 専門性の維持・向上を センター的機能発揮して(関係団体 2017-07-12付)
道特別支援学校長会・宮崎真彰会長
―特別支援学校長会会長としての抱負
三十七代目の道特別支援学校長会会長の任をいただいた。昭和三十八年の発足以来、先達が脈々と築いてきた特別支援教育の歴史と実践を引き継ぐとともに、道教委をはじめとして関係機関との連携を図りながら、本道の特別支援教育を牽引していきたい。
本年度、特別支援教育への転換から十年目の節目を迎えたが、四月に開校した北斗高等支援学校、市立札幌みなみの杜高等支援学校、日本体育大学附属高等支援学校が加わり、この十年で学校数は六十二校から七十二校となった。また、児童生徒数では、四千四百五十六人から五千六百十六人と、一・三倍となった。
歴史を閉じた学校、複数障がいに対応するため統合した学校、閉校した中学校や高校の校舎を受け継いだ学校、高校の空き教室を活用した学校などがあるが、いずれも身近な地域で専門的な教育が受けられるよう地域性をかんがみた体制整備である。
本会としては、今後も特別支援学校の配置の在り方などについて、小・中学校の児童生徒の状況や教育的ニーズ、就労環境などを検討、協議し、道教委に対して積極的に意見を具申するとともに、障がいの重度化・多様化への対応など、社会の期待に応える専門性の維持・向上とセンター的機能の発揮を果たしていきたい。
―特別支援学校長会の抱える課題と対策
この十年において、本道の特別支援教育は、校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名、個別の教育支援計画の策定、特別支援学級の開設や特別支援学校の開校など一定の成果を収めてきた。
現在、道教委において、三十年度から概ね五年間の基本的な考え方と施策の方向性を示した「特別支援教育に関する基本方針」の案が検討されているが、本会としても学校現場の意見を伝えるとともに、特別支援教育の質の向上に向けて、本道の特別支援教育の一層の充実に努めたい。
各障がい教育については、つぎのような状況となっている。
視覚障がい教育では、道内四校の密接な連携のもと、小・中学校等に在籍する視覚障がいのある幼児児童生徒に対する教育的支援や、見え方に不安や心配を感じている保護者、学校関係者などに対する教育相談を随時行っている。本年度は、第四十九回弱視教育研究全国大会を開催し、全国の弱視教育に携わる教員、大学等の研究者らが一堂に会して研究発表、協議、情報交換等を行う。
聴覚障がい教育では、各校において学習形態や指導内容を工夫・充実し、学力の向上に重点を置いて取り組んでいる。また、手話活用能力や聴覚障がい教育の専門性向上、増加する人工内耳や重複障がい幼児児童生徒への効果的な指導など、多様な教育的ニーズへの対応を行っている。乳幼児療育事業をはじめとする教育相談・支援、進学・就職指導を含めたキャリア教育などの充実にも引き続き力を入れる。
知的障がい教育では、特に高等部において、教育課程の特色や学ぶ内容によって学校を選択することができるよう、引き続き教育課程の改善に取り組んでいる。さらに、職業学科や普通科における生徒一人ひとりの教育的ニーズや将来の進路を見据えた後期中等教育の在り方、学習指導要領の改訂の趣旨を生かすカリキュラム・マネジメント等について、道教委と連携・協議しながら、より一層充実した取組を進めていく。
肢体不自由教育では、幼児児童生徒の障がいの重度・重複化、多様化が一層進展しており、高度な医療的ケアや摂食に対応する校内の支援体制など、自立と社会参加を見据えた後期中等教育の在り方等が課題となっている。このことから、肢体不自由教育専門性向上セミナーや肢体不自由教育研究協議会を通じて各学校の実践研究を推進し、教職員個々の専門性を高めるとともに、学校力の向上を図っていく。
病弱教育では、保護者や医療機関等と連携し、自分の病状を理解して生活の自己管理ができるようにするとともに、ベッドサイドでの学習やICTを活用した指導、体験的・集団的な学習など、学習形態や指導方法の工夫を図っている。
課題としては、進行性疾患のある児童生徒の学習活動など病弱教育に特化されるキャリア発達の視点を加味した教育課程の再検討や、地域等で直接活動が難しい入院生など将来の社会生活を見据えた教育活動の充実に向けた取組の工夫と創造が求められる。また、三十二年度を目途とした八雲養護学校の移転を控え、今後の北海道における病弱教育体制および病弱教育校の在り方が緊急の課題である。小・中学校の院内学級や特別支援学級の担当者、特別支援学校との連携も含め専門性向上の研修やネットワーク構築などが必要となっている。
―本年度の重点
一点目は、三十年度から、高校における通級指導が制度化される。これまでの、適切な学びの場の選択から適切な学習内容の選択へと、大きな変化が予想される。それは、幼小中高特すべての校種が、自校において特別支援教育を展開するということであり、それぞれの地域、圏域において特別支援教育の推進が求められるということである。
本会としては、センター的機能の発揮に努めるとともに、各校種の校長会とも連携して、地域、圏域の特別支援教育の推進に寄与していきたいと考えている。
二点目には「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の施行から一年がたった。昨年度末に、道特別支援教育関係PTA連絡協議会役員と「共生社会の形成に向けて~心のバリアフリー推進のために学校に望むこと、期待すること」をテーマに懇談会を実施したが、相模原市障がい者福祉施設での事件の受け止めについても話題の一つであった。あらためて、幼児児童生徒の人権尊重の重要性について確認するとともに、交流および共同学習の充実が重要との認識に立った。
共生社会の形成には、地域との連携が必要不可欠であるが、今後は、コミュニティ・スクールの指定もあるであろう。
本会としても、地域との連携・充実に向けて取り組んでいく。
三点目。この四月に「特別支援教育の生涯学習化に向けて」と題する大臣メッセージが発信された。本道でも、パラアスリート発掘事業など、関連する事業も計画されている。
特別支援学校では、パラリンピックでの卒業生の活躍はもとより、クロスカントリースキー大会やチャレンジドサッカーなどの各種スポーツや、演劇部、写真部などの文化活動も広げている。
本会としても、文化・スポーツの振興に取り組んでいく。
四点目に、道立学校職員人事評価制度、教職員のメンタルヘルスや時間外勤務の縮減など、校長としての適切な判断が求められる課題が山積している。合理的配慮の「基礎的環境整備」の一つに「専門性のある教員、支援員等の人的配置」があるが、専門性は、基礎的環境の整備に欠かせない。本会としても、障がい種ごと、地域ごとの研修をバックアップしていく。
また、教職員は貴重な人材であり、教職員の健康なくして教育は進められない。メンタルヘルスセミナーやストレスチェック制度を活用するなどして、健康の維持増進に努め、チーム学校を構築していく。
特別支援学校の校長はこれからの三年間で半数以上が定年退職するなど、管理職の大幅な交代期を迎えている。複数の支部で「教育課程セミナー」を開催するなど、ミドルリーダーの育成に本年度も取り組んでいく。
みやざき・まさあき
昭和57年宮城教育大特殊教育特別専攻科修了。
平成22年標津高校長、25年千歳高等支援校長を経て、27年真駒内養護校長。
昭和33年11月8日生まれ、58歳。網走市出身。
(連載おわり)
(関係団体 2017-07-12付)
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