道小・道中・道公教 文教施策要望への道教委回答
(道・道教委 2018-09-14付)

道小道中文教施策要望回答土井
土井総務政策局長は、主幹教諭配置などを要望していくことを表明

 道小学校長会(本間達志会長)、道中学校長会(橋本直樹会長)、道公立学校教頭会(稲上敏男会長)と道教委による三十年度文教施策懇談会(八月九日、道庁別館)では、北海道における教育の課題に関して意見を交換した。「学力・体力向上と教育環境の条件整備」「生徒指導上の問題と解決の方策」「教頭を取り巻く現状と課題解決のための方策」について三団体の代表が実情を説明し、道教委の見解を求めた。対して、道教委の土井寿彦総務政策局長、岸小夜子学校教育局長、赤間幸人学校教育局指導担当局長が所管事項について回答。道教委としての取組状況や課題認識、今後の方向性を示した。

◆土井寿彦総務政策局長

▼学力・体力向上と教育環境の条件整備

 中学校免許外教科担任の解消に向けては、教科のバランスに配慮した人事配置や免許法認定講習の実施による複数免許所有者の拡大に努めているとともに、二十六年度からは、六学級以下の学校の一部に加配教員などの配置を行っている。

 また、道教委では、基礎学力の向上やきめ細かな教育の実践を目指し、習熟度別少人数指導に積極的に取り組む学校に対し加配措置しているほか、小学校第一学年に加え、小学校第二学年および中学校第一学年において少人数学級編制を実施している。

 小学校の専科指導にかかる加配については、二十四年度から措置されており、道では、算数、理科、体育および外国語活動において専科指導を行う学校に配置している。

 特別支援学級の教員配置については、標準法に準拠し、学級数に応じた配置となっているが、肢体不自由、自閉症・情緒障害、知的障害学級で児童生徒数が七人以上の場合などに道独自の措置として一人加算するほか、通級指導を行う学校への加配措置を行うなど、教職員配置の充実に努めている。

 今後、一層の免許外教科担任の解消や、少人数学級の他の学年への拡大および、小学校専科指導にかかる加配のさらなる拡充、また、障がいのある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導、支援の充実を図るためには、国の新たな教職員定数の改善が必要であると考えており、定数措置の一層の拡充について、引き続き国に要望していきたいと考えている。

▼教頭を取り巻く現状と課題解決のための方策

 道教委が二十八年度に実施した調査では、教頭の一週間当たりの勤務時間が六十時間を超過している割合が小・中学校とも七割を超えており、業務内容では、勤務日において学校経営や学校運営にかかわる業務時間よりも、調査を含む事務処理にかかわる時間が長くなっていることなどの課題が明らかになっている。

 こうした状況を踏まえ、道教委では、昨年度、調査業務の削減に向け、その見直しを行ったところであり、三月に策定したアクション・プランにおいても、学校からの各種届出や報告事項の見直しに取り組むとともに、市町村教委が実施する調査等の見直しの検討や、事業、事務の精選について要請している。

 さらに、保護者の対応や地域と連携した活動を担う教頭の業務の効率化や、学校における働き方改革の取組を進めるに当たっては、保護者や地域の人々に、理解を深めてもらうことが重要であることから、アクション・プランの内容などを記載したリーフレットを作成し配布したところであり、今後ともPTAと連携するなど、様々な機会を活用し理解の促進を図っていく。

 各学校においては、アクション・プランに示された取組や市町村独自の取組を進めるほか、これまでの固定観念にとらわれず、学校として何を目指すべきか、重点課題は何か、課題の解決に結び付きにくい業務はないかなど、教職員がアイデアを出し合い、必要性の薄い仕事をやめる、減らす、統合するといった抜本的な改革にも取り組んでいただくようお願いする。

 また、教頭の職責の重さや広範多岐にわたる業務対応、ライフスタイルにおける価値観の変化や多様化などを要因として、管内によっては教頭昇任を目指す教員が不足している状況にある。

 こうした中、道教委では、学校における様々な課題に対し、迅速かつ的確に対応できる組織運営体制の充実を図るため、主幹教諭の配置や事務職員の加配などに取り組んでいるところであり、こうした取組の一層の充実を図るためには、国の定数改善が必要であると考えており、今後とも国に対して改善が行われるよう要望していく考えである。

 また、ライフスタイルの変化などに応じ、子育てや介護などの事情に対応するため、各管内や地域の実情を考慮した人事上の配慮をさらに推進するとともに、女性登用の拡大など管内ごとの取組や課題を全道的に共有しながら、今後の方策を検討し、教頭候補者の人材確保に向けた条件整備について積極的に取り組んでいく。

◆岸小夜子学校教育局長

▼学力・体力向上と教育環境の条件整備

 全国学力・学習状況調査における中学校英語の調査について。次年度から三年に一度程度、実施することになった。本年度は、全国百三十六校で英語予備調査を行い、現在、国では、その実施状況をもとに、次年度の実施方法などを検討している。

 このたびの予備調査の「話すこと」領域においては、学校がつぎのような環境を整備した上で実施された。

▽一学級の生徒数分のパソコン(またはタブレット)を用意するとともに、国から学校に対して貸与されたヘッドフォンとマイクが一体となったヘッドセットと、調査プログラムが格納されているUSBメモリを使用して、マニュアルで指定する事前環境確認を行う

▽調査時間は、一学級当たり十五分程度であり、一単位時間(五十分)、三学級まで順に実施できるので、実施する学級の順番を決める

▽その際、三学級以上の場合は、例えば始めに一~三組を実施し、つぎの時間に四組以降を実施する

 などの対応を行った。

 予備調査を実施した学校からは、

▽パソコンのセキュリティ設定などによって、調査問題のコピーが容易にできない場合があったこと

▽一斉に生徒が発話するため、近くの生徒に影響を受けて解答する可能性があること

▽他の生徒の解答の影響を受けて、教室の雰囲気が緩んでしまう可能性があること

▽音声データをUSBに回収することに時間がかかったこと

 などが報告された。

 また、国からは、情報セキュリティの観点から、メーカーサポートが保障されていないOSによるパソコンを使用しないよう要望があった。

 今後、国から、次年度の具体的な実施方法や必要な環境整備などについて情報提供がある。道教委としては、国からの情報を適宜、市町村教委や校長会に提供していくので、それを踏まえて対応していただくようお願いする。

 教育環境の条件整備にかかわって、ICT機器について。

 文部科学省では、新学習指導要領の実施を見据え、昨年十二月に「三十年度以降の学校におけるICT環境の整備方針」を取りまとめるとともに、新たに「教育のICT化に向けた環境整備五ヵ年計画」を策定し、本年度から三十四年度までの毎年度、これまでよりも百三十億円程度増額された単年度一千八百五億円の地方交付税措置を講じることとしている。

 三十年六月に策定された第三期教育振興基本計画では、「各地方公共団体による計画的な学校のICT環境整備の加速化を図る」ことが明記されている。

 こうしたことを受け、道教委では、市町村において整備状況に差があることを踏まえ、市町村教委に対して、国の地方交付税措置の趣旨等について通知することはもとより、教育長会議など様々な機会を活用して説明・周知してきているが、今後においては、あらためて、管内ごと、市町村ごとに学校のICT環境整備状況を把握・整理し、各教育局から整備の進んでいない市町村に対して、重点的な指導を行うことなどによって、学校のICT環境の計画的な整備が図られるよう、市町村教委に働きかけていく。

 なお、道教委では、本年度も国に対し、必要な機器や支援体制の整備のための補助制度の創設など財源措置の拡充について要望してきたが、各学校からも引き続き市町村教委に対し、学校の実情を伝え願う。

◆赤間幸人学校教育局指導担当局長

▼生徒指導上の問題と解決のための方策

 いじめ、不登校など児童生徒の生徒指導上の諸問題への対応のため、国の児童生徒支援加配を活用し、特にきめ細かな指導が必要とされる学校などに対し教員を加配しているが、多様化、複雑化する児童生徒の生徒指導上の問題により適切に対応できるよう、定数措置の拡充について、引き続き国に要望していきたいと考えている。

 スクールカウンセラー(SC)・スクールソーシャルワーカー(SSW)などの配置については、SCやSSWの活用がいじめや不登校等への対応として効果を上げており、学校の相談体制の充実を図る上で重要であると考えている。

 SCについては、七年度からスクールカウンセラー活用事業を実施しており、定期的にSCが勤務する通年配置校については、昨年度は小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校合わせて四百七十九校だったが、本年度は五百八十五校に拡大している。

 また、未配置校に対しても、緊急に児童生徒の心のケアを必要とする案件が発生した場合などに、SCの緊急派遣も行ってきており、本年度も継続していく。

 さらに、昨年度からは、これまで配置率の低かった小学校への配置を充実させるため、新たな工夫として、拠点となる中学校から校区内の小学校への派遣を可能とするほか、市町村巡回型として特定の地域内の小・中学校にSCを巡回させるなどし、任用形態や運用についての工夫改善を進め、配置の拡充を図っている。

 つぎに、SSWについては、二十年度から道スクールソーシャルワーカー活用事業を開始しているが、昨年度は、希望する市町村との委託契約によって三十市町村に配置したほか、道教委で六人のSSWを任用し、未配置の市町村などに派遣できる体制を整備してきた。

 本年度からは、委託市町村を三市町拡大するとともに、道教委で任用する者も五人増員するなど、配置の拡充を図っている。現在、国においては、三十一年度までに、SCをすべての公立小・中学校に、また、SSWについては、すべての中学校区に配置するという目標を掲げているところであり、道内においては、人材の確保などの課題はあるが、国の目標を踏まえ、必要な予算の確保に努めるなどして、SCおよびSSWの配置の一層の拡充に取り組むとともに、引き続き、国に対して、事業の補助率の引き上げなどによる支援体制の充実を働きかけていきたいと考えている。

 情報化社会の急速な進展の中で、児童生徒がネットを介したいじめの加害者や犯罪被害者とならないためには、問題行動等の未然防止、早期発見・早期対応が重要であることを認識しており、二十一年度から専門業者に委託してネットパトロールを実施している。

 二十九年度に不適切な書き込み等で検出された件数は五千三百件程度あり、不適切な書き込みの内容は、個人や他者の名前などを特定できる個人情報の公開が大部分を占め、そのほかに、件数は多くはないものの、ネット上でのいじめや不良行為などの書き込みもみられる。

 道教委では、引き続き、委託業者によるネットパトロールを行うとともに、学校におけるネットパトロールをより充実したものにするため、ネットパトロール講習会による指導者養成を行っている。

 二十九年度において、計画的にネットパトロールを実施した学校数は、一千六百二十九校であり、全道のすべての学校に占める割合は九九%を超えているが、実施回数については、少ない学校も一部あることから、校長会においても、すべての学校において積極的に実施するよう働きかけをお願いする。

 道教委では、道および道警と連携し、電気通信事業者へのフィルタリング普及促進についての要請訪問を行うとともに、従来の方法では監視できないSNSなどにおけるネットトラブルの防止対策についても、国に要望を行ってきているほか、教職員向け指導資料や保護者向けリーフレット、児童生徒向け資料を定期的に発行し、道教委のホームページに掲載しているので活用をお願いする。

 また、道教委が各管内において開催する保護者向けの学習会を、PTAなどが行う研修会に位置付けて実施することも可能なことから、日程や講師の派遣などについて要望があれば各教育局に相談いただくとともに、総務省が実施するe―ネットキャラバンの講師を派遣することも可能なので、こうした外部講師を活用した学習会の開催についても検討いただくようお願いする。

 なお、ことしの四月に道教委が作成した『ネットトラブル対応マニュアル』には、インターネットの利用におけるトラブルについての事例とその対応例を示したマニュアルを掲載するとともに、児童生徒を対象にした情報モラル教育に活用できる資料を掲載しており、データは、道教委の生徒指導・学校安全のホームページからダウンロードできるので積極的な活用をお願いする。

 SCやSSWの人材不足の町村への派遣については、SCの緊急派遣や道教委でSSWを任用し、未配置の市町村などに派遣できる体制を整備している。

 SCについては、三十年二月に、配置校以外でも対応できるカウンセラーのリストの作成などを行い、SCの未配置校への派遣が迅速かつ効果的に行われるよう取り組んでいるところであり、関係機関や専門家との連携が必要な場合などについては、関係教育局に相談いただくようお願いする。

 また、SSWについては、SSW活用事業委託要項において、近隣の未実施市町村から、本委託業務を実施している市町村への依頼があった場合は、可能な範囲で協力することを定めていることから、支援が必要な場合は、実施市町村に相談いただくようお願いする。

 学校と関係機関や専門家との連携について。道教委としては、学校、家庭、関係機関と連携して生徒指導・教育相談に取り組むことが重要と考えており、道いじめ問題対策連絡協議会や各管内で行っている地域いじめ問題等対策連絡協議会の開催による関係機関・団体との連携強化のほか、SCおよびSSWの配置拡充、有識者や弁護士などで構成する支援チームの学校への派遣などを行ってきており、今後も、引き続き、こうした取組を通して、すべての市町村の学校への支援に努める。

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道小道中文教施策要望回答岸
岸学校教育局長ICT環境の計画的整備に言及
道小道中文教施策要望回答赤間
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