【リポート】足寄高校の学校魅力化 多様な支援で入学者増加 公設民営学習塾、町有施設の下宿など
(学校 2018-09-25付)

 【帯広発】足寄高校(笈川巧校長)は、町からの支援を受けて高校の魅力化に取り組み、入学生確保につなげている。公設民営学習塾を開設して生徒の学力向上を図っているほか、公設民営の多目的交流施設を二棟増築し町外の生徒も塾や部活動に参加できるようにした。元プロ野球選手を町教委職員として採用し、野球部の指導に当たっている。生徒が誇りに思えるよう、魅力化に向けて奮闘中だ。

 道立の足寄高は、昭和五十二年から平成二年まで五間口だったが、少子化、過疎化によって定員割れを起こし間口の減少が進行。十三年以降は二間口となった。

 地域に高校がなくなるという危機感から、十九年二月に町教委が中心となって足寄高校を存続させる会を設立。当時をよく知る斉藤健司足寄高校振興会長は「郷土愛をもつ若者がいなくなる危機的状況だった」と話す。

 町は高校の再編によって、中学卒業生の進路範囲の限定化、他地域への進学による保護者の負担増と人口流出、地域活力の衰退などの問題を認識。より良い通学条件整備や魅力ある学校づくりで多くの進学者を確保するという支援策を打ち出した。

 町は二十七年度、高校生が通う公設民営塾「足寄町学習塾」を開設した。保護者や生徒を対象に調査した結果、学校に「学力」を求める声が最も多かったためだ。

 塾の運営は民間個別指導学習塾を経営する企業に委託。国語、数学、英語の個別指導と、タブレットを使った五科目の映像による指導を行い、少人数の講師で質の高い指導を実現している。

 学校と学習塾は、月に一度、実務者会議を行い、模擬試験の結果などを共有。両者は、幅広い学力の向上を目指しており、学校と塾における指導が相乗効果を上げるよう協調している。

 塾の担当者は「成績中間層への支援を強く意識している。塾が学校の学力の底上げにつながっていると感じる」と話す。

 通学に関する支援として、町は公共交通機関利用者への定期代全額支援や自家用車で通学する生徒への補助を実施。また、町外の生徒が塾と部活動に参加するとともに、町外から生徒を呼び込むねらいで町有施設を下宿として活用している。

 二十九年度には二棟の増築を図り、十六室を増設。施設を利用する生徒の中には、広尾町や富良野市のほか、神奈川県や山口県からの進学者がいる。

 他県から進学した生徒は「下宿から通学ができることが、進学の決め手となった」と話していた。

 体力向上に関する取組も進めている。ことし四月、北海道日本ハムファイターズとのパートナー協定に基づき、元選手の池田剛基氏を町教委生涯学習室の任期付職員として採用した。同球団の人材派遣を受けるのは管内初。

 池田氏は、足寄高野球部の外部コーチとして指導に当たるほか、町立小・中学校の体力向上への取組を支援。「小・中学校の少年団・野球部を指導している。高校に進学する野球部の児童生徒が、高校を盛り上げ、まちおこしの起爆剤となってくれれば」と期待を込める。

 このほか、町と高校振興会による入学一時金の支給や模擬試験・検定費用補助、一年生全員のカナダ海外研修派遣などで学校づくりを支援し、入学者の確保を図っている。

 こうした様々な取組が実を結び、入学者数が伸びてきている。二十六年度は過去十ヵ年で二番目に少ない三十一人だったが、二十七年度四十五人、二十八年度五十一人と右肩上がりに上昇した。二十九年度は六十人が入学し、七年ぶりに完全二間口に回復。本年度も六十六人を確保している。

(学校 2018-09-25付)

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