【PICK UP2018】札幌市内 多様性受け入れ人材育成を 外国人児童生徒に対する支援(市町村 2018-12-14付)
給食を食べる子どもの隣で、宗教上の理由から給食が食べられず弁当を広げる子ども、断食のため別室に移動する子ども、また、学校が用意した部屋でお祈りをする子ども…。ごく一部の小・中学校でみられる日常の風景。これが近い将来すべての学校の“日常”になるかもしれない。
「議論が生煮えではないか」「移民政策だ」。参議院法務委員会で採決された際の一幕。今月八日に外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理および難民認定法および法務省設置法の一部を改正する法律案が可決された。
外国人労働者を五年間で最大三十四万五千百五十人受け入れるほか、新たな在留資格として「特定技能一号」「特定技能二号」を新設。「特定技能二号」は家族の帯同が認められることから、来年四月一日の導入以降、「これまで以上に外国人児童生徒数が増加するのでは」(札幌市立小学校管理職)と予想する声がある。
札幌市ではことし五月一日現在、市立小学校に外国人児童が二百二十八人、市立中学校に外国人生徒が五十五人在籍。全児童数八万九千九百八十一人に対する割合は〇・二五%、全中学校生徒数四万二千九百五十九人に対する割合は〇・一二%となっている。
各校では、外国人児童生徒に円滑な学校生活を送ってもらうため、ボランティアの指導協力者が別室で一回につき二時間、週二回を上限に日本語を指導する札幌市教委の「札幌市帰国・外国人児童生徒教育支援事業」を活用している。
また、入学受付や家庭訪問など、通訳を必要とする際に札幌国際プラザにボランティア通訳の派遣を依頼するなど、手厚い支援を行っている。
しかし、日常の学校生活への対応は教職員だけで取り組んでいるのが現状だ。保護者が学校だよりを読めないため、身振り手振りで説明したり、翻訳したりするなど、対応に苦慮することもあるという。
今後、外国人児童生徒の人数および対応する言語が増えると予想されることについて、ある中学校の教頭は「現場の人間だけでは限界がある。常駐して対応する人材がほしい」と切実だ。
外国人児童生徒に対する支援について他都市の状況をみると、政令市で外国人児童生徒数が一番多い名古屋市では、週五日、一日六時間で、一斉指導の際に母語による学習支援のほか、別室で日本語の個別指導を行う母語学習協力員を小・中学校合わせて三十校に配置。日本語が分からない保護者のための通訳や翻訳などにも取り組むほか、近隣の学校で巡回指導を行うなど、常駐に近い形で外国人児童生徒の生活・学習面をサポートしている。
名古屋市では、小学校の外国人児童が二千百十七人、中学校の外国人生徒八百九人が在籍。全体に占める割合はそれぞれ児童十一万二千百七十六人に対して一・八%、中学校生徒四万九千三百六十七人に対して一・六%と、札幌市とは規模が異なるものの、今後、外国人児童生徒が増えると予想される中で、教職員の負担を軽減するためにこうした支援が必要となり得る。
外国人児童生徒が増えることの教育的メリットを指摘する声も上がる。「子どもたちは小さいころから知らず知らずのうちに他国の文化にふれることができる」「外国人児童がうまく日本語を話せないからこそ、身振り手振りを交えて子どもたちが思いやりをもって接する」。
グローバル化が進展する中、多様性を受け入れ、自ら情報を発信するなど、世界で活躍する人材の育成が進んでいくのではないか。
(市町村 2018-12-14付)
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