道小・道中 教育条件整備に関する提言(関係団体 2018-05-10付)
道小学校長会と道中学校長会による「本道教育の一層の充実に向けた教育条件の整備についての提言~チーム北海道として」の概要はつぎのとおり。
【新学習指導要領の趣旨を生かした授業構築に向けた教育条件整備への提言】
社会構造が大きく変化する中、子どもたちの知識の理解の質を高めることを目指す今回の学習指導要領改訂の趣旨を踏まえ、「何を学ぶか」という観点だけでなく、「何のために学ぶのか」を押さえ、子どもたちの資質・能力をより自覚的に育成していく観点を取り入れた授業づくりが求められている。
この授業づくりを学校だけでなく地域、家庭と共有することが、新学習指導要領が掲げる「社会に開かれた教育課程」の理念の実現にとって重要な役割を担っている。
こうした時代の要請に応えていくためには、授業改善を進めていくとともに、それを支える授業構築に向けた教育条件整備が不可欠である。そこで、以下の三点について検討が必要と考える。
一点目は、「すべての教科等や諸課題に関する資質・能力に共通する三つの要素の再整理」についてである。
これまでも各学校において、自立的に生きるために必要な「生きる力」を確実に身に付けていく教育実践を行ってきた。今後は、育成すべき資質・能力として、生きて働く「知識および技能」の習得、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力等」の育成、学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」の涵養が求められている。
二点目は、「主体的・対話的で深い学びの授業づくり」についてである。
これまで各学校において、生きる力を支える確かな学力、豊かな心、健やかな体の調和のとれた育成を指標としながら、様々な教育実践を行ってきた。今後は、教育実践の蓄積を踏まえて、教科等における固有の「見方・考え方」を重視するなどして授業を見直し、工夫改善することが求められている。
三点目は、「教科等を超えたすべての学習の基盤となる言語能力や情報活用能力等の育成」についてである。
これまでも各学校において、生活科や総合的な学習の時間を中心として教科等で身に付けた知識や技能などを相互に関連付け、学習や生活において生かすことができる教育実践を行ってきた。
今後は、子どもの発達段階を考慮し、学習の基盤となる資質・能力として、国語科を要としつつ各教科等の特質に応じて言語活動を充実したり、各種の情報活用手段を活用するために必要な環境を整えたりすることなどが求められている。
こうした状況に鑑み、道教委においては、これまで以上に広域人事促進による中堅教員の地方への配置、若手教員の都市部への配置、地方の教員の研修参加への環境づくり、情報機器などの整備などの方策を検討していただきたいと考えている。
以上のことから、道小学校長会、道中学校長会は、新学習指導要領の趣旨を生かした授業構築に向けた教育条件整備について、つぎのように提言する。
▼「すべての教科等や諸課題に関する資質・能力に共通する三つの要素の再整理」について
▽バランスのとれた年齢構成の教員集団となる人事異動
▽多様な学習活動に対応できる教員等の確保
▽地域による専科教員やミドルリーダーとなる人材不足の解消
▼「主体的・対話的で深い学びの授業づくり」について
▽先進地域や外部講師などによって学ぶ機会を充実させるための予算確保
▽教材研究や校内研修の時間の確保と教員の研修参加への環境づくりの促進
▽教員の定数確保に向けた体制整備(定数の確保、代替教員欠員の解消)
▼「教科等を超えたすべての学習の基盤となる言語能力や情報活用能力等の育成」について
▽プログラミング教育・外国語教育にかかわる教材教具などの整備
▽公費負担によるALTの配置の充実や小学校における英語を指導できる教員の確保
▽情報機器などの整備と教育環境格差の解消
【「チームとしての学校」の実現に向けた教育条件整備への提言】
今日、学校が抱える課題は複雑化・多様化しており、いじめ・不登校などの生徒指導上の課題への対応、貧困・児童虐待などの課題を抱えた家庭への対応、特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応、多様な要望をする保護者への対応など、様々な課題への対応が山積している現状にある。
この状況の中で、教員は子どもと向き合う時間や授業準備などの十分な時間を確保することができず、特に、中学校においては、部活動の指導や引率等の業務によって、教材研究・学級経営・生徒指導などの本来的な業務に専念する時間を割かれているという実態にある。
学校がこれらの諸課題に対応し、子どもたちに必要な資質・能力を育成していくためには、学校の組織としての在り方や業務の在り方などを見直し、「チームとしての学校」をつくり上げていくことが求められる。
「チームとしての学校」の構築のためには、現在、配置されている教員数の拡充に加えて、多様な専門性をもつ人材を学校に配置したり関係機関などとの連携を強化したりすることによって、それぞれの専門性を発揮しながら様々な業務を分担・協力して、学校組織全体が一つのチームとなって職務を行う体制を整備することが必要である。それによって、学校の教育力・組織力をより一層向上させるとともに、「教員の働き方改革」を推進し長時間勤務の改善を図ることができると考える。
また、「チームとしての学校」を実現することは、学校と地域との連携・協働体制の強化が重要となることから、地域全体で未来を担う子どもたちの成長を支えていく取組は、地域の活力を高め、地方創生へつながるとともに、新学習指導要領が掲げる「社会に開かれた教育課程」の理念の実現に結び付くものと考える。
「チームとしての学校」を構築し、チームとしての力を最大限に発揮しながら、学校の教育力・組織力を向上させていくことは、私たち校長に求められる大きな責務であると考えている。
そこで、「チームとしての学校」の実現に向けた教育条件の整備に向けて、道教委が策定した学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」において示されている取組も含めて、以下のことについて提言する。
▼チーム体制構築のための人的配置および専門職員の導入
▽教員の人的配置
・管理職の補佐体制充実のための加配措置拡充による主幹教諭の配置の促進
・小学校における専科教員の増員および中学校における免許外担当の解消
・教員定数の見直し(三十五人以下学級実現)
▽多様な専門スタッフの配置と専門職員の導入
・スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーおよび特別支援教育支援員の配置拡充
・学校図書館司書の配置の推進
・部活動の指導や顧問、単独で部員の引率などを行う「部活動指導員」配置のより一層の拡充
▼チーム力向上のための家庭、地域、関係機関などとの連携・協働体制の整備
▽学校と地域との連携を推進する「地域連携担当職員」の導入
▽コミュニティ・スクールの促進およびその仕組みを活用した学校・家庭・地域の連携・協働体制の強化
▽学校と児童相談所などの関係機関および警察との連携・協働体制の充実
▽いじめ問題、保護者対応、学校事故などでの問題解決において、学識経験者や弁護士などから支援を受ける「道いじめ問題等解決支援外部専門チーム」の充実
▽子どもの生活習慣確立・健全育成のための道PTA連合会などとの連携の強化
(関係団体 2018-05-10付)
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