31年度胆振管内教育推進の重点 小・中学校長会議で佐野局長説明 教育効果の高い学校を(道・道教委 2019-04-19付)
佐野秀樹局長
【室蘭発】胆振教育局は11日、むろらん広域センタービルで管内公立小・中学校長会議を開いた。佐野秀樹局長が31年度の管内教育推進の重点を説明。推進テーマに「オール胆振で教育効果の高い学校づくりを目指して」を掲げ、管内11市町が1つとなり、“オール胆振であと1歩前へ”前進することを表明した。管内教育推進の重点はつぎのとおり。
昨年9月に発生した北海道胆振東部地震では、管内東部3町を中心に41人の尊い命が奪われるなど、多くの方が被害を受け、その中には厚真高校の生徒1人が含まれるという、大変痛ましい状況が発生した。
皆さんには、それぞれの市・町・学校における諸課題の解決に向け、尽力いただいた。あらためて敬意を表するとともに、心よりお礼申し上げる。教育局としても、教育環境の復帰等に向け、今後も最大限の支援を行う。
管内教育推進の重点の考え方についてであるが、前年度、改訂された道教育推進計画に基づく実践は当然のことであるとの認識に立ち、これまでの管内教育推進の重点も踏襲しつつ、胆振としての現状を踏まえ、より一層、重点を絞って分かりやすく示すこととした。
構成については、管内教育推進の重点を4つ示し、具体の取組を、教育局の取組と市町教委・学校の取組に整理し、それぞれ別に示している。
管内教育推進のテーマは、引き続き11市町が諸課題の解決に向けて足並みをそろえ、オール胆振で取組を推進することが必要と考え、「オール胆振で教育効果の高い学校づくりを目指して」を掲げた。
4つの重点を確実に推進するためには、学校、保護者、地域住民、そして行政が、目標、成果や課題、具体的な取組を共有し、効果的な取組を推進していくことが重要であるという考え方をイメージしていただきたい。
▼重点1 学力・体力の向上
学力では、全国平均に到達した教科があったり、体力では、小学校で男女共に合計点が全国を上回ったりするなどの結果が出ているが、学力・体力ともに、まだ解決しなければならない課題があることを強く認識しなければならないと考えている。
特に、学力では、算数・数学のB問題、体力では、中学校女子の体力合計点が、それぞれ全国との差が大きいこと、また、同一集団における経年変化では、小学校段階の全国との差より、中学校段階での差が広がるという課題がみられることなどから、小・中学校ともに指導方法を改善することや授業の質的向上を図ることが必要であることから重点の1とした。
こうした課題を解決するためには、しっかりと現状を分析した上で、解決のための道筋や取組を明確にし、学校において全教職員が一体となって取り組む必要があるとともに、子どもが主体的に学び、学習内容を確実に定着させる授業づくりが大切。
そのため、重点1の2つの柱として、「調査結果に基づく検証改善サイクルの確立」と、「主体的・対話的で深い学びの実現」を掲げた。
▼重点2 いじめ・不登校の解消
いじめの認知件数は、いじめの定義が変わったことから、前年度と比較して、小学校で大幅に増加しており、各学校において積極的な認知が進んだものと考えている。
29年度の不登校の発生件数は、28年度と比較して中・高では横ばいとなっているものの小学校では大きく減少している。
また、児童生徒1000人当たりに換算した不登校発生人数は全道より低く、30年度に30日以上欠席している児童生徒のうち、専門的な機関で相談・指導を受けている児童生徒の割合は100%となるなど、これまでの教育委員会や学校、関係機関の取組が成果となって現れてきているものと考える。
しかしながら、現在も不登校の状況が解消されていない児童生徒が存在すること、また、いじめに関しては児童生徒の小さな訴えに耳を貸し、いじめの未然防止に努めること、認知したいじめを学校全体で早期に解決することが極めて重要と考え、重点の2とした。
不登校については、現在、不登校状態にある児童生徒が少しでも解消するよう支援することや、新たな不登校を生み出さない取組を継続する必要がある。
そのため、相談・支援シートを作成し、個に応じた指導や関係機関との連携のため効果的に活用すること、不登校の状態にある児童生徒や不登校の傾向がみられるすべての児童生徒に対して、専門的な指導・相談を受けさせることが大切。
いじめについては、先生方がアンテナを高く広く張り、小さな変化を見逃さず、子どもの小さな声にも耳を傾け、積極的に認知し、早期に対応することで未然防止につなげるとともに、いじめが起きたときには、学校全体で組織的かつ速やかに対応できる体制を整備しておくことが大切。
そのため、重点2の2つの柱として、「不登校の解消と未然防止の取組の推進」と「いじめの積極的な認知と組織的な対応の強化」を掲げた。
▼重点3 望ましい生活習慣の定着
30年度全国学力・学習状況調査の質問紙調査では、胆振管内で「普段、1日当たり1時間以上勉強している」児童生徒の割合は、全国を下回っている状況であり、また、放課後や週末に「家でテレビやビデオ、DVDを見たり、ゲームをしたり、インターネットをしたりしている」児童生徒の割合が、全国・全道より高くなっている状況であり、学校と家庭・地域が一体となって、管内の子どもたちに望ましい生活習慣を定着させることが重要であると考え、重点の3とした。
こうした課題を解決するため、各学校では家庭学習の内容や方法などについて先生方個々に任せるのではなく、学校全体で方針を定め、統一した指導を行うとともにその内容を保護者ともしっかり共有し、家庭で主体的に学習に取り組む態度を育てることが大切。
また、限られた1日の時間の使い方を児童生徒が自ら考え、マネジメントし、望ましい生活リズムを定着させることができるよう、家庭学習の指導と併せて、家庭と連携した取組を行う必要がある。
そのため、重点3の2つの柱として、「家庭学習の充実」と「生活リズムの定着」を掲げた。
▼重点4 働き方改革の推進
教員の働き方改革については国全体の情勢として加速化しており、各市町においてもアクション・プランを策定し、関係機関と連携しながら取組を推進している。
管内の小・中学校では、変形労働時間制を活用している学校の割合や、定時退勤日を月2回以上実施している学校の割合については100%には至っていないことや、勤務時間を客観的な方法で把握している学校の割合は低い状況。
今後は、32年度末の指標達成に向け、管内全体で取り組むことがさらに重要と考え、重点の4とした。
各市町のプランを確実に推進するためには、家庭や地域の理解促進を図ることが不可欠であるとともに、市町教委と教育局が連携して体制の整備を進めることが重要であると考えている。
そのため、重点4の柱として、「アクション・プランの確実な推進に向けた体制の整備」を掲げた。
教育局としては、「スケジュールイメージ」によって勤務時間を客観的に把握するシステムの構築、ノー部活DAYの実施や教頭の業務改善など、市町教委や各学校と連携を図り、体制の整備に努めていく。
最後に4点、重点以外にお話しする。
▼学校安全教育の充実
管内においては昨年の北海道胆振東部地震において東部3町を中心に大きな被害を受け、現在も復興・復旧に向け、子どもの心のケアや校舎の改修など様々な取組を行っている現状にある。
今後は、この経験を生かし、児童生徒等に地域の実態を踏まえた自然災害に応じた避難訓練や防災学校の実施など、自らの命を守るための安全に関する学習を着実に進めていただくようお願いする。
▼教頭昇任候補者選者
管内においても校長の大量退職期を迎え、教頭不足が懸念されるが、本年度実施する教頭選考から、出願要件や対象、選考方法等が改正されたことから、より多くの人材が教頭職に挑戦するよう働きかけをお願いする。
また、女性管理職比率の低さへの対応についても、管内の重要課題であると考えており、職場環境の改善や男性管理職の意識改革など継続して取組を進め、教頭試験に挑戦するよう働きかけをお願いする。
▼幼児教育
道および道教委では、より質の高い幼児教育が提供されるよう、昨年11月に道幼児教育振興基本方針を策定した。また、道と道教委が一体となって幼児教育を推進するため、6月には道教委の組織機構を改正し、幼児教育推進局に幼児教育推進センターを新設する予定となっており、新体制のもと、保育者に対する研修を充実させることや、小学校との円滑な接続を図るための事業など、各種施策を推進する。
このような中、管内においては本年度、幼小連携・接続推進リーダー活用事業を登別市に推進地域として取り組んでいただくことになっており、本事業の成果の普及等も含め、幼児教育についても着実に推進いただくようお願いする。
▼服務規律の保持・徹底
これまでも機会あるごとに注意喚起してきたが、依然として、不祥事が絶えない状況にある。
特に、管内における体罰事案については、全道と比較して非常に多い状況となっていることから、各市町においても、意図的・計画的に繰り返し研修等を実施するなど、教職員一人ひとり浸透させていただくよう指導の徹底をあらためてお願いする。
本年度も校長の皆さんの理解、力添えのもと、“オール胆振であと一歩前に”力強く進んでいきたいと考えているので、よろしくお願いする。
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(道・道教委 2019-04-19付)
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