【PICK UP2018】札幌市内 活用に向け連携と周知を 保育所等訪問支援の取組 
(市町村 2018-12-17付)

 わが国では、その子に合った適切な指導および支援を必要とする子どもへの対応が年々求められてきている。札幌市内の小学校においては、本年度の特別支援学級在籍者数は前年度比百二十八人増の一千九百四十六人となり、全国と同様、増加傾向にある。

 そうした中、学校教育現場でさらなる活用が期待されているのが“保育所等訪問支援”。国が二十四年に児童福祉法を改正し、創設された新たな児童福祉サービスの一つ。“保育所等”という名称には、保育所だけでなく小学校や中学校なども訪問先として含まれている。

 支援内容は、訪問支援員が保護者の依頼に基づき、保育所や小学校などに出向いて教員などに子どもが集団生活に適応するための専門的な助言を行うほか、必要であれば直接的な支援を行うもの。

 札幌市内にある保育所等訪問支援を行う事業所は、十二月一日時点で二十八ヵ所。訪問支援員は、児童指導員や心理士など、集団生活への適応のための専門的な支援の技術を有する職員が務める。

 市内のある事業所では、保護者から利用申請があれば、まず、家族と支援方法などの方向性や対象となる子どもの困り感などを把握している。

 小学校の通常学級に通う子どもを支援した際、保護者との面談後、学級の状態や教員の希望、子どもの特性を考慮して、授業中の子どもを観察する方法を決定。授業などで行動観察を行ったあとは、支援が必要な場面で子どもの心の動きなどを担任に伝えている。子どもによっては、集団適応に必要と判断すれば、声かけなど直接的な支援も行うという。

 実際に訪問支援員とかかわっている教諭に話を聞いた。

 訪問支援員が訪れるのは一学期に一~二回程度で、授業を一~二時間見学するという。放課後に五十分ほど訪問支援員と情報を交流している。

 情報交流では、訪問支援員から学校外の子どもの活動の様子を知らせてもらうほか、子どもへの接し方について助言を受けている。教諭からは、支援員の助言どおり指導したあと、子どもがどのように変化したか伝えている。

 教諭は、訪問支援員とかかわるのは初めてだが、「指導の工夫や、自分の接し方について助言がもらえるので参考になる」と話す。学校の業務に加えて、訪問支援員とのかかわりが増えることについては「業務の負担感はない」という。

 保育所等訪問支援を含む障害児通所支援の周知に向けて、事業を管轄する市保健福祉局では、サービスが始まった二十四年度に、各園・学校など関連施設へ通知を発出した。

 しかし「学校には毎日、山のような通知や文書が送られてくる」(元小学校長)状況の中、「保育所と最初に書いてあれば、目を通していても、学校にかかわりがあるものとは判断しづらい」(同)との声が上がるなど、十分な周知が行われているとは言い難い。

 また、サービスの特性上、「特定の子どもの個人情報にかかわってくる。実施状況など、(学校外で)話題にしづらい」(市内小学校管理職)などの意見もあり、学校での実践事例が広がっていかない傾向にある。

 札幌市教委の特別支援教育に携わる担当者は、保育所等訪問支援について「子どもの課題の共有や必要な支援の検討などを十分に行った上で進めていくことが必要」と述べつつ、「専門的な助言をもらえる点や、集団生活適応に向けての支援をうまく活用することで校内での子どもへの支援がより充実してくる」と、事業を活用するメリットを強調。学校が事業を活用できるよう、さらなる周知などを行う考えを示した。

 事業の周知方法について、厚生労働省が二十九年三月に発行した『保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書』によると、事業者などが園長会や小・中学校の校長会に出向き、事業内容・実践事例を説明できるよう、行政が調整を図ることなどを例として挙げている。

 今後、地域における切れ目ない子どもへの支援の実現のためには、こういった事業の活用に向けて、さらなる周知を図ることや様々な機関で連携を推進することが求められそうだ。

(市町村 2018-12-17付)

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