学びと地域創生支える教育 道教委の教育行政執行方針(道・道教委 2019-06-24付)
道教委の佐藤嘉大教育長が、20日の2定道議会で説明した本年度教育行政執行方針の概要はつぎのとおり。
【はじめに】
平成から令和へと時代は進み、北海道は、命名から150年の時を経て、新たな時代を迎えている。グローバル化が一層進展し、IoTやAIが新たな価値を生み出すSоciety5・0が到来しようとする今、未来に向かって、新たな一歩を力強く踏み出していかなければならない。
この先の未来を担っていくのは、無限の可能性を秘めた子どもたちである。本道の子どもたちが、それぞれの夢をもち、その実現に挑戦しながら、自らの可能性を発揮し、幸福な人生とよりよい社会の創り手となる力を身に付けることが重要である。
道教委は、「自立」と「共生」という北海道教育の基本理念のもと、子どもたちが、ふるさとへの誇りと愛着をもち、共に支え合い、たくましい人材へと成長していくことができるよう、学校・家庭・地域との緊密な連携を図りながら、本道教育の充実・発展に取り組んでいく。
【教育行政に臨む基本姿勢】
1つ目は、「子どもたち一人ひとりの学びを支える教育の実現」。
広域分散型の本道において、どの地域においても、子どもたち一人ひとりが自らの可能性を最大限に伸ばしていくことのできる質の高い教育を提供するため、学力・体力の向上をはじめとする教育施策の展開に努めていく。
2つ目は、「地域創生を支える教育行政の推進」。
ふるさと北海道が、将来にわたって輝き続けていくためには、地域の発展を支える人材の育成が不可欠である。
子どもたちに求められる資質や能力を社会と共有しながら、教育行政の推進に取り組んでいく。
【重点政策の展開】
▼社会で活きる力の育成
子どもたちが、様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓いていくために必要な資質や能力を身に付けることができるよう、各学校において、主体的・対話的で深い学びの視点に基づく授業改善を進めるとともに、教育効果を高めるカリキュラム・マネジメントを実践していくことが重要である。
このため、義務教育においては、全国学力・学習状況調査や道教委独自で実施するチャレンジテストなどの結果を分析して、教育課程の検証改善サイクルを確立する取組を一層推進するとともに、授業改善推進チームの配置や学校力向上に関する総合実践事業などによる成果の普及を図る。
高校教育においては、高大接続改革の方向性を見据え、個々の教科等の枠を超えた横断的な視点からの教育課程の編成・実施や教員研修の一層の充実、探究的な教育活動の展開などに取り組むとともに、国際理解教育や理数教育の推進など、新たな時代に対応した教育内容の充実に努める。
特別支援教育においては、共生社会の形成に向けて、障がいのある子どもと障がいのない子どもが共に学ぶインクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、特別な支援を必要とする子どもたちに、切れ目のない一貫した教育が行われるよう、教育環境の整備・充実と、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援の充実を図る。
また、障がいのある子どもたちの自立と社会参加に向け、労働や福祉の関係機関、企業などと連携し、地域が一体となった就労促進のための体制づくりを進めるとともに、ICTを活用した多様な働き方の導入促進に取り組む。
幼児教育においては、道幼児教育振興基本方針に基づき、幼稚園・保育所・認定こども園などの幼児教育施設が一層、質の高い教育を提供できるよう、幼児教育推進センターを拠点に、関係団体などと連携しながら、研修・助言機会の充実や小学校教育との連携・接続を促進するなど、幼児教育振興のための施策を着実に進める。
ふるさとを知り、その発展に貢献しようとする意欲や態度を醸成するため、本道の自然、文化、産業などの教育資源を活用した学習を推進するとともに、7月の「北海道みんなの日」などで、地域の歴史や文化等を学ぶ授業を実施するなど、各学校において、ふるさと教育が積極的に展開されるよう取り組む。
また、来年4月に民族共生象徴空間「ウポポイ」がオープンすることを踏まえ、アイヌの人たちの歴史や文化等に関する学習や、北方領土に関する学習の充実を図る。
キャリア教育については、小・中学校において、望ましい勤労観や職業観を育む教育の充実を図るほか、高校では、技術革新が進む基幹産業などの体験的な学習機会を提供するとともに、地域を支える人材を育成するため、地域課題の解決をテーマとする実践研究に取り組む北海道ふるさと・みらい創生推進事業を実施する。
英語教育については、子どもたちが、英語で日常的なコミュニケーションを行うことのできる力を身に付けられるよう、小学校では、英語担当教員の巡回指導や、留学生や外国語指導助手との英会話を体験する取組を、中学校では、地域の外国人等との英会話にチャレンジする取組の拡大や英語力向上に向けた授業改善を、高校では、英語の活用場面を想定した実践的な取組を進める。
併せて、本道におけるグローバル人材の育成を図るため、カナダ・アルバータ州やアメリカ・ハワイ州との交換留学に加え、知事部局と連携しながら、ロシア連邦サンクトペテルブルク市など留学対象地域の拡大に向けた取組を進める。
教育の情報化については、北海道における教育の情報化推進指針を踏まえ、先進的な実践事例の普及など、ICTを活用した学習活動等の促進を通して情報活用能力を育むとともに、小学校でのプログラミング教育の円滑な導入に向けた研修会を開催し、教員の指導力の向上を図る。
▼豊かな人間性と健やかな体の育成
豊かな人間性の育成においては、道徳教育の一層の充実に向けて、指導方法等に関する研修会の開催や、道徳教材の効果的な活用などに取り組む。
読書活動については、図書館ボランティアなど、地域人材を活用した取組の成果等を普及するほか、学校図書館の運営の充実に向けた手引きの活用を促進するなどして、社会全体で子どもの読書活動の推進を図るとともに、そのための環境整備を進める。
いじめの防止や不登校児童生徒への支援については、北海道いじめ防止基本方針の周知徹底を図るとともに、望ましい人間関係の醸成はもとより、いじめなどの未然防止と適切な実態把握による早期発見を基本として、組織的かつ迅速な対応が図られるよう取り組む。
併せて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーのほか、弁護士や医師などの専門家を派遣するなど、学校を支援する体制の充実を図る。
子どもたちがネットトラブルの被害者や加害者にならないよう、インターネット利用についての家庭のルールづくりを促進するほか、SNSの活用など多様な相談体制の整備・充実に取り組む。
健やかな体の育成においては、子どもたちの体力向上のため、体育の授業改善や教員の指導力向上を目的として研修に取り組むとともに、学校・家庭・地域・行政の連携によって、運動意欲の向上に関する実践研究などを行う子どもの体力向上ボトムアップ事業を展開し、その成果の普及を図る。
食育の推進については、食に関する正しい知識と望ましい食習慣の定着に向けた取組を進めるとともに、安心して学校生活を送ることができるよう、食物アレルギーへの対応の一層の充実を図る。
▼学びを支える家庭・地域との連携・協働
子育てや家庭教育については、それぞれの地域で保護者が相談や交流を行うことができるよう、関係機関による相談体制の充実・強化を図るとともに、PTAや関係機関等と協働し、早寝早起き朝ごはん運動など、望ましい生活習慣の定着に向けた取組を展開することによって、家庭や地域の教育力の向上に取り組む。
また、学校を核として、地域全体で子どもたちの学びや成長を支える取組が推進されるよう、コミュニティ・スクールの導入や、学校の教育活動を支援する地域学校協働活動の促進など、学校と地域が連携・協働する取組の充実を図る。
家庭の経済状況にかかわらず、子どもたちが安心して学習を進められるよう、高校等の授業料などの負担軽減や地域で学習支援を行う子ども未来塾の拡充に取り組むとともに、知事部局と連携しながら、各種支援情報の提供に努める。
併せて、義務教育段階の教育を十分に受けていない方々などに対する教育機会の確保に向け、知事部局や市町村、民間団体などによる協議会において、本道における夜間中学の在り方などを検討する。
▼学びをつなぐ学校づくりの実現
学校が、保護者や地域住民の期待に応え、子どもたち一人ひとりの力を最大限に伸ばすためには、幼稚園から高校までの各学校間の連携・接続を図りながら、管理職がリーダーシップを発揮して学校運営に当たるとともに、教職員がそれぞれの力を発揮していくことができる環境づくりが重要である。
このため、小中一貫教育については、導入校における実践事例の普及などを通して、地域の実情に応じた導入への取組を支援する。
また、社会の急速な変化や、生徒の興味・関心、進路希望等の多様化、中学校卒業者数の減少などに対応し、教育機能の維持向上を図るため、特色ある高校づくりや適切な高校配置に努めるとともに、ふるさと納税の活用など、道内外の皆さんからの応援もいただきながら、地域の特性を生かした活力と魅力のある高校づくりを進める。
併せて、広域な本道の地理的特性を踏まえ、どの地域においても質の高い教育を受けることができるよう、ICT機器を活用した遠隔授業を実施し、離島や小規模校の教育環境の整備を図るとともに、教育内容の一層の充実に取り組む。
教員の指導力の向上のため、教員育成指標に基づき、体系的かつ効果的な教員研修を実施するなど、教員養成大学とも連携しながら、養成・採用・研修を通じた一体的な改革を進めるとともに、ICT機器を活用した遠隔研修の充実に取り組む。
教職員の不祥事の根絶に向けて、服務に関する研修資料を効果的に活用し、職場研修や個人面談の一層の充実を図る。
教員が健康でいきいきとやりがいをもって勤務し、学校教育の質を高められる環境の構築に向けて、部活動指導員やスクール・サポート・スタッフの配置の拡充や、管理職のマネジメント研修の充実など、学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」に基づく取組を着実に推進するとともに、新たに校長経験者や民間コンサルタントを活用した業務改善に取り組むなどして、持続可能な学校運営体制の整備・充実を進める。
学校における児童生徒の安全の確保については、地震や津波、台風など、自然災害から身を守るために必要な知識や能力等の育成に向けて、地域と連携した防災教育の一層の充実を図るとともに、地域住民、警察や市町村などの関係機関と連携し、通学路等の安全対策の徹底に取り組む。
また、9月に北海道で開催される「世界津波の日」高校生サミットを通じて、自然災害の脅威やその対策について、理解と関心を高めるとともに、世界の高校生との交流を図りながら、グローバルリーダーの育成を図る。
▼学びを活かす地域社会の実現
道民の潤いのある生活と活力ある地域づくりの推進のためには、生涯を通じて積極的に学ぶとともに、その成果を活かすことのできる環境をつくることが重要である。
このため、公民館などの機能を活用し、学生や地域住民、地元市町村、関係機関が協働して主体的に地域課題の解決を図る取組を支援するとともに、道民に様々な学習機会を提供する道民カレッジの充実を図る。
文化の振興については、アイヌ民俗文化財の保存・伝承活動の支援や北東北と連携した縄文遺跡群の世界遺産登録に向けた取組を進めるとともに、本年度認定された「炭鉄港」を含め、日本遺産の活用に向けた取組を支援していく。
併せて、道立美術館と地域の美術館や文化施設などとのネットワークを活用し、相互に作品を紹介する展覧会などを開催するとともに、施設の魅力を広く発信することによって、本道全体をアートの舞台とするアートギャラリー北海道の取組のさらなる充実を図る。
(道・道教委 2019-06-24付)
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