札幌市の教育は危機的状況 市教委緊急集会 山根教育次長訓示
(市町村 2019-01-25付)

札幌市教委緊急集会・山根次長訓示
不祥事根絶に向けて訓示する山根教育次長

 札幌市教委が二十三日に開いた全市立幼稚園長・市立学校長緊急集会で、山根直樹教育次長が訓示した。山根教育次長は、公私を問わず責任と自覚をもった行動や管理監督者の役割と責任の大きさなどにふれ、理解と協力を求めた。

 訓示の概要はつぎのとおり。

          ◇          ◇          ◇

 皆さんに本日急きょ集まっていただいたのは、教職員の不祥事の根絶に向けて、急ぎ直接お伝えさせていただきたいことがあるためである。

 公務員倫理の確立および服務規律の確保については、これまでも継続的に様々な機会を通じて徹底を図ってきており、学校と教育委員会が一丸となって不祥事根絶に向けて取組を進めてきた。

 しかし、本年度に入り、わいせつ行為および盗撮行為による二件の懲戒免職処分事案が発生し、さらには先日の報道のとおり、小学校教諭が児童ポルノ法違反で懲戒免職処分となる事案が発生した。

 加えて昨年十二月、中学校の教頭という学校職員の模範となるべき管理職が、酒気帯び運転の疑いによって逮捕されるという事件が発生した。

 このような度重なる不祥事の発生は極めて遺憾であるとともに、学校職員としてあってはならないことであり、これによって子どもたちや保護者、市民の信頼が著しく損なわれることとなった。

 札幌市の教育は、今、極めて危機的な状況にあると言わざるを得ない。

 学校で働く職員は、市民から、教育者にふさわしい高い倫理観が求められていることは言うまでもなく、わいせつ行為や飲酒運転など学校職員の信頼を著しく損なうような重大な違法行為は言語道断である。

 そして、何よりこうした不祥事によって、子どもたちや保護者の皆さんにどれほど大きな影響を与えてしまうことになるかということをあらためてしっかりと考えなければならない。

 不祥事が起こることによって、先生に信頼を寄せて日々の学校生活を送っていた子どもたちの心に深い傷を負わせてしまうことはもちろんだが、子どもたちの不安感や不信感は、当事者である学校職員個人にとどまらず、周囲の教員や学校全体に対して向けられることになる。

 これは保護者も同様。これまで先生と子どもたちの関係を温かくしっかりと見守り、先生を支えてくれていた保護者の方々も、こうした不祥事によって不安を抱くばかりでなく、学校全体、札幌市の教育全体への不信感、失望感を抱くこととなり、学校にとってかけがえのない一番の応援団を失うことになりかねない。

 あらためて申し上げるが、こうした不祥事によって、子どもたちや保護者、市民の皆さん、学校関係者、そして学校運営そのものに取り返しのつかない甚大な影響を与えることになること、そして、子どもたちや保護者が再び平穏で静ひつな学校生活を取り戻すためには、多くの時間と労力が必要となるということを、今一度、個々の学校職員がしっかりと自覚しなければならない。

 学校職員の皆さんには、公私を問わず、日々の生活の中で責任と自覚をもった行動に努めていただくことを、強く強く求めたいと思う。

 併せて、この機会にもう一つお話をさせていただきたいことがある。

 先日、体罰事案についても懲戒処分を行ったところであるが、本年度に入り、児童生徒に対する体罰などによる懲戒処分は、この件を含めて四件にのぼる。

 今さら言うまでもなく、身体を侵害したり、苦痛を与える体罰行為は、学校教育法において禁止されている違法行為である。

 「体罰は昔からあったもの」「昔はみんなやっていた」といった意識をもった職員がいるとすれば、時代や社会情勢の変化をしっかり理解し、そうした認識を改めなければならない。

 また、体罰と同様に教育的な配慮に欠けるような暴言についても、子どもたちの健全な心身の育成に悪影響を与えかねない行為であり、どのような理由があったとしても許されるものではない。

 体罰という行為は、子どもたちの正常な倫理観の育成という観点から問題があるばかりか、むしろ力による問題解決を肯定する印象を与え、いじめや暴力行為などの連鎖を生む可能性すらある。

 子どもたちの指導に当たっては、何よりも一人ひとりを理解し、信頼関係を築くことが重要であり、強い指導が必要な場合であっても、決して体罰によることなく、子どもたちの規範意識や社会性の育成を図るよう、適切に、そして、粘り強く指導することが求められる。

 このことを深く心に刻み、学校職員それぞれが子どもたちを明るい未来に導く良き指導者・育成者としての自覚と責任をもち、子どもたちに愛情をもって接するのだという強い意識をもっていただきたいと思う。

 これら不祥事の根絶に当たっては、先ほど申し上げたように、学校職員一人ひとりの責任と自覚が不可欠であることは当然だが、本日ここにお集まりいただいている皆さんをはじめとした管理監督者の役割、責任は極めて大きいものがある。

 管理監督者が、「不祥事や体罰は、いくら努力してもなくならない」という認識をもっていたら、不祥事を根絶することは非常に難しいだろう。

 各学校の組織風土や、業務外も含めた職員の生活規範や考え方は、トップの意識で大きく変わっていく。

 園長先生、校長先生には、日ごろから風通しの良い職場環境づくりに努めていただくとともに、学校職員一人ひとりが公私を問わず、日々の生活の中で責任と自覚をもった行動をサポートするために、職員に対して必要な言葉をかけ続けること、しっかりと思いを伝え続けるということをお願いしたいと思う。

 終わりになるが、私は、あらためて不祥事を根絶しなければならないということを強く決意しているところである。

 そのために、教育委員会と学校が一丸となって不祥事根絶に向けた取組を進めていかなければならないと考えている。

 そのためには、学校職員一人ひとりの理解と協力が不可欠である。

 園長先生、校長先生の皆さんには、まずは本日お話しした私の強い思いを職員の皆さん全員にしっかりとお伝えいただくことをお願いするとともに、「目の前にいる子どもたちを守る、そして、先生方やその家族も守る」「そのためには、不祥事を絶対に起こさない」という強い決意と行動力をもって、学校経営に当たっていただくことを切にお願いして、私からの訓示とする。

(市町村 2019-01-25付)

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