30年度オホーツク管内教育推進の重点―オホーツク局が高・特校長会議 未来切り拓く資質・能力を 情報・キャリア教育充実要請(道・道教委 2018-04-26付)
松本局長が管内教育推進の重点について説明した
【網走発】オホーツク教育局は十七日、オホーツク合同庁舎で三十年度管内高校・特別支援学校長会議を開いた。松本邦由局長が「社会の変化に対応する教育の推進」「豊かな心と人間性を育む教育の推進」「心身の健やかな成長を促す教育の推進」「学びを支える家庭や地域との連携・協働の推進」「学びをつなぐ学校づくりの実現」の五点を柱とする本年度管内教育推進の重点を説明。情報教育やキャリア教育の充実などを求め、「“オホーツク教育が北海道教育を牽引する”という気概をもち、学校組織のトップとして経営手腕を大いに発揮して」と呼びかけた。
管内における教育推進の重点はつぎのとおり。
【はじめに】
皆さんには、昨年四月に示した二十九年度管内教育推進の重点の五点に基づき、昨年度は、学校経営の改善・充実はもとより、管内の教育の振興・発展に寄与していただいた。
管内のすべての子どもたちが本道の次代の担い手として成長することにつながる学校の真摯な取組に敬意を表する。
さて、オホーツク教育局では、これまで、道教委の北海道教育推進計画に基づき、五年ごとに管内教育推進計画を策定してきたが、今後は道総合教育大綱、道教育推進計画、道教育行政執行方針に基づき、毎年度、取組の進捗状況を踏まえて管内教育推進の重点を示すこととしたので、理解のほど、よろしくお願いする。
なお、重点の基本となる道教育推進計画がことし三月に、三十年度から三十四年度までの五年間の計画として新たに策定されたので、三十年度管内教育推進の重点について説明する前に、新しい道教育推進計画の概要について説明する。
このたび策定した計画は、その理念を継承しつつ、本道における教育課題の解決と地域創生の実現に向けて、三十年度から五年間の道教委が目指す教育の全体像を示すものである。
新しい教育計画は、六つの目標を設定し、それに伴う施策項目については、知事が道総合教育大綱を策定したことによって、大学・私学など知事の権限に属する項目を除いたことから、四十項目から三十項目に変更となっている。
また、「施策項目20 学びのセーフティネットの構築」は今回の計画から新たに設けられた。
知事策定の道総合教育大綱を踏まえ、人口減少を踏まえた対応など知事と連携し着実に取り組む項目について「重点」として示している。
重点1の「ふるさとを想い、グローバルな視野で共に生きる力の育成」は、地域産業を支える人材や国際的分野で活躍できる人材の育成などが重要であることを示し、重点2の「学校・家庭・地域・行政の連携による、人口減少に対応するための教育環境の形成」は、地域コミュニティの希薄化など人口減少に伴う問題の拡大が懸念されており、こうした課題への対応が求められていることを示したものである。
それでは、三十年度管内教育推進の重点について。
道教育推進計画に示された北海道教育の基本理念である「自立」と「共生」、そして、六つの目標である「社会で活きる力の育成」「豊かな人間性の育成」「健やかな体の育成」「学びを支える家庭・地域との連携・協働の推進」「学びをつなぐ学校づくりの実現」「学びを活かす地域社会」を位置付け、本年度は、特に、目標1から目標5の内容との関連を重視して、管内教育推進の重点を五点定めた。
【重点について】
各重点項目の詳細について、特に、校長の皆さんにお願いしたいことを申し上げる。
重点1は「社会の変化に対応する教育の推進」である。
技術革新や人口減少、少子高齢化など、急激に変化する社会を生き抜くためには、未知の事象に対応する力の育成だけではなく、変化の背景や本質を見抜き、主体的に社会に参画していく力を育成していくことが必要である。
このため、社会の変化に対応する教育の推進に向けて、主体的・対話的で深い学びを実現し、子どもたちが未来を切り拓くために必要な資質・能力を身に付けさせるとともに、科学技術の進展、高度情報化社会など社会の変化に対応する教育の推進、キャリア教育、特別支援教育を推進し、社会的・職業的に自立するための力を育むことが重要である。
このことから、各学校においては、つぎのことに取り組むようお願いする。
はじめに、これからの時代に求められる資質・能力を育成することについて。
義務教育段階の学習内容を含めた基礎学力の確実な習得と学習意欲の喚起を図るため、多様な学習成果を測る多面的な評価の実施を推進するとともに、主体的・対話的で深い学びを推進するため、教科などを超えて授業改善の視点を共有することや、習得・活用・探究という学習過程の中でICTを効果的に活用することを重視した校内研修を実施するようお願いする。
また、国において進められている高大接続改革などの方向性を見据え、学習・指導方法の充実や学習評価の改善に向けた取組を推進するようお願いする。
つぎに、特別支援教育の充実を図ることについて。
特別な教育的支援を必要とするすべての生徒に対して、個別の教育支援計画を作成し、家庭や地域、関係機関と連携しながら、本計画を活用することを通して、長期的な視点で教育的支援を行う取組を推進するようお願いする。
また、すべての教員などが特別支援教育に関する指導や支援についての知識・技能を身に付けることができるよう、『校内研修プログラム』や『実践事例集』などを活用しての校内研修の充実に向けた取組を推進するようお願いする。
なお、本年度から通級による指導が制度化されることを踏まえ、前年度、国の指定事業に取り組んだ北見北斗高校の成果などを活用するなどして、通級による指導の充実に向けた取組を推進するようお願いする。
さらに、特別支援学校においては、障がいの重度・重複化、多様化に対応できるカリキュラム・マネジメントを確実に行うほか、障がいの多様化に対応する実践的な研究・研修の充実に向けた取組を推進するようお願いする。
つぎに、外国語教育の充実を図ることについて。
前年度から実施されている高校英語力向上事業をはじめ、スーパーグローバルハイスクールの研究成果などを活用するなどして、学科の特性に応じて英語の活用場面を想定した学習プログラムを開発し、授業改善に取り組むようお願いする。
つぎに、情報教育の充実を図ることについて。
分かる授業づくりの実現に向け、各教科などの指導における実物投影機やタブレットなど、ICT活用の内容を取り扱う校内研修や遠隔研修を実施し、教職員のICT活用指導力の向上を図るようお願いする。
さらに、生徒をネットトラブルの被害者にも加害者にもさせないよう、情報モラル教育の一層の充実を図るとともに、保護者に対する各種資料の配布などに取り組むようお願いする。
つぎに、キャリア教育の充実を図ることについて。
就職や進学といった進路決定に終始するような指導ではなく、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していくキャリア発達を支援していくキャリア教育の充実が重要である。
また、選挙権年齢が十八歳以上に引き上げられ、生徒にとって政治や社会が一層身近なものとなっており、社会で求められる資質・能力をすべての生徒に育み、生涯にわたって探究を深める未来の創り手として送り出していくことがこれまで以上に求められる。
このため、生徒に自分が社会の一員であり、主権者であるという自覚をもたせるため、地域の実態を踏まえながら、総合的な学習の時間、特別活動などの指導を改善するようお願いする。
重点2は「豊かな心と人間性を育む教育の推進」である。
これからの時代においては、一人ひとりが感性を豊かにして、人生や社会の在り方を創造的に考えることができるよう、豊かな心や人間性を育んでいくことが重要である。
また、よりよい社会の実現に向けて、多様な価値観の存在を確認しつつ、自ら考え、他者と対話し協働するために必要な資質・能力の育成が求められている。
このため、豊かな心と人間性を育む教育の推進に向けて、道徳教育、読書活動などを通じて、基本的な倫理観や規範意識を身に付けさせるとともに、ふるさとへの誇りと愛着、思いやりの心や美しいものに感動する心など、豊かな心の育成や、各種の体験活動を通じて、自然の大切さ、自分の価値を認識しつつ、他者と協働することの重要性などへの理解を深めたり、いじめや不登校などの未然防止と早期発見・早期対応に取り組むことが重要である。
このことから、各学校においては、つぎのことに取り組むようお願いする。
はじめに、道徳教育の充実を図ることについて。
学習指導要領の改訂によって道徳教育については、各学校において、校長のリーダーシップのもと、道徳教育推進教師を中心に、すべての教師が協力して道徳教育を展開することが新たに規定された。
生徒の道徳性を養う体験的な活動などを適切に取り入れるなど、指導方法の工夫改善を図るようお願いする。
また、誰に対しても分け隔てをせず、公正、公平な態度で接し、自他を尊重する態度を育成するため、学校の教育活動全体を通じた人権教育を推進するようお願いする。
つぎに、ふるさと教育の充実を図ることについて。
七月十七日の「北海道みんなの日」を含む七月に、北海道みんなの日条例の趣旨を踏まえ、授業などにおいて北海道にゆかりのある人物と身近な地域とのかかわりを探ったり、その足跡をたどる学習を実施するとともに、アイヌの人たちの歴史・文化などや北方領土について生徒の関心を高め、正しく理解できるよう、各種指導資料や外部講師などを活用した学習の充実を図るようお願いする。
つぎに、読書活動を推進することについて。
保護者や外部機関などと連携した朝読や家読運動を推進するとともに、司書教諭などを中心に学校図書館の読書環境を整備し、利活用の充実を図るようお願いする。
つぎに、体験活動を推進することについて。
地域が有する教育資源を生かした多様な自然体験活動や社会体験活動などの各種体験活動のねらいを明確にして、教育課程に適切に位置付け、学校の教育活動全体を通した取組を一層推進するようお願いする。
つぎに、いじめ・不登校を解消する取組の充実を図ることについて。
ことし二月に改定された道いじめ防止基本方針を踏まえ、いじめ・不登校の早期発見・早期対応に向けた関係機関との連携による支援体制を確立するとともに、生徒が互いの考えや気持ちを認め合い、思いや考えを適切に表現することができるよう、各教科などの指導において生徒のコミュニケーション能力を育成する取組を推進するようお願いする。
また、定期的にアンケート調査や教育相談を実施するとともに、教職員相互が児童生徒理解・教育支援シートなどを活用するなど、積極的に生徒の情報の集約と共有化を図る学校体制を確立するようお願いする。
重点3は、「心身の健やかな成長を促す教育の推進」である。
体力は、あらゆる活動の源として、健康の維持のほか、意欲や気力の充実にも大きくかかわり、心身ともに健やかに生きるためには、子どものころから、体力の向上、健康の確保を図ることが必要である。
このため、心身の健やかな成長を促す教育の推進に向けて、生涯にわたって健康を保持・増進し、豊かなスポーツライフを実現させ、体力・運動能力の向上を図るとともに、健康教育の充実に取り組むことや、食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付ける食育を推進することが重要である。
このことから、各学校においては、新体力テストなどの結果を分析し、体力・運動能力の向上に向け、家庭や地域と連携して生徒の体力・運動能力の向上を図るようお願いする。
重点4は、「学びを支える家庭や地域との連携・協働の推進」である。
子どもが健やかに成長するためには、学校だけではなく、家庭や地域が教育の場として十分な機能を発揮することが必要である。
特に、変化の激しい社会を生き抜く力は、多様な人々とのかかわりや、様々な経験を重ねていく中で育まれるものであり、家庭や地域との連携・協働が不可欠である。
このため、学びを支える家庭や地域との連携・協働の推進に向けて、基本的な生活習慣や豊かな情操など、すべての教育の出発点である家庭と、次代の郷土をつくる人材や地方創生など、社会総がかりで教育の実現の中核となる地域との連携・協働を推進することが大切である。
また、生まれ育った環境などによって左右されることなく、子どもたちを健やかに育てるための教育環境づくりを進めることが重要である。
このことから、各学校においては、家庭との連携を促進することとして、家庭学習や運動の習慣をはじめ、ルールをもとにした電子メディアの適切な利用など、望ましい生活習慣の定着を図るため、PTAなどと連携し、保護者などを対象とした学習機会や情報の提供などの取組を推進するとともに、家庭学習・宿題の内容や分量について、学校全体で共通理解を図るようお願いする。
最後に、重点5は「学びをつなぐ学校づくりの実現」である。
社会・経済の変化に伴い、学校を取り巻く課題が複雑化・多様化し、学校だけでは十分に解決できない課題が増加している。
また、学習指導要領では、社会に開かれた教育課程を目指すべき理念として位置付け、教職員間、校種間、学校と社会との間の相互連携を促すなど、教育の質の向上に向けた連携・協働の重要性が高まっている。
このため、学びをつなぐ学校づくりの実現に向け、変化の激しい社会において、子どもたちを取り巻く状況の変化や、新たな教育課題に対応するため、教員の資質・能力の向上、校種間の連携や学校運営の改善を進めることが大切である。
また、子どもたちの安心・安全を確保するため、学校施設の安全確保はもとより、自らの安全を守るための能力を身に付けさせる安全教育の充実を図ることが重要である。
このことから、各学校においては、学校段階間の連携を推進することとして、必要に応じて学び直しの視点を踏まえた教育課程を編成するなど、生徒の現状や地域の実情に応じて中学校との連携の充実に向けた取組を一層推進するようお願いする。
つぎに、学校力の向上を図ることについて。二十九年度に管内において、学校職員の重大な処分事案が発生したことについては、皆さんも承知のとおりと思う。
こうしたことなども重く受け止め、教職員の服務規律の保持のため、コンプライアンス確立月間など、教職員の不祥事防止に向けた集中的な取組や年間を通じた反復継続的な取組を一層推進するとともに、道アクション・プランを踏まえ、業務改善の推進、部活動休養日の完全実施や、学校運営体制の整備を進めるようお願いする。
以上、三十年度のオホーツク管内の教育の推進に当たり、重点的に取り組んでいただきたい内容を申し上げた。
校長の皆さんには、本年度は、“オホーツク教育が北海道教育を牽引する”という気概をもち、学校組織のトップとして、経営手腕を大いに発揮していただくことを期待している。
教育局としても、管内高校長会、管内特別支援学校長会、さらには、皆さん一人ひとりと、これまで以上に連携を密にしながら、オホーツク教育の質の向上に努めていくので、一層の協力をお願いする。
(道・道教委 2018-04-26付)
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