【PickUp2017】道教委 幼小接続へ大きな一歩に 道教委が幼児教育推進体制構築
(道・道教委 2017-12-22付)

◆求められる幼小接続

 国はことし三月、幼稚園教育要領等を改訂した。従来の「健康」「人間関係」などの五領域を踏まえ、五歳児終了までに育ってほしい姿をより具体化するため、「健康な心と体」「自立心」など、幼児期の終わりまでに育ってほしい十の姿を示した。

 また、小学校の新学習指導要領では、スタートカリキュラムの編成が「幼児期の教育と小学校教育を円滑に接続する重要な役割を担っている」として、「合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の編成など、指導の工夫や指導計画の作成を行うこと」を求めている。

◆幼児期の遊びが基盤

 先行して幼小接続に取り組んでいる札幌市内の幼児教育関係者は、幼保小間の交流、入学前後の子どもの情報交換によって「幼児期の遊びや活動で育つ感性、表現力、思考力などが、入学後の学習基盤となることが確認できる」と話す。

 小学校からは、スタートカリキュラムに関して「子どもたちの生活・学習規律の基礎となる」「教職員間の意識の共有につながる」などのメリットを挙げる声が多く、より効果的なものとする必要性も指摘される。「子どもの実態に即すよう、幼稚園との意見交換を踏まえて作成することが大切」(小学校教諭)。

◆幼児教育振興へ基本方針を検討

 幼小の円滑な接続に向けては、幼児教育のさらなる充実が欠かせないが、本道においては、その課題解決に向けて大きな一歩を踏み出している。道教委は昨年十一月、文部科学省委託事業「幼児教育の推進体制構築事業」を受諾。知事部局と連携し「仮称・道幼児教育振興基本方針」の策定に向けた検討をスタートした。

 方針策定に向けて新たに発足した道幼児教育研究協議会では、道内外の幼児教育先進地域から実践事例を学ぶとともに、有識者が意見を交換。ミドルリーダーの養成や非認知能力育成の大切さに関する周知などが指摘された。

 また、幼稚園教育要領等の改訂内容や幼保小連携について考えを深めるため、本年度初めて全道十四管内で「幼児教育を語る会」を開催。幼小の教育にかかわる約七百人が研鑚を深めた。このほか、幼稚園などの要請に応じて相談員を派遣する「幼児教育相談員派遣事業」を七管内に拡充して実施するなど、教育充実に向けて様々な施策を講じている。

◆広域性が課題に

 一方、幼児教育の充実に向けた支援体制を整備するには、他都府県と比べてその広域性が課題となっている。柴田達夫教育長は十月の道総合教育会議において、きめ細かな研修と助言体制を構築する必要性を強調。広大な北海道の中で教育関係者が研修機会などを確保する難しさを踏まえ「振興局と教育局の連携、さらには市町村との連携の一層の強化が必要」と述べた。道教委では、関係機関の連携強化に加えて、オンデマンド教材の配信やICTを活用した研修体系の構築を検討している。

 幼小接続に関しても広域性が大きな壁となっており、その状況は、地域間で差があるのが現状だ。昨年度、道教委が実施した調査によると、小学校と幼稚園が合同でスタートカリキュラムを作成した割合は、わずか三%にすぎない。幼稚園と小学校が隣接する地域とそうでない地域とでは、連携に至るハードルの高さが大きく異なる。

◆最上位計画に幼少連携を明示

 幼児教育の充実、幼小接続の推進には、こうした課題が立ちはだかるが、道教委はその解決に向けて大きな決意をもって臨んでいる。道教委の最上位計画である新しい教育計画は、現在、策定に向けた作業が進められているが、その中に「域内の幼稚園、認定こども園、保育所、小学校間の意見交換や合同の研修機会を設けている市町村の割合」「幼児教育施設の意見を踏まえて小学校入学後のスタートカリキュラムを編成している小学校の割合」を設定。幼保小連携の推進、スタートカリキュラムの充実を見据えた編成状況の改善を打ち出し、より具体的に進めていく姿勢を明らかにした。

 道教委は「本道における幼児教育の推進は一歩目を踏み出したばかり」と話すが、その歩みは着実に前進している。今後、道知事部局、道教委、関係団体との緊密な連携と調整、地域の学校・幼稚園双方の努力に期待がかかる。

(シリーズおわり)

(道・道教委 2017-12-22付)

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