31年度釧路管内教育推進の重点 学びの質向上へサポート 公立学校長会議で鈴木局長説明 (道・道教委 2019-04-19付)
鈴木淳局長
【釧路発】釧路教育局は16日、釧路センチュリーキャッスルホテルで31年度管内公立学校校長会議を開いた。鈴木淳局長が本年度の管内教育推進の重点を説明。「釧路っ子の“学び”を支える管内教育推進マップ・3S(サポート)」をもとに、子どもや学校、家庭・地域をサポートしていく視点を提示した。主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善、学びの質を高める指導力の向上、働き方改革の推進などの大切さを訴えた。管内教育推進の重点の概要はつぎのとおり。
【31年度釧路っ子の“学び”を支える管内教育推進マップ・3S(サポート)】
市町村教委や学校で重点的に取り組んでいただきたいことや、教育局として重点的に支援することを、「子ども」「学校」「家庭・地域」の3つのフィルターで整理した。
これらの内容については、大きな変更を行っていない。本年度もこれらの項目について、各学校において学校経営にかかる方針・ビジョン等に反映いただき、さらに深まりある取組をお願いする。
【31年度管内教育推進の重点項目】
キーワードについて、前年度、「広げる」「深める」を示したが、本年度は「深める」「つなげる」に変更した。
「広げる」については、市町村教委や学校に浸透し広がりつつあることから、変更することとし、「深める」については、本年度の取組のより一層の深化を図るといった意図から、本年度も継続したいと考えている。
さらに、これからの教育の転換期の中、釧路管内においても一つ一つの取組や学校、教委、関係機関をつなげながら点から線、そして面にしていき、管内教育の充実を図る観点から、キーワードとして「つなげる」を掲げ、この2つのキーワードに基づき、管内教育のさらなる充実を目指していきたい。
▼“子ども”へのS(サポート)
前年度と同様、管内の子どもに、社会で活きる力、豊かな人間性、健やかな体を育成することを重点としている。
1つ目の社会で活きる力については、技術革新やグローバル化など変化の激しい社会を子どもが生き抜くために必要な資質・能力として、未来を拓くために必要な資質・能力、社会的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力の2点を育む取組を推進する。
未来を拓くために必要な資質・能力の育成に向けては、前年度の全国学力・学習状況調査の結果から、管内全体としては改善傾向にあるものの、中学校においてはなかなか学力の向上が図られないことや下位層の割合が改善しないことなど、さらなる学力向上に向け、全国、全道レベルの客観的な各種調査等を活用しながら、子どもの学力や学習状況を適確に把握し、検証改善サイクルに基づく継続的な取組や、新学習指導要領の趣旨を踏まえた主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を学校全体で推進していただくようお願いする。
なお、各学校における管内教育推進の重点の評価結果において、主体的・対話的で深い学びの項目の評価が低い結果となっており、今後一層の取組が必要であることから、「目指した」という文言を「実現する」という文言に置き換え、授業の質を深めていくことを求めることとしている。
教育局としては、自校採点結果の集計を踏まえた授業改善にかかる指導資料の作成や、6月に実施予定の組織力強化会議、本年度が最終年度となる厚岸町・浜中町の授業改善等支援事業の成果を、管内につなげていきたいと考えている。
社会的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力の育成に向けては、特別支援教育の観点からインクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援の充実を図り、学校と家庭、地域、関係機関等による連携体制を深めるなど、切れ目のない推進体制の充実を図ること、また、子どもの学びの質を深めていく観点から、地域を巻き込み、学びの必要感、目的などを意識したキャリア教育の充実に取り組んでいただくようお願いする。
2つ目の豊かな人間性について。豊かな情操や道徳心の育成では、これまでも取り組んでいただいている地域人材も活用した読書活動や地域素材を取り入れた様々な体験活動のねらいを明確にした上で計画的に位置付けていただき、その活動を通して子どもの自己肯定感を高めるなど、豊かな人間性の形成を進めていく必要があると考えている。
ぜひ、各学校においてはこのような活動による子どもの変容をしっかり見取っていただき、子どもにフィードバックしてあげる支援をお願いしたい。
また、本年度は中学校の「特別の教科 道徳」において教科用図書を使用した指導が実施されるので、すべての学校において評価の在り方等を含めて校内研修を組織的・計画的に行うなど、考え、議論する道徳の実現をお願いする。
なお、この2つの項目については、各学校における評価結果の数値が高いことから、これまでの学校の取組を生かしながら、さらに質の高いものへと転換する取組を求めるため、文言や内容の修正を行っている。
ふるさとを支える人材育成については、2月と3月に開催された各市町村議会において示された教育行政執行方針にも直接的・間接的に位置付けられており、管内の教育を力強く進めるための共通したキーワードであると考えている。
教育局としては、これまで継続して行っている道ふるさと教育・観光教育推進事業の普及に努めるほか、本年度から浜中町で取り組む地域産業を通した地域理解や地域振興について探究するふるさと教育の指定事業である海洋教育パイオニアスクールプログラムの指定事業の支援に努めていきたいと考えている。
コミュニケーション能力の育成については、言葉を通して豊かな心を育むことや、よりよい人間関係を形成することが重要であると考える。
子どもが自分の考えをもち、表現しながら考えを形成・深化させたり、よりよい人間関係を形成したりすることができるよう、各教科等における言語活動の充実を図るとともに、コミュニケーションを通して人間関係を築き、いじめなどを解消することが大切。
繰り返しになるが、いじめの問題はどこの学校にも起こり得るという想定のもと、国の法令や指針、道いじめの防止等に関する条例等を踏まえ、いじめの未然防止、早期発見・早期対応に向け、教育相談体制の整備・充実をお願いする。
3つ目の健やかな体については、体力向上に向けた取組や健康教育を推進する。体力向上を通して健康の維持、精神面の充実に向けては、全国体力・運動能力、運動習慣等調査や新体力テスト等の結果をもとに子どもの体力・運動能力等の状況を把握し、継続的な検証改善サイクルの推進や、1校1実践など学校の創意工夫による取組を充実するほか、体育・保健体育授業の改善を図る。
健康な生活を実践する資質・能力の育成に向けては、子どもが生涯にわたって健康な生活を送ることができるよう、適切な意思決定や行動を選択する力を育むことが大切である。
そのため、道内において中学生が大麻を所持するなどの重大な事案が発生していることを踏まえ、薬物乱用防止教室の実施やフッ化物洗口などの保健管理に関する教育の充実、さらには、基本的な生活習慣や食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付ける食育の推進に取り組んでいく。
▼“学校”へのS(サポート)
教職員の資質・能力の向上について。子どもと直接向き合う教職員は、何よりも自らの専門性を高め、真摯に自身の資質・能力の向上に努めることが求められる。
学びの質を深める指導力の向上に向け29年12月に示した北海道における教員育成指標などを活用し、キャリアステージに応じた研修内容の質的向上と、これからの教育を担う人材育成を進める必要がある。
また、3月に管理職版育成指標も追加されており、校長の皆さんにおいても、校長職に求められる資質・能力のさらなる自己研鑚をお願いするとともに、その後ろ姿を教頭先生やミドルリーダーの先生方にも示していただきたいと思う。
なお、釧路管内では教職員数が少ない小規模校が多いことから、教職員一人ひとりの指導力等を高めていく観点から、地域全体で教職員相互に学ぶ場を設定したり、学校段階間でそれぞれの接続を踏まえた学びの場を位置付けたりすることが大切である。
本年度も、教育局では各校種における公開授業等の情報提供を行っていきたいと思うので、意図的・計画的に活用してほしいと思う。
“チームとしての学校”の実現については、事務職員等も含めたそれぞれの専門性を発揮させ、役割分担を明確にするなど、スタッフマネジメントを踏まえた組織力の向上が大切である。
そこで、24年度から釧路町、28年度から釧路市で取り組んでいる学校力向上に関する総合実践事業の成果を指導監や指導主事の学校訪問等で広く普及していきたいと考えている。
なお、本年度から管内で初めて、釧路町立富原中学校が実践指定校として取り組むこととなっている。中学校における先駆的な取組について、町教委、学校とも密接な連携のもと、取組内容の成果や課題を分析、検証し、発信していきたいと考えているので、中学校の校長先生方は、ぜひ、しっかりと受け止めていただき、自校の経営戦略の一つとしてとらえていただければと思う。
また、マネジメント機能の強化については、2つ目の教職員の力が発揮できる環境づくりにおいて、学校の教職員が抱える多忙感を解消し、子どもと向き合う時間の確保や教育の質を深めるために、教育委員会や学校と連携を図り、北海道アクション・プランの取組を含め、校長のリーダーシップのもと、質の高い教育を実現する働き方改革の推進をお願いする。
また、各学校においては市町村教委が作成する「設置する学校にかかる部活動の指針」にのっとり、学校の部活動にかかる活動方針を早急に策定するなど、実効性ある働き方改革の推進をお願いする。
つぎに、危機管理体制の強化にかかわっては、子どもの安全・安心の側面と教職員の側面から2点示した。
子どもの安全・安心の確保については、前年度の北海道胆振東部地震におけるブラックアウトの発生を踏まえた危機管理マニュアルの見直しをはじめ、交通事故や災害などの学校安全、アレルギーなどの健康安全、若年層の死亡原因の1位である自殺を予防するための子どものメンタルヘルスに関する教育の充実を図るとともに、いじめや不登校、児童虐待などへの対応も含め、すべての子どもにとって安全・安心で、信頼できる居場所や絆づくりを進める必要があると考えている。
各市町村教委や学校においても、引き続き子どもの安全を守る取組を組織的に進めていただくようお願いする。
また、服務規律の保持・徹底については、前年度も当管内において、社会はもとより保護者や子どもの信頼を損ねることにつながる教職員の不祥事が発生しており、依然として減少しない傾向にある。
教育局としては管内コンプライアンス確立会議などの開催を通し、あらためて学校に不祥事防止の取組について確認することとしているが、教育公務員としての法令順守の徹底について、継続的に取り組んでいただくようお願いする。
つぎに、学校段階間の連携・接続の推進では、学校から重複する内容があるという指摘を受け、重点項目の整理を行った。「連続性のある教育活動」「組織的な学校段階間連携の取組」をそれぞれ1つの項目とし、重点的に取り組んでいただきたいと考えている。
なお、一貫教育の取組については白糠町に先駆的に取り組んでいただき、このあと、釧路市においても準備が進められていく。
これらの取組について、教育局としてきめ細かく支援していくとともに、管内全体としても幼保、小・中・高において、それぞれの学校段階で身に付ける資質・能力が確実に育まれ、子どもの育ちが円滑につながっていくよう、相互に連携して、情報共有や指導方法の交流などをお願いする。
▼“家庭・地域”へのS(サポート)
学校が抱える課題の解決や地域全体で子どもの成長を支え、地域を創生するため、学びを支える家庭・地域、学びを活かす地域社会の2点を視点として重点項目を設定した。特に、学びを支える家庭・地域においては、地域とともにある学校づくりに向け、コミュニティ・スクールの導入や地域学校協働活動の推進によって、学校と地域の双方向で子どもを育てる体制を進めることが大切である。
コミュニティ・スクールについては、本年度すべての市町村で導入される予定となっており、今後、一層の取組の充実が期待されている。
家庭の教育力にかかわっては、貧困家庭の問題や児童虐待をはじめ、子育てに悩む家庭へのサポートなど、保健福祉部との連携を視野に入れ、「子育て支援活動」の文言を入れた。
また、学びを活かす地域社会では、活力ある地域づくりの推進として、釧路管内の誇る自然や人材など、地域における教育資源を活用した組織的な教育活動の推進を位置付けている。
なお、主な各種事業等と重点項目との関連として示しているので、各種指定事業の活用を通して学校改善を図ってもらうとともに、それぞれの取組の成果を自校に取り入れていただくなど、各市町村における取組と関連を図り、戦略的な活用をお願いする。
私も現職として3回目の釧路の春を迎えたが、この2年間で大きくみえた、または感じた管内教育の変化がある。それは、校長一人ひとりが「これまでは何ができなかったのか」「これからは何をするべきなのか」を明確に経営マネジメントに位置付けていることである。
今回示したキーワード「深める」を、私自身、自分の置かれている立場で考えたときに、3つのことを考えた。1つ目は、深めるための方策をもつこと、2つ目は、深める方向性を見極めること、最後は、深めた結果の評価基準をもつことである。
校長も1校を預かる最高責任者なので理解いただけると思うが、深めるためには、自分が動くのではなく、組織を動かす働きかけ(指示、指導)が大切になってくる。そのためには、組織全員がつながっていなければ動かない。
先般、3月末に管内校長会定期総会の中で「管内教育の一枚岩」について話をさせてもらったが、本年度のキーワード「深める」「つなげる」は、まさに管内教育が一枚岩になるためのキーワードでもあると考えている。
一枚岩の上に子どもたち、教職員、保護者・地域住民が乗っている。これからの時代の流れ、教育改革のスピード感にも耐えられる頑丈なものにするため、そして、オール釧路で一つ上のステージに向けて取り組んでいくためにも、校長一人ひとりの力添えをいただかなければならない。
併せて、学校は子どもの確かな成長を担保する役割と責任を果たす教育の専門機関であることをあらためて強く自覚し、子どもたちの夢と希望をもつことのできる学校教育の創造に校長に全力を尽くしていただきたいと思う。
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