【PICK UP2018】石狩管内 地域ぐるみで高い意識 学校司書を取り巻く現状
(市町村 2018-12-19付)

 ある進学校の学校図書館。室内には、ぎっしりと机が並び、受験勉強にいそしむ生徒のペンの音だけが響く。机はほぼ埋まっているが、本を探す生徒の姿はあまりみられない。だが、これは少し前のこと。今は、新しく入った本について話し合う生徒、辞典を開いてクイズを出し合う生徒の姿がみられるようになった。雰囲気をガラリと変えたのは、一人の担当職員。赴任した当初を振り返り「状況を変えないといけないと思った。室内のレイアウトを変えるなど、生徒が自然体でいられる環境を整えた」。

 学校図書館の担当職員によって、その充実が図られた一つの例だが、この職員は学校図書館の運営を専門的に行う「学校司書」ではない。意識の高い職員の手による幸運な事例だ。

 文部科学省が二十八年度に公表した学校図書館に関する調査によると、道内の市町村立小学校で学校司書を配置しているのは全体の一四・二%、中学校では一四・九%、高校では五・六%となっており、全国と比べて低い状況にある。

 こうした現状を打破すべく、道教委はことし四月に策定した読書活動推進計画(第四次計画)に学校司書の配置率に関する数値目標を示した。三十四年度までに小・中学校で六〇%、高校で七〇%。全国平均に肩を並べる数値だ。

 この実現に向けて越えなければならない最も高い壁は、配置にかかる費用だ。厳しい財政運営を強いられる市町村が多い中で、学校司書配置にかける予算には限りがある。そのため、図書館関係者は一様に「雇用条件に課題がある」と口をそろえる。

 札幌市では、学校司書を時給九百円の有償ボランティアとして配置。石狩管内の市町村でも、多くは時給一千円程度の非正規職員としての採用にとどまっている。大学の司書養成課程関係者は、同課程を卒業した学生が司書資格を有していながら仕事として司書を選ばない理由を「正規雇用の求人が少ないこと」と推測。「独立して生活する水準を満たさない給与では、家族のサポートがない人は働くことができない」。

 国はこうした状況の改善に向けて施策を打ち出している。文科省は、学校司書の配置拡充を含めた「学校図書館図書整備等五か年計画」を二十九年度に策定。五年総額で一千百億円の地方財政措置を講じることとした。しかし、この措置は、自治体が自由に使い道を決められる地方交付税の中に含まれているため、「除雪などに回ってしまう」と話す自治体も。学校司書配置の予算化は、簡単ではないのが現状だ。

 予算の面で厳しい雇用条件を余儀なくされている学校司書だが、似たような財政状況の中でも配置率を一〇〇%にした自治体がある。道内で初めて「読書条例」を制定した恵庭市だ。

 きっかけは恵庭市立若草小学校の保護者有志が平成九年に始めた読み聞かせのボランティア団体だった。「子どもたちの喜ぶ顔が見たい」という気持ちからスタートした取組は、読み聞かせにとどまらず、学校、PTAを巻き込んだ動きに。この団体と学校、PTAが十三年に開いた講演会のテーマは、学校図書館と学校司書の在り方で、参加者の多くに感銘を与えた。講演を契機に学校図書館を真剣に考える機運が高まり、学校、保護者による「学校図書館を考える会・恵庭」が立ち上がった。

 同会は、恵庭市が開いた「市長トーク」への参加や教育長・市教委との話し合い、「まちづくり市民会議」への提言などの活動を推進。継続した訴えが市政を動かし、学校司書配置予算が計上される結果となった。雇用条件は、時給制の非正規職員で、ほかの市町村と大きな差はなかったが、十六年に市内全小学校、十八年に全中学校への配置を達成した。

 その後も、一〇〇%の配置率を維持していることについて、市教委の担当者は「多くのボランティアを含め、地域ぐるみで読書のまちづくりを行ってきた経緯がある。雇用条件が良いというよりも、市民の学校図書館に対する高い意識に支えられている側面があるのでは」と感じている。

 学校司書を配置するためには、雇用条件の改善を図る努力も必要だが、地域ぐるみで学校図書館を良くしようとする機運の向上も重要だ。多くの人に読書の重要性や学校司書の大切さを理解してもらうため、一層の周知が大切になるのではないだろうか。

(市町村 2018-12-19付)

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