道高教組・道教組が高・特配置計画に対し声明 少人数学級実現など要求 「機械的な間口減」と批判
(関係団体 2017-09-08付)

 道高教組(國田昌男中央執行委員長)と道教組(川村安浩執行委員長)は五日、道教委の公立高校配置計画・公立特別支援学校配置計画に対して「教育の機会均等、子どもの学習権を脅かす〝指針〟と〝高校配置計画〟の見直しを求める」とする声明を発表した。声明では、配置計画に対し「生徒への不利益を顧みない機械的な間口減は、学校づくりの根幹を揺るがしかねず、到底、容認できるものではない」などと批判し、撤回を要求。「少人数学級の弾力的運用を実現させ、北海道の広域性と個々の地域や学校の事情に見合った配置計画を示すべき」などと訴えた。声明の概要はつぎのとおり。

1.はじめに

 道教委は九月五日、「公立高校配置計画」(二〇一八~二〇二〇年度)と「公立特別支援学校配置計画」(二〇一八年度)を発表した。

 「高校配置計画」では、本年度の新たな計画として、二〇一八年度に余市紅志高校など五校の一学級増が示されたほか、上ノ国高校(センター校は江差高校)と雄武高校(センター校は紋別高校)の地域キャンパス校化、二〇一九年度に私立江陵高校の募集停止に伴い幕別高校の二学級増(私立江陵高校の校舎を使用)、室蘭工業高校情報技術科、北見商業高校商業科の一学級減、函館市内の新設校と稚内高校への単位制導入が決定された。

 また、二〇二〇年度に深川東高校など二十四校二十五学級の大幅な学級減が発表されたが、六月の配置計画案で示されていた空知南学区の一学級減が岩見沢農業高校から岩見沢緑陵高校に変更された。

 私たちは、「新たな高校教育に関する指針(二〇〇六年度)」に対して一貫して見直しを求めてきた。この「指針」は、経済性・効率性を最優先した統廃合基準をその特徴としている。北海道の広域性を考えるならば、国の基準をそのまま引き受けることは即統廃合につながり、その歪みは至るところに生じている。

 特に、職業学科の間口減は学科の閉科に直結し、総合学科や単位制高校の場合は教育課程の大幅な変更を余儀なくされる。

 また、幕別高校については、公立と私立の同居状態が生じることでの管理体制や、二つの校舎を同時に展開することでの混乱が予想される。

 こうした生徒への不利益を顧みない機械的な間口減は、学校づくりの根幹を揺るがしかねず、到底、容認できるものではない。

 私たちはあらためて道教委に対し、「指針」の見直しと「高校配置計画」の撤回を求めるものである。

2.地域や子どもたちの声に耳を傾け、その意見を教育政策に反映することを求める

 私たちは、六月の配置計画案に対して、地域別検討協議会などで出された地域の声に十分耳を傾けるよう求めた。しかし、今回の公立高校配置計画において、これらの意見が反映されているとは到底思えない。

 地域別検討協議会では、小規模校の存続や間口の維持、職業学科の意義など多岐にわたる意見が挙がっている。四~八間口がなぜ望ましい学校規模なのか再三問われているが、道教委は客観的な根拠を示して説明していない。また、配置計画で間口減が示された二十四校二十五学級については、中卒者を基数として学校を配置しただけの機械的な数合わせに過ぎず、個々の地域の実情や学校の実態を考慮しているとは到底思えない。

 空知南学区において、道教委は当初「岩見沢農業高校で一学級減」と公表していたが、七月に「岩見沢緑陵高校を一学級減らせば岩見沢農業高校の学級減の方針を見送る」と岩見沢市に伝えた。市は「岩見沢農業高校は道内で唯一、農業関係全科目を履修できる」などを理由に、市立緑陵高校の一学級減という苦渋の決断を強いられたが、両校を秤にかける道教委のやり方には大きな疑問が残る。

 道教委は、地域別検討協議会でも再三意見が挙がっている少人数学級の弾力的運用を実現させ、北海道の広域性と個々の地域や学校の事情に見合った配置計画を示すべきである。

3.特別支援教育の充実のための十分な条件整備を求める

 特別支援教育が始まり十年が経過し、少子化の進行と相反するように、特別支援学校・学級に在籍する子どもたちは増加し、北海道においては知的障害特別支援学校の在籍者は一・五倍にも膨らんでいる。この間に増設された十六校の知的障害特別支援学校は、そのほとんどが統廃合の校舎を増築・改修して使用しており、施設・設備が不十分との声が保護者や学校現場から上がっている。

 特別支援学校配置計画では、二〇一九年度に函館稜北高校の空き教室に機能移転を含めて四学級相当、釧路鶴野支援学校を増築して三学級相当、二〇二〇年度に道北圏の既存施設の活用で三学級程度の学級増の見通しを示しているが、これらの学級増に伴っては、十分な条件整備が求められる。

 文部科学省は、二〇一八年度から「高校における通級による指導」の制度運用を開始するとしており、現在、道内でもモデル事業を通して準備が進められている。

 インクルーシブ教育とは「すべての子どもたちに、学習する権利、発達する権利を保障する教育」であると私たちは考えている。特別な支援を必要とする子どもたちの支援・指導の場が保障され、高校における特別支援教育がさらに充実するものとなるよう、多くの高校で通級指導教室が配置されることが求められる。

 そのためにも、超勤や多忙化が深刻している学校現場の負担増とならないよう、人員配置も含めて十分な条件整備が求められる。

4.学校現場や地域社会の意見を真摯に受け止め、それらの意見を反映させた「新しい指針」を早急に示すべき

 二〇〇六年に「指針」が出されて以降、三十八校の高校が閉校した。私たちは四年間にわたり、全道百七十九自治体を訪問し、首長や教育長と懇談を重ねてきた。

 各自治体では、地域の子どもたちのため、交通費や制服代の補助、模試や検定代の負担に至るまで、あらゆる支援を続けている。特に、高校統廃合については危機感を募らせており、高校が廃校に追い込まれた地域では「昼間、高校生の声が聞こえず、町に活気がなくなった」「学校がなくなったのはまちづくりにとっても大きな打撃であった」などという声も聞こえ、地域社会に与える影響は計り知れない。

 私たちは、教育の機会均等のために「指針」の見直しを強く求め続け、道教委はこうした声に押され、来年三月をめどに「新しい指針」を策定するとしている。

 この策定に向け、「ICTの活用など、教育環境の充実に向けた取組を推進」「地域キャンパス校の再編基準の緩和に向けた具体的人数要件」などが検討されているが、ICTを活用した遠隔授業では、対面授業と同等に教育的効果が現れているのか甚だ疑問である。

 我々が行っている授業は「教育」の一環であり、単なる知識の伝達ではない。実際の授業では、授業に向かう指導に始まり、対面授業の中で行われる生徒と教職員とのやり取りを通して、生徒自身が主体的に考える学びへと発展するよう努めている。どんなに機器が発達しようとも、遠隔授業はこうした豊かな学びを保障するものにはなり得ない。

 また、「総合学科」など、いわゆる「新しいタイプの学校」についても、この十年の間に間口減を強いられ、その結果、教育課程の大幅な変更を余儀なくされ、学校現場はその都度、混乱を来している。小規模の総合学科や教員加配の付かないフィールド制については、廃止も含めた検証を進めるべきである。

 そもそも道教委が言う学校の特色づくりは、学校間の競争をあおり、教育の機会均等を損なうもので、到底認められない。

 現在策定中の「北海道総合教育大綱(素案)」の中でも、「子どもの学びの環境を整える」ことを掲げ、「広域性を踏まえた学びの場」を確保することが盛り込まれている。

 私たちは、教育の機会均等を保障し、一人ひとりの子どもたちにゆきとどいた教育を進める視点から、三十五人以下学級の実現を要求してきた。さらに、北海道の広域性を踏まえ、機械的な学校統廃合がこれ以上行われないよう再三求めてきた。

 「再編基準の人数要件緩和」といった小手先の改定ではなく、「一学年四~八学級」を「望ましい学校規模」とする基準を抜本的に改めて、これ以上の学校統廃合を行わず、道独自の予算で順次、少人数学級を進めていくことを強く求める。

5.ゆきとどいた教育を進めるための教育政策への転換を求める

 道教委は、機械的な高校統廃合や間口減を進める一方で、スーパーグローバルハイスクールやスーパーサイエンスハイスクールの研究指定事業によって、「グローバル人材」の育成を進めている。これらの施策は、特定の「人材」を選別して特別な教育を施すものであり、国民誰もが権利としてもっている教育の機会均等を、根本から揺るがしかねない。

 現在、私たちは、ゆきとどいた教育を求める「教育全国署名」に取り組んでおり、教育予算をOECD諸国並みに引き上げ、三十五人学級や教育の無償化を求めるなど、ゆきとどいた教育を求めるすべての道民とともに運動を進めている。

 子どもたち、保護者、現場の教職員、地域住民の願いや実態に基づいた学校づくりの取組を今後、さらに強めていくことをあらためて表明する。

(関係団体 2017-09-08付)

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